消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律

# 平成二十五年法律第九十六号 #
略称 : 集団訴訟法  消費者裁判手続特例法  消費者訴訟法 

第二章 被害回復裁判手続

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 03月25日 08時11分


第一節 共通義務確認訴訟に係る民事訴訟手続の特例

1項

特定適格消費者団体は、事業者が消費者に対して負う金銭の支払義務であって、消費者契約に関する次に掲げる請求(これらに附帯する利息、損害賠償、違約金 又は費用の請求を含む。)に係るものについて、共通義務確認の訴えを提起することができる。

一 号
契約上の債務の履行の請求
二 号
不当利得に係る請求
三 号
契約上の債務の不履行による損害賠償の請求
四 号

不法行為に基づく損害賠償の請求(民法明治二十九年法律第八十九号)の規定によるものに限る

2項

次に掲げる損害については、前項第三号 及び第四号に掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えを提起することができない

一 号

契約上の債務の不履行 又は不法行為により、物品、権利 その他の消費者契約の目的となるもの(役務を除く次号において同じ。以外の財産が滅失し、又は損傷したことによる損害

二 号

消費者契約の目的となるものの提供があるとすればその処分 又は使用により得るはずであった利益を喪失したことによる損害

三 号

契約上の債務の不履行 又は不法行為により、消費者契約による製造、加工、修理、運搬 又は保管に係る物品 その他の消費者契約の目的となる役務の対象となったもの以外の財産が滅失し、又は損傷したことによる損害

四 号

消費者契約の目的となる役務の提供があるとすれば当該役務を利用すること 又は当該役務の対象となったものを処分し、若しくは使用することにより得るはずであった利益を喪失したことによる損害

五 号
人の生命 又は身体を害されたことによる損害
六 号
精神上の苦痛を受けたことによる損害
3項

次の各号に掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えについては、当該各号に定める者を被告とする。

一 号

第一項第一号から第三号までに掲げる請求

消費者契約の相手方である事業者

二 号

第一項第四号に掲げる請求

消費者契約の相手方である事業者 若しくはその債務の履行をする事業者 又は消費者契約の締結について勧誘をし、当該勧誘をさせ、若しくは当該勧誘を助長する事業者

4項

裁判所は、共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決をしたとしても、事案の性質、当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張 及び立証の内容 その他の事情を考慮して、当該簡易確定手続において対象債権の存否 及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは、共通義務確認の訴えの全部 又は一部を却下することができる。

1項

共通義務確認の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。

1項

共通義務確認の訴えの訴状には、対象債権 及び対象消費者の範囲を記載して、請求の趣旨 及び原因を特定しなければならない。

1項

共通義務確認訴訟については、民事訴訟法平成八年法律第百九号第五条第五号に係る部分を除く)の規定は、適用しない

2項

次の各号に掲げる請求に係る金銭の支払義務についての共通義務確認の訴えは、当該各号に定める地を管轄する地方裁判所にも提起することができる。

一 号

第三条第一項第一号から第三号までに掲げる請求

義務履行地

二 号

第三条第一項第四号に掲げる請求

不法行為があった地

3項

対象消費者の数が五百人以上であると見込まれるときは、民事訴訟法第四条第一項 若しくは第五条第五号 又は前項の規定による管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、共通義務確認の訴えを提起することができる。

4項

対象消費者の数が千人以上であると見込まれるときは、東京地方裁判所 又は大阪地方裁判所にも、共通義務確認の訴えを提起することができる。

5項

民事訴訟法第四条第一項第五条第五号第十一条第一項 若しくは第十二条 又は前三項の規定により二以上の地方裁判所が管轄権を有するときは、共通義務確認の訴えは、先に訴えの提起があった地方裁判所が管轄する。


ただし、その地方裁判所は、著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該共通義務確認の訴えに係る訴訟の全部 又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

6項

裁判所は、共通義務確認訴訟がその管轄に属する場合においても、他の裁判所に事実上 及び法律上同種の原因に基づく請求を目的とする共通義務確認訴訟が係属している場合において、当事者の住所 又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点 又は証拠の共通性 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該共通義務確認訴訟の全部 又は一部について、当該他の裁判所に移送することができる。

1項

請求の内容 及び相手方が同一である共通義務確認訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論 及び裁判は、併合してしなければならない。

