犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第8章 取調べ

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 08月20日 10時53分


1項

取調べに当たつては、予断を排し、被疑者 その他関係者の供述、弁解等の内容のみにとらわれることなく、あくまで真実の発見を目標として行わなければならない。

1項

取調べを行うに当たつては、被疑者の動静に注意を払い、被疑者の逃亡 及び自殺 その他の事故を防止するように注意しなければならない。

2項

取調べを行うに当たつては、事前に相手方の年令、性別、境遇、性格等を把握するように努めなければならない。

3項

取調べに当たつては、冷静を保ち、感情にはしることなく、被疑者の利益となるべき事情をも明らかにするように努めなければならない。

4項

取調べに当たつては、言動に注意し、相手方の年令、性別、境遇、性格等に応じ、その者にふさわしい取扱いをする等 その心情を理解して行わなければならない。

5項

警察官は、常に相手方の特性に応じた取調べ方法の習得に努め、取調べに当たつては、その者の特性に応じた方法を用いるようにしなければならない。

1項

取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫 その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない。

2項

取調べを行うに当たつては、自己が期待し、又は希望する供述を相手方に示唆する等の方法により、みだりに供述を誘導し、供述の代償として利益を供与すべきことを約束し、その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。

3項

取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に 又は長時間にわたり行うことを避けなければならない。


この場合において、午後10時から午前5時までの間に、又は1日につき8時間を超えて、被疑者の取調べを行うときは、警察本部長 又は警察署長の承認を受けなければならない。

1項

精神 又は身体に障害のある者の取調べを行うに当たつては、その者の特性を十分に理解し、取調べを行う時間や場所等について配慮するとともに、供述の任意性に疑念が生じることのないように、その障害の程度等を踏まえ、適切な方法を用いなければならない。

1項

被疑者の取調べを行うに当たつては、あらかじめ、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げなければならない。

2項

前項の告知は、取調べが相当期間中断した後再びこれを開始する場合 又は取調べ警察官が交代した場合には、改めて行わなければならない。

1項

共犯者の取調べは、なるべく各別に行つて、通謀を防ぎ、かつ、みだりに供述の符合を図ることのないように注意しなければならない。

2項

取調べを行うに当たり、対質尋問を行う場合には、特に慎重を期し、一方が他方の威圧を受ける等のことがないようその時期 及び方法を誤らないように注意しなければならない。

1項

捜査上特に必要がある場合において、証拠物を被疑者に示すときは、その時期 及び方法に適切を期するとともに、その際における被疑者の供述を調書に記載しておかなければならない。

1項

相手方の現在する場所で臨床の取調べを行うに当たつては、相手方の健康状態に十分の考慮を払うことはもちろん、捜査に重大な支障のない限り、家族、医師 その他適当な者を立ち会わせるようにしなければならない。

1項

取調べにより被疑者の供述があつたときは、その供述が被疑者に不利な供述であると有利な供述であるとを問わず、直ちにその供述の真実性を明らかにするための捜査を行い、物的証拠、情況証拠 その他必要な証拠資料を収集するようにしなければならない。

2項

被疑者の供述については、事前に収集した証拠 及び前項の規定により収集した証拠を踏まえ、客観的事実と符合するかどうか、合理的であるかどうか等について十分に検討し、その真実性について判断しなければならない。

1項

事実を明らかにするため被疑者以外の関係者を取り調べる必要があるときは、なるべく、その事実を直接に経験した者から供述を求めるようにしなければならない。

2項

重要な事項に係るもので伝聞にわたる供述があつたときは、その事実を直接に経験した者について、更に取調べを行うように努めなければならない。

1項

被疑者以外の者を取り調べる場合においては、その者が死亡、精神 又は身体の故障 その他の理由により公判準備 又は公判期日において供述することができないおそれがあり、かつ、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるときは、捜査に支障のない限り被疑者、弁護人 その他適当な者を取調べに立ち会わせ、又は検察官による取調べが行われるように連絡する等の配意をしなければならない。

1項

刑訴法第226条 又は同法第227条の規定による証人尋問の必要があると認められるときは、証人尋問請求方連絡書に、同法第226条 又は同法第227条に規定する理由があることを疎明すべき資料を添えて、検察官に連絡しなければならない。


