土地収用法
第五章 収用委員会
第一節 組織及び権限
収用委員会は、委員七人をもつて組織する。
収用委員会には、就任の順位を定めて、二人以上の予備委員を置かなければならない。
委員 及び予備委員は、法律、経済 又は行政に関してすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、都道府県の議会の同意を得て、都道府県知事が任命する。
委員 及び予備委員は、地方公共団体の議会の議員 又は地方公共団体の長 若しくは常勤の職員 若しくは地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員と兼ねることができない。
委員 及び予備委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、都道府県の議会の閉会 又は解散のためにその同意を得ることができないときは、都道府県知事は、第三項の規定にかかわらず、都道府県の議会の同意を得ないで委員 及び予備委員を任命することができる。
前項の場合においては、任命後最初の議会でその承認を得なければならない。
この場合において、議会の承認を得ることができないときは、都道府県知事は、その委員 及び予備委員を罷免しなければならない。
委員 及び予備委員は、非常勤とする。
ただし、政令で定める都道府県の収用委員会の委員は、政令で定めるところにより、常勤とすることができる。
委員 及び予備委員の任期は、三年とする。
委員に欠員が生じたときは、予備委員のうち先順位者が、就任するものとする。
前項の規定による委員の任期は、前任者の残任期間とする。
次の各号のいずれかに該当する者は、委員 及び予備委員となることができない。
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで 又はその執行を受けることがなくなるまでの者
委員 及び予備委員は、左の各号の一に該当する場合を除いては、在任中 その意に反して罷免されることがない。
委員 及び予備委員が前項各号の一に該当するときは、都道府県知事は、その委員 及び予備委員を罷免しなければならない。
委員 及び予備委員が前条各号の一に該当するに至つたときは、当然失職するものとする。
会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者が、その職務を代理する。
前項の職員は、都道府県知事が当該都道府県の職員のうちから会長の同意を得て任命する。
都道府県知事は、第一項の規定にかかわらず、その定める当該都道府県の内部組織において収用委員会の事務を整理させることができる。
収用委員会は、収用委員会の処分(行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第三条第二項に規定する処分をいう。以下この条において同じ。) 又は第六十四条の規定により会長 若しくは第六十条の二第二項に規定する指名委員がする処分に係る同法第十一条第一項(同法第三十八条第一項(同法第四十三条第二項において準用する場合を含む。)又は同法第四十三条第一項において準用する場合を含む。)の規定による都道府県を被告とする訴訟について、当該都道府県を代表する。
この法律 又はこの法律に基く条例に規定する事項を除くの外、収用委員会の会議 その他運営に必要な事項は、収用委員会が定める。
第二節 会議及び審理
収用委員会は、会長 及び三人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、又は議決をすることができない。
収用委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。
可否同数のときは、会長の決するところによる。
収用委員会が第五十五条第一項各号の規定による議決をする場合においては、前項の規定にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならない。
収用委員会は、必要があると認めるときは、審理 又は調査に関する事務(裁決 及び決定を除く。)の一部を委員に委任することができる。
収用委員会 又は前項の規定により委任を受けた委員(以下「指名委員」という。)は、必要があると認めるときは、第六十五条第一項第三号に規定する事務を、収用委員会の事務を整理する職員に行なわせることができる。
次の各号のいずれかに該当する者は、委員として収用委員会の会議 若しくは審理に加わり、又は議決をすることができない。
起業者、土地所有者 及び関係人の配偶者、四親等内の親族、同居の親族、代理人、保佐人 及び補助人
株式会社、合名会社、合資会社、合同会社 その他の法人が起業者、土地所有者 及び関係人である場合において、当該株式会社の取締役、執行役 及び監査役、当該合名会社の社員、当該合資会社の無限責任社員 及び業務を執行する有限責任社員、当該合同会社の業務を執行する社員 その他当該法人の理事、監事 その他これらに準ずる職務権限を有する者