2項

前項に規定する場合には、当事者は、その旨を裁判所に申し出なければならない。

1項

消費者は、民事訴訟法第四十二条の規定にかかわらず、共通義務確認訴訟の結果について利害関係を有する場合であっても、特定適格消費者団体を補助するため、その共通義務確認訴訟に参加することができない

1項

共通義務確認訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項の規定にかかわらず、当該共通義務確認訴訟の当事者以外の特定適格消費者団体 及び当該共通義務確認訴訟に係る対象消費者の範囲に属する第三十条第二項第一号に規定する届出消費者に対してもその効力を有する。

1項

特定適格消費者団体は、共通義務確認訴訟において、当該共通義務確認訴訟の目的である第二条第四号に規定する義務の存否について、和解をすることができる。

1項

共通義務確認の訴えが提起された場合において、原告 及び被告が共謀して共通義務確認の訴えに係る対象消費者の権利を害する目的をもって判決をさせたときは、他の特定適格消費者団体は、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。

第二節 対象債権の確定手続

第一款 簡易確定手続

第一目 通則

1項

簡易確定手続は、共通義務確認訴訟における請求を認容する判決が確定した時 又は請求の認諾(第二条第四号に規定する義務が存することを認める旨の和解を含む。以下この款において同じ。)によって共通義務確認訴訟が終了した時に当事者であった特定適格消費者団体(第八十七条第二項の規定による指定があった場合には、その指定を受けた特定適格消費者団体)の申立てにより、当該判決が確定した時 又は請求の認諾によって当該共通義務確認訴訟が終了した時に当事者であった事業者を相手方として、共通義務確認訴訟の第一審の終局判決をした地方裁判所(第一審において請求の認諾によって共通義務確認訴訟が終了したときは、当該共通義務確認訴訟が係属していた地方裁判所)が行う。

1項

簡易確定手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

2項

前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。

第二目 簡易確定手続の開始

1項

第十二条に規定する特定適格消費者団体は、正当な理由がある場合を除き、簡易確定手続開始の申立てをしなければならない。

1項

簡易確定手続開始の申立ては、共通義務確認訴訟における請求を認容する判決が確定した日 又は請求の認諾によって共通義務確認訴訟が終了した日(第八十七条第二項の規定による指定があった場合には、その指定を受けた日)から一月の不変期間内にしなければならない。

2項

前条の規定により簡易確定手続開始の申立てをしなければならない特定適格消費者団体がその責めに帰することができない事由により前項の期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後二週間以内に限り、簡易確定手続開始の申立てをすることができる。

1項

簡易確定手続開始の申立ては、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でしなければならない。

1項

簡易確定手続開始の申立てをするときは、申立てをする特定適格消費者団体は、第二十二条第一項の規定による公告 及び同条第二項の規定による通知に要する費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。

1項

簡易確定手続開始の申立ては、裁判所の許可を得なければ、取り下げることできない

2項

民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、前項の規定による申立ての取下げについて準用する。

1項

裁判所は、簡易確定手続開始の申立てがあった場合には、当該申立てが不適法であると認めるとき 又は第十七条に規定する費用の予納がないときを除き、簡易確定手続開始の決定(以下「簡易確定手続開始決定」という。)をする。

2項

簡易確定手続開始の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

簡易確定手続開始決定は、対象債権 及び対象消費者の範囲を記載した決定書を作成してしなければならない。

1項

裁判所は、簡易確定手続開始決定と同時に、当該簡易確定手続開始決定に係る簡易確定手続開始の申立てをした特定適格消費者団体(第八十七条第一項の規定による指定があった場合には、その指定を受けた特定適格消費者団体。以下「簡易確定手続申立団体」という。)が第三十条第二項に規定する債権届出をすべき期間(以下「届出期間」という。)及びその債権届出に対して簡易確定手続の相手方(以下この款において単に「相手方」という。)が認否をすべき期間(以下「認否期間」という。)を定めなければならない。

1項

裁判所は、簡易確定手続開始決定をしたときは、直ちに、官報に掲載して次に掲げる事項を公告しなければならない。

一 号
簡易確定手続開始決定の主文
二 号
対象債権 及び対象消費者の範囲
三 号
簡易確定手続申立団体の名称 及び住所
四 号
届出期間 及び認否期間
2項

裁判所は、簡易確定手続申立団体 及び相手方に対し、前項の規定により公告すべき事項を通知しなければならない。

1項

簡易確定手続開始決定がされた事件については、特定適格消費者団体は、更に簡易確定手続開始の申立てをすることができない

1項

裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、届出期間 又は認否期間の伸長の決定をすることができる。