この場合において、証明すべき事実 及び尋問すべき事項は、特に具体的かつ明瞭に記載するものとする。

1項

取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書 又は参考人供述調書を作成しなければならない。

2項

被疑者 その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、被疑者供述調書 又は参考人供述調書を作成しなければならない。

1項
被疑者供述調書には、おおむね次の事項を明らかにしておかなければならない。
(1) 号

本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢 及び出生地(被疑者が法人であるときは名称 又は商号、主たる事務所 又は本店の所在地 並びに代表者の氏名 及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地 並びに代表者、管理人 又は主幹者の氏名 及び住居

(2) 号
旧氏名、変名、偽名、通称 及びあだ名
(3) 号

位記、勲章、褒賞、記章、恩給 又は年金の有無(もしあるときは、その種類 及び等級

(4) 号

前科の有無(もしあるときは、その罪名、刑名、刑期、罰金 又は科料の金額、刑の執行猶予の言渡し 及び保護観察に付されたことの有無、犯罪事実の概要 並びに裁判をした裁判所の名称 及びその年月日

(5) 号
刑の執行停止、仮釈放、仮出所、恩赦による刑の減免 又は刑の消滅の有無
(6) 号

起訴猶予 又は微罪処分の有無(もしあるときは、犯罪事実の概要、処分をした庁名 及び処分年月日

(7) 号

保護処分を受けたことの有無(もしあるときは、その処分の内容、処分をした庁名 及び処分年月日

(8) 号

現に他の警察署 その他の捜査機関において捜査中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要 及び当該捜査機関の名称

(9) 号

現に裁判所に係属中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要、起訴の年月日 及び当該裁判所の名称

(10) 号
学歴、経歴、資産、家族、生活状態 及び交友関係
(11) 号

被害者との親族 又は同居関係の有無(もし親族関係のあるときは、その続柄

(12) 号
犯罪の年月日時、場所、方法、動機 又は原因 並びに犯行の状況、被害の状況 及び犯罪後の行動
(13) 号

盗品等に関する罪の被疑者については、本犯と親族 又は同居の関係の有無(もし親族関係があるときは、その続柄

(14) 号

犯行後、国外にいた場合には、その始期 及び終期

(15) 号

未成年者、成年被後見人 又は被保佐人であるときは、その法定代理人 又は保佐人の氏名 及び住居(法定代理人 又は保佐人が法人であるときは名称 又は商号、主たる事務所 又は本店の所在地 並びに代表者の氏名 及び住居

2項

参考人供述調書については、捜査上必要な事項を明らかにするとともに、被疑者との関係をも記載しておかなければならない。

3項

刑訴法第60条の勾留の原因たるべき事項 又は同法第89条に規定する保釈に関し除外理由たるべき事項があるときは、被疑者供述調書 又は参考人供述調書に、その状況を明らかにしておかなければならない。

1項

供述調書を作成するに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。

(1) 号

形式に流れることなく、推測 又は誇張を排除し、不必要な重複 又は冗長な記載は避け、分かりやすい表現を用いること。

(2) 号

犯意、着手の方法、実行行為の態様、未遂既遂の別、共謀の事実等犯罪構成に関する事項については、特に明確に記載するとともに、事件の性質に応じて必要と認められる場合には、主題ごと 又は場面ごとの供述調書を作成するなどの工夫を行うこと。

(3) 号

必要があるときは、問答の形式をとり、又は供述者の供述する際の態度を記入し、供述の内容のみならず供述したときの状況をも明らかにすること。

(4) 号

供述者が略語、方言、隠語等を用いた場合において、供述の真実性を確保するために必要があるときは、これを そのまま記載し、適当な注を付しておく等の方法を講ずること。

2項

供述を録取したときは、これを供述者に閲覧させ、又は供述者が明らかにこれを聞き取り得るように読み聞かせるとともに、供述者に対して増減変更を申し立てる機会を十分に与えなければならない。

3項

被疑者の供述について前項の規定による措置を講ずる場合において、被疑者が調書(司法警察職員捜査書類基本書式例による調書に限る。以下 この項において同じ。)の毎葉の記載内容を確認したときは、それを証するため調書毎葉の欄外に署名 又は押印を求めるものとする。

