漁業法

# 昭和二十四年法律第二百六十七号 #

第二章 水産資源の保存及び管理

分類 法律
カテゴリ   水産業
@ 施行日 : 令和六年七月十六日 ( 2024年 7月16日 )
@ 最終更新 : 令和六年法律第六十六号による改正
最終編集日 : 2024年 11月23日 19時25分


第一節 総則

1項

この章において「漁獲可能量」とは、水産資源の保存 及び管理(以下「資源管理」という。)のため、水産資源ごとに一年間に採捕することができる数量の最高限度として定められる数量をいう。

2項

この章において「管理区分」とは、水産資源ごとに漁獲量の管理を行うため、特定の水域 及び漁業の種類 その他の事項によつて構成される区分であつて、農林水産大臣 又は都道府県知事が定めるものをいう。

3項

この章において「漁獲努力量」とは、水産資源を採捕するために行われる漁ろうの作業の量であつて、操業日数 その他の農林水産省令で定める指標によつて示されるものをいう。

4項

この章において「漁獲努力可能量」とは、管理区分において当該管理区分に係る漁獲可能量の数量の水産資源を採捕するために通常必要と認められる漁獲努力量をいう。

1項

資源管理は、この章の規定により、漁獲可能量による管理を行うことを基本としつつ、稚魚の生育 その他の水産資源の再生産が阻害されることを防止するために必要な場合には、次章から第五章までの規定により、漁業時期 又は漁具の制限 その他の漁獲可能量による管理以外の手法による管理を合わせて行うものとする。

2項

漁獲可能量による管理は、管理区分ごとに漁獲可能量を配分し、それぞれの管理区分において、その漁獲可能量を超えないように、漁獲量を管理することにより行うものとする。

3項

漁獲量の管理は、それぞれの管理区分において、水産資源を採捕しようとする者に対し、船舶等(船舶 その他の漁業の生産活動を行う基本的な単位となる設備をいう。以下同じ。)ごとに当該管理区分に係る漁獲可能量の範囲内で水産資源の採捕をすることができる数量を割り当てること(以下この章 及び第四十三条において「漁獲割当て」という。)により行うことを基本とする。

4項

漁獲割当てを行う準備の整つていない管理区分における漁獲量の管理は、当該管理区分において水産資源を採捕する者による漁獲量の総量を管理することにより行うものとする。

5項

前項の場合において、水産資源の特性 及びその採捕の実態を勘案して漁獲量の総量の管理を行うことが適当でないと認められるときは、当該管理に代えて、当該管理区分において当該管理区分に係る漁獲努力可能量を超えないように、当該管理区分において水産資源を採捕するために漁ろうを行う者による漁獲努力量の総量の管理を行うものとする。

第二節 資源管理基本方針等

1項

農林水産大臣は、海洋環境に関する情報、水産資源の生息 又は生育の状況に関する情報、採捕 及び漁ろうの実績に関する情報 その他の資源評価(水産資源の資源量の水準 及びその動向に関する評価をいう。以下この章において同じ。)を行うために必要となる情報を収集するための調査(以下この条 及び次条第三項において「資源調査」という。)を行うものとする。

2項

農林水産大臣は、資源調査を行うに当たつては、人工衛星に搭載される観測用機器、船舶に搭載される魚群探知機 その他の機器を用いて、情報を効率的に収集するよう努めるものとする。

3項

農林水産大臣は、資源調査の結果に基づき、最新の科学的知見を踏まえて資源評価を実施するものとする。

4項

農林水産大臣は、資源評価を行うに当たつては、全ての種類の水産資源について評価を行うよう努めるものとする。

5項

農林水産大臣は、国立研究開発法人水産研究・教育機構に、資源調査 又は資源評価に関する業務を行わせることができる。

1項

都道府県知事は、農林水産大臣に対し、資源評価が行われていない水産資源について資源評価を行うよう要請をすることができる。

2項

都道府県知事は、前項の規定により要請をするときは、当該要請に係る資源評価に必要な情報を農林水産大臣に提供しなければならない。

3項

都道府県知事は、前項の規定による場合のほか、農林水産大臣の求めに応じて、資源調査に協力するものとする。

1項

農林水産大臣は、資源評価を踏まえて、資源管理に関する基本方針(以下この章 及び第百二十五条第一項第一号において「資源管理基本方針」という。)を定めるものとする。

2項

資源管理基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号
資源管理に関する基本的な事項
二 号
資源管理の目標
三 号

