北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律

昭和五十七年法律第八十五号
略称 : 北方領土法  北特法 
分類 法律
カテゴリ   社会福祉
@ 施行日 : 平成三十一年四月一日
@ 最終更新 : 平成三十年法律第七十六号による改正
最終編集日 : 2024年 04月29日 18時18分

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1項

この法律は、北方領土が我が固有の領土であるにもかかわらず、北方領土問題が今なお未解決である現在の状況 並びにこれに起因して北方地域元居住者 及び北方領土隣接地域が置かれている特殊な事情に鑑み、平成二十八年十二月十六日に我がロシア連邦との間で協議の開始が合意された我が 及びロシア連邦により北方地域において共同で行われる経済活動(第二条第五項において「共同経済活動」という。)の進展も踏まえつつ、北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発、交流等事業の推進、北方地域元居住者に対する援護等の措置の充実、特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備 並びに北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定に関する計画の策定 及びその実施の推進を図る等のために必要な特別の措置を定めることにより、北方領土問題 及びこれに関連する諸問題の解決の促進を図り、ひいては北方領土の早期返還を実現して我がロシア連邦との間の平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させることに資することを目的とする。

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1項

この法律において「北方地域」とは、歯舞群島、色丹島、国後島 及び択捉島をいう。

2項

この法律において「北方領土隣接地域」とは、北海道根室市(歯舞群島の区域を除く)、野付郡別海町、標津郡中標津町、同郡標津町 及び目梨郡羅臼町の区域をいう。

3項

この法律において「北方地域元居住者」とは、昭和二十年八月十五日において北方地域に生活の本拠を有していた者 及びその者の子で同日後北方地域において出生したものをいい、それらの者の子 及びを含むものとする。

4項

この法律において「交流等事業」とは、次に掲げる事業で政令で定めるものをいう。

一 号

日本国民と継続的にかつ現に北方地域に居住するロシア連邦国民との間の相互理解の増進を図り、北方領土問題の解決に寄与することを目的として行われるこれらの者の旅券 及び査証を用いない相互訪問の事業

二 号

北方地域元居住者等北方地域元居住者 及びその家族である日本国民をいう。以下同じ。)の北方地域への墓参のための訪問の事業

三 号

前号に定めるもののほか北方地域元居住者等の北方地域への最大限に簡易化された手続による訪問の事業

5項

この法律において「特定共同経済活動」とは、共同経済活動のうち主として北方領土隣接地域の経済の活性化に資するものとして主務大臣が定める共同経済活動をいう。

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1項

は、北海道 並びに北方領土隣接地域の市 及び町をはじめとする地方公共団体 並びに民間の団体との密接な連携を図りながら、北方領土問題等の解決の促進を図るため必要な施策を積極的に推進し、我が固有の領土である北方領土の早期返還を実現するため最大限の努力をするものとする。

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1項

主務大臣は、第一条目的を達成するため関係行政機関の長に協議して、北方領土問題等の解決の促進を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

2項

基本方針に定める事項は、次のとおりとする。

一 号

北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての国民世論の啓発に関する事項

二 号

交流等事業の実施に関する事項

三 号

北方地域元居住者に対する援護等に関する事項

四 号

北方領土隣接地域の振興(特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備を含む。以下同じ。)及び住民の生活の安定に関する事項

3項

主務大臣は、必要に応じて、基本方針の見直しを行い、必要な変更を加えなければならない。

4項

第一項 及び第二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

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1項

は、基本方針に基づき、北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての国民世論啓発を図るため、北方領土返還運動の推進のための環境の整備 その他の必要な施策を推進するものとする。

2項

は、国民が北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育 及び社会教育における北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題に関する教育 及び学習の振興 並びに広報活動等を通じた知識の普及 その他の必要な施策を講ずるものとする。

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1項

は、北方領土問題が解決されるまでの間、交流等事業の積極的な推進に努めるものとする。

2項

は、北方領土隣接地域が交流等事業の推進の拠点として重要な役割を果たしていることに留意しつつ、交流等事業の円滑な推進のため必要な財政上の配慮をするものとする。

3項

は、北方領土問題が未解決であることに起因して自ら渡航手段を確保することができない等の北方地域元居住者等の置かれている特殊な事情にかんがみ、北方領土問題が解決されるまでの間第二条第四項第二号 及び第三号の訪問が支障なく行われるようにするため、特別の配慮をするものとする。

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1項

は、北方領土問題が未解決であることに起因して北方地域元居住者の置かれている特殊な事情 及び北方領土問題の解決のための諸施策の推進を図る上において北方地域元居住者の占める特別な地位にかんがみ、基本方針に基づき、次条 及び第十条に定めるもののほか北方地域元居住者に対する援護等の措置の一層の充実強化を図るために必要な財政上の措置 その他の措置を講ずるものとする。

