わが国におけるユネスコ活動は、国際連合教育科学文化機関憲章(昭和二十六年条約第四号。以下「ユネスコ憲章」という。)の定めるところに従い、国際連合の精神に則つて、教育、科学 及び文化を通じ、わが国民の間に広く国際的理解を深めるとともに、わが国民と世界諸国民との間に理解と協力の関係を進め、もつて世界の平和と人類の福祉に貢献することを目標とする。
ユネスコ活動に関する法律
前文
日本国民は、国際連合教育科学文化機関が世界平和の確立と人類の福祉の増進に貢献しつつあることの意義を高く評価し、この機関に加盟することによつて得た日本の国際的地位にかんがみ、政府 及び国民の活動によりその事業に積極的に協力することを決意し、教育、科学 及び文化を通じて、国際連合憲章、国際連合教育科学文化機関憲章 及び世界人権宣言の精神の実現を図るため、ここにこの法律を制定する。
第一章 ユネスコ活動
この法律において「ユネスコ活動」とは、国際連合教育科学文化機関(以下「ユネスコ」という。)の目的を実現するために行う活動をいう。
わが国におけるユネスコ活動は、ユネスコ、国際連合 及び その専門機関、ユネスコ活動に関係のある国際団体 並びに諸国の政府、ユネスコ国内委員会 及びユネスコ活動に関係のある団体等と協力しつつ展開されなければならない。
国 又は地方公共団体は、第一条の目標を達成するため、 自らユネスコ活動を行うとともに、必要があると認めるときは、民間のユネスコ活動に対し助言を与え、 及びこれに協力するものとする。
国 又は地方公共団体は、民間のユネスコ活動振興上 必要があると認める場合には、その助成のため、 政令で定めるところにより、その事業に対し援助を与えることができる。
国 又は地方公共団体の機関が前二項の事項を実施するに当つては、第五条の日本ユネスコ国内委員会と 緊密に連絡して行わなければならない。
第二章 日本ユネスコ国内委員会
ユネスコ憲章第七条の規定の趣旨に従い、我が国におけるユネスコ活動に関する助言、企画、連絡 及び調査のための機関として、文部科学省に、日本ユネスコ国内委員会(以下「国内委員会」という。)を置く。
国内委員会は、関係各大臣の諮問に応じて次に掲げる事項を調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項を関係各大臣に建議する。
ユネスコ総会における政府代表 及びユネスコに対する常駐の政府代表の選考に関する事項
ユネスコ総会に対する議案の提出 その他ユネスコ総会における議事に関する事項
ユネスコ総会以外のユネスコに関係のある国際会議への参加に関する事項
ユネスコに関係のある条約 その他の国際約束の締結に関する事項
国の行うユネスコ活動の実施計画に関する事項
ユネスコの目的 及びユネスコ活動に関する国民の理解の増進に関する事項
民間のユネスコ活動に対して行うべき助言、協力 及び援助に関する事項
ユネスコ活動に関する法令の立案 及び予算の編成についての基本方針に関する事項 その他ユネスコ活動に関し必要な事項
前項の規定による国内委員会に対する関係各大臣の諮問 及び国内委員会の関係各大臣に対する建議は、関係各大臣が文部科学大臣以外の者であるときは、文部科学大臣を通じて行うものとする。
国内委員会は、わが国におけるユネスコ活動の基本方針を策定するものとする。
国内委員会は、ユネスコ活動に関し、国内のユネスコ活動に関係のある機関 及び団体等 並びに第三条の機関 及び団体等と必要な連絡を保ち、及び情報の交換を行う。
国内委員会は、ユネスコ活動に関する調査 並びに資料の収集 及び作成を行う。
国内委員会は、集会の開催、出版物の頒布 その他ユネスコの目的 及びユネスコ活動に関する普及のために必要な事項を行うことができる。
国内委員会は、ユネスコ活動に関し、地方公共団体、民間団体 又は個人に対して必要な助言を与え、及びこれに協力することができる。
国内委員会は、その対外事務を処理するに当り、その事務が国の対外施策に関連する場合には、外務大臣と緊密に連絡して行うものとする。
外務大臣は、国内委員会の対外事務の処理について、国内委員会に対し必要な便宜を与え、 これに協力するものとする。
国内委員会は、六十人以内の委員で組織する。
