この法律は、事前防災 及び減災 その他迅速な復旧復興 並びに国際競争力の向上に資する国民生活 及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある大規模自然災害等(以下単に「大規模自然災害等」という。)に備えた国土の全域にわたる強靱な国づくり(以下「国土強靱化」という。)の推進に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにし、及び国土強靱化基本計画の策定 その他国土強靱化に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、国土強靱化推進本部を設置すること等により、国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の確保 並びに国民生活の向上 及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法
前文
我が国は、地理的 及び自然的な特性から、多くの大規模自然災害等による被害を受け、自然の猛威は想像を超える悲惨な結果をもたらしてきた。我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。
我が国においては、二十一世紀前半に南海トラフ沿いで大規模な地震が発生することが懸念されており、加えて、首都直下地震、火山の噴火等による大規模自然災害等が発生するおそれも指摘されている。さらに、地震、火山の噴火等による大規模自然災害等が連続して発生する可能性も想定する必要がある。これらの大規模自然災害等が想定される最大の規模で発生した場合、東日本大震災を超える甚大な被害が発生し、まさに国難ともいえる状況となるおそれがある。また、近年、地震、台風、局地的な豪雨等による大規模自然災害等が各地で頻発している。我々は、このような自然の猛威から目をそらしてはならず、その猛威に正面から向き合わなければならない。このような大規模自然災害等から国民の生命、身体 及び財産を保護し、並びに国民生活 及び国民経済を守ることは、国が果たすべき基本的な責任の一つである。
もっとも、様々な災害が多発する我が国において、求められる事前防災 及び減災に係る施策には限りがなく、他方、当該施策を実施するための財源は限られている。今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて早急に事前防災 及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害等に強い国土 及び地域を作るとともに、自らの生命 及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。また、大規模自然災害等から国 及び国民を守るためには、大規模自然災害等の発生から七十二時間を経過するまでの間において、人員、物資、資金等の資源を、優先順位を付けて大規模かつ集中的に投入することができるよう、事前に備えておくことが必要である。このためには、国や地方公共団体だけではなく、地域住民、企業、関係団体等も含めて被災状況等の情報を共有すること、平時から大規模自然災害等に備えておくこと 及び新たな技術革新に基づく最先端の技術や装置を活用することが不可欠である。加えて、東日本大震災により甚大な被害を受けた地域の復旧復興に国を挙げて取り組み、災害に強くしなやかな地域社会を再構築することを通じて被災地に希望を与えることも重要である。
第一章 総則
国土強靱化に関する施策の推進は、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震 及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)から得られた教訓を踏まえ、必要な事前防災 及び減災 その他迅速な復旧復興に資する施策を総合的かつ計画的に実施することが重要であるとともに、国際競争力の向上に資することに鑑み、明確な目標の下に、大規模自然災害等からの国民の生命、身体 及び財産の保護 並びに大規模自然災害等の国民生活 及び国民経済に及ぼす影響の最小化に関連する分野について現状の評価を行うこと等を通じて、当該施策を適切に策定し、これを国の計画に定めること等により、行われなければならない。
国は、前条の基本理念にのっとり、国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
地方公共団体は、第二条の基本理念にのっとり、国土強靱化に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
国、地方公共団体、事業者 その他の関係者は、第二条の基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
第二章 基本方針等
国土強靱化の推進を図る上で必要な事項を明らかにするため、大規模自然災害等に対する脆弱性の評価(以下「脆弱性評価」という。)を行うこと。
第三章 国土強靱化基本計画等
政府は、国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、地方公共団体の国土強靱化に関する施策の実施に関する主体的な取組を尊重しつつ、前章に定める基本方針等 及び国が本来果たすべき役割を踏まえ、国土強靱化に関する施策の推進に関する基本的な計画(以下「国土強靱化基本計画」という。)を、国土強靱化基本計画以外の国土強靱化に係る国の計画等の指針となるべきものとして定めるものとする。
前二号に掲げるもののほか、国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、国土強靱化基本計画を公表しなければならない。
政府は、国土強靱化に関する施策の実施状況を踏まえ、必要に応じて、国土強靱化基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとする。
第三項 及び第四項の規定は、国土強靱化基本計画の変更について準用する。
国土強靱化基本計画以外の国の計画は、国土強靱化に関しては、国土強靱化基本計画を基本とするものとする。
都道府県 又は市町村は、国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、当該都道府県 又は市町村の区域における国土強靱化に関する施策の推進に関する基本的な計画(以下「国土強靱化地域計画」という。)を、国土強靱化地域計画以外の国土強靱化に係る当該都道府県 又は市町村の計画等の指針となるべきものとして定めることができる。
第四章 国土強靱化推進本部
国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、国土強靱化推進本部(以下「本部」という。)を置く。
前二号に掲げるもののほか、国土強靱化に関する施策で重要なものの企画 及び立案 並びに総合調整に関すること。
本部は、国土強靱化の推進を図る上で必要な事項を明らかにするため、脆弱性評価の指針を定め、これに従って脆弱性評価を行い、その結果に基づき、国土強靱化基本計画の案を作成しなければならない。
本部は、前項の指針を定めたときは、これを公表しなければならない。
本部は、国土強靱化基本計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、都道府県、市町村、学識経験を有する者 及び国土強靱化に関する施策の推進に関し密接な関係を有する者の意見を聴かなければならない。
前各項の規定は、国土強靱化基本計画の変更の案の作成について準用する。
本部の長は、国土強靱化推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
本部に、国土強靱化推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官、国土強靱化担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、国土強靱化に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)及び国土交通大臣をもって充てる。
本部に、国土強靱化推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。
本部員は、本部長 及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長 並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人 又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。
本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
第五章 雑則
政府は、大規模自然災害等への対処に係る事務の総括 及び情報の集約に関する機能の強化の在り方 その他の国土強靱化の推進を担う組織(本部を除く。)の在り方について、政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上の措置を講ずるものとする。