民法

# 明治二十九年法律第八十九号 #

第五章 法律行為

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第百二号による改正
最終編集日 : 2024年 04月11日 15時12分


第一節 総則

1項

公の秩序 又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

1項

法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

1項

法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第二節 意思表示

1項

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。


ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2項

前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

1項

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2項

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

1項

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的 及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 号

意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 号

表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2項

前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3項

錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない

一 号

相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 号

相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4項

第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

1項

詐欺 又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2項

相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項

前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

1項

意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2項

相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3項

意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

1項

意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、公示の方法によってすることができる。

2項

前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法平成八年法律第百九号)の規定に従い、裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して行う。


ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所、町村役場 又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

3項

公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日 又はその掲載に代わる掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。


ただし、表意者が相手方を知らないこと 又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。

4項

公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する。

5項

裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

1項

意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき 又は未成年者 若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。


ただし、次に掲げる者がその意思表示を知った後は、この限りでない。

一 号

相手方の法定代理人

二 号

意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方

第三節 代理

1項

代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2項

前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

1項

代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。


ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。

1項

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫 又はある事情を知っていたこと 若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

2項

相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと 又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

3項

特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。


本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

1項

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない


ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

1項

権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一 号
保存行為
二 号

代理の目的である物 又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用 又は改良を目的とする行為

1項

委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない

1項

法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。


この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任 及び監督についての責任のみを負う。

1項

復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

2項

復代理人は、本人 及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

1項

代理人が自己 又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

1項

同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。


ただし、債務の履行 及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

2項

前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。


ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。

1項

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。


ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

2項

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

1項

前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

1項

代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。

一 号
本人の死亡
二 号

代理人の死亡 又は代理人が破産手続開始の決定 若しくは後見開始の審判を受けたこと。

2項

委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

1項

他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。


ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

2項

他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

1項

代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。

2項

追認 又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。


ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

1項

前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。


この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

1項

代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。


ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。

1項

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。


ただし、第三者の権利を害することはできない。

1項

他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行 又は損害賠償の責任を負う。

2項

前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない

一 号

他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。

二 号

他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。


ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。

三 号

他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

1項

単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。


代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

第四節 無効及び取消し

1項

無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。


ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

1項

行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人 若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2項

錯誤、詐欺 又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者 又はその代理人 若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

1項

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

1項

取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない

1項

無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2項

前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3項

第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。


行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

1項

取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し 又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。

1項

取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。

2項

次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。

一 号

法定代理人 又は制限行為能力者の保佐人 若しくは補助人が追認をするとき。

二 号

制限行為能力者(成年被後見人を除く)が法定代理人、保佐人 又は補助人の同意を得て追認をするとき。

1項

追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。


ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

一 号
全部 又は一部の履行
二 号
履行の請求
三 号
更改
四 号
担保の供与
五 号

取り消すことができる行為によって取得した権利の全部 又は一部の譲渡

六 号
強制執行
1項

取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。


行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

第五節 条件及び期限

1項

停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

2項

解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

3項

当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

1項

条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

1項

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

1項

条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

2項

条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

1項

条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。

2項

条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。

3項

前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと 又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条 及び第百二十九条の規定を準用する。

1項

不法な条件を付した法律行為は、無効とする。


不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

1項

不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。

2項

不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

1項

停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

1項

法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は期限が到来するまで、これを請求することができない

2項

法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

1項

期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。

2項

期限の利益は、放棄することができる。


ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

1項

次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない

一 号

債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

二 号

債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

三 号

債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。