この法律は、刑事収容施設(刑事施設、留置施設 及び海上保安留置施設をいう。)の適正な管理運営を図るとともに、被収容者、被留置者 及び海上保安被留置者の人権を尊重しつつ、これらの者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とする。
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律
第一編 総則
第一章 通則
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
被収容者
刑事施設に収容されている者をいう。
被留置者
留置施設に留置されている者をいう。
海上保安被留置者
海上保安留置施設に留置されている者をいう。
受刑者
懲役受刑者、禁錮受刑者 又は拘留受刑者をいう。
懲役受刑者
懲役の刑(国際受刑者移送法(平成十四年法律第六十六号)第十六条第一項第一号の共助刑を含む。以下同じ。)の執行のため拘置されている者をいう。
禁錮受刑者
禁錮の刑(国際受刑者移送法第十六条第一項第二号の共助刑を含む。以下同じ。)の執行のため拘置されている者をいう。
拘留受刑者
拘留の刑の執行のため拘置されている者をいう。
未決拘禁者
被逮捕者、被勾留者 その他未決の者として拘禁されている者をいう。
被逮捕者
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定により逮捕されて留置されている者をいう。
被勾留者
刑事訴訟法の規定により勾留されている者をいう。
死刑確定者
死刑の言渡しを受けて拘置されている者をいう。
各種被収容者
被収容者であって、受刑者、未決拘禁者 及び死刑確定者以外のものをいう。
第二章 刑事施設
刑事施設は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
懲役、禁錮 又は拘留の刑の執行のため拘置される者
刑事訴訟法の規定により、逮捕された者であって、留置されるもの
刑事訴訟法の規定により勾留される者
死刑の言渡しを受けて拘置される者
前各号に掲げる者のほか、法令の規定により刑事施設に収容すべきこととされる者 及び収容することができることとされる者
被収容者は、次に掲げる別に従い、それぞれ互いに分離するものとする。
受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)、未決拘禁者(受刑者 又は死刑確定者としての地位を有するものを除く。)、未決拘禁者としての地位を有する受刑者、死刑確定者 及び各種被収容者の別
懲役受刑者、禁錮受刑者 及び拘留受刑者の別
前項の規定にかかわらず、受刑者に第九十二条 又は第九十三条に規定する作業として他の被収容者に接して食事の配給 その他の作業を行わせるため必要があるときは、同項第二号 及び第三号に掲げる別による分離をしないことができる。
第一項の規定にかかわらず、適当と認めるときは、居室(被収容者が主として休息 及び就寝のために使用する場所として刑事施設の長が指定する室をいう。次編第二章において同じ。)外に限り、同項第三号に掲げる別による分離をしないことができる。
法務大臣は、この法律の適正な施行を期するため、その職員のうちから監査官を指名し、各刑事施設について、毎年一回以上、これに実地監査を行わせなければならない。
刑事施設の長は、その刑事施設の適正な運営に資するため必要な意見を関係する公務所 及び公私の団体の職員 並びに学識経験のある者から聴くことに努めなければならない。
刑事施設に、刑事施設視察委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。
委員会は、その置かれた刑事施設を視察し、その運営に関し、刑事施設の長に対して意見を述べるものとする。
委員会は、委員十人以内で組織する。
委員は、人格識見が高く、かつ、刑事施設の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから、法務大臣が任命する。
委員の任期は、一年とする。
ただし、再任を妨げない。
委員は、非常勤とする。
前各項に定めるもののほか、委員会の組織 及び運営に関し必要な事項は、法務省令で定める。
刑事施設の長は、刑事施設の運営の状況について、法務省令で定めるところにより、定期的に、又は必要に応じて、委員会に対し、情報を提供するものとする。
委員会は、刑事施設の運営の状況を把握するため、委員による刑事施設の視察をすることができる。
この場合において、委員会は、必要があると認めるときは、刑事施設の長に対し、委員による被収容者との面接の実施について協力を求めることができる。
刑事施設の長は、前項の視察 及び被収容者との面接について、必要な協力をしなければならない。
