犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第5章 逮捕

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 08月20日 10時53分


1項

逮捕権は、犯罪構成要件の充足 その他の逮捕の理由、逮捕の必要性、これらに関する疎明資料の有無、収集した証拠の証明力等を充分に検討して、慎重適正に運用しなければならない。

1項

刑訴法第199条第2項の規定による逮捕状(以下「通常逮捕状」という。)の請求(当該請求と同時に同法第201条の2第1項の規定による逮捕状に代わるものの交付の請求をする場合にあつては、当該逮捕状に代わるものの交付の請求を含む。次項において同じ。)は、公安委員会が指定する警部以上の階級にある司法警察員(以下「指定司法警察員」という。)が、責任をもつてこれに当たらなければならない。

2項

指定司法警察員が通常逮捕状の請求をするに当たつては、順を経て警察本部長 又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。


ただし、急速を要し、指揮を受けるいとまのない場合には、請求後、速やかに その旨を報告するものとする。

1項

刑訴法第210条第1項の規定による逮捕状(以下「緊急逮捕状」という。)の請求は、指定司法警察員 又は当該逮捕に当たつた警察官がこれを行うものとする。


ただし、指定司法警察員がいないときは、他の司法警察員たる警察官が請求しても差し支えない。

2項
緊急逮捕した被疑者の身柄の処置については、順を経て警察本部長 又は警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。
3項

被疑者を緊急逮捕した場合は、逮捕の理由となつた犯罪事実がないこと 若しくはその事実が罪とならないことが明らかになり、又は身柄を留置して取り調べる必要がないと認め、被疑者を釈放したときにおいても、緊急逮捕状の請求をしなければならない。

1項

逮捕状を請求するに当つて、当該事件が親告罪に係るものであつて、未だ告訴がないときは、告訴権者に対して告訴するかどうかを確かめなければならない。

1項

通常逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること 及び逮捕の必要があることを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料を添えて行わなければならない。


ただし刑訴法第199条第1項ただし書に規定する罰金、拘留 又は科料に当たる罪について通常逮捕状を請求するときは、更に、被疑者が定まつた住居を有しないこと 又は正当な理由がなく任意出頭の求めに応じないことを疎明する資料を添えて行わなければならない。

2項

緊急逮捕状を請求するときは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があつたこと、逮捕の必要があつたこと 及び急速を要し逮捕状を求めることができない理由があつたことを疎明する逮捕手続書、被害届 その他の資料を添えて行わなければならない。

1項

逮捕状に代わるものの交付の請求をするときは、当該請求に係る者が刑訴法第201条の2第1項第1号 又は第2号に掲げる者のいずれかに該当することを疎明する被害届、参考人供述調書、捜査報告書等の資料をも添えて行わなければならない。

1項

逮捕状の請求(当該請求と同時に逮捕状に代わるものの交付の請求をする場合にあつては、当該逮捕状に代わるものの交付の請求を含む。第125条において同じ。)に当たつては、なるべく その事件の捜査に当たつた警察官が裁判官のもとに出頭しなければならない。

2項

裁判官から特に当該逮捕状を請求した者の出頭を求められたときは、当該請求者が自ら出頭して、陳述し、又は書類 その他の物の提示に当たらなければならない。

1項

逮捕状の発付を受けた後、逮捕前において、引致場所 その他の記載の変更を必要とする理由が生じたときは、当該逮捕状を請求した警察官 又はこれに代わるべき警察官が、当該逮捕状を発付した裁判官 又はその者の所属する裁判所の他の裁判官に対し、書面(引致場所の変更を必要とするときは、引致場所変更請求書)により逮捕状(逮捕状の発付と同時に逮捕状に代わるものの交付がある場合にあつては、逮捕状 及び当該逮捕状に代わるもの)の記載の変更を請求するものとする。


ただし、やむをえない事情があるときは、他の裁判所の裁判官に対して請求することができる。

1項

逮捕状の請求をしたときは、令状等請求簿(別記様式第13号)により請求の手続、発付後の状況等を明らかにしておかなければならない。

1項

逮捕を行うに当たつては、感情にとらわれることなく、沈着冷静を保持するとともに、必要な限度を超えて実力を行使することがないように注意しなければならない。

2項

逮捕を行うに当たつては、あらかじめ、その時期、方法等を考慮しなければならない。

3項

警察本部長 又は警察署長は、逮捕を行うため必要な態勢を確立しなければならない。

4項

被疑者を逮捕したときは、直ちにその身体について凶器を所持しているかどうかを調べなければならない。

5項

多数の被疑者を同時に逮捕するに当たつては、個々の被疑者について、人相、体格 その他の特徴、その犯罪事実 及び逮捕時の状況 並びに当該被疑者と証拠との関連を明確にし、逮捕、押収 その他の処分に関する書類の作成、取調べ 及び立証に支障を生じないようにしなければならない。

6項

刑訴法第201条の2第3項の規定により逮捕状に代わるものを被疑者に示すときは、当該逮捕状に代わるものの交付の請求に係る個人特定事項(同条第1項に規定する個人特定事項をいう。第189条第3項において同じ。)が被疑者に知られることがないように注意しなければならない。

