土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者 及び関係人が受ける損失は、起業者が補償しなければならない。
土地収用法
第六章 損失の補償
第一節 収用又は使用に因る損失の補償
損失の補償は、土地所有者 及び関係人に、各人別にしなければならない。
但し、各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない。
損失の補償は、金銭をもつてするものとする。
但し、替地の提供 その他補償の方法について、第八十二条から第八十六条までの規定により収用委員会の裁決があつた場合は、この限りでない。
収用する土地 又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
前条の規定は、使用する土地 又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額について準用する。
この場合において、
同条中
「近傍類地の取引価格」とあるのは、
「その土地 及び近傍類地の地代 及び借賃」と
読み替えるものとする。
この節に別段の定めがある場合を除くの外、損失の補償は、明渡裁決の時の価格によつて算定してしなければならない。
同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地の価格が減じ、その他残地に関して損失が生ずるときは、その損失を補償しなければならない。
前項の規定による残地 又は残地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額については、第七十一条 及び第七十二条の例による。
同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用することに因つて、残地に通路、みぞ、かき、さく その他の工作物の新築、改築、増築 若しくは修繕 又は盛土 若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに要する費用を補償しなければならない。
同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用することに因つて、残地を従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、土地所有者は、その全部の収用を請求することができる。
前項の規定によつて収用の請求がされた残地 又はその上にある物件に関して権利を有する関係人は、収用委員会に対して、起業者の業務の執行に特別の支障がなく、且つ、他の関係人の権利を害しない限りにおいて、従前の権利の存続を請求することができる。
第一項の規定によつて収用の請求がされた土地に関する所有権以外の権利に対しては、第七十一条の規定にかかわらず、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した権利取得裁決の時における相当な価格をもつて補償しなければならない。
収用し、又は使用する土地に物件があるときは、その物件の移転料を補償して、これを移転させなければならない。
この場合において、物件が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の全部の移転料を請求することができる。
前条の場合において、物件を移転することが著しく困難であるとき、又は物件を移転することに因つて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、その所有者は、その物件の収用を請求することができる。
第七十七条の場合において、移転料が移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格をこえるときは、起業者は、その物件の収用を請求することができる。
前二条の規定によつて物件を収用する場合において、収用する物件に対しては、近傍同種の物件の取引価格等を考慮して、相当な価格をもつて補償しなければならない。
土地を使用する場合において、使用の方法が土地の形質を変更し、当該土地を原状に復することを困難にするものであるときは、これによつて生ずる損失をも補償しなければならない。
前項の規定による土地 又は土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額については、第七十一条の例による。
土地を使用する場合において、土地の使用が三年以上にわたるとき、土地の使用に因つて土地の形質を変更するとき、又は使用しようとする土地に土地所有者の所有する建物があるときは、土地所有者は、その土地の収用を請求することができる。
但し、空間 又は地下を使用する場合で、土地の通常の用法を妨げないときは、この限りでない。
前項の規定によつて収用の請求がされた土地に関して権利を有する関係人は、収用委員会に対して従前の権利の存続を請求することができる。
前項の規定による請求があつた権利については、起業者がその権利の使用の裁決の申請をしたものとみなして、第一項の規定に基づく請求に係る裁決とあわせて裁決するものとする。
