博物館法

昭和二十六年法律第二百八十五号
分類 法律
カテゴリ   教育
@ 施行日 : 令和四年四月十五日 ( 2022年 4月15日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第二十四号による改正
最終編集日 : 2023年 01月27日 19時24分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 登録

  • 第三章 公立博物館

  • 第四章 私立博物館

  • 第五章 雑則

第一章 総則

1項

この法律は、社会教育法昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、博物館の設置 及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術 及び文化の発展に寄与することを目的とする。

1項

この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館 及び図書館法昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く)のうち、地方公共団体、一般社団法人 若しくは一般財団法人、宗教法人 又は政令で定めるその他の法人(独立行政法人(独立行政法人通則法平成十一年法律第百三号第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十九条において同じ。)を除く)が設置するもので次章の規定による登録を受けたものをいう。

2項

この法律において、「公立博物館」とは、地方公共団体の設置する博物館をいい、「私立博物館」とは、一般社団法人 若しくは一般財団法人、宗教法人 又は前項の政令で定める法人の設置する博物館をいう。

3項

この法律において「博物館資料」とは、博物館が収集し、保管し、又は展示する資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。)をいう。

1項

博物館は、前条第一項に規定する目的を達成するため、おおむね次に掲げる事業を行う。

一 号

実物、標本、模写、模型、文献、図表、写真、フィルム、レコード等の博物館資料を豊富に収集し、保管し、及び展示すること。

二 号

分館を設置し、又は博物館資料を当該博物館外で展示すること。

三 号

一般公衆に対して、博物館資料の利用に関し必要な説明、助言、指導等を行い、又は研究室、実験室、工作室、図書室等を設置してこれを利用させること。

四 号

博物館資料に関する専門的、技術的な調査研究を行うこと。

五 号

博物館資料の保管 及び展示等に関する技術的研究を行うこと。

六 号

博物館資料に関する案内書、解説書、目録、図録、年報、調査研究の報告書等を作成し、及び頒布すること。

七 号

博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、及び その開催を援助すること。

八 号

当該博物館の所在地 又は その周辺にある文化財保護法昭和二十五年法律第二百十四号)の適用を受ける文化財について、解説書 又は目録を作成する等 一般公衆の当該文化財の利用の便を図ること。

九 号

社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動 その他の活動の機会を提供し、及び その提供を奨励すること。

十 号

他の博物館、博物館と同一の目的を有する国の施設等と緊密に連絡し、協力し、刊行物 及び情報の交換、博物館資料の相互貸借等を行うこと。

十一 号

学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術 又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること。

2項

博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。

1項
博物館に、館長を置く。
2項

館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。

3項

博物館に、専門的職員として学芸員を置く。

4項

学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示 及び調査研究 その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

5項

博物館に、館長 及び学芸員のほか、学芸員補 その他の職員を置くことができる。

6項

学芸員補は、学芸員の職務を助ける。

1項

次の各号いずれかに該当する者は、学芸員となる資格を有する。

一 号

学士の学位(学校教育法昭和二十二年法律第二十六号第百四条第二項に規定する文部科学大臣の定める学位(専門職大学を卒業した者に対して授与されるものに限る)を含む。)を有する者で、大学において文部科学省令で定める博物館に関する科目の単位を修得したもの

二 号

大学に二年以上在学し、前号の博物館に関する科目の単位を含めて六十二単位以上を修得した者で、三年以上学芸員補の職にあつたもの

三 号

文部科学大臣が、文部科学省令で定めるところにより、前二号に掲げる者と同等以上の学力 及び経験を有する者と認めた者

2項

前項第二号の学芸員補の職には、官公署、学校 又は社会教育施設(博物館の事業に類する事業を行う施設を含む。)における職で、社会教育主事、司書 その他の学芸員補の職と同等以上の職として文部科学大臣が指定するものを含むものとする。

1項

学校教育法第九十条第一項の規定により大学に入学することのできる者は、学芸員補となる資格を有する。

1項

文部科学大臣 及び都道府県の教育委員会は、学芸員 及び学芸員補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うよう努めるものとする。

1項

文部科学大臣は、博物館の健全な発達を図るために、博物館の設置 及び運営上 望ましい基準を定め、これを公表するものとする。

1項

博物館は、当該博物館の運営の状況について評価を行うとともに、その結果に基づき博物館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

1項

博物館は、当該博物館の事業に関する地域住民 その他の関係者の理解を深めるとともに、これらの者との連携 及び協力の推進に資するため、当該博物館の運営の状況に関する情報を積極的に提供するよう努めなければならない。

第二章 登録

1項

博物館を設置しようとする者は、当該博物館について、当該博物館の所在する都道府県の教育委員会(当該博物館(都道府県が設置するものを除く)が指定都市(地方自治法昭和二十二年法律第六十七号第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下 この条 及び第二十九条において同じ。)の区域内に所在する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会。同条除き、以下同じ。)に備える博物館登録原簿に登録を受けるものとする。

1項

前条の規定による登録を受けようとする者は、設置しようとする博物館について、左に掲げる事項を記載した登録申請書を都道府県の教育委員会に提出しなければならない。

一 号

設置者の名称 及び私立博物館にあつては設置者の住所

二 号
名称
三 号
所在地
2項

前項の登録申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 号

公立博物館にあつては、設置条例の写し、館則の写し、直接博物館の用に供する建物 及び土地の面積を記載した書面 及び その図面、当該年度における事業計画書 及び予算の歳出の見積りに関する書類、博物館資料の目録 並びに館長 及び学芸員の氏名を記載した書面