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1項

は、北方領土返還運動の有力な担い手として重要な役割を果たしている北方地域元居住者の高齢化が進展している現状にかんがみ、北方地域元居住者第二条第三項に規定する孫の子を含む)が北方領土返還運動の有力な担い手として引き続き重要な役割を果たすことができるよう、北方領土返還運動の後継者育成を図るために必要な措置を講ずるものとする。

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1項

北海道 並びに北方領土隣接地域の市 及びは、特定共同経済活動を円滑に実施するために必要な北方領土隣接地域の環境整備に努めるものとする。

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1項

北海道知事は、北方領土返還運動の拠点である北方領土隣接地域を安定した地域社会として形成するのに資するため、基本方針に基づき、北方領土隣接地域の 及び町の長の意見を聴いて、北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定に関する計画を作成し、主務大臣に協議し、その同意を求めることができる。

2項

前項に規定する計画に定める事項は、次のとおりとする。

一 号

北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定に関する基本的な事項

二 号

交通施設 及び通信施設の整備に関する事項

三 号

国土保全 及び水資源開発に関する事項

四 号

教育 及び文化の振興に関する事項

五 号

生活環境施設 及び社会福祉施設の整備に関する事項

六 号
医療の確保に関する事項
七 号

農林水産業、商工業 その他の産業の振興に関する事項

八 号
観光の開発に関する事項
九 号

特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備に関する事項

十 号

前各号に掲げるもののほか、北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定のために必要な事項

3項

主務大臣は、第一項の規定により協議された計画が適当なものであると認められるときは、これに同意するものとする。


この場合において、主務大臣は、関係行政機関の長協議しなければならない。

4項

前三項の規定は、振興計画(前項の規定により同意を得た第一項に規定する計画をいう。以下同じ。)の変更について準用する。

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1項

振興計画に基づいて、北方領土隣接地域の 又は 又は北海道から負担金、補助金 又は交付金の交付を受けて行う事業(北海道から負担金、補助金 又は交付金の交付を受けて行うものにあつては、北海道が負担し、若しくは補助し、又は交付金を交付するために要する費用の一部についてが負担し、若しくは補助し、又は交付金を交付するものに限る)のうち、次に掲げる事業(災害復旧に係るもの、当該事業に係る経費の全額を 又は北海道が負担するもの 及び当該事業に係る経費を北方領土隣接地域の 又はが負担しないものを除く)で政令で定めるもの(以下「特定事業」という。)に係る経費に対するの負担 又は補助の割合(北方領土隣接地域の 又はに対する負担 又は補助のために北海道が要する費用の一部をが負担し、又は補助している場合にあつては、の負担金 又は補助金の当該特定事業に係る経費に対する割合。以下「国の負担割合」という。)は、次条に定めるところにより算定するものとする。

一 号

次の施設の整備に関する事業

道路
河川
下水道
住宅
都市公園
教育施設
厚生施設

農地 並びに農業用施設 及び林業用施設で政令で定めるもの

漁港 及び漁業用施設で政令で定めるもの

一般廃棄物の処理施設
消防施設
水道
二 号

前号に掲げるもののほか、生活環境 及び産業基盤の整備のために必要な事業で政令で定めるもの

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1項

特定事業に係る経費に対するの負担割合は、北方領土隣接地域の 又はごとに北海道の区域以外の区域における当該特定事業に相当する事業に係る経費に対する通常のの負担割合に次の式により算定した数(小数点以下二位未満は、切り上げるものとする。以下「引上率」という。)を乗じて算定するものとする。

1+0.25×(当該年度におけるすべての特定事業に係る当該市 又は町の負担額のうち、当該市 又は町の標準負担額を超え、その2倍に至るまでの額/当該市 又は町の標準負担額)×調整率

2項

前項の式において「当該市 又は町の標準負担額」とは、当該 又はの当該年度の地方交付税法昭和二十五年法律第二百十一号)第十条の規定により算定した普通交付税の額、同法第十四条の規定により算定した基準財政収入額からその算定の基礎となつた地方揮発油譲与税、特別とん譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料譲与税 及び交通安全対策特別交付金の収入見込額を控除した額の七十五分の百に相当する額 並びに当該地方揮発油譲与税、特別とん譲与税、自動車重量譲与税、航空機燃料譲与税 及び交通安全対策特別交付金の収入見込額の合算額の百分の二に相当する額をいう。

3項

第一項の式において「調整率」とは、次の式により算定した数値をいい、その数値が負数となるときは、零とする。

0.25+0.75×((0.72-当該市 又は町の財政力指数)/(0.72-すべての北方領土隣接地域の市 及び町のうち財政力指数が最低の北方領土隣接地域の市 又は町の財政力指数))

4項

前項の式において「財政力指数」とは、地方交付税法第十四条の規定により算定した基準財政収入額を同法第十一条の規定により算定した基準財政需要額で除して得た数値で当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算したものの三分の一の数値をいう。

5項

第一項の規定を適用した場合において、北方領土隣接地域の 又はの負担割合が百分の二十未満となるときは、同項の規定にかかわらず、当該特定事業に係る経費に対する北方領土隣接地域の 又はの負担割合が百分の二十となるようにの負担割合を定める。

