この法律は、工場 及び事業場における事業活動 並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。
振動規制法
第一章 総則
この法律において「特定施設」とは、工場 又は事業場に設置される施設のうち、著しい振動を発生する施設であつて政令で定めるものをいう。
この法律において「規制基準」とは、特定施設を設置する工場 又は事業場(以下「特定工場等」という。)において発生する振動の特定工場等の敷地の境界線における大きさの許容限度をいう。
この法律において「特定建設作業」とは、建設工事として行われる作業のうち、著しい振動を発生する作業であつて政令で定めるものをいう。
この法律において「道路交通振動」とは、自動車(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車 及び同条第三項に規定する原動機付自転車をいう。)が道路を通行することに伴い発生する振動をいう。
都道府県知事(市の区域内の地域については、市長。第三項(次条第三項において準用する場合を含む。)及び同条第一項において同じ。)は、住居が集合している地域、病院 又は学校の周辺の地域 その他の地域で振動を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認めるものを指定しなければならない。
都道府県知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、関係町村長の意見を聴かなければならない。
これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
都道府県知事は、第一項の規定による指定をするときは、環境省令で定めるところにより、公示しなければならない。
これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
第二章 特定工場等に関する規制
都道府県知事は、前条第一項の規定による指定をするときは、環境大臣が特定工場等において発生する振動について規制する必要の程度に応じて昼間、夜間 その他の時間の区分 及び区域の区分ごとに定める基準の範囲内において、当該指定に係る地域について、これらの区分に対応する時間 及び区域の区分ごとの規制基準を定めなければならない。
町村は、前条第一項の規定により指定された地域(以下「指定地域」という。)の全部 又は一部について、当該地域の自然的、社会的条件に特別の事情があるため、前項の規定により定められた規制基準によつては当該地域の住民の生活環境を保全することが十分でないと認めるときは、条例で、環境大臣の定める範囲内において、同項の規制基準に代えて適用すべき規制基準を定めることができる。
前条第三項の規定は、第一項の規定による規制基準の設定 並びにその変更 及び廃止について準用する。
指定地域内に特定工場等を設置している者は、当該特定工場等に係る規制基準を遵守しなければならない。
指定地域内において工場 又は事業場(特定施設が設置されていないものに限る。)に特定施設を設置しようとする者は、その特定施設の設置の工事の開始の日の三十日前までに、環境省令で定めるところにより、次の事項を市町村長に届け出なければならない。
氏名 又は名称 及び住所 並びに法人にあつては、その代表者の氏名
前項の規定による届出には、特定施設の配置図 その他環境省令で定める書類を添付しなければならない。
一の地域が指定地域となつた際 現にその地域内において工場 若しくは事業場に特定施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。以下この項において同じ。)又は一の施設が特定施設となつた際 現に指定地域内において工場 若しくは事業場(その施設以外の特定施設が設置されていないものに限る。)にその施設を設置している者は、当該地域が指定地域となつた日 又は当該施設が特定施設となつた日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。
前条第二項の規定は、前項の規定による届出について準用する。
第六条第一項 又は前条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第六条第一項第三号から第五号に掲げる事項の変更をしようとするときは、当該事項の変更に係る工事の開始の日の三十日前までに、環境省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
ただし、その変更が環境省令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。
第六条第一項 又は前条第一項の規定による届出をした者は、当該特定工場等に設置している特定施設以外の施設が特定施設となつたときは、当該特定施設以外の施設が特定施設となつた日から三十日以内に、環境省令で定めるところにより、第六条第一項各号に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。
第六条第二項の規定は、前二項の規定による届出について準用する。
市町村長は、第六条第一項 又は前条第一項の規定による届出があつた場合において、その届出に係る特定工場等において発生する振動が規制基準に適合しないことによりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、その届出を受理した日から三十日以内に限り、その届出をした者に対し、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法 又は特定施設の使用の方法 若しくは配置に関する計画を変更すべきことを勧告することができる。
