犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第3章 捜査の開始

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 08月20日 10時53分


第1節 捜査の着手

1項

警察官は、犯罪があると思料するときは、捜査の着手に先だち、順を経て、警察本部長 または警察署長に報告し、その指揮を受けなければならない。


ただし、急速を要する場合においては、必要な処置を行つた後、すみやかに報告するものとする。

1項

捜査の着手については、犯罪の軽重 および情状、犯人の性格、事件の波及性 および模倣性、捜査の緩急等諸般の事情を判断し、捜査の時期 または方法を誤らないように注意しなければならない。

1項

警察本部長 又は警察署長は、管轄権のない事件 又は当該警察において捜査することが適当でないと認められる事件については、速やかにこれを犯罪地 又は被疑者の住居地を管轄する警察 その他の適当な警察に移送 又は引継ぎしなければならない。

2項

前項の規定による移送 又は引継ぎは、事件引継書(別記様式第5号)により行わなければならない。

第2節 捜査資料

1項

捜査資料の収集は、捜査専従員のみによつて行われるのでなく、全警察職員の組織的な活動によつて行われるよう努めなければならない。

2項

前項の規定により収集した捜査資料 及びその写しは、適切に管理しなければならない。

3項

第1項の規定により収集された捜査資料 及びその写しを保管する必要がなくなつたときは、還付すべきものを除き、これらを確実に破棄しなければならない。

4項

前2項の規定により、保管し、又は破棄される捜査資料が電磁的記録をもつて作成されたものである場合は、電磁的記録の特性を踏まえ、当該電磁的記録に記録された情報が漏えいしないための的確な措置を講じなければならない。

1項

捜査に資するため、広く犯罪に関係ある社会的諸事情、犯罪を犯すおそれのある者 その他捜査上注意を要すると認められる者の動向等捜査に必要な基礎資料は、常に収集整備しておかなければならない。

1項

捜査を行うに当つては、犯罪に関する有形 または無形の資料、内偵による資料 その他諸般の情報等確実な資料を収集し、これに基いて捜査を進めなければならない。


特に被疑者の逮捕 その他の強制処分を行うに当つては、事前にできる限り多くの確実な資料を収集しておかなければならない。

1項

指掌紋、手口、写真 その他の鑑識資料は、常に収集整備することに努め、捜査を行うに当たつては、それらの多角的利用を図らなければならない。

1項

捜査を行つたときは、そのつど捜査の過程に反省検討を加え、これによつて得たあらゆる参考資料を収集して、事後の捜査に活用するように努めなければならない。

第3節 犯罪現場

1項

警察官は、現場臨検を必要とする犯罪の発生を知つたときは、捜査専従員たると否とを問わず、すみやかにその現場に臨み、必要な捜査を行わなければならない。

2項

前項の場合において他に捜査主任官 その他の者による現場臨検が行われるときは、確実に現場を保存するよう努めなければならない。

1項

警察官は、現場を臨検した場合において負傷者があるときは、救護の処置をとらなければならない。

2項

前項の場合において、ひん死の重傷者があるときは、応急救護の処置をとるとともに、その者から犯人の氏名、犯行の原因、被害者の氏名、目撃者等を聴取しておかなければならない。

3項

前項の重傷者が死亡したときは、その時刻を記録しておかなければならない。

1項

現場の保存に当つては、できる限り現場を犯罪の行われた際の状況のまま保存するように努め、現場における捜査が適確に行われるようにしなければならない。

2項

負傷者の救護、証拠物件の変質 および散逸の予防等特にやむを得ない事情のある場合を除いては、警察官であつても、みだりに現場に入つてはならない。

1項

警察官は、犯罪の行われた地点だけでなく広く現場保存の範囲を定め、捜査資料の発見に資するようにしなければならない。

1項

警察官は、保存すべき現場の範囲を定めたときは、直ちに、これを表示する等適切な処置をとり、みだりに出入する者のないようにしなければならない。


この場合において、現場 またはその附近に居合わせた者があるときは、その者の氏名、住居等を明確にしておくようにしなければならない。

2項

現場において発見された捜査資料で、光線、雨水等により変質、変形 または消失するおそれのあるものについてはおおいをする等適当な方法により、その原状を保存するように努めなければならない。