特定水産資源(漁獲可能量による管理を行う水産資源をいう。以下同じ。) 及びその管理年度(特定水産資源の保存 及び管理を行う年度をいう。以下この章において同じ。

四 号

特定水産資源ごとの大臣管理区分(農林水産大臣が設定する管理区分をいう。以下この章において同じ。

五 号

特定水産資源ごとの漁獲可能量の都道府県 及び大臣管理区分への配分の基準

六 号

大臣管理区分ごとの漁獲量(第十七条第一項に規定する漁獲割当管理区分以外の管理区分にあつては、漁獲量 又は漁獲努力量。第十四条第二項第四号において同じ。)の管理の手法

七 号

漁獲可能量による管理以外の手法による資源管理に関する事項

八 号

その他資源管理に関する重要事項

3項

農林水産大臣は、資源管理基本方針を定めようとするときは、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。

4項

農林水産大臣は、資源管理基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5項

農林水産大臣は、直近の資源評価、最新の科学的知見、漁業の動向 その他の事情を勘案して、資源管理基本方針について検討を行い、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

6項

第三項 及び第四項の規定は、前項の規定による資源管理基本方針の変更について準用する。

1項

前条第二項第二号の資源管理の目標は、資源評価が行われた水産資源について、水産資源ごとに次に掲げる資源量の水準(以下この条 及び第十五条第二項において「資源水準」という。)の値を定めるものとする。

一 号

最大持続生産量(現在 及び合理的に予測される将来の自然的条件の下で持続的に採捕することが可能な水産資源の数量の最大値をいう。次号において同じ。)を実現するために維持し、又は回復させるべき目標となる値(同号 及び第十五条第二項において「目標管理基準値」という。

二 号

資源水準の低下によつて最大持続生産量の実現が著しく困難になることを未然に防止するため、その値を下回つた場合には資源水準の値を目標管理基準値にまで回復させるための計画を定めることとする値(第十五条第二項第二号において「限界管理基準値」という。

2項

水産資源を構成する水産動植物の特性 又は資源評価の精度に照らし前項各号に掲げる値を定めることができないときは、当該水産資源の漁獲量 又は漁獲努力量の動向 その他の情報を踏まえて資源水準を推定した上で、その維持し、又は回復させるべき目標となる値を定めるものとする。

3項

前条第二項第三号の管理年度は、特定水産資源の特性 及びその採捕の実態を勘案して定めるものとする。

4項

前条第二項第五号の配分の基準は、水域の特性、漁獲の実績 その他の事項を勘案して定めるものとする。

1項

農林水産大臣は、資源管理基本方針を定めるに当たつては、水産資源の持続的な利用に関する国際機関 その他の国際的な枠組み(我が国が締結した条約 その他の国際約束により設けられたものに限る。以下この条 及び第五十二条第二項において「国際的な枠組み」という。)において行われた資源評価を考慮しなければならない。

2項

農林水産大臣は、資源管理基本方針を定めようとするときは、国際的な枠組みにおいて決定されている資源管理の目標 その他の資源管理に関する事項を考慮しなければならない。

3項

農林水産大臣は、国際的な枠組みにおいて資源管理の目標 その他の資源管理に関する事項が新たに決定され、又は変更されたときは、資源管理基本方針に検討を加え、必要があると認めるときは、第十一条第五項の規定により資源管理基本方針を変更しなければならない。

1項

都道府県知事は、資源管理基本方針に即して、当該都道府県において資源管理を行うための方針(以下この章 及び第百二十五条第一項第一号において「都道府県資源管理方針」という。)を定めるものとする。


ただし、特定水産資源の採捕が行われていない都道府県の知事については、この限りでない。

2項

都道府県資源管理方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 号
資源管理に関する基本的な事項
二 号

特定水産資源ごとの知事管理区分(都道府県知事が設定する管理区分をいう。以下この章において同じ。

三 号

特定水産資源ごとの漁獲可能量(当該都道府県に配分される部分に限る)の知事管理区分への配分の基準

四 号

知事管理区分ごとの漁獲量の管理の手法

五 号

漁獲可能量による管理以外の手法による資源管理に関する事項

六 号

その他資源管理に関する重要事項

3項

前項第三号の配分の基準は、水域の特性、漁獲の実績 その他の事項を勘案して定めるものとする。

4項

都道府県知事は、都道府県資源管理方針を定めようとするときは、関係海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。