土地所有者 又は関係人(先取特権を有する者、質権者、抵当権者 及び第八条第四項の規定により関係人に含まれる者を除く。以下この条 及び第八十三条において同じ。)は、収用される土地 又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の全部 又は一部に代えて土地 又は土地に関する所有権以外の権利(以下「替地」と総称する。)をもつて、損失を補償することを収用委員会に要求することができる。
土地所有者 又は関係人が起業者の所有する特定の土地を指定して前項の規定による要求をした場合において、収用委員会は、その要求が相当であり、且つ、替地の譲渡が起業者の事業 又は業務の執行に支障を及ぼさないと認めるときは、権利取得裁決において替地による損失の補償の裁決をすることができる。
土地所有者 又は関係人が土地を指定しないで、又は起業者の所有に属しない土地を指定して第一項の規定による要求をした場合において、収用委員会は、その要求が相当であると認めるときは、起業者に対して替地の提供を勧告することができる。
前項の規定による勧告に基いて起業者が提供しようとする替地について、土地所有者 又は関係人が同意したときは、収用委員会は、替地による損失の補償の裁決をすることができる。
第三項の規定による勧告があつた場合において、国 又は地方公共団体である起業者は、地方公共団体 又は国の所有する土地で、公用 又は公共用に供し、又は供するものと決定したもの以外のものであつて、且つ、替地として相当と認めるものがあるときは、その譲渡のあつ旋を収用委員会に申請することができる。
前項の規定による申請があつた場合において、収用委員会は、その申請を相当と認めるときは、国 又は地方公共団体に対し、替地として相当と認めるものの譲渡を勧告することができる。
起業者が提供すべき替地は、土地の地目、地積、土性、水利、権利の内容等を総合的に勘案して、従前の土地 又は土地に関する所有権以外の権利に照応するものでなければならない。
土地所有者 又は関係人は、前条第一項の規定による要求をする場合において、収用される土地が耕作を目的とするものであるときは、その要求にあわせて、収用される土地 又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金に代る範囲内において、同条第七項の規定の趣旨により、替地となるべき土地について、起業者が耕地の造成を行うことを収用委員会に要求することができる。
収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、権利取得裁決において工事の内容 及び工事を完了すべき時期を定めて、耕地の造成による損失の補償を替地による損失の補償にあわせて裁決することができる。
前項の場合において、起業者が国以外の者であるときは、収用委員会は、必要があると認めるときは、同時に起業者が耕地の造成のための担保を提供しなければならない旨の裁決をすることができる。
前項の規定による担保は、収用委員会が相当と認める金銭 又は有価証券を供託することによつて、提供するものとする。
起業者が工事を完了すべき時期までに工事を完了しないときは、土地所有者 又は関係人は、収用委員会の確認を得て前項の規定による担保の全部 又は一部を取得する。
この場合において、起業者は、収用委員会の確認を得て耕地の造成による損失の補償の義務を免かれるものとする。
起業者は、工事を完了したときは、収用委員会の確認を得て第四項の規定による担保を取りもどすことができる。
前二項の規定による担保の取得 及び取りもどしに関する手続は、国土交通省令で定める。
第七十五条の場合において、起業者、土地所有者 又は関係人は、補償金の全部 又は一部に代えて、起業者が当該工事を行うことを収用委員会に要求することができる。
収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、明渡裁決において工事の内容 及び工事を完了すべき時期を定めて、工事の代行による損失の補償の裁決をすることができる。
前条第三項から第七項までの規定は、前項の場合に準用する。
この場合において、
同条第三項 及び第五項中
「耕地の造成」とあるのは、
「工事の代行」と
読み替えるものとする。
第七十七条に規定する場合において、起業者 又は物件の所有者は、移転料の補償に代えて、起業者が当該物件を移転することを収用委員会に要求することができる。
収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、明渡裁決において移転の代行による損失の補償の裁決をすることができる。
第七十七条の規定により建物を移転しようとする場合において、移転先の土地が宅地以外の土地であるときは、土地所有者 又は関係人は、第七十一条、第七十二条、第七十四条、第八十条の二 及び第八十八条の規定による損失の補償の一部に代えて、起業者が宅地の造成を行うことを収用委員会に要求することができる。
収用委員会は、前項の規定による要求が相当であると認めるときは、権利取得裁決 又は明渡裁決において工事の内容を定めて宅地の造成による損失の補償の裁決をすることができる。