1項

負傷者の救護 その他やむを得ない理由のため現場を変更する必要があるとき または捜査資料を原状のまま保存することができないときは、写真、見取図、記録 その他の方法により原状を明らかにする処置をとらなければならない。

1項

現場において捜査を行うに当たつては、現場鑑識 その他の科学的合理的な方法により、次に掲げる事項を明らかにするよう努め、犯行の過程を全般的に把握するようにしなければならない。

(1) 号
時の関係
犯行の日時 及びこれを推定し得る状況
発覚の日時 及び状況
犯行当時における気象の状況
その他時に関し参考となる事項
(2) 号
場所の関係

現場に通ずる道路 及びその状況

家屋 その他現場附近にある物件 及びその状況

現場の間取等の状況
現場における器具 その他物品の状況
指掌紋、足跡 その他のこん跡 並びに遺留物件の位置 及び状況
その他場所に関し参考となる事項
(3) 号
被害者の関係
犯人に対する応接 その他被害前の状況
被害時における抵抗、姿勢等の状況
傷害の部位 及び程度、被害金品の種別 及び数量等被害の程度
死体の位置 及び創傷、流血 その他の状況
その他被害者に関し参考となる事項
(4) 号
被疑者の関係
現場についての侵入 及び逃走の経路
被疑者の数 及び性別
犯罪の手段、方法 その他犯罪実行の状況
被疑者の犯行の動機 並びに被害者との面識 及び現場についての知識の有無を推定し得る状況
被疑者の人相、風体、特徴、習癖 その他特異な言動等
凶器の種類、形状 及び加害の方法 その他加害の状況
その他被疑者に関し参考となる事項
1項

現場において捜査を行うに当たつては、捜査主任官が、これに従事する捜査員の任務分担を定め、組織的に行うようにしなければならない。

1項

遺留品、現場指掌紋等の資料を発見したときは、年月日時 及び場所を記載した紙片に被害者 又は第三者の署名を求め、これを添付して撮影する等証拠力の保全に努めなければならない。

第4節 緊急配備

1項

警察本部長 または警察署長は、管轄区域内に発生した犯罪について、犯人捕そくのため緊急の必要がある場合においては、この節に定めるところに従つて、緊急配備をしなければならない。


管轄区域外に発生した犯罪について必要がある場合も、また同様とする。

1項

警察本部長 または警察署長は、緊急配備の目的を達成するため、あらかじめ綿密適正な緊急配備計画を立て、所属警察官に周知させておかなければならない。

2項

前項の計画を立てる場合において必要があるときは、隣接警察 その他関係機関と密接な連絡をとらなければならない。

1項

緊急配備は、前条の規定による計画に基き、犯人の数、車両利用の状況、凶器の有無 その他犯罪の規模および態様を考慮し、配備につくべき区域、警察官数、特に警戒すべき地域 または地点等を定めて行うものとする。

2項

緊急配備を行うに当つては、まず、交通の要所 その他の重要地点に警察官を配置し、事後、逐次配備網を伸縮する等事態に即応して行わなければならない。

第5節 捜査方針

1項

捜査を行うに当つては捜査方針を立て、その方針に基いて捜査を行わなければならない。

2項

捜査方針は、現場における捜査等により収集した有形無形の捜査資料、平素収集しておいた基礎資料等すべての資料を総合的に検討し、合理的に判断して、立てなければならない。

1項

捜査方針の実施に当つては、捜査に従事する者の数、技能等を考慮して、その合理的編成を行い、具体的にその任務を授けなければならない。

1項

捜査方針を立て、またはこれに検討を加えるため必要があると認められるときは、随時捜査会議を開き、なるべく多くの者の意見を聞くように努めなければならない。