5項

都道府県知事は、都道府県資源管理方針を定めようとするときは、農林水産大臣の承認を受けなければならない。

6項

都道府県知事は、都道府県資源管理方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

7項

農林水産大臣は、資源管理基本方針の変更により都道府県資源管理方針が資源管理基本方針に適合しなくなつたと認めるときは、当該都道府県資源管理方針を定めた都道府県知事に対し、当該都道府県資源管理方針を変更すべき旨を通知しなければならない。

8項

都道府県知事は、前項の規定により通知を受けたときは、都道府県資源管理方針を変更しなければならない。

9項

都道府県知事は、前項の場合を除くほか、直近の資源評価、最新の科学的知見、漁業の動向 その他の事情を勘案して、都道府県資源管理方針について検討を行い、必要があると認めるときは、これを変更するものとする。

10項

第四項から第六項までの規定は、前二項の規定による都道府県資源管理方針の変更について準用する。

第三節 漁獲可能量による管理

第一款 漁獲可能量等の設定

1項

農林水産大臣は、資源管理基本方針に即して、特定水産資源ごと 及びその管理年度ごとに、次に掲げる数量を定めるものとする。

一 号
漁獲可能量
二 号

漁獲可能量のうち各都道府県に配分する数量(以下この章において「都道府県別漁獲可能量」という。

三 号

漁獲可能量のうち大臣管理区分に配分する数量(以下この節 及び第百二十五条第一項第四号において「大臣管理漁獲可能量」という。

2項

農林水産大臣は、次に掲げる基準に従い漁獲可能量を定めるものとする。

一 号

資源水準の値が目標管理基準値を下回つている場合(次号に規定する場合を除く)は、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること。

二 号

資源水準の値が限界管理基準値を下回つている場合は、農林水産大臣が定める第十二条第一項第二号の計画に従つて、資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること。

三 号

資源水準の値が目標管理基準値を上回つている場合は、資源水準の値が目標管理基準値を上回る状態を維持すること。

四 号

第十二条第二項の目標となる値を定めたときは、同項の規定により推定した資源水準の値が当該目標となる値を上回るまで回復させ、又は当該目標となる値を上回る状態を維持すること。

3項

農林水産大臣は、第一項各号に掲げる数量を定めようとするときは、水産政策審議会の意見を聴かなければならない。

4項

農林水産大臣は、都道府県別漁獲可能量を定めようとするときは、関係する都道府県知事の意見を聴くものとし、その数量を定めたときは、遅滞なく、これを当該都道府県知事に通知するものとする。

5項

農林水産大臣は、第一項各号に掲げる数量を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

6項

前三項の規定は、第一項各号に掲げる数量の変更について準用する。

1項

都道府県知事は、都道府県資源管理方針に即して、都道府県別漁獲可能量について、知事管理区分に配分する数量(以下この節 及び第百二十五条第一項第四号において「知事管理漁獲可能量」という。)を定めるものとする。

2項

都道府県知事は、知事管理漁獲可能量を定めようとするときは、関係海区漁業調整委員会の意見を聴かなければならない。

3項

都道府県知事は、知事管理漁獲可能量を定めようとするときは、農林水産大臣の承認を受けなければならない。

4項

都道府県知事は、知事管理漁獲可能量を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5項

前三項の規定は、知事管理漁獲可能量の変更について準用する。


この場合において、

第三項
定めようとするとき」とあるのは、
「変更しようとするとき(農林水産省令で定める軽微な変更を除く)」と

読み替えるものとする。

6項

都道府県知事は、前項において読み替えて準用する第三項の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に報告しなければならない。

第二款 漁獲割当てによる漁獲量の管理

1項

漁獲割当てによる漁獲量の管理を行う管理区分(以下この節 並びに第百二十四条第一項 及び第百三十二条第二項第一号において「漁獲割当管理区分」という。)において当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源を採捕しようとする者は、当該管理区分が大臣管理区分である場合には農林水産大臣、知事管理区分である場合には当該知事管理区分に係る都道府県知事に申請して、当該特定水産資源の採捕に使用しようとする船舶等ごとに漁獲割当ての割合(以下この款において「漁獲割当割合」という。)の設定を求めることができる。

2項

前項の漁獲割当割合の有効期間は、一年を下らない農林水産省令で定める期間とする。

3項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当割合の設定をしようとするときは、あらかじめ、漁獲割当管理区分ごとに、船舶等ごとの漁獲実績 その他農林水産省令で定める事項を勘案して設定の基準を定め、これに従つて設定を行わなければならない。