第百二十七条(第百四十四条において準用する場合を含む。)、第百三十五条(第百三十八条 及び第百四十二条において準用する場合を含む。)及び第百四十条の規定にかかわらず、被収容者が委員会に対して提出する書面は、検査をしてはならない。
法務大臣は、毎年、委員会が刑事施設の長に対して述べた意見 及びこれを受けて刑事施設の長が講じた措置の内容を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
裁判官 及び検察官は、刑事施設を巡視することができる。
刑事施設の長は、その刑事施設の参観を申し出る者がある場合において相当と認めるときは、これを許すことができる。
刑務官は、法務省令で定めるところにより、法務大臣が刑事施設の職員のうちから指定する。
刑務官の階級は、法務省令でこれを定める。
刑務官には、被収容者の人権に関する理解を深めさせ、並びに被収容者の処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識 及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修 及び訓練を行うものとする。
第三章 留置施設
都道府県警察に、留置施設を設置する。
留置施設は、次に掲げる者を留置し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)及び刑事訴訟法の規定により、都道府県警察の警察官が逮捕する者 又は受け取る逮捕された者であって、留置されるもの
前号に掲げる者で、次条第一項の規定の適用を受けて刑事訴訟法の規定により勾留されるもの
前二号に掲げる者のほか、法令の規定により留置施設に留置することができることとされる者
第三条各号に掲げる者は、次に掲げる者を除き、刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる。
懲役、禁錮 又は拘留の刑の執行のため拘置される者(これらの刑の執行以外の逮捕、勾留 その他の事由により刑事訴訟法 その他の法令の規定に基づいて拘禁される者としての地位を有するものを除く。)
死刑の言渡しを受けて拘置される者
少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第十七条の四第一項、少年院法(平成二十六年法律第五十八号)第百三十三条第二項 又は少年鑑別所法(平成二十六年法律第五十九号)第百二十三条の規定により仮に収容される者
逃亡犯罪人引渡法(昭和二十八年法律第六十八号)第五条第一項、第十七条第二項 若しくは第二十五条第一項、国際捜査共助等に関する法律(昭和五十五年法律第六十九号)第二十三条第一項 又は国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律(平成十九年法律第三十七号)第二十一条第一項 若しくは第三十五条第一項の規定により拘禁される者
法務大臣は、国家公安委員会に対し、前項の規定による留置に関する留置施設の運営の状況について説明を求め、又は同項の規定により留置された者の処遇について意見を述べることができる。
留置施設に係る留置業務を管理する者(以下「留置業務管理者」という。)は、警視庁、道府県警察本部 又は方面本部(第二十条において「警察本部」という。)に置かれる留置施設にあっては警視以上の階級にある警察官のうちから警視総監、道府県警察本部長 又は方面本部長(以下「警察本部長」という。)が指名する者とし、警察署に置かれる留置施設にあっては警察署長とする。
留置施設に係る留置業務に従事する警察官(以下「留置担当官」という。)には、被留置者の人権に関する理解を深めさせ、並びに被留置者の処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識 及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修 及び訓練を行うものとする。
留置担当官は、その留置施設に留置されている被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。
被留置者は、次に掲げる別に従い、それぞれ互いに分離するものとする。
受刑者としての地位を有する者か否かの別
前項の規定にかかわらず、留置施設の規律 及び秩序の維持 その他管理運営上必要がある場合において、被留置者の処遇上支障を生ずるおそれがないと認めるときは、同項第二号に掲げる別による分離をしないことができる。
警察本部長は、都道府県公安委員会(道警察本部の所在地を包括する方面以外の方面にあっては、方面公安委員会。以下「公安委員会」という。)の定めるところにより、この法律の適正な施行を期するため、その職員のうちから監査官を指名し、各留置施設について、毎年一回以上、これに実地監査を行わせなければならない。
