臓器の移植に関する法律

平成九年法律第百四号
略称 : 臓器移植法 
分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2023年 02月01日 09時57分

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1項

この法律は、臓器の移植についての基本的理念を定めるとともに、臓器の機能に障害がある者に対し臓器の機能の回復 又は付与を目的として行われる臓器の移植術(以下単に「移植術」という。)に使用されるための臓器を死体から摘出すること、臓器売買等を禁止すること等につき必要な事項を規定することにより、移植医療の適正な実施に資することを目的とする。

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1項

死亡した者が生存中に有していた自己の臓器の移植術に使用されるための提供に関する意思は、尊重されなければならない。

2項

移植術に使用されるための臓器の提供は、任意にされたものでなければならない。

3項

臓器の移植は、移植術に使用されるための臓器が人道的精神に基づいて提供されるものであることにかんがみ、移植術を必要とする者に対して適切に行われなければならない。

4項

移植術を必要とする者に係る移植術を受ける機会は、公平に与えられるよう配慮されなければならない。

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1項

国 及び地方公共団体は、移植医療について国民の理解を深めるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

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1項

医師は、臓器の移植を行うに当たっては、診療上必要な注意を払うとともに、移植術を受ける者 又は その家族に対し必要な説明を行い、その理解を得るよう努めなければならない。

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1項

この法律において「臓器」とは、人の心臓、肺、肝臓、腎臓 その他 厚生労働省令で定める内臓 及び眼球をいう。

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1項

医師は、次の各号いずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から 摘出することができる。

一 号

死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。

二 号

死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合 及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。

2項

前項に規定する「脳死した者の身体」とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者の身体をいう。

3項

臓器の摘出に係る前項の判定は、次の各号いずれかに該当する場合に限り、行うことができる。

一 号

当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。

二 号

当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合 及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。

4項

臓器の摘出に係る第二項の判定は、これを的確に行うために必要な知識 及び経験を有する二人以上の医師(当該判定がなされた場合に当該脳死した者の身体から臓器を摘出し、又は当該臓器を使用した移植術を行うこととなる医師を除く)の一般に認められている医学的知見に基づき厚生労働省令で定めるところにより行う判断の一致によって、行われるものとする。

5項

前項の規定により第二項の判定を行った医師は、厚生労働省令で定めるところにより、直ちに、当該判定が的確に行われたことを証する書面を作成しなければならない。

6項

臓器の摘出に係る第二項の判定に基づいて脳死した者の身体から臓器を摘出しようとする医師は、あらかじめ、当該脳死した者の身体に係る前項の書面の交付を受けなければならない。

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1項

移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者 又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。

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1項

医師は、第六条の規定により死体から臓器を摘出しようとする場合において、当該死体について刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号第二百二十九条第一項の検視 その他の犯罪捜査に関する手続が行われるときは、当該手続が終了した後でなければ、当該死体から臓器を摘出してはならない。

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1項

第六条の規定により死体から臓器を摘出するに当たっては、礼意を失わないよう特に注意しなければならない。

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1項

病院 又は診療所の管理者は、第六条の規定により死体から摘出された臓器であって、移植術に使用されなかった部分の臓器を、厚生労働省令で定めるところにより処理しなければならない。

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1項

医師は、第六条第二項の判定、同条の規定による臓器の摘出 又は当該臓器を使用した移植術(以下 この項において「判定等」という。)を行った場合には、厚生労働省令で定めるところにより、判定等に関する記録を作成しなければならない。

2項

前項の記録は、病院 又は診療所に勤務する医師が作成した場合にあっては当該病院 又は診療所の管理者が、病院 又は診療所に勤務する医師以外の医師が作成した場合にあっては当該医師が、五年間保存しなければならない。

3項

前項の規定により第一項の記録を保存する者は、移植術に使用されるための臓器を提供した遺族 その他の厚生労働省令で定める者から当該記録の閲覧の請求があった場合には、厚生労働省令で定めるところにより、閲覧を拒むことについて正当な理由がある場合を除き、当該記録のうち個人の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして厚生労働省令で定めるものを閲覧に供するものとする。

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1項

何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること 若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又は その要求 若しくは約束をしてはならない。