4項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当ての対象となる特定水産資源の再生産の阻害を防止するために漁業時期 若しくは漁具の制限 その他の漁獲可能量による管理以外の手法による資源管理を行う必要があると認めるとき、又は漁獲割当割合の設定を受けた者の間の紛争を防止する必要があると認めるときは、漁獲割当割合の設定を、当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕に係る漁業に係る許可等(第三十六条第一項 若しくは第五十七条第一項の許可 又は第三十八条第五十八条において準用する場合を含む。)の認可をいう。)を受け、又は当該採捕に係る個別漁業権(第六十二条第二項第一号ホに規定する個別漁業権をいう。)を有する者(第二十三条第二項第一号において「有資格者」という。)に限ることができる。

1項

前条第一項の規定により申請した者が次の各号に掲げる者のいずれかに該当するときは、農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当割合の設定を行つてはならない。

一 号

漁業 又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者

二 号

暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律平成三年法律第七十七号第二条第六号に規定する暴力団員 又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。

三 号

法人であつて、その役員 又は政令で定める使用人のうちに前二号いずれかに該当する者があるもの

四 号

暴力団員等がその事業活動を支配する者

五 号

その申請に係る漁業を営むに足りる経理的基礎を有しない者

2項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、前項の規定により漁獲割当割合の設定を行わないときは、あらかじめ、当該申請者にその理由を文書をもつて通知し、公開による意見の聴取を行わなければならない。

3項

前項の意見の聴取に際しては、当該申請者 又はその代理人は、当該事案について弁明し、かつ、証拠を提出することができる。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、農林水産省令で定めるところにより、管理年度ごとに、漁獲割当割合設定者(第十七条第一項の規定により漁獲割当割合の設定を受けた者をいう。以下この款において同じ。)に対し、年次漁獲割当量(漁獲割当管理区分において管理年度中に特定水産資源を採捕することができる数量をいう。以下この款 及び第百三十二条第二項第一号において同じ。)を設定する。

2項

年次漁獲割当量は、当該管理年度に係る大臣管理漁獲可能量 又は知事管理漁獲可能量に漁獲割当割合設定者が設定を受けた漁獲割当割合を乗じて得た数量とする。

3項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、第一項の規定により年次漁獲割当量を設定したときは、当該年次漁獲割当量の設定を受けた者(以下この款 及び第百三十二条第二項第一号において「年次漁獲割当量設定者」という。)に対し当該年次漁獲割当量を通知するものとする。

4項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、政令で定めるところにより、年次漁獲割当量設定者の同意を得て、電磁的方法(第百六条第五項に規定する電磁的方法をいう。)により通知を発することができる。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当管理原簿を作成し、漁獲割当割合 及び年次漁獲割当量の設定、移転 及び取消しの管理を行うものとする。

2項

漁獲割当管理原簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない

3項

漁獲割当管理原簿に記録されている保有個人情報(個人情報の保護に関する法律平成十五年法律第五十七号第六十条第一項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第五章第四節の規定は、適用しない

4項

漁獲割当管理原簿は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして農林水産省令で定めるものをいう。)で作成することができる。

1項

漁獲割当割合は、船舶等とともに当該船舶等ごとに設定された漁獲割当割合を譲り渡す場合 その他農林水産省令で定める場合に該当する場合であつて農林水産大臣 又は都道府県知事の認可を受けたときに限り、移転をすることができる。


この場合において、当該移転を受けた者は漁獲割当割合設定者と、当該移転をされた漁獲割当割合は第十七条第一項の規定により設定を受けた漁獲割当割合と、それぞれみなして、この款の規定を適用する。

2項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当割合の移転を受けようとする者が第十八条第一項各号に掲げる者のいずれかに該当する場合 その他農林水産省令で定める場合は、前項の認可をしてはならない。

3項

漁獲割当割合設定者が死亡し、解散し、又は分割(漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継させるものに限る)をしたときは、その相続人(相続人が二人以上ある場合においてその協議により漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継すべき者を定めたときは、その者)、合併後存続する法人 若しくは合併によつて成立した法人 又は分割によつて漁獲割当割合の設定を受けた船舶等を承継した法人は、当該漁獲割当割合設定者の地位(相続 又は分割により漁獲割当割合の設定を受けた船舶等の一部を承継した者にあつては、当該一部の船舶等に係る部分に限る)を承継する。