委員は、次の各号に掲げる者につき、当該各号に掲げる員数以内を文部科学大臣が任命する。
この場合において、文部科学大臣は、第一号から 第四号まで 及び第七号に掲げる者については、第十三条の選考小委員会の選考を経て国内委員会から 推薦されたものにつき、内閣の承認を経て、任命するものとする。
教育活動、科学活動 及び文化活動の各領域を代表する者
十八人
教育、科学 及び文化の普及に関する諸領域を代表する者
十二人
地域的なユネスコ活動の領域を代表する者
十二人
学識経験者
七人
衆議院議員のうちから衆議院の指名した者
四人
参議院議員のうちから参議院の指名した者
三人
政府の職員
四人
委員の選考の基準について必要な事項は、政令で定める。
委員(衆議院議員、参議院議員 及び政府職員たる委員を除く。以下本条第二項 及び第十一条第一項において同じ。)の任期は、三年とする。
但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
委員は、再任されることができる。
文部科学大臣は、委員が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その意に反してこれを解任することができる。
禁錮以上の刑に処せられた場合
心身の故障のため職務の執行ができず、又は職務上の義務違反 その他委員たるに適しない行為があると文部科学大臣が認めた場合
前項第三号の場合における解任については、文部科学大臣は、あらかじめ内閣の承認を経なければならない。
国内委員会に会長一人 及び副会長二人を置く。
会長 及び副会長は、委員の互選に基づき、文部科学大臣が任命する。
会長は、会務を総理し、国内委員会を代表する。
副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、会長があらかじめ指名したいずれかの一人が、その職務を代理し、又は その職務を行う。
国内委員会に、委員で組織する小委員会として運営小委員会、選考小委員会 及び専門小委員会を置く。
運営小委員会は、会務の運営に関する事項を審議する。
選考小委員会は、国内委員会が文部科学大臣に対して委員の候補者として推薦すべき者の選考に関する事項を調査審議する。
専門小委員会は、各専門の事項ごとに置き、それぞれ専門の事項を調査審議する。
特別の事項を調査審議するため必要があるときは、専門小委員会に、委員以外の者を調査委員として置くことができる。
前四項に定めるもののほか、小委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
委員 及び調査委員は、別に定める手当 及び旅費を受ける。
国内委員会の会議は、年二回会長が招集する。
但し、会長は、必要があると認めるときは、臨時にこれを招集することができる。
会議は、委員の過半数が出席しなければ、議事を開き、議決をすることができない。
議事は、出席した委員の過半数をもつて決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
前項の場合においては、会長は、委員として議決に加わることができない。
国内委員会は、第十九条の運営規則で定めるところにより、運営小委員会の議決 又は運営小委員会と 他の小委員会の合同の議決をもつて国内委員会の議決とすることができる。
国内委員会の事務は、文部科学省の内部部局として置かれる官房 若しくは局 又は文部科学省に置かれる国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第二十条第一項に規定する職のうち政令で定めるもの(次項において「担当部局等」という。)において処理する。
担当部局等の長(担当部局等が国家行政組織法第二十条第一項に規定する職である場合にあつては、当該職を占める者。次項において「担当局長等」という。)は、会長の一般的監督の下に、前項の事務を処理するものとする。
担当局長等は、第一項の事務を処理する場合において、ユネスコ活動の遂行のため国際慣行上必要があるときは、日本ユネスコ国内委員会事務総長という 名称を用いることができる。
会長は、国内委員会の議決を経て、国内委員会の会議 及び小委員会の運営に関し、必要な運営規則を定めることができる。