1項

供述調書の作成に当たつては、警察官 その他適当な者に記録 その他の補助をさせることができる。


この場合においては、その供述調書に補助をした者の署名押印を求めなければならない。

2項

取調べを行うに当たつて弁護人 その他適当と認められる者を立ち会わせたときは、その供述調書に立会人の署名押印を求めなければならない。

1項

供述者が、供述調書に署名することができないときは警察官が代筆し、押印することができないときは指印させなければならない。

2項

前項の規定により、警察官が代筆したときは、その警察官が代筆した理由を記載して署名押印しなければならない。

3項

供述者が供述調書に署名 又は押印を拒否したときは、警察官がその旨を記載して署名押印しておかなければならない。

1項

捜査上の必要により、学識経験者 その他の通訳人を介して取調べを行つたときは、供述調書に、その旨 及び通訳人を介して当該供述調書を読み聞かせた旨を記載するとともに、通訳人の署名押印を求めなければならない。

2項

捜査上の必要により、学識経験者 その他の翻訳人に被疑者 その他の関係者が提出した書面 その他の捜査資料たる書面を翻訳させたときは、その翻訳文を記載した書面に翻訳人の署名押印を求めなければならない。

1項

被疑者 又は被告人を取調べ室 又はこれに準ずる場所において取り調べたとき(当該取調べに係る事件が、第198条の規定により送致しない事件と認められる場合を除く)は、当該取調べを行つた日(当該日の翌日の午前零時以降まで継続して取調べを行つたときは、当該翌日の午前零時から当該取調べが終了するまでの時間を含む。次項において同じ。)ごとに、速やかに取調べ状況報告書(別記様式第16号)を作成しなければならない。

2項

前項の場合において、逮捕 又は勾留(少年法昭和23年法律第168号第43条第1項の規定による請求に基づく同法第17条第1項の措置を含む。)により身柄を拘束されている被疑者 又は被告人について、当該逮捕 又は勾留の理由となつている犯罪事実以外の犯罪に係る被疑者供述調書を作成したときは、取調べ状況報告書に加え、当該取調べを行つた日ごとに、速やかに余罪関係報告書(別記様式第17号)を作成しなければならない。

3項

取調べ状況報告書 及び余罪関係報告書を作成した場合において、被疑者 又は被告人がその記載内容を確認したときは、それを証するため当該取調べ状況報告書 及び余罪関係報告書の確認欄に署名押印を求めるものとする。

4項

第181条の規定は、前項の署名押印について準用する。


この場合において、

同条第3項
その旨」とあるのは、
「その旨 及び その理由」と

読み替えるものとする。

1項

次の各号いずれかに掲げる事件について、逮捕 若しくは勾留されている被疑者の取調べを行うとき 又は被疑者に対し弁解の機会を与えるときは、刑訴法第301条の2第4項各号いずれかに該当する場合を除き、取調べ等の録音・録画(取調べ 又は弁解の機会における被疑者の供述 及びその状況を録音 及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録することをいう。次項 及び次条において同じ。)をしなければならない。

(1) 号
死刑 又は無期の懲役 若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
(2) 号

短期1年以上の有期の懲役 又は禁錮に当たる罪であつて故意の犯罪行為により被害者を死亡させたものに係る事件

2項

逮捕 又は勾留されている被疑者が精神に障害を有する場合であつて、その被疑者の取調べを行うとき 又は被疑者に対し弁解の機会を与えるときは、必要に応じ、取調べ等の録音・録画をするよう努めなければならない。

1項

取調べ等の録音・録画をしたときは、速やかに録音・録画状況報告書(別記様式第18号)を作成しなければならない。

1項

取調べ室は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。

(1) 号

扉を片側内開きとするなど被疑者の逃走 及び自殺 その他の事故の防止に適当な構造 及び設備を有すること。

(2) 号

外部から取調べ室内が容易に望見されないような構造 及び設備を有すること。

(3) 号
透視鏡を備え付けるなど取調べ状況の把握のための構造 及び設備を有すること。
(4) 号

適当な換気、照明 及び防音のための設備を設けるなど適切な環境で被疑者が取調べを受けることができる構造 及び設備を有すること。

(5) 号
取調べ警察官、被疑者 その他関係者の数 及び必要な設備に応じた適当な広さであること。