第七十六条第一項 及び第二項、第七十七条から第七十九条まで 並びに第八十一条第一項 及び第二項の規定による請求、第八十二条第一項、第八十三条第一項、第八十四条第一項、第八十五条第一項 及び前条第一項の規定による要求は、第四十三条第一項(第四十七条の四第二項において準用する場合を含む。)若しくは第六十三条第二項の規定による意見書 又は第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつてしなければならない。
ただし、第七十六条第一項 及び第八十一条第一項の規定による請求は、第四十三条の縦覧期間前においても、その請求に係る意見書を収用委員会に提出することによつてすることができる。
第七十一条、第七十二条、第七十四条、第七十五条、第七十七条、第八十条 及び第八十条の二に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失 その他土地を収用し、又は使用することに因つて土地所有者 又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
第七十一条、第七十二条、第七十四条、第七十五条、第七十七条、第八十条、第八十条の二 及び前条の規定の適用に関し必要な事項の細目は、政令で定める。
土地所有者 又は関係人は、第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示の後において、土地の形質を変更し、工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは大修繕し、又は物件を附加増置したときは、あらかじめこれについて都道府県知事の承認を得た場合を除くの外、これに関する損失の補償を請求することができない。
土地の形質の変更、工作物の新築、改築、増築 若しくは大修繕 又は物件の附加増置がもつぱら補償の増加のみを目的とすると認められるときは、都道府県知事は、前項に規定する承認をしてはならない。
土地の形質の変更について、土地所有者 又は関係人が第二十八条の三第一項の規定による許可を受けたときは、第一項の規定による承認があつたものとみなす。
同一の土地所有者に属する一団の土地の一部を収用し、又は使用する場合において、当該土地を収用し、又は使用する事業の施行に因つて残地の価格が増加し、その他残地に利益が生ずることがあつても、その利益を収用 又は使用に因つて生ずる損失と相殺してはならない。
第四十六条の二第一項の規定による補償金の支払の請求があつた土地 又は土地に関する所有権以外の権利については、
第七十一条中
「権利取得裁決の時」とあるのは、
「第四十六条の四第一項の規定による支払期限」と
する。
第四十六条の二第一項の規定による補償金の支払の請求があつた場合においては、収用委員会は、権利取得裁決において次に掲げる事項について裁決しなければならない。
起業者が土地 又は土地に関する所有権以外の権利に対する補償金として既に支払つた額を、その支払時期に応じて第七十一条に規定する修正率の例により算定した修正率によつて第四十六条の四第一項の規定による支払期限における価額に修正した額
前条の規定により読み替えられた第七十一条の規定によつて算定した補償金の額と前号の額とに過不足があるときは、起業者が支払うべき補償金の残額 及びその権利者 又は起業者が返還を受けることができる額 及びその債務者
前項第三号に掲げる加算金の額は、第四十六条の四第一項の規定による支払を遅滞した金額について、その支払を遅滞した期間(裁決の時までに支払われなかつた金額については、裁決の時までの期間)の日数につき、次の各号に定めるところにより算定した額とする。
遅滞額が前条の規定による補償金の額の二割以上である期間
年十八・二五パーセント
遅滞額が前条の規定による補償金の額の二割未満一割以上である期間
年十一パーセント
遅滞額が前条の規定による補償金の額の一割未満である期間
年六・二五パーセント
起業者が第三十九条第二項の規定による請求を受けた日から二週間以内に収用 又は使用の裁決の申請をしなかつた場合においては、収用委員会は、権利取得裁決において、起業者が、土地所有者 及び土地に関する所有権以外の権利を有する関係人に対し、それらの者が受けるべき補償金の額につき年十八・二五パーセントの割合により裁決の申請を怠つた期間の日数に応じて算定した過怠金を支払うべき旨の裁決をしなければならない。
第二節 測量、事業の廃止等に因る損失の補償
第十一条第三項、第十四条 又は第三十五条第一項の規定により土地 又は工作物に立ち入つて測量し、調査し、障害物を伐除し、又は土地に試掘等を行うことに因つて損失を生じたときは、起業者は、損失を受けた者に対して、これを補償しなければならない。
前項の規定による損失の補償は、損失があつたことを知つた日から一年を経過した後においては、請求することができない。
第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた後、起業者が事業の全部 若しくは一部を廃止し、若しくは変更し、第二十九条 若しくは第三十四条の六の規定によつて事業の認定が失効し、又は第百条の規定により裁決が失効したことに因つて土地所有者 又は関係人が損失を受けたときは、起業者は、これを補償しなければならない。