2項

裁判所は、前項の規定により届出期間 又は認否期間の伸長の決定をしたときは、簡易確定手続申立団体 及び相手方に対し、その旨を通知しなければならない。

3項

裁判所は、第一項の規定により届出期間 又は認否期間の伸長の決定をしたときは、直ちに、官報に掲載してその旨を公告しなければならない。

第三目 簡易確定手続申立団体による通知及び公告等

1項

簡易確定手続開始決定がされたときは、簡易確定手続申立団体は、正当な理由がある場合を除き、届出期間の末日の一月前までに、知れている対象消費者に対し、次に掲げる事項を書面 又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法 その他の情報通信の技術を利用する方法をいう。以下同じ。)であって内閣府令で定めるものにより通知しなければならない。

一 号
被害回復裁判手続の概要 及び事案の内容
二 号

共通義務確認訴訟の確定判決の内容(請求の認諾がされた場合には、その内容

三 号
対象債権 及び対象消費者の範囲
四 号
簡易確定手続申立団体の名称 及び住所
五 号

簡易確定手続申立団体が支払を受ける報酬 又は費用がある場合には、その額 又は算定方法、支払方法 その他必要な事項

六 号

対象消費者が簡易確定手続申立団体に対して第三十一条第一項の授権をする方法 及び期間

七 号
その他内閣府令で定める事項
2項

簡易確定手続申立団体が二以上ある場合において、いずれか一の簡易確定手続申立団体が前項の規定による通知をしたときは、他の簡易確定手続申立団体は、同項の規定にかかわらず同項の規定による通知をすることを要しない。

1項

簡易確定手続開始決定がされたときは、簡易確定手続申立団体は、正当な理由がある場合を除き、届出期間の末日の一月前までに、前条第一項各号に掲げる事項を相当な方法により公告しなければならない。

2項

簡易確定手続申立団体が二以上ある場合において、いずれか一の簡易確定手続申立団体が前項の規定による公告をしたときは、他の簡易確定手続申立団体は、同項の規定にかかわらず同項の規定による公告をすることを要しない。

3項

第一項の規定による公告後、届出期間中に前条第一項第四号に掲げる事項に変更があったときは、当該変更に係る簡易確定手続申立団体は、遅滞なく、その旨を、相当な方法により公告するとともに、裁判所 及び相手方に通知しなければならない。


この場合において、当該通知を受けた裁判所は、直ちに、官報に掲載してその旨を公告しなければならない。

4項

第一項の規定による公告後、届出期間中に前条第一項第五号から第七号までに掲げる事項に変更があったときは、当該変更に係る簡易確定手続申立団体は、遅滞なく、その旨を、相当な方法により公告しなければならない。

1項

相手方は、簡易確定手続申立団体の求めがあるときは、遅滞なく、インターネットの利用、営業所 その他の場所において公衆に見やすいように掲示する方法その他これらに類する方法により、届出期間中、第二十二条第一項各号に掲げる事項(同項第三号 又は第四号に掲げる事項に変更があったときは、変更後の当該各号に掲げる事項)を公表しなければならない。

1項

相手方は、対象消費者の氏名 及び住所 又は連絡先(内閣府令で定めるものに限る次項において同じ。)が記載された文書(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)をもって作成されている場合における当該電磁的記録を含む。以下この条 及び次条において同じ。)を所持する場合において、届出期間中に簡易確定手続申立団体の求めがあるときは、当該文書を当該簡易確定手続申立団体に開示することを拒むことができない


ただし、相手方が開示すべき文書の範囲を特定するために不相当な費用 又は時間を要するときは、この限りでない。

2項

前項に規定する文書の開示は、その写しの交付(電磁的記録については、当該電磁的記録を出力した書面の交付 又は当該電磁的記録に記録された情報の電磁的方法による提供であって内閣府令で定めるもの)により行う。


この場合において、相手方は、個人(対象消費者でないことが明らかである者を除く)の氏名 及び住所 又は連絡先が記載された部分以外の部分を除いて開示することができる。

3項

相手方は、第一項に規定する文書の開示をしないときは、簡易確定手続申立団体に対し、速やかに、その旨 及びその理由を書面により通知しなければならない。

1項

簡易確定手続申立団体は、届出期間中、裁判所に対し、情報開示命令(前条第一項の規定により相手方が簡易確定手続申立団体に開示しなければならない文書について、同条第二項に規定する方法による開示を相手方に命ずる旨の決定をいう。以下この条において同じ。)の申立てをすることができる。

2項

情報開示命令の申立ては、文書の表示を明らかにしてしなければならない。

3項

裁判所は、情報開示命令の申立てを理由があると認めるときは、情報開示命令を発する。

4項

裁判所は、情報開示命令の申立てについて決定をする場合には、相手方を審尋しなければならない。

5項

情報開示命令の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができる。

6項
情報開示命令は、執行力を有しない。
7項

相手方が正当な理由なく情報開示命令に従わないときは、裁判所は、決定で、三十万円以下の過料に処する。

8項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

9項

民事訴訟法第百八十九条の規定は、第七項の規定による過料の裁判について準用する。

第四目 対象債権の確定

1項

簡易確定手続開始決定に係る対象債権については、簡易確定手続申立団体に限り、届け出ることができる。

2項

前項の規定による届出(以下「債権届出」という。)は、届出期間内に、次に掲げる事項を記載した書面(以下この節において「届出書」という。)を簡易確定手続開始決定をした裁判所に提出してしなければならない。

一 号

対象債権について債権届出をする簡易確定手続申立団体、相手方 及び届出消費者(対象債権として裁判所に債権届出があった債権(以下「届出債権」という。)の債権者である消費者をいう。以下同じ。)並びにこれらの法定代理人

二 号

請求の趣旨 及び原因(請求の原因については、共通義務確認訴訟において認められた義務に係る事実上及び法律上の原因を前提とするものに限る

三 号

前二号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項

3項

簡易確定手続申立団体は、債権届出の時に対象消費者が事業者に対して対象債権に基づく訴えを提起するとすれば民事訴訟法第一編第二章第一節の規定により日本の裁判所が管轄権を有しないときは、第一項の規定にかかわらず、当該対象債権については、債権届出をすることができない

4項

簡易確定手続申立団体は、対象消費者が提起したその有する対象債権に基づく訴訟が裁判所に係属しているときは、第一項の規定にかかわらず、当該対象債権については、債権届出をすることができない

1項

簡易確定手続申立団体は、対象債権について債権届出をし、及び当該対象債権について簡易確定手続を追行するには、当該対象債権に係る対象消費者の授権がなければならない。

2項

前項の対象消費者は、簡易確定手続申立団体のうちから一の簡易確定手続申立団体を限り、同項の授権をすることができる。

3項

第一項の授権をした対象消費者は、当該授権を取り消すことができる。

4項

前項の規定による第一項の授権の取消しは、当該授権をした対象消費者 又は当該授権を得た簡易確定手続申立団体から相手方に通知しなければ、その効力を生じない。

5項

第一項の授権を得た簡易確定手続申立団体の第六十五条第一項に規定する特定認定が、第七十四条第一項各号に掲げる事由により失効し、又は第八十六条第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由により取り消されたときは、当該授権は、その効力を失う。

6項

簡易確定決定があるまでに簡易確定手続申立団体が届出債権について第一項の授権を欠いたとき(前項の規定により当該授権がその効力を失ったときを除く)は、当該届出債権については、債権届出の取下げがあったものとみなす。

7項

債権届出に係る簡易確定手続申立団体(以下「債権届出団体」という。)の第六十五条第一項に規定する特定認定が、簡易確定決定があるまでに、第七十四条第一項各号に掲げる事由により失効し、又は第八十六条第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由により取り消されたときは、届出消費者は、第二項の規定にかかわらず第八十七条第六項の規定による公示がされた後一月の不変期間内に、同条第一項の規定による指定を受けた特定適格消費者団体に第一項の授権をすることができる。

8項

前項の届出消費者が同項の期間内に第一項の授権をしないときは、その届出債権については、債権届出の取下げがあったものとみなす。

9項

簡易確定決定があった後に、届出消費者が第三項の規定により第一項の授権を取り消したときは、当該届出消費者は、更に簡易確定手続申立団体に同項授権をすることができない

1項

簡易確定手続申立団体は、前条第一項の授権に先立ち、当該授権をしようとする者に対し、内閣府令で定めるところにより、被害回復裁判手続の概要 及び事案の内容 その他内閣府令で定める事項について、これを記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供して説明をしなければならない。

1項

簡易確定手続申立団体は、やむを得ない理由があるときを除いては、簡易確定手続授権契約(対象消費者が第三十一条第一項の授権をし、簡易確定手続申立団体が対象債権について債権届出をすること 及び簡易確定手続を追行することを約する契約をいう。以下同じ。)の締結を拒絶してはならない。

2項

第三十一条第一項の授権を得た簡易確定手続申立団体は、やむを得ない理由があるときを除いては、簡易確定手続授権契約を解除してはならない。

1項

第三十一条第一項の授権を得た簡易確定手続申立団体は、当該授権をした対象消費者のために、公平かつ誠実に債権届出、簡易確定手続の追行 及び第二条第九号ロに規定する民事執行の手続の追行(当該授権に係る債権に係る裁判外の和解を含む。) 並びにこれらに伴い取得した金銭 その他の財産の管理をしなければならない。

2項

第三十一条第一項の授権を得た簡易確定手続申立団体は、当該授権をした対象消費者に対し、善良な管理者の注意をもって前項に規定する行為をしなければならない。

1項

裁判所は、第三十条第二項の規定による届出書の提出を受けたときは、次条第一項 又は第六十三条第一項の規定により債権届出を却下する場合を除き、遅滞なく、当該届出書を相手方に送達しなければならない。

1項

裁判所は、債権届出が不適法であると認めるとき、又は届出書の送達に必要な費用の予納がないときは、決定で、当該債権届出を却下しなければならない。

2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

債権届出団体は、簡易確定手続において、届出債権について、和解をすることができる。

1項

債権届出があったときは、時効の完成猶予 及び更新に関しては、簡易確定手続の前提となる共通義務確認の訴えを提起した時に、裁判上の請求があったものとみなす。

1項

債権届出団体は、届出期間内に限り、当該債権届出の内容を変更することができる。

1項

債権届出は、簡易確定決定に対し適法な異議の申立てがあるまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。


ただし、簡易確定決定があった後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

2項

民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、前項の規定による債権届出の取下げについて準用する。

1項

裁判所書記官は、届出債権について、届出消費者表を作成しなければならない。

2項

前項の届出消費者表には、各届出債権について、その内容 その他最高裁判所規則で定める事項を記載しなければならない。

3項

届出消費者表の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより 又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができる。

1項

相手方は、届出期間内に債権届出があった届出債権の内容について、認否期間内に、認否をしなければならない。

2項

認否期間内に前項の認否(以下「届出債権の認否」という。)がないときは、相手方において、届出期間内に債権届出があった届出債権の内容の全部を認めたものとみなす。

3項

相手方が、認否期間内に届出債権の内容の全部を認めたときは、当該届出債権の内容は、確定する。

4項

裁判所書記官は、届出債権の認否の内容を届出消費者表に記載しなければならない。

5項

第三項の規定により確定した届出債権については、届出消費者表の記載は、確定判決と同一の効力を有する。


この場合において、債権届出団体は、確定した届出債権について、相手方に対し、届出消費者表の記載により強制執行をすることができる。

1項

債権届出団体は、前条第三項の規定により届出債権の内容が確定したときを除き、届出債権の認否に対し、認否期間の末日から一月の不変期間内に、裁判所に届出債権の認否を争う旨の申出(以下単に「認否を争う旨の申出」という。)をすることができる。

2項

裁判所は、認否を争う旨の申出が不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。

3項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

4項

裁判所書記官は、認否を争う旨の申出の有無を届出消費者表に記載しなければならない。

1項

裁判所は、適法な認否を争う旨の申出があったときは、第三十六条第一項 又は第六十三条第一項の規定により債権届出を却下する場合を除き、簡易確定決定をしなければならない。

2項

裁判所は、簡易確定決定をする場合には、当事者双方を審尋しなければならない。

3項

簡易確定決定は、主文 及び理由の要旨を記載した決定書を作成してしなければならない。

4項

届出債権の支払を命ずる簡易確定決定(第五十五条 及び第八十三条第一項第二号において「届出債権支払命令」という。)については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。