6項

総務大臣は、第一項に規定する引上率を算定し、特定事業に係る事務を所掌する各省各庁の長(財政法昭和二十二年法律第三十四号第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。)及び国土交通大臣、北海道知事 並びに北方領土隣接地域の市 及び町の長に通知するものとする。

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1項

は、前二条の規定にかかわらず、北方領土隣接地域の 又はに係る特定事業のうち、前条の規定により算定したの負担割合が北海道の区域における当該特定事業に係る経費に対するの負担割合を超えないものについては、北海道の区域における当該特定事業に係る経費に対するの負担割合により算定した額に相当する額を負担し、又は補助するものとする。

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1項

前三条の規定により通常のの負担割合を超えてが負担し、又は補助することとなる額の交付に関し必要な事項は、政令で定める。

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1項

は、特定事業に係る経費に充てるため政令で定める交付金を交付する場合においては、政令で定めるところにより、当該経費について第七条 及び第七条の二 又は第七条の三の規定を適用したとするならばが負担し、又は補助することとなる割合を参酌して、当該交付金の額を算定するものとする。

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1項

北海道 又は北方領土隣接地域の 若しくはが振興計画に基づいて行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、は、北海道 又は当該 若しくはの財政状況が許す限り起債できるよう、及び資金事情が許す限り財政融資資金をもつて引き受けるよう特別の配慮をするものとする。

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1項

は、北方領土問題が未解決であることに起因して北方地域の領海において操業する我が国漁業者が置かれている特殊な事情にかんがみ、当該海域における我が国漁業者の操業の円滑な実施を確保するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

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1項

北海道は、北方領土問題が未解決であることによる特殊事情に起因する諸問題の解決に資するため、北方領土隣接地域の 若しくは 又は北海道の区域内の公共的団体等が行う振興計画に基づく事業、北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての世論の啓発に関する事業 及び北方地域元居住者の援護等に関する事業(国の補助 又は負担を伴わないものに限る)のうち、次に掲げるものに要する経費の一部を補助するため地方自治法昭和二十二年法律第六十七号第二百四十一条の基金として、北方領土隣接地域振興等基金を設けることができる。

一 号

北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定のための事業で次に掲げるもの

北方領土隣接地域の特性に即した基幹的な産業の振興に資するための事業

教育施設、文化施設、生活環境施設 及び厚生施設の整備に関する事業

二 号

北方領土問題 その他北方地域に関する諸問題についての世論の啓発に関する事業

三 号

北方地域元居住者の援護等に関する事業で次に掲げるもの

北方地域元居住者がその能力に適合した職業に就くことができるようにするための技能研修 及び知識の習得 その他その生活の安定 及び福祉の増進を図るための事業

北方地域元居住者が北方領土問題の解決のための諸施策の推進を図る上において特別の地位にあることについての認識を深めるのに資するための事業

2項

北海道前項の規定により北方領土隣接地域振興等基金を設ける場合には、は、その財源に充てるための資金の一部を北海道に対して補助するものとする。

3項

第一項の北方領土隣接地域振興等基金の額は、前項の規定によりから交付を受けた補助金の額に当該補助金の額の四分の一に相当する額を加算した額を下らないものとする。

4項

北海道第一項の北方領土隣接地域振興等基金を取り崩す場合には、その取崩し後の北方領土隣接地域振興等基金の額の五分の四に相当する額を第二項の規定によりから交付を受けた補助金の額とみなして前項の規定を適用する。

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1項

は、第四条の二から前条までに定めるもののほか、この法律の目的を達成するため、予算の範囲内において必要な財政上の措置を講ずるとともに、必要な金融上 及び技術上の配慮をしなければならない。

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1項

当分の間、北方地域(歯舞群島を除く。以下この条において同じ。)に本籍を有する者についての戸籍事務は、他の法令の規定にかかわらず法務大臣が北方領土隣接地域の 又は町の長のうちから指名した者が管掌する。

2項

当分の間、北方地域に本籍を有する者についての住民基本台帳法昭和四十二年法律第八十一号)第九条第二項の規定による通知 及び同法第三章に規定する戸籍の附票に関する事務は、他の法令の規定にかかわらず総務大臣 及び法務大臣が北方領土隣接地域の 又は町の長のうちから指名した者が管理する。

3項

前二項に定めるもののほか当分の間、北方地域の村の長の権限に属する事務のうち政令で定めるものは、他の法令の規定にかかわらず北海道知事が北方領土隣接地域の 又は町の長のうちから指名した者が行う。

4項

前三項の事務を行うにつき必要な事項は、政令で定める。

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1項

この法律における主務大臣は、特定共同経済活動の定めについては内閣総理大臣外務大臣 及び国土交通大臣、交流等事業の実施に関する事項については内閣総理大臣 及び外務大臣、北方領土隣接地域の振興 及び住民の生活の安定に関する事項については国土交通大臣、その他の事項については内閣総理大臣とする。

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