前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。
土地を収用し、又は使用(第百二十二条第一項 又は第百二十三条第一項の規定によつて使用する場合を含む。)して、その土地を事業の用に供することにより、当該土地 及び残地以外の土地について、通路、溝、垣、さく その他の工作物を新築し、改築し、増築し、若しくは修繕し、又は盛土 若しくは切土をする必要があると認められるときは、起業者は、これらの工事をすることを必要とする者の請求により、これに要する費用の全部 又は一部を補償しなければならない。
この場合において、起業者 又は当該工事をすることを必要とする者は、補償金の全部 又は一部に代えて、起業者が当該工事を行うことを要求することができる。
前項の規定による損失の補償は、事業に係る工事の完了の日から一年を経過した後においては、請求することができない。
前三条の規定による損失の補償は、起業者と損失を受けた者(前条第一項に規定する工事をすることを必要とする者を含む。以下この条において同じ。)とが協議して定めなければならない。
前項の規定による協議が成立しないときは、起業者 又は損失を受けた者は、収用委員会の裁決を申請することができる。
前項の規定による裁決を申請しようとする者は、国土交通省令で定める様式に従い、左に掲げる事項を記載した裁決申請書を収用委員会に提出しなければならない。
第十九条の規定は、前項の規定による裁決申請書の欠陥の補正について準用する。
この場合において、
「前条」とあるのは
「第九十四条第三項」と、
「事業認定申請書」とあるのは
「裁決申請書」と、
「国土交通大臣 又は都道府県知事」とあるのは
「収用委員会」と
読み替えるものとする。
収用委員会は、第三項の規定による裁決申請書を受理したときは、前項において準用する第十九条第二項の規定により裁決申請書を却下する場合を除くの外、第三項の規定による裁決申請者 及び裁決申請書に記載されている相手方にあらかじめ審理の期日 及び場所を通知した上で、審理を開始しなければならない。
第五十条 及び第五章第二節(第六十三条第一項を除く。)の規定は、収用委員会が前項の規定によつて審理をする場合に準用する。
この場合において、
第五十条、第六十一条第一項、第六十三条第二項から第五項まで、第六十四条第二項 及び第六十六条第三項中
「起業者、土地所有者 及び関係人」とあり、
及び第五十条第二項中
「収用し、又は使用しようとする土地の全部 又は一部について起業者と土地所有者 及び関係人の全員」とあるのは
「裁決申請者 及びその相手方」と、
同条第二項 及び第三項中
「第四十八条第一項各号 又は前条第一項各号に掲げるすべての事項」とあるのは
「損失の補償 及び補償をすべき時期」と、
同条第五項中
「権利取得裁決 又は明渡裁決」とあるのは
「第九十四条第八項の規定による裁決」と、
第六十三条第三項中
「前二項」とあるのは
「前項」と、
同条第四項中
「第四十条第一項の規定による裁決申請書の添付書類により、若しくは第四十三条第一項の規定による意見書により申し立てた事項 又は第一項 若しくは第二項」とあるのは
「第九十四条第三項の規定による裁決申請書により申し立てた事項 又は第二項」と、
第六十五条第一項第一号中
「起業者、土地所有者 若しくは関係人」とあるのは
「裁決申請者 若しくはその相手方」と、
第六十五条の二第一項、第二項 及び第七項中
「土地所有者 又は関係人」とあるのは
「裁決申請者 又はその相手方(これらの者のうち起業者である者を除く。)」と
読み替えるものとする。
収用委員会は、第二項の規定による裁決の申請がこの法律の規定に違反するときは、裁決をもつて申請を却下しなければならない。
収用委員会は、前項の規定によつて申請を却下する場合を除くの外、損失の補償 及び補償をすべき時期について裁決しなければならない。
この場合において、収用委員会は、損失の補償については裁決申請者 及びその相手方が裁決申請書 又は第六項において準用する第六十三条第二項の規定による意見書 若しくは第六項において準用する第六十五条第一項第一号の規定に基いて提出する意見書によつて申し立てた範囲をこえて裁決してはならない。
前項の規定による裁決に対して不服がある者は、第百三十三条第二項の規定にかかわらず、裁決書の正本の送達を受けた日から六十日以内に、損失があつた土地の所在地の裁判所に対して訴えを提起しなければならない。
前項の規定による訴えの提起がなかつたときは、第八項の規定によつてされた裁決は、強制執行に関しては、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条第五号に掲げる債務名義とみなす。
前項の規定による債務名義についての執行文の付与は、収用委員会の会長が行う。
民事執行法第二十九条後段の執行文 及び文書の謄本の送達も、同様とする。
前項の規定による執行文付与に関する異議についての裁判は、収用委員会の所在地を管轄する地方裁判所においてする。