第六条第一項 又は第七条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第六条第一項第一号 若しくは第二号に掲げる事項に変更があつたとき、又はその届出に係る特定工場等に設置する特定施設のすべての使用を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を市町村長に届け出なければならない。
第六条第一項 又は第七条第一項の規定による届出をした者からその届出に係る特定工場等に設置する特定施設のすべてを譲り受け、又は借り受けた者は、当該特定施設に係る当該届出をした者の地位を承継する。
第六条第一項 又は第七条第一項の規定による届出をした者について相続、合併 又は分割(その届出に係る特定工場等に設置する特定施設のすべてを承継させるものに限る。)があつたときは、相続人、合併後存続する法人 若しくは合併により設立した法人 又は分割により当該特定施設のすべてを承継した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。
前二項の規定により第六条第一項 又は第七条第一項の規定による届出をした者の地位を承継した者は、その承継があつた日から三十日以内に、その旨を市町村長に届け出なければならない。
市町村長は、指定地域内に設置されている特定工場等において発生する振動が規制基準に適合しないことによりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれていると認めるときは、当該特定工場等を設置している者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法を改善し、又は特定施設の使用の方法 若しくは配置を変更すべきことを勧告することができる。
市町村長は、第九条の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定施設を設置しているとき、又は前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、期限を定めて、その勧告に従うべきことを命ずることができる。
前二項の規定は、第七条第一項の規定による届出をした者の当該届出に係る特定工場等については、同項に規定する指定地域となつた日 又は同項に規定する特定施設となつた日から三年間(当該施設が政令で定める施設である場合にあつては、四年間)は、適用しない。
ただし、当該地域が指定地域となつた際 又は当該施設が特定施設となつた際 その者に適用されている地方公共団体の条例の規定で第一項の規定に相当するものがあるとき、及びその者が第八条第一項の規定による届出をした場合において当該届出が受理された日から三十日を経過したときは、この限りでない。
市町村長は、小規模の事業者に対する第九条 又は前条第一項 若しくは第二項の規定の適用に当たつては、その者の事業活動の遂行に著しい支障を生ずることのないよう当該勧告 又は命令の内容について特に配慮しなければならない。
第三章 特定建設作業に関する規制
指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、当該特定建設作業の開始の日の七日前までに、環境省令で定めるところにより、次の事項を市町村長に届け出なければならない。
ただし、災害 その他非常の事態の発生により特定建設作業を緊急に行う必要がある場合は、この限りでない。
氏名 又は名称 及び住所 並びに法人にあつては、その代表者の氏名
前項ただし書の場合において、当該建設工事を施工する者は、速やかに、同項各号に掲げる事項を市町村長に届け出なければならない。
前二項の規定による届出には、当該特定建設作業の場所の付近の見取図 その他環境省令で定める書類を添付しなければならない。
市町村長は、指定地域内において行われる特定建設作業に伴つて発生する振動が環境省令で定める基準に適合しないことによりその特定建設作業の場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、当該建設工事を施工する者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法を改善し、又は特定建設作業の作業時間を変更すべきことを勧告することができる。
市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定建設作業を行つているときは、期限を定めて、その勧告に従うべきことを命ずることができる。
市町村長は、当該施設 又は工作物に係る建設工事の工期が遅延することによつて公共の福祉に著しい障害を及ぼすおそれのあるときは、当該施設 又は工作物に係る建設工事として行われる特定建設作業について前二項の規定による勧告 又は命令を行うに当たつては、生活環境の保全に十分留意しつつ、当該建設工事の実施に著しい支障を生じないよう配慮しなければならない。
第四章 道路交通振動に係る要請
市町村長は、第十九条の測定を行つた場合において、指定地域内における道路交通振動が環境省令で定める限度を超えていることにより道路の周辺の生活環境が著しく損なわれていると認めるときは、道路管理者に対し当該道路の部分につき道路交通振動の防止のための舗装、維持 又は修繕の措置を執るべきことを要請し、又は都道府県公安委員会に対し道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)の規定による措置を執るべきことを要請するものとする。