委員のうち一人以上が前項の規定に該当するため委員の数が減少して、会議を開き、審理を行い、又は議決をすることができないときは、予備委員が就任の順位に従つて、会長の指名により臨時に補充されるものとする。
収用委員会の審理は、公開しなければならない。
但し、収用委員会は、審理の公正が害される虞があるときその他公益上必要があると認めるときは、公開しないことができる。
起業者、土地所有者 及び関係人は、第四十条第一項の規定によつて提出された裁決申請書の添附書類 又は第四十三条第一項の規定によつて提出し、若しくは受理された意見書に記載された事項については、第六十五条第一項第一号の規定によつて意見書の提出を命ぜられた場合 又は第二項に規定する場合を除いては、これを説明する場合に限り、収用委員会の審理において意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。
起業者、土地所有者 及び関係人は、損失の補償に関する事項については、収用委員会の審理において、新たに意見書を提出し、又は口頭で意見を述べることができる。
起業者、土地所有者 及び関係人は、事業の認定に対する不服に関する事項 その他の事項であつて、収用委員会の審理と関係がないものを前二項の規定による意見書に記載し、又は収用委員会の審理と関係がない事項について口頭で意見を述べることができない。
起業者、土地所有者 及び関係人は、第四十条第一項の規定による裁決申請書の添付書類により、若しくは第四十三条第一項の規定による意見書により申し立てた事項 又は第一項 若しくは第二項の規定によつて意見書により、若しくは口頭で述べた意見の内容を証明するために、収用委員会に対して資料を提出すること、必要な参考人を審問すること、鑑定人に鑑定を命ずること 又は土地 若しくは物件を実地に調査することを申し立てることができる。
起業者、土地所有者 及び関係人は、審理において収用委員会が第六十五条第一項の規定による処分によつて出頭を命じた参考人 又は鑑定人を自ら審問することを申し立てることができる。
会長 又は指名委員は、起業者、土地所有者 及び関係人が述べる意見、申立、審問 その他の行為が既に述べた意見 又は申立と重複するとき、裁決の申請に係る事件と関係がない事項にわたるときその他相当でないと認めるときは、これを制限することができる。
会長 又は指名委員は、収用委員会の公正な審理の進行を妨げる者に対しては、退場を命ずることができる。
収用委員会は、第六十三条第四項の規定による申立てが相当であると認めるとき、又は審理 若しくは調査のために必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
起業者、土地所有者 若しくは関係人 又は参考人に出頭を命じて審問し、又は意見書 若しくは資料の提出を命ずること。
前項第二号の規定によつて鑑定人に土地 若しくは建物 又はこれらに関する所有権以外の権利の価格を鑑定させるときは、当該鑑定人のうち少なくとも一人は、不動産鑑定士でなければならない。
第六十条の二の規定によつて委員 又は職員が土地 又は物件を実地に調査する場合においては、その身分を示す証票を携帯し、土地 又は物件の所有者、占有者 その他の利害関係人の請求があつたときは、これを示さなければならない。
前項に規定する証票の様式は、国土交通省令で定める。
第一項第二号の規定による鑑定人は、第六十一条第一項各号の一に該当する者であつてはならない。
第一項の規定による鑑定人 又は参考人に対しては、条例で定めるところにより、旅費 及び手当を給する。
共同の利益を有する多数の土地所有者 又は関係人は、その中から、全員のために収用委員会の審理において当事者となるべき者(以下「代表当事者」という。)を三人以内で選定することができる。
代表当事者を選定した土地所有者 又は関係人(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は変更することができる。
第一項の規定による選定 並びに前項の規定による選定の取消し及び変更は、書面をもつて証明しなければならない。
代表当事者が選定されたときは、代表当事者を除く選定者は、代表当事者を通じてのみ、前項に規定する行為をすることができる。
選定者に対する収用委員会の通知 その他の行為は、二人以上の代表当事者が選定されている場合においても、一人の代表当事者に対してすれば足りる。
収用委員会は、共同の利益を有する土地所有者 又は関係人が著しく多数である場合において、審理の円滑な進行のため必要があると認めるときは、当該土地所有者 又は関係人に対し、第一項の規定により代表当事者を選定すべきことを勧告することができる。
裁決は、文書によつて行う。
裁決書には、その理由 及び成立の日を附記し、会長 及び会議に加わつた委員は、これに署名押印しなければならない。
裁決書の正本には、収用委員会の印章を押し、これを起業者、土地所有者 及び関係人に送達しなければならない。