犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第14章 国際犯罪に関する特則

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 04月21日 22時02分


1項

国際犯罪(外国人に係る犯罪 又は国民の国外犯、大公使館に係る犯罪 その他の外国に係る犯罪をいう。以下同じ。)の捜査については、条約、協定 その他の特別の定めがあるときはこれによるものとし、これらの特別の定めがないときは、この章の規定によるほか、一般の例によるものとする。

1項

国際犯罪の捜査を行うに当たつては、国際法規 及び国際上の慣例を遵守しなければならない。

1項

国際犯罪のうち重要なものについては、あらかじめ、警察本部長に報告し、この指揮を受けて捜査に着手しなければならない。


ただし、急速を要する場合には、必要な処分を行つた後、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。

2項

警察本部長は、国際犯罪の捜査に関し、外国の捜査機関 又は国際刑事警察機構に対する協力要請を行う必要があると認めるときは、警察庁を通じてこれを行うものとする。

1項

国際犯罪の捜査を行うに当たつては、次に掲げる者の身体、名誉、文書 その他の不可侵等の特権を害することのないように注意しなければならない。

(1) 号

大公使 若しくは大公使館員 又はこれらの者の家族

(2) 号
その他外交特権を有する者
2項

前項に掲げる者の使用人を逮捕し、又は取調べを行う必要があると認められるときは、館外における現行犯人逮捕 その他緊急やむを得ない場合を除き、あらかじめ警察本部長の指揮を受けなければならない。

3項

被疑者が外交特権を有する者であるかどうかが疑わしい場合には、速やかに、警察本部長の指揮を受けなければならない。

1項

大公使館 及び大公使 又は大公使館員の居宅、別荘 若しくはこの宿泊する場所については、当該大公使 又は大公使館員の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない。


ただし、重大な犯罪を犯した者を追跡中、その者がこれらの場所に入つた場合で猶予することができないときは、大公使、大公使館員 又はこれらに代わるべき権限を有する者の同意を得て捜索を行うことができる。

1項

外国軍艦については、当該軍艦の艦長の請求がある場合のほか、これに立ち入つてはならない

2項

重大な犯罪を犯した者が逃走して我が国の領海にある外国軍艦内に入つた場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。


ただし、急速を要するときは、当該軍艦の艦長に対し、その者の任意の引渡しを求めることができる。

1項

外国軍艦に属する軍人 又は軍属がその軍艦を離れ、我が国の領域内において犯罪を犯した場合には、速やかに警察本部長の指揮を受けなければならない。


ただし、現行犯 その他急速を要するときは、逮捕 その他捜査上必要な処置をとつた後、速やかに警察本部長の指揮を受けるものとする。

1項

次に掲げる者に係る事件の捜査を行うに当たつては、その者の身体の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。

(1) 号

本務領事官(重大な犯罪の被疑者であり、かつ、その者について裁判官があらかじめ令状を発している場合における本務領事官 及び第3項に規定する領事官を除く

(2) 号

領事伝書使(当該任務を遂行している場合における領事伝書使に限る

2項

次に掲げる者に係る事件でその者が領事任務の遂行に当たつて行つた行為に係るものの捜査を行うに当たつては、その者が我が国の刑事裁判権からの免除を享受することを妨げないように注意しなければならない。

(1) 号

領事官(次項に規定する領事官を除く

(2) 号

領事機関(総領事館、領事館、副領事館 又は代理領事事務所をいう。以下同じ。)の事務技術職員(我が国の国民である者 又は我が国に通常居住している者を除く

3項

前2項の規定は、領事官であつて我が国の国民であるもの 又は我が国に通常居住しているものに係る事件でその者が任務の遂行に当たつて行つた公の行為に係るものの捜査について準用する。

4項

第226条(大公使等に関する特則)第3項の規定は、前3項の場合について準用する。


この場合において、

同項
外交特権」とあるのは、
「領事上の特権 又は免除」と

読み替えるものとする。

5項

領事機関の構成員 又は領事伝書使を逮捕し、又は取り調べる必要があると認められるときは、あらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。


ただし、現行犯人逮捕 その他緊急やむを得ない場合において、第1項 及び第2項第3項において準用する場合を含む。)に規定する特権 及び免除を害しないと認められるときは、この限りでない。

6項

本務領事官を長とする領事機関の公館については、当該領事機関の長 又はこれに代わるべき権限を有する者の請求 又は同意がある場合を除き、これに立ち入らないものとする。

