最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。)は、時間によつて定めるものとする。
最低賃金法
第二章 最低賃金
第一節 総則
使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。
この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。
次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。
一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
通常の労働時間 又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの
当該最低賃金において算入しないことを定める賃金
第一項 及び第二項の規定は、労働者がその都合により所定労働時間 若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合 又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間 若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間 又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。
賃金が通貨以外のもので支払われる場合 又は使用者が労働者に提供した食事 その他のものの代金を賃金から控除する場合においては、最低賃金の適用について、これらのものは、適正に評価されなければならない。
労働者が二以上の最低賃金の適用を受ける場合は、これらにおいて定める最低賃金額のうち最高のものにより第四条の規定を適用する。
前項の場合においても、第九条第一項に規定する地域別最低賃金において定める最低賃金額については、第四条第一項 及び第四十条の規定の適用があるものとする。
使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力 その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
精神 又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二十四条第一項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能 及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であつて厚生労働省令で定めるもの
軽易な業務に従事する者 その他の厚生労働省令で定める者
最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。
第二節 地域別最低賃金
賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費 及び賃金 並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、一定の地域ごとに、中央最低賃金審議会 又は地方最低賃金審議会(以下「最低賃金審議会」という。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、地域別最低賃金の決定をしなければならない。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前条第一項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その意見の要旨を公示しなければならない。
前条第一項の規定による最低賃金審議会の意見に係る地域の労働者 又はこれを使用する使用者は、前項の規定による公示があつた日から十五日以内に、厚生労働大臣 又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつたときは、その申出について、最低賃金審議会に意見を求めなければならない。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、第一項の規定による公示の日から十五日を経過するまでは、前条第一項の決定をすることができない。
第二項の規定による申出があつた場合において、前項の規定による最低賃金審議会の意見が提出されるまでも、同様とする。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金について、地域における労働者の生計費 及び賃金 並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正 又は廃止の決定をしなければならない。
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第四十四条第一項に規定する派遣中の労働者(第十八条において「派遣中の労働者」という。)については、その派遣先の事業(同項に規定する派遣先の事業をいう。第十八条において同じ。)の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、地域別最低賃金に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。
第十条第一項の規定による地域別最低賃金の決定 及び第十二条の規定による地域別最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、同条の規定による地域別最低賃金の廃止の決定は、同項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる。
第三節 特定最低賃金
労働者 又は使用者の全部 又は一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣 又は都道府県労働局長に対し、当該労働者 若しくは使用者に適用される一定の事業 若しくは職業に係る最低賃金(以下「特定最低賃金」という。)の決定 又は当該労働者若しくは使用者に現に適用されている特定最低賃金の改正 若しくは廃止の決定をするよう申し出ることができる。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつた場合において必要があると認めるときは、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該申出に係る特定最低賃金の決定 又は当該申出に係る特定最低賃金の改正 若しくは廃止の決定をすることができる。
第十条第二項 及び第十一条の規定は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合について準用する。
この場合において、
同条第二項中
「地域」とあるのは、
「事業 若しくは職業」と
読み替えるものとする。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、第二項の決定をする場合において、前項において準用する第十一条第二項の規定による申出があつたときは、前項において準用する同条第三項の規定による最低賃金審議会の意見に基づき、当該特定最低賃金において、一定の範囲の事業について、その適用を一定の期間を限つて猶予し、又は最低賃金額について別段の定めをすることができる。
第十条第二項の規定は、前項の規定による最低賃金審議会の意見の提出があつた場合について準用する。
前条第二項の規定により決定され、又は改正される特定最低賃金において定める最低賃金額は、当該特定最低賃金の適用を受ける使用者の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額を上回るものでなければならない。
第十五条第一項 及び第二項の規定にかかわらず、厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、同項の規定により決定され、又は改正された特定最低賃金が著しく不適当となつたと認めるときは、その決定の例により、その廃止の決定をすることができる。
派遣中の労働者については、その派遣先の事業と同種の事業 又はその派遣先の事業の事業場で使用される同種の労働者の職業について特定最低賃金が適用されている場合にあつては、当該特定最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する。
厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、特定最低賃金に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。
第十五条第二項の規定による特定最低賃金の決定 及び特定最低賃金の改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、同条第二項 及び第十七条の規定による特定最低賃金の廃止の決定は、前項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる。