前文
第一章 総則
何人もその居住する地域にかかわらず等しく肝炎に係る検査(以下「肝炎検査」という。)を受けることができるようにすること。
肝炎ウイルスの感染者 及び肝炎患者(以下「肝炎患者等」という。)がその居住する地域にかかわらず等しく適切な肝炎に係る医療(以下「肝炎医療」という。)を受けることができるようにすること。
前三号に係る施策を実施するに当たっては、肝炎患者等の人権が尊重され、肝炎患者等であることを理由に差別されないように配慮するものとすること。
国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、肝炎対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、基本理念にのっとり、肝炎対策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
医療保険者(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第七項に規定する医療保険者をいう。)は、国 及び地方公共団体が講ずる肝炎の予防に関する啓発 及び知識の普及、肝炎検査に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。
国民は、肝炎に関する正しい知識を持ち、肝炎患者等が肝炎患者等であることを理由に差別されないように配慮するとともに、肝炎の予防に必要な注意を払うよう努め、必要に応じ、肝炎検査を受けるよう努めなければならない。
医師 その他の医療関係者は、国 及び地方公共団体が講ずる肝炎対策に協力し、肝炎の予防に寄与するよう努めるとともに、肝炎患者等の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切な肝炎医療を行うよう努めなければならない。
政府は、肝炎対策を実施するため必要な法制上 又は財政上の措置 その他の措置を講じなければならない。
第二章 肝炎対策基本指針
厚生労働大臣は、肝炎対策の総合的な推進を図るため、肝炎対策の推進に関する基本的な指針(以下「肝炎対策基本指針」という。)を策定しなければならない。
厚生労働大臣は、肝炎対策基本指針を策定しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、肝炎対策推進協議会の意見を聴くものとする。
厚生労働大臣は、肝炎対策基本指針を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用 その他適切な方法により公表しなければならない。
厚生労働大臣は、肝炎医療に関する状況の変化を勘案し、及び肝炎対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも五年ごとに、肝炎対策基本指針に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
第三項 及び第四項の規定は、肝炎対策基本指針の変更について準用する。
厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、肝炎対策基本指針の策定のための資料の提出 又は肝炎対策基本指針において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。
第三章 基本的施策
第一節 肝炎の予防及び早期発見の推進
国 及び地方公共団体は、肝炎の予防に関する啓発 及び知識の普及 その他の肝炎の予防の推進のために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎の早期発見に資するよう、肝炎検査の方法等の検討、肝炎検査の事業評価の実施、肝炎検査に携わる医療従事者に対する研修の機会の確保 その他の肝炎検査の質の向上等を図るために必要な施策を講ずるとともに、肝炎検査の受検率の向上に資するよう、肝炎検査に関する普及啓発 その他必要な施策を講ずるものとする。
第二節 肝炎医療の均てん化の促進等
国 及び地方公共団体は、インターフェロン治療等の抗ウイルス療法、肝庇護療法 その他の肝炎医療に携わる専門的な知識 及び技能を有する医師 その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎患者等がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切な肝炎医療を受けることができるよう、専門的な肝炎医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎患者等に対し適切な肝炎医療が提供されるよう、前項の医療機関 その他の医療機関の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎患者が必要に応じ適切な肝炎医療を受けることができるよう、肝炎患者に係る経済的な負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎患者が肝炎医療を受けるに当たって入院、通院等に支障がないよう医療機関、肝炎患者を雇用する者 その他の関係する者間の連携協力体制を確保すること その他の肝炎患者が肝炎医療を受ける機会の確保のために必要な施策を講ずるとともに、医療従事者に対する肝炎患者の療養生活の質の維持向上に関する研修の機会を確保すること その他の肝炎患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎医療に関する情報の収集 及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、肝炎患者等、その家族 及びこれらの者の関係者に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
第三節 研究の推進等
国 及び地方公共団体は、革新的な肝炎の予防、診断 及び治療に関する方法の開発 その他の肝炎の罹患率 及び肝炎に起因する死亡率の低下に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。
国 及び地方公共団体は、肝炎医療を行う上で特に必要性が高い医薬品、医療機器 及び再生医療等製品の早期の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するようその治験が迅速かつ確実に行われ、並びに肝炎医療に係る標準的な治療方法の開発に係る臨床研究が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。
第四章 肝炎対策推進協議会
厚生労働省に、肝炎対策基本指針に関し、第九条第三項(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、肝炎対策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。
協議会は、委員二十人以内で組織する。
協議会の委員は、肝炎患者等 及びその家族 又は遺族を代表する者、肝炎医療に従事する者 並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
協議会の委員は、非常勤とする。
前三項に定めるもののほか、協議会の組織 及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。