2項

何人も、移植術に使用されるための臓器の提供を受けること 若しくは受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又は その申込み 若しくは約束をしてはならない。

3項

何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること 若しくは その提供を受けることのあっせんをすること 若しくはあっせんをしたことの対価として財産上の利益の供与を受け、又は その要求 若しくは約束をしてはならない。

4項

何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること 若しくは その提供を受けることのあっせんを受けること 若しくはあっせんを受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又は その申込み 若しくは約束をしてはならない。

5項

何人も、臓器が前各項の規定のいずれかに違反する行為に係るものであることを知って、当該臓器を摘出し、又は移植術に使用してはならない。

6項

第一項から 第四項までの対価には、交通、通信、移植術に使用されるための臓器の摘出、保存 若しくは移送 又は移植術等に要する費用であって、移植術に使用されるための臓器を提供すること 若しくは その提供を受けること 又は それらのあっせんをすることに関して通常必要であると認められるものは、含まれない。

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1項

業として移植術に使用されるための臓器(死体から摘出されるもの又は摘出されたものに限る)を提供すること 又は その提供を受けることのあっせん(以下「業として行う臓器のあっせん」という。)をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

2項

厚生労働大臣は、前項の許可の申請をした者が次の各号いずれかに該当する場合には、同項の許可をしてはならない。

一 号

営利を目的とするおそれがあると認められる者

二 号

業として行う臓器のあっせんに当たって当該臓器を使用した移植術を受ける者の選択を公平かつ適正に行わない おそれがあると認められる者

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1項

前条第一項の許可を受けた者(以下「臓器あっせん機関」という。)若しくは その役員 若しくは職員 又は これらの者であった者は、正当な理由がなく、業として行う臓器のあっせんに関して職務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。

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1項

臓器あっせん機関は、厚生労働省令で定めるところにより、帳簿を備え、その業務に関する事項を記載しなければならない。

2項

臓器あっせん機関は、前項の帳簿を、最終の記載の日から五年間保存しなければならない。

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1項

厚生労働大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、臓器あっせん機関に対し、その業務に関し報告をさせ、又は その職員に、臓器あっせん機関の事務所に立ち入り、帳簿、書類 その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2項

前項の規定により立入検査 又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査 及び質問をする権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

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1項

厚生労働大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、臓器あっせん機関に対し、その業務に関し必要な指示を行うことができる。

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1項

厚生労働大臣は、臓器あっせん機関が前条の規定による指示に従わないときは、第十二条第一項の許可を取り消すことができる。

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1項

国 及び地方公共団体は、国民があらゆる機会を通じて移植医療に対する理解を深めることができるよう、移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思の有無を運転免許証 及び医療保険の被保険者証等に記載することができることとする等、移植医療に関する啓発 及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。

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1項

この法律の規定に基づき厚生労働省令を制定し、又は改廃する場合においては、その厚生労働省令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

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1項

この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続 その他 この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

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1項

第十一条第一項から 第五項までの規定に違反した者は、五年以下の懲役 若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

2項

前項の罪は、刑法明治四十年法律第四十五号第三条の例に従う。

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1項

第六条第五項の書面に虚偽の記載をした者は、三年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。

2項

第六条第六項の規定に違反して同条第五項の書面の交付を受けないで臓器の摘出をした者は、一年以下の懲役 又は三十万円以下の罰金に処する。

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1項

第十二条第一項の許可を受けないで、業として行う臓器のあっせんをした者は、一年以下の懲役 若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

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1項

次の各号いずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

一 号

第九条の規定に違反した者

二 号

第十条第一項の規定に違反して、記録を作成せず、若しくは虚偽の記録を作成し、又は同条第二項の規定に違反して記録を保存しなかった者

三 号

第十三条の規定に違反した者

四 号

第十四条第一項の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は同条第二項の規定に違反して帳簿を保存しなかった者

五 号

第十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした者

2項

前項第三号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

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1項

法人(法人でない団体で代表者 又は管理人の定めのあるものを含む。以下 この項において同じ。)の代表者 若しくは管理人 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、第二十条第二十二条 及び前条同条第一項第三号除く)の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

2項

前項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者 又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人 又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

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1項

第二十条第一項の場合において供与を受けた財産上の利益は、没収する。


その全部 又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

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