7項

領事機関の公館 又は領事官の居宅において捜査を行う必要があると認められるときは、急速を要する場合を除きあらかじめ、警察本部長の指揮を受けなければならない。

8項

領事機関の公文書(名誉領事官を長とする領事機関の公文書で 他の文書と区別して保管されているもの以外のものを除く)に係る捜査については、文書の不可侵の特権を害することのないように注意しなければならない。

1項

我が国の領海にある外国船舶内における犯罪であつて、次の各号いずれかに該当する場合には、捜査を行うものとする。

(1) 号
我が国の陸上 又は港内の安全を害するとき。
(2) 号

乗組員以外の者 又は我が国の国民に関係があるとき。

(3) 号
重大な犯罪が行われたとき。
1項

外国人の取調べを行い、又は外国人の身柄を拘束するに当たつては、言語、風俗、習慣等の相違を考慮し、当該外国人に係る刑事手続に関し我が国の刑事手続に関する基本的事項についての当該外国人の理解に資するよう適切を期すること等により無用の誤解を生じないように注意しなければならない。

2項

外国人の身柄を拘束したときは、遅滞なく、その者に対し、次の事項を告知するものとする。

(1) 号

当該領事機関に対しその者の身柄が拘束されている旨を通報することを要請することができること。

(2) 号

当該領事機関に対し我が国の法令に反しない限度において信書を発することができること。

3項

前項第1号の規定による要請があつたとき 又は条約 その他の国際約束により要請の有無にかかわらず通報を行うこととされているときは、遅滞なく、当該領事機関に対し同項に規定する者の身柄が拘束されている旨を通報するものとする。

4項

前項の通報を行つたときは、その日時 及び当該通報の相手方を書面に記録しておかなければならない。

1項

外国人であつて日本語に通じないものに対し、当該外国人の理解する言語に通じた警察官以外の警察官が取調べ その他捜査のため必要な措置を行う場合においては、通訳人を介してこれを行うものとする。


ただし、現行犯逮捕、緊急逮捕 その他の直ちに通訳人を付することが困難であるときは、この限りでない。

2項

前項本文の規定により通訳人を介して取調べを行おうとする場合においては、次に掲げる事項に注意しなければならない。

(1) 号

通訳人が被疑者、被害者 その他事件の関係者と親族 その他特別の関係にないかどうかを申し立てさせることにより取調べの適正を期すること。

(2) 号
取調べの際の発問の方法 及び内容の工夫等により通訳の円滑 及び適正を図ること。
(3) 号

通訳人に秘密を厳守させ、及び捜査の遂行に支障を及ぼし 又は被疑者、被害者 その他事件の関係者の名誉を害することのないように配意させること。

1項

国際犯罪の被疑者供述調書には、第178条供述調書の記載事項)に掲げる事項のほか、おおむね次に掲げる事項を明らかにしておかなければならない。

(1) 号
国籍 及び本国における住居
(2) 号

旅券 又は在留カード、特別永住者証明書 その他身分の証明に関する書類の有無(在留カード 又は特別永住者証明書を有するときは、その番号、交付年月日、有効期間の満了の日等

(3) 号
外国における前科の有無
(4) 号
我が国に入国した時期、在留期間、在留資格 及び目的
(5) 号
本国を去つた時期
(6) 号

家族の有無 及びその住居

1項

外国人であつて日本語に通じないものに対し取調べを行い、又は第130条(司法警察員の処置)第1項に掲げる処置をとつたときは、日本語の供述調書 又は弁解録取書を作成するものとし、特に必要がある場合には、外国語の供述書を提出させるものとする。

2項

外国人が口頭をもつて告訴、告発 又は自首をしようとする場合において、日本語に通じないときは、告訴、告発 又は自首の調書は、前項の規定に準じて作成するものとする。

1項

外国人に対し逮捕状 その他の令状により処分を行い、又は外国人から差し押さえた物件 若しくはその承諾を得て領置した物件に関して押収品目録交付書を交付するときは、なるべく翻訳文を添付しなければならない。


ただし、当該外国人の理解する言語に通じた警察官がこれを行い、又は第233条(通訳の嘱託)第1項の規定により通訳人を介して行うときは、この限りでない。

1項

拘禁許可状 その他逃亡犯罪人引渡法昭和28年法律第68号)に基づく令状により逃亡犯罪人を拘束した場合には、東京高等検察庁の検察官に引致しなければならない。

1項

警察本部長は、平素から、捜査上の必要に応じて通訳人を迅速かつ確実に付することができるよう、通訳人としての必要な知識 及び技能を有する者の把握に努めるとともに、これらの者に対し刑事手続について理解させるための機会を設けるよう努めなければならない。