4項

前項の規定により漁獲割当割合設定者の地位を承継した者は、承継の日から二月以内にその旨を農林水産大臣 又は都道府県知事に届け出なければならない。

1項

年次漁獲割当量は、他の漁獲割当割合設定者に譲り渡す場合 その他農林水産省令で定める場合に該当する場合であつて農林水産大臣 又は都道府県知事の認可を受けたときに限り、移転をすることができる。


この場合において、当該移転を受けた者は年次漁獲割当量設定者と、当該移転をされた年次漁獲割当量は第十九条第一項の規定により設定を受けた年次漁獲割当量と、それぞれみなして、この款 及び第百三十二条第二項第一号の規定を適用する。

2項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、次の各号いずれかに該当する場合は、前項の認可をしてはならない。

一 号

年次漁獲割当量の移転を受けようとする者が第十八条第一項各号に掲げる者のいずれかに該当する場合

二 号

移転をしようとする年次漁獲割当量が、当該移転をしようとする年次漁獲割当量設定者が設定を受けた年次漁獲割当量から当該年次漁獲割当量設定者が当該管理年度において採捕した特定水産資源の数量を減じた数量よりも大きいと認められる場合

三 号

前二号に掲げる場合のほか、農林水産省令で定める場合

3項

年次漁獲割当量設定者が死亡し、解散し、又は分割(年次漁獲割当量を承継させるものに限る)をしたときは、その相続人(相続人が二人以上ある場合においてその協議により年次漁獲割当量を承継すべき者を定めたときは、その者)、合併後存続する法人 若しくは合併によつて成立した法人 又は分割によつて年次漁獲割当量を承継した法人は、当該年次漁獲割当量設定者の地位(相続 又は分割により年次漁獲割当量の一部を承継した者にあつては、当該一部の年次漁獲割当量に係る部分に限る)を承継する。

4項

前項の規定により年次漁獲割当量設定者の地位を承継した者は、承継の日から二月以内にその旨を農林水産大臣 又は都道府県知事に届け出なければならない。

1項

農林水産大臣 及び都道府県知事は、漁獲割当割合設定者 又は年次漁獲割当量設定者が第十八条第一項各号第五号除く)に掲げる者のいずれかに該当することとなつた場合には、これらの者が設定を受けた漁獲割当割合 及び年次漁獲割当量を取り消さなければならない。

2項

農林水産大臣 及び都道府県知事は、漁獲割当割合設定者 又は年次漁獲割当量設定者が次の各号いずれかに該当することとなつた場合には、これらの者が設定を受けた漁獲割当割合 及び年次漁獲割当量を取り消すことができる。

一 号

第十七条第四項の規定により漁獲割当割合の設定を有資格者に限る場合において、有資格者でなくなつた場合

二 号

第十八条第一項第五号に掲げる者に該当することとなつた場合

3項

前二項の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

1項

第十七条から前条までに定めるもののほか、漁獲割当管理原簿への記録 その他漁獲割当てに関し必要な事項は、政令で定める。

1項

漁獲割当管理区分においては、当該漁獲割当管理区分に係る年次漁獲割当量設定者でなければ、当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕を目的として当該特定水産資源の採捕をしてはならない。

2項

年次漁獲割当量設定者は、漁獲割当管理区分においては、その設定を受けた年次漁獲割当量を超えて当該漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕をしてはならない。

1項

年次漁獲割当量設定者は、漁獲割当管理区分において、特定水産資源の採捕をしたときは、農林水産省令で定める期間内に、農林水産省令 又は規則で定めるところにより、漁獲量 その他漁獲の状況に関し農林水産省令で定める事項を、当該漁獲割当管理区分が大臣管理区分である場合には農林水産大臣、知事管理区分である場合には当該知事管理区分に係る都道府県知事に報告しなければならない。

2項

都道府県知事は、前項の規定により報告を受けたときは、農林水産省令で定めるところにより、速やかに、当該事項を農林水産大臣に報告するものとする。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源の採捕をし、かつ、当該採捕を引き続きするおそれがあるときは、当該採捕をした者が使用する船舶について停泊港 及び停泊期間を指定して停泊を命じ、又は当該採捕に使用した漁具 その他特定水産資源の採捕の用に供される物について期間を指定してその使用の禁止 若しくは陸揚げを命ずることができる。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当割合設定者である年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕したときは、その超えた部分の数量を基準として農林水産省令で定めるところにより算出する数量を、次の管理年度以降において当該漁獲割当割合設定者に設定する年次漁獲割当量から控除することができる。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、漁獲割当割合設定者である年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕し、又は第二十七条の規定による命令に違反したときは、農林水産省令で定めるところにより、その設定を受けた漁獲割当割合を減ずる処分をすることができる。

