子の返還の申立ては、申立書(以下「子の返還申立書」という。)を家庭裁判所に提出してしなければならない。
国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
第二款 第一審裁判所における子の返還申立事件の手続
⤏ 第一目 子の返還の申立て
子の返還申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
この場合において、第二号に掲げる申立ての趣旨は、返還を求める子 及び子を返還すべき条約締約国を特定して記載しなければならない。
申立人は、一の申立てにより数人の子についての子の返還を求めることができる。
子の返還申立書が第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い子の返還の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。
前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨を変更することができる。
ただし、第八十九条の規定により審理を終結した後は、この限りでない。
申立ての趣旨の変更は、子の返還申立事件の手続の期日においてする場合を除き、書面でしなければならない。
家庭裁判所は、申立ての趣旨の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。
子の返還の申立てがあった場合には、家庭裁判所は、申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、子の返還申立書の写しを相手方に送付しなければならない。
前項の規定による子の返還申立書の写しの送付は、公示送達の方法によっては、することができない。
第七十条第四項から第六項までの規定は、第一項の規定による子の返還申立書の写しの送付をすることができない場合について準用する。
裁判長は、第一項の規定による子の返還申立書の写しの送付の費用の予納を相当の期間を定めて申立人に命じた場合において、その予納がないときは、命令で、子の返還申立書を却下しなければならない。
前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
⤏ 第二目 子の返還申立事件の手続の期日
家庭裁判所は、受命裁判官に子の返還申立事件の手続の期日における手続を行わせることができる。
ただし、事実の調査 及び証拠調べについては、第八十二条第三項の規定 又は第八十六条第一項において準用する民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定により受命裁判官が事実の調査 又は証拠調べをすることができる場合に限る。
前項の場合においては、家庭裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
家庭裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているとき その他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、家庭裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、子の返還申立事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く。)を行うことができる。
子の返還申立事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。
子の返還申立事件の手続の期日における通訳人の立会い等については民事訴訟法第百五十四条の規定を、子の返還申立事件の手続関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、手続に参加した子、代理人 及び補佐人に対する措置については同法第百五十五条の規定を、それぞれ準用する。
⤏ 第三目 事実の調査及び証拠調べ
家庭裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより 又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。
申立人 及び相手方は、それぞれ第二十七条に規定する事由(第二十八条第一項第二号に規定する場合に関する事由を含む。)についての資料 及び同項に規定する事由についての資料を提出するほか、事実の調査 及び証拠調べに協力するものとする。
疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない。
家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項の規定により立ち会わせた家庭裁判所調査官に意見を述べさせることができる。
第七十九条第二項から第四項までの規定は前項の診断について、前条の規定は裁判所技官の期日への立会い 及び意見の陳述について、それぞれ準用する。
前項の規定による嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の家庭裁判所において事実の調査をすることを相当と認めるときは、更に事実の調査の嘱託をすることができる。
前三項の規定により受託裁判官 又は受命裁判官が事実の調査をする場合には、家庭裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
家庭裁判所は、事実の調査をしたときは、特に必要がないと認める場合を除き、その旨を当事者 及び手続に参加した子に通知しなければならない。
家庭裁判所は、子の返還の申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。
家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。
ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
子の返還申立事件の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定(同法第百七十九条、第百八十二条、第百八十七条から第百八十九条まで 及び第二百七条第二項の規定を除く。)を準用する。
この場合において、
同法第百八十五条第一項中
「地方裁判所 若しくは簡易裁判所」とあるのは
「他の家庭裁判所」と、
同条第二項中
「地方裁判所 又は簡易裁判所」とあるのは
「家庭裁判所」と
読み替えるものとする。
前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。
家庭裁判所は、申立人が不法な連れ去り 又は不法な留置があったことを証する文書を常居所地国において得ることができるときは、申立人に対し、当該文書を提出することを求めることができる。
⤏ 第四目 子の返還申立事件の手続における子の意思の把握等
家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査 その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、終局決定をするに当たり、子の年齢 及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。
⤏ 第五目 審理の終結等
家庭裁判所は、子の返還申立事件の手続においては、申立てが不適法であるとき 又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を定めなければならない。
ただし、当事者双方が立ち会うことができる子の返還申立事件の手続の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。
家庭裁判所は、前条の規定により審理を終結したときは、裁判をする日を定めなければならない。
⤏ 第六目 裁判
家庭裁判所は、子の返還申立事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局決定をすることができる。
手続の併合を命じた数個の子の返還申立事件中その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。
終局決定は、当事者 及び子に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
ただし、子(手続に参加した子を除く。)に対しては、子の年齢 及び発達の程度 その他一切の事情を考慮して子の利益を害すると認める場合は、この限りでない。
終局決定は、当事者に告知することによってその効力を生ずる。
ただし、子の返還を命ずる終局決定は、確定しなければその効力を生じない。
終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。
終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。
終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
終局決定に誤記 その他これに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより 又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。
第一項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
終局決定に対し適法な即時抗告があったときは、前二項の即時抗告は、することができない。
民事訴訟法第二百四十七条、第二百五十六条第一項 及び第二百五十八条(第二項後段を除く。)の規定は、終局決定について準用する。
この場合において、
同法第二百五十六条第一項中
「言渡し後」とあるのは、
「終局決定が告知を受ける者に最初に告知された日から」と
読み替えるものとする。
家庭裁判所は、終局決定の前提となる法律関係の争い その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。
中間決定は、裁判書を作成してしなければならない。
終局決定以外の裁判は、これを受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。
終局決定以外の裁判については、これを受ける者(数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。
第九十二条から第九十六条まで(第九十三条第一項 及び第二項 並びに第九十四条第一項を除く。)の規定は、前項の裁判について準用する。
この場合において、
第九十四条第二項第二号中
「理由」とあるのは、
「理由の要旨」と
読み替えるものとする。
終局決定以外の裁判は、判事補が単独ですることができる。
⤏ 第七目 裁判によらない子の返還申立事件の終了
子の返還の申立ては、終局決定が確定するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
ただし、申立ての取下げは、終局決定がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
前項ただし書の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。
ただし、申立ての取下げが子の返還申立事件の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。
前項本文の規定による通知を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、申立ての取下げに同意したものとみなす。
同項ただし書の規定による場合において、申立ての取下げがあった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。
民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、申立ての取下げについて準用する。
この場合において、
同法第二百六十一条第三項ただし書中
「口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、
「子の返還申立事件の手続の期日」と
読み替えるものとする。
子の返還申立事件における和解については、民事訴訟法第八十九条、第二百六十四条 及び第二百六十五条の規定を準用する。
この場合において、
同法第二百六十四条 及び第二百六十五条第三項中
「口頭弁論等」とあるのは、
「子の返還申立事件の手続」と
読み替えるものとする。
次の各号に掲げる事項についての和解を調書に記載したときは、その記載は、当該各号に定める裁判と同一の効力を有する。
子の返還
確定した子の返還を命ずる終局決定
子の監護に関する事項、夫婦間の協力扶助に関する事項 及び婚姻費用の分担に関する事項
確定した家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第三十九条の規定による審判
その他の事項
確定判決