1項

逮捕した被疑者が逃亡し、自殺し、又は暴行する等のおそれがある場合において必要があるときは、確実に手錠を使用しなければならない。

2項

前項の規定により、手錠を使用する場合においても、苛酷にわたらないように注意するとともに、衆目に触れないように努めなければならない。

1項

逮捕した被疑者を連行し、又は護送するに当たつては、被疑者が逃亡し、罪証を隠滅し、自殺し、又はこれを奪取されることのないように注意しなければならない。

2項

前項の場合において、必要があるときは、他の警察に対し、被疑者の仮の留置を依頼することができる。

1項

警察官は、刑訴法第214条の規定により現行犯人を引き渡す者があるときは、直ちにこれを受け取り、逮捕者の氏名、住所 および逮捕の事由を聞き取らなければならない。

2項

前項の犯人を受け取つた警察官が司法巡査であるときは、すみやかにこれを司法警察員に引致しなければならない。

1項

司法警察員は、被疑者を逮捕し、又は逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちにその者について次に掲げる処置をとつた後、被疑者の留置の要否 又は釈放について、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けなければならない。

(1) 号
犯罪事実の要旨を告げること。
(2) 号
弁護人を選任できる旨を告げること。
(3) 号

前号に掲げる処置をとるに当たつて、弁護士、弁護士法人(弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。第132条において同じ。)又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及びその申出先を教示すること。

(4) 号
弁解の機会を与え、その結果を弁解録取書に記載すること。
2項

司法警察員は、前項第2号に掲げる処置をとるに当たつては、被疑者に対し、次に掲げる事項を教示しなければならない。

(1) 号

引き続き勾留を請求された場合において、貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは、裁判官に対して弁護人の選任を請求することができること。

(2) 号

裁判官に対して弁護人の選任を請求する場合は、刑訴法第36条の2に規定する資力申告書を提出しなければならないこと。

(3) 号

被疑者の資力が50万円以上であるときは、あらかじめ第1号の勾留の請求を受けた裁判官の所属する裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内に在る弁護士会に弁護人の選任の申出をしていなければならないこと。

3項

被疑者が留置されている場合において、留置の必要がなくなつたと認められるときは、司法警察員は、警察本部長 又は警察署長の指揮を受け、直ちに被疑者の釈放に係る措置をとらなければならない。

4項

被疑者の留置の要否を判断するに当たつては、その事案の軽重 及び態様 並びに逃亡、罪証隠滅、通謀等捜査上の支障の有無 並びに被疑者の年齢、境遇、健康 その他諸般の状況を考慮しなければならない。

1項

逮捕した被疑者については、引致後速やかに、指掌紋を採取し、写真 その他鑑識資料を確実に作成するとともに、指掌紋照会 並びに余罪 及び指名手配の有無を照会しなければならない。

2項

取調べの過程において、新たな事実を発見した場合においても、余罪 及び指名手配の有無を照会しなければならない。

1項

逮捕された被疑者が弁護人選任の申出をした場合において、当該弁護士、弁護士法人 若しくは弁護士会 又は父兄 その他の者にその旨を通知したときは、弁護人選任通知簿(別記様式第14号)に記載して、その手続を明らかにしておかなければならない。

1項

弁護人の選任については、弁護人と連署した選任届を当該被疑者 または刑訴法第30条第2項の規定により独立して弁護人を選任することができる者から差し出させるものとする。

2項

被疑者の弁護人の選任届は、各被疑者について通じて3人をこえてこれを受理してはならない。


ただし3人をこえて弁護人を選任することについて管轄地方裁判所 または簡易裁判所の許可がある場合は、この限りでない。

3項

弁護人の選任に当つては、警察官から特定の弁護人を示唆し、または推薦してはならない。

1項

被疑者の弁解を録取するに当つて、その供述が犯罪事実の核心に触れる等弁解の範囲外にわたると認められるときは、弁解録取書に記載することなく、被疑者供述調書を作成しなければならない。

1項

被疑者の身柄とともに事件を送致する場合において、遠隔の地で被疑者を逮捕したため、または逮捕した被疑者が病気、でい酔等により保護を必要とするため その他やむを得ない事情により、刑訴法第203条第1項に規定する時間の制限に従うことができなかつたときは、遅延事由報告書を作成して、これを送致書に添付しなければならない。

1項

被疑者を逮捕したときは、逮捕の年月日時、場所、逮捕時の状況、証拠資料の有無、引致の年月日時等逮捕に関する詳細を記載した逮捕手続書を作成しなければならない。

2項

前項の場合において、被疑者が現行犯人であるときは、現に罪を行い、もしくは現に罪を行い終つたと認められた状況、または刑訴法第212条第2項各号の一に当る者が罪を行い終つてから間がないと明らかに認められた状況を逮捕手続書に具体的に記載しなければならない。

1項

留置被疑者を同行させて警察施設の外において行われる実況見分 その他の捜査は、あらかじめ捜査主任官が留置主任官と協議して作成し、警察本部長 又は警察署長の承認を受けた計画に基づいて行わなければならない。

2項

前項の計画は、同行する被疑者、日時、場所 及び行程、当該捜査に従事する者 及びその任務分担、被疑者の逃亡 その他の事故を防止するために留意すべき事項 その他捜査を適正に遂行し、及び事故を防止するため必要な事項について定めるものとする。

1項

捜査員は、自らが犯罪の捜査に従事している場合における当該犯罪について留置されている被留置者に係る留置業務に従事してはならない。