環境大臣は、前項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、国家公安委員会に協議しなければならない。
道路管理者は、第一項の要請があつた場合において、道路交通振動の防止のため必要があると認めるときは、当該道路の部分の舗装、維持 又は修繕の措置を執るものとする。
第五章 雑則
市町村長は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、特定施設を設置する者 若しくは特定建設作業を伴う建設工事を施工する者に対し、特定施設の状況、特定建設作業の状況 その他必要な事項の報告を求め、又はその職員に、特定施設を設置する者の特定工場等 若しくは特定建設作業を伴う建設工事を施工する者の建設工事の場所に立ち入り、特定施設 その他の物件を検査させることができる。
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第十八号に規定する電気工作物、ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第二条第十三項に規定するガス工作物 又は鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第十三条第一項の経済産業省令で定める施設(同法第二条第二項ただし書に規定する附属施設に設置されるものを除く。)である特定施設を設置する者については、第六条から第十一条までの規定 並びに第十二条第二項 及び第十三条の規定(第九条に係る部分に限る。)を適用せず、電気事業法、ガス事業法 又は鉱山保安法の相当規定の定めるところによる。
前項に規定する法律に基づく権限を有する国の行政機関の長(以下この条において単に「行政機関の長」という。)は、第六条、第八条第一項、第十条 又は第十一条第三項の規定に相当する電気事業法、ガス事業法 又は鉱山保安法の規定による前項に規定する特定施設に係る許可 若しくは認可の申請 又は届出があつたときは、その許可 若しくは認可の申請 又は届出に係る事項のうちこれらの規定による届出事項に該当する事項を当該特定施設の所在地を管轄する市町村長に通知するものとする。
市町村長は、第一項に規定する特定施設を設置する特定工場等において発生する振動によりその特定工場等の周辺の生活環境が損なわれると認めるときは、行政機関の長に対し、当該特定施設について、第九条 又は第十二条第二項(第九条に係る部分に限る。)の規定に相当する電気事業法、ガス事業法 又は鉱山保安法の規定による措置を執るべきことを要請することができる。
行政機関の長は、前項の規定による要請があつた場合において講じた措置を当該市町村長に通知するものとする。
市町村長は、第一項に規定する特定施設について、第十二条第一項の規定による勧告 又は同条第二項の規定による命令(同条第一項の規定による勧告に係るものに限る。)をしようとするときは、あらかじめ、行政機関の長に協議しなければならない。
市町村長は、指定地域について、振動の大きさを測定するものとする。
都道府県知事 又は市長は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長 又は関係地方公共団体の長に対し、特定施設、特定建設作業 若しくは道路交通振動の状況に関する資料の送付 その他の協力を求め、又は振動の防止に関し意見を述べることができる。
国は、特定工場等において発生する振動 及び特定建設作業に伴つて発生する振動の防止のための施設の設置 又は改善につき必要な資金のあつせん、技術的な助言 その他の援助に努めるものとする。
国は、振動を発生する施設の改良のための研究、振動の生活環境に及ぼす影響の研究 その他振動の防止に関する研究を推進し、その成果の普及に努めるものとする。
この法律の規定は、地方公共団体が、指定地域内に設置される特定工場等において発生する振動に関し、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、この法律とは別の見地から、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
この法律の規定は、地方公共団体が、指定地域内に設置される工場 若しくは事業場であつて特定工場等以外のもの 又は指定地域内において建設工事として行われる作業であつて特定建設作業以外のものについて、その工場 若しくは事業場において発生する振動 又はその作業に伴つて発生する振動に関し、条例で必要な規制を定めることを妨げるものではない。
第六章 罰則
第十二条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。
第六条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者 又は第十五条第二項の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第七条第一項、第八条第一項 若しくは第二項 若しくは第十四条第一項の規定による届出をせず、若しくは虚偽の届出をした者 又は第十七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第十条、第十一条第三項 又は第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の過料に処する。