5項

第三項の決定書は、当事者に送達しなければならない。


この場合においては、簡易確定決定の効力は、当事者に送達された時に生ずる。

1項

簡易確定決定のための審理においては、証拠調べは、書証に限りすることができる。

2項

文書の提出 又は対照の用に供すべき筆跡 若しくは印影を備える物件の提出の命令は、することができない

3項

前二項の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない

1項

当事者は、簡易確定決定に対し、第四十四条第五項の規定による送達を受けた日から一月の不変期間内に、当該簡易確定決定をした裁判所に異議の申立てをすることができる。

2項

届出消費者は、簡易確定決定に対し、債権届出団体が第四十四条第五項の規定による送達を受けた日から一月の不変期間内に、当該簡易確定決定をした裁判所に異議の申立てをすることができる。

3項

裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。

4項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

5項

適法な異議の申立てがあったときは、簡易確定決定は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。

6項

適法な異議の申立てがないときは、簡易確定決定は、確定判決と同一の効力を有する。

7項

民事訴訟法第三百五十八条 及び第三百六十条の規定は、第一項 及び第二項の異議について準用する。

1項

適法な認否を争う旨の申出がないときは、届出債権の内容は、届出債権の認否の内容により確定する。

2項

前項の規定により確定した届出債権については、届出消費者表の記載は、確定判決と同一の効力を有する。


この場合において、債権届出団体は、確定した届出債権について、相手方に対し、届出消費者表の記載により強制執行をすることができる。

第五目 費用の負担

1項

簡易確定手続の費用(債権届出の手数料 及び簡易確定手続における届出債権に係る申立ての手数料(次条第一項 及び第三項において「個別費用」と総称する。)を除く。以下この条において同じ。)は、各自が負担する。

2項

前項の規定にかかわらず、裁判所は、事情により、同項の規定によれば当事者がそれぞれ負担すべき費用の全部 又は一部を、その負担すべき者以外の当事者に負担させることができる。

3項

裁判所は、簡易確定手続に係る事件が終了した場合において、必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、簡易確定手続の費用の負担を命ずる決定をすることができる。

4項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

5項

民事訴訟法第六十九条から第七十二条まで 及び第七十四条の規定は、簡易確定手続の費用の負担について準用する。

1項

裁判所は、届出債権について簡易確定手続に係る事件が終了した場合(第五十二条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合には、異議後の訴訟が終了した場合)において、必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、当該事件に関する個別費用の負担を命ずる決定をすることができる。

2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3項

民事訴訟法第一編第四章第一節第六十五条第六十六条第六十七条第二項 及び第七十三条除く)の規定は、個別費用の負担について準用する。

第六目 補則

1項

特別の定めがある場合を除き、簡易確定手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条第十四条第十六条第二十一条第二十二条第一編第二章第三節第三章第三十条第四十条から第四十九条まで第五十二条 及び第五十三条除く)、第五章第八十七条第二節第百十六条 及び第百十八条除く)及び第七章第二編第一章第百三十三条第百三十四条第百三十七条第二項 及び第三項第百三十八条第一項第百三十九条第百四十条 並びに第百四十三条から第百四十六条まで除く)、第三章第百五十六条の二第百五十七条の二第百五十八条第百五十九条第三項第百六十一条第三項 及び第三節除く)、第四章第七節除く)、第五章第二百四十五条第二百四十九条から第二百五十二条まで第二百五十三条第二項第二百五十四条第二百五十五条第二百五十八条第二項から第四項まで 並びに第二百五十九条第一項 及び第二項除く)及び第六章第二百六十一条から第二百六十三条まで 及び第二百六十六条除く)、第三編第三章第四編 並びに第八編第四百三条第一項第二号 及び第四号から第六号まで除く)の規定を準用する。

1項

前条において準用する民事訴訟法第百四条第一項前段の規定による届出がない場合には、送達は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場所においてする。