二 号

私立博物館にあつては、当該法人の定款の写し又は当該宗教法人の規則の写し、館則の写し、直接博物館の用に供する建物 及び土地の面積を記載した書面 及び その図面、当該年度における事業計画書 及び収支の見積りに関する書類、博物館資料の目録 並びに館長 及び学芸員の氏名を記載した書面

1項

都道府県の教育委員会は、前条の規定による登録の申請があつた場合においては、当該申請に係る博物館が左に掲げる要件を備えているかどうかを審査し、備えていると認めたときは、同条第一項各号に掲げる事項 及び登録の年月日を博物館登録原簿に登録するとともに登録した旨を当該登録申請者に通知し、備えていないと認めたときは、登録しない旨をその理由を附記した書面で当該登録申請者に通知しなければならない。

一 号

第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な博物館資料があること。

二 号

第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な学芸員 その他の職員を有すること。

三 号

第二条第一項に規定する目的を達成するために必要な建物 及び土地があること。

四 号

一年を通じて百五十日以上開館すること。

1項

博物館の設置者は、第十一条第一項各号に掲げる事項について変更があつたとき、又は同条第二項に規定する添付書類の記載事項について重要な変更があつたときは、その旨を都道府県の教育委員会に届け出なければならない。

2項

都道府県の教育委員会は、第十一条第一項各号に掲げる事項に変更があつたことを知つたときは、当該博物館に係る登録事項の変更登録をしなければならない。

1項

都道府県の教育委員会は、博物館が第十二条各号に掲げる要件を欠くに至つたものと認めたとき、又は虚偽の申請に基いて登録した事実を発見したときは、当該博物館に係る登録を取り消さなければならない。


但し、博物館が天災 その他やむを得ない事由により要件を欠くに至つた場合においては、その要件を欠くに至つた日から二年間は この限りでない。

2項

都道府県の教育委員会は、前項の規定により登録の取消しをしたときは、当該博物館の設置者に対し、速やかにその旨を通知しなければならない。

1項

博物館の設置者は、博物館を廃止したときは、すみやかにその旨を都道府県の教育委員会に届け出なければならない。

2項

都道府県の教育委員会は、博物館の設置者が当該博物館を廃止したときは、当該博物館に係る登録をまつ消しなければならない。

1項

この章に定めるものを除くほか、博物館の登録に関し必要な事項は、都道府県の教育委員会の規則で定める。

第三章 公立博物館

1項

公立博物館の設置に関する事項は、当該博物館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。

1項

公立博物館は、当該博物館を設置する地方公共団体の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律昭和三十一年法律第百六十二号第二十三条第一項の条例の定めるところにより地方公共団体の長がその設置、管理 及び廃止に関する事務を管理し、及び執行することとされた博物館にあつては、当該地方公共団体の長。第二十一条において同じ。)の所管に属する。

1項

公立博物館に、博物館協議会を置くことができる。

2項

博物館協議会は、博物館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、館長に対して意見を述べる機関とする。

1項

博物館協議会の委員は、当該博物館を設置する地方公共団体の教育委員会が任命する。

1項

博物館協議会の設置、その委員の任命の基準、定数 及び任期 その他 博物館協議会に関し必要な事項は、当該博物館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。


この場合において、委員の任命の基準については、文部科学省令で定める基準を参酌するものとする。

1項

公立博物館は、入館料 その他 博物館資料の利用に対する対価を徴収してはならない。


但し、博物館の維持運営のためにやむを得ない事情のある場合は、必要な対価を徴収することができる。

1項

国は、博物館を設置する地方公共団体に対し、予算の範囲内において、博物館の施設、設備に要する経費 その他 必要な経費の一部を補助することができる。

2項

前項の補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。

1項

国は、博物館を設置する地方公共団体に対し第二十四条の規定による補助金の交付をした場合において、左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、第一号の場合の取消が虚偽の申請に基いて登録した事実の発見に因るものである場合には、既に交付した補助金を、第三号 及び第四号に該当する場合には、既に交付した当該年度の補助金を返還させなければならない。

一 号

当該博物館について、第十四条の規定による登録の取消があつたとき。

二 号

地方公共団体が当該博物館を廃止したとき。

三 号

地方公共団体が補助金の交付の条件に違反したとき。

四 号

地方公共団体が虚偽の方法で補助金の交付を受けたとき。

第四章 私立博物館

1項

都道府県の教育委員会は、博物館に関する指導資料の作成 及び調査研究のために、私立博物館に対し必要な報告を求めることができる。

2項

都道府県の教育委員会は、私立博物館に対し、その求めに応じて、私立博物館の設置 及び運営に関して、専門的、技術的の指導 又は助言を与えることができる。

1項

国 及び地方公共団体は、私立博物館に対し、その求めに応じて、必要な物資の確保につき援助を与えることができる。

第五章 雑則

1項

博物館の事業に類する事業を行う施設で、国 又は独立行政法人が設置する施設にあつては文部科学大臣が、その他の施設にあつては当該施設の所在する都道府県の教育委員会(当該施設(都道府県が設置するものを除く)が指定都市の区域内に所在する場合にあつては、当該指定都市の教育委員会)が、文部科学省令で定めるところにより、博物館に相当する施設として指定したものについては、第二十七条第二項の規定を準用する。