警察庁長官は、国家公安委員会の定めるところにより、被留置者の処遇の斉一を図り、この法律の適正な施行を期するため、その指名する職員に留置施設を巡察させるものとする。
警察本部に、留置施設視察委員会(以下この章において「委員会」という。)を置く。
委員会は、その置かれた警察本部に係る都道府県警察の管轄区域内にある留置施設(道警察本部にあってはその所在地を包括する方面の区域内にある留置施設、方面本部にあっては当該方面の区域内にある留置施設)を視察し、その運営に関し、留置業務管理者に対して意見を述べるものとする。
委員会の委員(以下この条 及び次条第二項において「委員」という。)は、人格識見が高く、かつ、留置施設の運営の改善向上に熱意を有する者のうちから、公安委員会が任命する。
委員は、非常勤とする。
委員 又は委員であった者は、職務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
前三項に定めるもののほか、委員の定数 及び任期 その他委員会の組織 及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
この場合において、委員の定数 及び任期については、国家公安委員会の定める基準を参酌するものとする。
留置業務管理者は、留置施設の運営の状況(第百九十条第一項 又は第二百八条第一項の規定による措置に関する事項を含む。)について、公安委員会の定めるところにより、定期的に、又は必要に応じて、委員会に対し、情報を提供するものとする。
委員会は、留置施設の運営の状況を把握するため、委員による留置施設の視察をすることができる。
この場合において、委員会は、必要があると認めるときは、留置業務管理者に対し、委員による被留置者との面接の実施について協力を求めることができる。
留置業務管理者は、前項の視察 及び被留置者との面接について、必要な協力をしなければならない。
第二百二十二条の規定にかかわらず、被留置者が委員会に対して提出する書面は、検査をしてはならない。
警察本部長は、毎年、委員会が留置業務管理者に対して述べた意見 及びこれを受けて留置業務管理者が講じた措置の内容を取りまとめ、その概要を公表するものとする。
第六条、第十一条 及び第十二条の規定は、留置施設について準用する。
この場合において、
第六条 及び第十二条中
「刑事施設の長」とあるのは、
「留置業務管理者」と
読み替えるものとする。
第四章 海上保安留置施設
管区海上保安本部、管区海上保安本部の事務所 又は海上保安庁の船舶に、海上保安留置施設を設置する。
海上保安留置施設は、次に掲げる者を留置し、これらの者に対し必要な処遇を行う施設とする。
ただし、海上保安庁の船舶に置かれる海上保安留置施設には、やむを得ない事由により、管区海上保安本部 又は管区海上保安本部の事務所に置かれる海上保安留置施設に速やかに留置することができない場合に限り、留置することができる。
海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)及び刑事訴訟法の規定により、海上保安官 又は海上保安官補が逮捕する者 又は受け取る逮捕された者であって、留置されるもの
前号に掲げる者のほか、法令の規定により海上保安留置施設に留置することができることとされる者
海上保安留置施設に係る留置業務を管理する者(以下「海上保安留置業務管理者」という。)は、管区海上保安本部に置かれる海上保安留置施設にあっては管区海上保安本部長が指名する海上保安官とし、管区海上保安本部の事務所に置かれる海上保安留置施設にあっては当該事務所の長とし、海上保安庁の船舶に置かれる海上保安留置施設にあっては当該船舶の船長とする。
海上保安留置施設に係る留置業務に従事する海上保安官 及び海上保安官補(以下「海上保安留置担当官」という。)には、海上保安被留置者の人権に関する理解を深めさせ、並びに海上保安被留置者の処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識 及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修 及び訓練を行うものとする。
海上保安留置担当官は、その海上保安留置施設に留置されている海上保安被留置者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。
海上保安被留置者は、性別に従い、互いに分離するものとする。
海上保安庁長官は、この法律の適正な施行を期するため、その職員のうちから監査官を指名し、各海上保安留置施設について、毎年一回以上、これに実地監査を行わせなければならない。
第六条、第十一条 及び第十二条の規定は、海上保安留置施設について準用する。
この場合において、
第六条 及び第十二条中
「刑事施設の長」とあるのは、
「海上保安留置業務管理者」と
読み替えるものとする。