この法律は、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、図書館の設置 及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。
図書館法
第一章 総則
この法律において「図書館」とは、図書、記録 その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社 又は一般社団法人 若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館 又は図書室を除く。)をいう。
前項の図書館のうち、地方公共団体の設置する図書館を公立図書館といい、日本赤十字社 又は一般社団法人 若しくは一般財団法人の設置する図書館を私立図書館という。
図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情 及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない。
郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード 及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料 その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。
図書館資料の分類排列を適切にし、及び その目録を整備すること。
図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。
他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室 及び学校に附属する図書館 又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。
分館、閲覧所、配本所等を設置し、及び自動車文庫、貸出文庫の巡回を行うこと。
読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びこれらの開催を奨励すること。
時事に関する情報 及び参考資料を紹介し、及び提供すること。
社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動 その他の活動の機会を提供し、及び その提供を奨励すること。
学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること。
図書館に置かれる専門的職員を司書 及び司書補と称する。
司書は、図書館の専門的事務に従事する。
司書補は、司書の職務を助ける。
次の各号のいずれかに該当する者は、司書となる資格を有する。
大学を卒業した者(専門職大学の前期課程を修了した者を含む。次号において同じ。)で大学において文部科学省令で定める図書館に関する科目を履修したもの
大学 又は高等専門学校を卒業した者で次条の規定による司書の講習を修了したもの
次に掲げる職にあつた期間が通算して三年以上になる者で次条の規定による司書の講習を修了したもの
国立国会図書館 又は大学 若しくは高等専門学校の附属図書館における職で司書補の職に相当するもの
ロに掲げるもののほか、官公署、学校 又は社会教育施設における職で社会教育主事、学芸員 その他の司書補の職と同等以上の職として文部科学大臣が指定するもの
次の各号のいずれかに該当する者は、司書補となる資格を有する。
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十条第一項の規定により大学に入学することのできる者で次条の規定による司書補の講習を修了したもの
司書 及び司書補の講習は、大学が、文部科学大臣の委嘱を受けて行う。
司書 及び司書補の講習に関し、履修すべき科目、単位 その他必要な事項は、文部科学省令で定める。
ただし、その履修すべき単位数は、十五単位を下ることができない。
文部科学大臣 及び都道府県の教育委員会は、司書 及び司書補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うよう努めるものとする。
文部科学大臣は、図書館の健全な発達を図るために、図書館の設置 及び運営上 望ましい基準を定め、これを公表するものとする。
図書館は、当該図書館の運営の状況について評価を行うとともに、その結果に基づき図書館の運営の改善を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
図書館は、当該図書館の図書館奉仕に関する地域住民 その他の関係者の理解を深めるとともに、これらの者との連携 及び協力の’推進に資するため、当該図書館の運営の状況に関する情報を積極的に提供するよう努めなければならない。
都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の図書館奉仕を促進するために、市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条第一項の条例の定めるところによりその長が図書館の設置、管理 及び廃止に関する事務を管理し、及び執行することとされた地方公共団体(第十三条第一項において「特定地方公共団体」という。)である市町村にあつては、その長 又は教育委員会)に対し、総合目録の作製、貸出文庫の巡回、図書館資料の相互貸借等に関して協力を求めることができる。
政府は、都道府県の設置する図書館に対し、官報 その他一般公衆に対する広報の用に供せられる独立行政法人国立印刷局の刊行物を二部提供するものとする。
国 及び地方公共団体の機関は、公立図書館の求めに応じ、これに対して、それぞれの発行する刊行物 その他の資料を無償で提供することができる。
第二章 公立図書館
公立図書館の設置に関する事項は、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。
公立図書館に館長 並びに当該図書館を設置する地方公共団体の教育委員会(特定地方公共団体の長がその設置、管理 及び廃止に関する事務を管理し、及び執行することとされた図書館(第十五条において「特定図書館」という。)にあつては、当該特定地方公共団体の長)が必要と認める専門的職員、事務職員 及び技術職員を置く。
館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、図書館奉仕の機能の達成に努めなければならない。
図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。
図書館協議会の委員は、当該図書館を設置する地方公共団体の教育委員会(特定図書館に置く図書館協議会の委員にあつては、当該地方公共団体の長)が任命する。
図書館協議会の設置、その委員の任命の基準、定数 及び任期 その他図書館協議会に関し必要な事項については、当該図書館を設置する地方公共団体の条例で定めなければならない。
この場合において、委員の任命の基準については、文部科学省令で定める基準を参酌するものとする。
公立図書館は、入館料 その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
国は、図書館を設置する地方公共団体に対し、予算の範囲内において、図書館の施設、設備に要する経費 その他必要な経費の一部を補助することができる。
前項の補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
国は、第二十条の規定による補助金の交付をした場合において、左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、既に交付した当該年度の補助金を返還させなければならない。
図書館がこの法律の規定に違反したとき。
地方公共団体が補助金の交付の条件に違反したとき。
地方公共団体が虚偽の方法で補助金の交付を受けたとき。
第三章 私立図書館
都道府県の教育委員会は、私立図書館に対し、指導資料の作製 及び調査研究のために必要な報告を求めることができる。
都道府県の教育委員会は、私立図書館に対し、その求めに応じて、私立図書館の設置 及び運営に関して、専門的、技術的の指導 又は助言を与えることができる。
国 及び地方公共団体は、私立図書館の事業に干渉を加え、又は図書館を設置する法人に対し、補助金を交付してはならない。
国 及び地方公共団体は、私立図書館に対し、その求めに応じて、必要な物資の確保につき、援助を与えることができる。
私立図書館は、入館料 その他図書館資料の利用に対する対価を徴収することができる。
図書館と同種の施設は、何人もこれを設置することができる。
第二十五条第二項の規定は、前項の施設について準用する。