2項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、前項の処分をしようとするときは、行政手続法平成五年法律第八十八号第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

3項

第一項の処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

第三款 漁獲量等の総量の管理

1項

漁獲割当管理区分以外の管理区分において特定水産資源の採捕(漁獲努力量の総量の管理を行う管理区分(以下この項 及び次条において「漁獲努力量管理区分」という。)にあつては、当該漁獲努力量に係る漁ろう。以下この款において同じ。)をする者は、特定水産資源の採捕をしたときは、農林水産省令で定める期間内に、農林水産省令 又は規則で定めるところにより、当該特定水産資源の漁獲量(漁獲努力量管理区分にあつては、当該特定水産資源に係る漁獲努力量。以下この款において同じ。)その他漁獲の状況に関し農林水産省令で定める事項を、当該管理区分が大臣管理区分(漁獲割当管理区分以外のものに限る。以下この款において同じ。)である場合には農林水産大臣、知事管理区分(漁獲割当管理区分以外のものに限る。以下この款において同じ。)である場合には当該知事管理区分に係る都道府県知事に報告しなければならない。

2項

都道府県知事は、前項の規定により報告を受けたときは、農林水産省令で定めるところにより、速やかに、当該事項を農林水産大臣に報告するものとする。

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、大臣管理区分 又は知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該管理区分に係る大臣管理漁獲可能量 又は知事管理漁獲可能量(漁獲努力量管理区分にあつては、当該管理区分に係る漁獲努力可能量。次条 及び第三十三条において同じ。)を超えるおそれがあると認めるとき その他農林水産省令で定めるときは、当該漁獲量の総量 その他農林水産省令で定める事項を公表するものとする。

1項

農林水産大臣は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、必要な助言、指導 又は勧告をすることができる。

一 号

大臣管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合

当該大臣管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者

二 号

一の特定水産資源に係る全ての大臣管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該全ての大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量の合計を超えるおそれが大きい場合

当該全ての大臣管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者

三 号

特定水産資源の漁獲量の総量が当該特定水産資源の漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合

当該特定水産資源の採捕をする者

2項

都道府県知事は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、必要な助言、指導 又は勧告をすることができる。

一 号

知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該知事管理区分に係る知事管理漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合

当該知事管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者

二 号

一の特定水産資源に係る全ての知事管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該都道府県の都道府県別漁獲可能量を超えるおそれが大きい場合

当該全ての知事管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者

1項

農林水産大臣は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、農林水産省令で定めるところにより、期間を定め、採捕の停止 その他特定水産資源の採捕に関し必要な命令をすることができる。

一 号

大臣管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合

当該大臣管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者

二 号

一の特定水産資源に係る全ての大臣管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該全ての大臣管理区分に係る大臣管理漁獲可能量の合計を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合

当該全ての大臣管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者

三 号

特定水産資源の漁獲量の総量が当該特定水産資源の漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合

当該特定水産資源の採捕をする者

2項

都道府県知事は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、それぞれ当該各号に定める者に対し、規則で定めるところにより、期間を定め、採捕の停止 その他特定水産資源の採捕に関し必要な命令をすることができる。

一 号

知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該知事管理区分に係る知事管理漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合

当該知事管理区分において当該特定水産資源の採捕をする者

二 号

一の特定水産資源に係る全ての知事管理区分における当該特定水産資源の漁獲量の総量が当該都道府県の都道府県別漁獲可能量を超えており、又は超えるおそれが著しく大きい場合

当該全ての知事管理区分のいずれかにおいて当該特定水産資源の採捕をする者

1項

農林水産大臣 又は都道府県知事は、前条の命令を受けた者が当該命令に違反する行為をし、かつ、当該行為を引き続きするおそれがあるときは、当該行為をした者が使用する船舶について停泊港 及び停泊期間を指定して停泊を命じ、又は当該行為に使用した漁具 その他特定水産資源の採捕の用に供される物について期間を指定してその使用の禁止 若しくは陸揚げを命ずることができる。

第四節 補則

1項

都道府県知事は、都道府県別漁獲可能量の管理を行うに当たり特に必要があると認めるときは、農林水産大臣に対し、第百二十一条第三項の規定により同条第一項の指示について必要な指示をすることを求めることができる。