一 号

共通義務確認訴訟において民事訴訟法第百四条第一項前段の規定による届出があった場合

当該届出に係る場所

二 号

共通義務確認訴訟において民事訴訟法第百四条第一項前段の規定による届出がなかった場合

当該共通義務確認訴訟における同条第三項に規定する場所

第二款 異議後の訴訟に係る民事訴訟手続の特例

1項

簡易確定決定に対し適法な異議の申立てがあったときは、債権届出に係る請求については、当該債権届出の時に、当該債権届出に係る債権届出団体(当該債権届出に係る届出消費者が当該異議の申立てをしたときは、その届出消費者)を原告として、当該簡易確定決定をした地方裁判所に訴えの提起があったものとみなす。


この場合においては、届出書を訴状と、第三十五条の規定による送達を訴状の送達とみなす。

2項
前項の規定により訴えの提起があったものとみなされる事件は、同項の地方裁判所の管轄に専属する。
3項

前項の事件が係属する地方裁判所は、著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、同項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、その事件に係る訴訟を民事訴訟法第四条第一項 又は第五条第一号、第五号 若しくは第九号の規定により管轄権を有する地方裁判所に移送することができる。

1項

債権届出団体は、異議後の訴訟を追行するには、届出消費者の授権がなければならない。

2項

届出消費者は、その届出債権に係る債権届出団体に限り、前項の授権をすることができる。

3項

届出消費者が第八項において準用する第三十一条第三項の規定により第一項の授権を取り消し、又は自ら異議後の訴訟を追行したときは、当該届出消費者は、更に債権届出団体に同項授権をすることができない

4項

債権届出団体は、正当な理由があるときを除いては、訴訟授権契約(届出消費者が第一項の授権をし、債権届出団体が異議後の訴訟を追行することを約する契約をいう。以下同じ。)の締結を拒絶してはならない。

5項

第一項の授権を得た債権届出団体は、正当な理由があるときを除いては、訴訟授権契約を解除してはならない。

6項

第一項の授権を得た債権届出団体は、当該授権をした届出消費者のために、公平かつ誠実に異議後の訴訟の追行 及び第二条第九号ロに規定する民事執行の手続の追行(当該授権に係る債権に係る裁判外の和解を含む。)並びにこれらに伴い取得した金銭 その他の財産の管理をしなければならない。

7項

第一項の授権を得た債権届出団体は、当該授権をした届出消費者に対し、善良な管理者の注意をもって前項に規定する行為をしなければならない。

8項

第三十一条第三項から第五項まで 及び第三十二条の規定は、第一項の授権について準用する。

9項

民事訴訟法第五十八条第二項 並びに第百二十四条第一項第六号に係る部分に限る)及び第二項の規定は、異議後の訴訟において債権届出団体が第一項の授権を欠くときについて準用する。

1項

異議後の訴訟においては、原告は、訴えの変更(届出消費者 又は請求額の変更を内容とするものを除く)をすることができない。

2項

異議後の訴訟においては、反訴を提起することができない

1項

仮執行の宣言を付した届出債権支払命令に係る請求について第五十二条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が届出債権支払命令と符合するときは、その判決において、届出債権支払命令を認可しなければならない。


ただし、届出債権支払命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。

2項

前項の規定により届出債権支払命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した届出債権支払命令に係る請求について第五十二条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、届出債権支払命令を取り消さなければならない。

第三節 特定適格消費者団体のする仮差押え

1項

特定適格消費者団体は、当該特定適格消費者団体が取得する可能性のある債務名義に係る対象債権の実現を保全するため、民事保全法の規定により、仮差押命令の申立てをすることができる。

2項

特定適格消費者団体は、保全すべき権利に係る金銭の支払義務について共通義務確認の訴えを提起することができる場合に限り、前項の申立てをすることができる。

3項

第一項の申立てにおいては、保全すべき権利について、対象債権 及び対象消費者の範囲 並びに当該特定適格消費者団体が取得する可能性のある債務名義に係る対象債権の総額を明らかにすれば足りる。

4項

特定適格消費者団体は、対象債権について、第一項の規定によるもののほか保全命令の申立てをすることができない

1項

前条第一項の申立てに関する民事保全法第十一条の規定の適用については、共通義務確認の訴えを本案の訴えとみなす。

2項

民事保全法第十二条第一項 及び第三項の規定の適用については、共通義務確認訴訟の管轄裁判所を本案の管轄裁判所とみなす。

1項

第五十六条第一項の申立てに係る仮差押命令(以下単に「仮差押命令」という。)に関する民事保全法第三十七条第一項第三項 及び第四項の規定の適用については、当該申立てに係る仮差押えの手続の当事者である特定適格消費者団体がした共通義務確認の訴えの提起を本案の訴えの提起とみなす。

