この法律は、日本国憲法 及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。
第一章 総則
この法律において「こども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。
この法律において「こども施策」とは、次に掲げる施策 その他のこどもに関する施策 及びこれと一体的に講ずべき施策をいう。
こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長 及び発達 並びにその自立が図られること その他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、こども施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、こども施策に関し、国 及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内におけるこどもの状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
政府は、毎年、国会に、我が国におけるこどもをめぐる状況 及び政府が講じたこども施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
前項の報告は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
少子化社会対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)第九条第一項に規定する少子化の状況 及び少子化に対処するために講じた施策の概況
子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)第六条第一項に規定する我が国における子ども・若者の状況 及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況
子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第七条第一項に規定する子どもの貧困の状況 及び子どもの貧困対策の実施の状況
第二章 基本的施策
政府は、こども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「こども大綱」という。)を定めなければならない。
こども大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。
前二号に掲げるもののほか、こども施策を推進するために必要な事項
少子化社会対策基本法第七条第一項に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策
子ども・若者育成支援推進法第八条第二項各号に掲げる事項
子どもの貧困対策の推進に関する法律第八条第二項各号に掲げる事項
こども大綱に定めるこども施策については、原則として、当該こども施策の具体的な目標 及びその達成の期間を定めるものとする。
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、こども大綱を公表しなければならない。
前二項の規定は、こども大綱の変更について準用する。
都道府県は、こども大綱を勘案して、当該都道府県におけるこども施策についての計画(以下この条において「都道府県こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
市町村は、こども大綱(都道府県こども計画が定められているときは、こども大綱 及び都道府県こども計画)を勘案して、当該市町村におけるこども施策についての計画(以下この条において「市町村こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
都道府県 又は市町村は、都道府県こども計画 又は市町村こども計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
都道府県こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第一項に規定する都道府県子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第一項に規定する都道府県計画 その他法令の規定により都道府県が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
市町村こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第二項に規定する市町村子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第二項に規定する市町村計画 その他法令の規定により市町村が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
国は、こども施策に係る支援が、支援を必要とする事由、支援を行う関係機関、支援の対象となる者の年齢 又は居住する地域等にかかわらず、切れ目なく行われるようにするため、当該支援を総合的かつ一体的に行う体制の整備 その他の必要な措置を講ずるものとする。
都道府県 及び市町村は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、前項に規定する業務を行う関係機関 及び地域においてこどもに関する支援を行う民間団体相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。
都道府県 又は市町村は、前項の有機的な連携の確保に資するため、こども施策に係る事務の実施に係る協議 及び連絡調整を行うための協議会を組織することができる。
前項の協議会は、第二項の関係機関 及び民間団体 その他の都道府県 又は市町村が必要と認める者をもって構成する。
国は、前条第一項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用 その他の必要な措置を講ずるものとする。
都道府県 及び市町村は、前条第二項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関 及び民間団体が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用 その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
政府は、こども大綱の定めるところにより、こども施策の幅広い展開 その他のこども施策の一層の充実を図るとともに、その実施に必要な財政上の措置 その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
第三章 こども政策推進会議
こども家庭庁に、特別の機関として、こども政策推進会議(以下「会議」という。)を置く。
前号に掲げるもののほか、こども施策に関する重要事項について審議し、及びこども施策の実施を推進すること。
前三号に掲げるもののほか、他の法令の規定により会議に属させられた事務
会議は、前項の規定によりこども大綱の案を作成するに当たり、こども 及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体 その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって、同項の規定により命を受けて同法第十一条の三に規定する事務を掌理するもの
会長 及び前号に掲げる者以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
会議は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
前三条に定めるもののほか、会議の組織 及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。