2項

前項の共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決が確定したとき 又は請求の認諾(第二条第四号に規定する義務が存することを認める旨の和解を含む。)によって同項の共通義務確認の訴えに係る訴訟が終了したときは、同項の特定適格消費者団体が簡易確定手続開始の申立てをすることができる期間 及び当該特定適格消費者団体を当事者とする簡易確定手続 又は異議後の訴訟が係属している間は、民事保全法第三十七条第一項 及び第三項の規定の適用については、本案の訴えが係属しているものとみなす。

3項

民事保全法第三十八条 及び第四十条の規定の適用については、第五十六条第一項の申立てに係る仮差押えの手続の当事者である特定適格消費者団体が提起した共通義務確認訴訟に係る第一審裁判所(当該共通義務確認訴訟が控訴審に係属するときは、控訴裁判所)を本案の裁判所とみなす。

1項

特定適格消費者団体は、仮差押命令に係る仮差押えの執行がされている財産について強制執行の申立てをし、又は当該財産について強制執行 若しくは担保権の実行の手続がされている場合において配当要求をするときは、当該特定適格消費者団体が取得した債務名義 及び取得することとなる債務名義に係る届出債権を平等に取り扱わなければならない。

第四節 補則

1項

訴訟代理権は、被害回復裁判手続の当事者である特定適格消費者団体の第六十五条第一項に規定する特定認定が、第七十四条第一項各号に掲げる事由により失効し、又は第八十六条第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由により取り消されたことによっては、消滅しない。

1項

次の各号に掲げる手続の当事者である特定適格消費者団体の第六十五条第一項に規定する特定認定が、第七十四条第一項各号に掲げる事由により失効し、又は第八十六条第一項各号 若しくは第二項各号に掲げる事由により取り消されたときは、その手続は、中断する。


この場合において、それぞれ当該各号に定める者は、その手続を受け継がなければならない。

一 号

共通義務確認訴訟の手続、簡易確定手続(次号に掲げる簡易確定手続を除く) 又は仮差押命令に係る仮差押えの手続(仮差押えの執行に係る訴訟手続を含む。

第八十七条第一項の規定による指定を受けた特定適格消費者団体

二 号

簡易確定手続(簡易確定決定があった後の手続に限る)又は異議後の訴訟の手続

第八十七条第一項の規定による指定を受けた特定適格消費者団体(第三十一条第一項 又は第五十三条第一項の授権を得た場合に限る)又は届出消費者

三 号

特定適格消費者団体が対象債権に関して取得した債務名義に係る民事執行に係る訴訟手続

第八十七条第三項の規定による指定を受けた特定適格消費者団体

2項

前項の規定は、訴訟代理人がある間は、適用しない

3項

第一項第一号に係る部分に限る)の規定は、共通義務確認訴訟 又は簡易確定手続(特定適格消費者団体であった法人が債権届出をした場合を除く)において、他に当事者である特定適格消費者団体がある場合には、適用しない

1項

共通義務確認訴訟が係属する場合において、当該共通義務確認訴訟の当事者である事業者と対象消費者との間に他の訴訟が係属し、かつ、当該他の訴訟が当該共通義務確認訴訟の目的である請求 又は防御の方法と関連する請求に係るものであるときは、当該他の訴訟の受訴裁判所は、当事者の意見を聴いて、決定で、その訴訟手続の中止を命ずることができる。

2項

前項の受訴裁判所は、同項の決定を取り消すことができる。

1項

簡易確定手続開始決定の前提となった共通義務確認訴訟の判決が再審により取り消された場合には、簡易確定手続が係属する裁判所は、決定で、債権届出(当該簡易確定手続開始決定の前提となった共通義務確認訴訟の判決が取り消されたことによってその前提を欠くこととなる部分に限る)を却下しなければならない。

2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3項

第一項の場合には、第五十二条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされる事件が係属する裁判所は、判決で、当該訴え(当該簡易確定手続開始決定の前提となった共通義務確認訴訟の判決が取り消されたことによってその前提を欠くこととなる部分に限る)を却下しなければならない。

1項

この章に定めるもののほか、被害回復裁判手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。