精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

# 昭和二十五年法律第百二十三号 #
略称 : 精神保健福祉法 

第四章 精神保健指定医、登録研修機関、精神科病院及び精神科救急医療体制

分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第百四号による改正
最終編集日 : 2024年 05月02日 22時43分


第一節 精神保健指定医

1項

厚生労働大臣は、その申請に基づき、次に該当する医師のうち第十九条の四に規定する職務を行うのに必要な知識 及び技能を有すると認められる者を、精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。

一 号

五年以上診断 又は治療に従事した経験を有すること。

二 号

三年以上精神障害の診断 又は治療に従事した経験を有すること。

三 号

厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断 又は治療に従事した経験を有すること。

四 号

厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前三年以内に行われたものに限る)の課程を修了していること。

2項

厚生労働大臣は、前項の規定にかかわらず第十九条の二第一項 又は第二項の規定により指定医の指定を取り消された後五年を経過していない者 その他指定医として著しく不適当と認められる者については、前項の指定をしないことができる。

3項

厚生労働大臣は、第一項第三号に規定する精神障害 及びその診断 又は治療に従事した経験の程度を定めようとするとき、同項の規定により指定医の指定をしようとするとき 又は前項の規定により指定医の指定をしないものとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

1項

指定医は、五の年度毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下この条において同じ。)ごとに厚生労働大臣が定める年度において、厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を受けなければならない。

2項

前条第一項の規定による指定は、当該指定を受けた者が前項に規定する研修を受けなかつたときは、当該研修を受けるべき年度の終了の日にその効力を失う。


ただし、当該研修を受けなかつたことにつき厚生労働省令で定めるやむを得ない理由が存すると厚生労働大臣が認めたときは、この限りでない。

1項

指定医がその医師免許を取り消され、又は期間を定めて医業の停止を命ぜられたときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消さなければならない。

2項

指定医がこの法律 若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき 又はその職務に関し著しく不当な行為を行つたとき その他指定医として著しく不適当と認められるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消し、又は期間を定めてその職務の停止を命ずることができる。

3項

厚生労働大臣は、前項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、医道審議会の意見を聴かなければならない。

4項

都道府県知事は、指定医について第二項に該当すると思料するときは、その旨を厚生労働大臣に通知することができる。

1項

指定医は、第二十一条第三項 及び第二十九条の五の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定、第三十三条第一項 及び第三十三条の六第一項の規定による入院を必要とするかどうか 及び第二十条の規定による入院が行われる状態にないかどうかの判定、第三十三条第六項第一号の規定による同条第一項第一号に掲げる者に該当するかどうかの判定、第三十六条第三項に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定、第三十八条の二第一項に規定する報告事項に係る入院中の者の診察 並びに第四十条の規定により一時退院させて経過を見ることが適当かどうかの判定の職務を行う。

2項

指定医は、前項に規定する職務のほか、公務員として、次に掲げる職務を行う。

一 号

第二十九条第一項 及び第二十九条の二第一項の規定による入院を必要とするかどうかの判定

二 号

第二十九条の二の二第三項第三十四条第四項において準用する場合を含む。)に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定

三 号

第二十九条の四第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定

四 号

第三十四条第一項 及び第三項の規定による移送を必要とするかどうかの判定

五 号

第三十八条の三第三項同条第六項において準用する場合を含む。)及び第三十八条の五第四項の規定による診察

六 号

第三十八条の六第一項 及び第四十条の五第一項の規定による立入検査、質問 及び診察

七 号

第三十八条の七第二項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定

八 号

第四十五条の二第四項の規定による診察

3項

指定医は、その勤務する医療施設の業務に支障がある場合 その他やむを得ない理由がある場合を除き前項各号に掲げる職務を行うよう都道府県知事から求めがあつた場合には、これに応じなければならない。

1項

指定医は、前条第一項に規定する職務を行つたときは、遅滞なく、当該指定医の氏名 その他厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。

1項

第二十九条第一項第二十九条の二第一項第三十三条第一項から第三項まで 又は第三十三条の六第一項 若しくは第二項の規定により精神障害者を入院させている精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。第十九条の十除き、以下同じ。)の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、その精神科病院に常時勤務する指定医(第十九条の二第二項の規定によりその職務を停止されている者を除く第五十三条第一項除き、以下同じ。)を置かなければならない。

1項

この法律に規定するもののほか、指定医の指定に関して必要な事項は政令で、第十八条第一項第四号 及び第十九条第一項の規定による研修に関して必要な事項は厚生労働省令で定める。

第二節 登録研修機関

1項

第十八条第一項第四号 又は第十九条第一項の登録(以下この節において「登録」という。)は、厚生労働省令で定めるところにより、第十八条第一項第四号 又は第十九条第一項の研修(以下この節において「研修」という。)を行おうとする者の申請により行う。

1項

次の各号いずれかに該当する者は、登録を受けることができない

一 号

この法律 若しくはこの法律に基づく命令 又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 若しくは同法に基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者

二 号

第十九条の六の十三の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者

三 号

法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号いずれかに該当する者があるもの

1項

厚生労働大臣は、第十九条の六の二の規定により登録を申請した者が次に掲げる要件のすべてに適合しているときは、その登録をしなければならない。

一 号

別表の第一欄に掲げる科目を教授し、その時間数が同表の第三欄 又は第四欄に掲げる時間数以上であること。

二 号

別表の第二欄で定める条件に適合する学識経験を有する者が前号に規定する科目を教授するものであること。

2項

登録は、研修機関登録簿に登録を受ける者の氏名 又は名称、住所、登録の年月日 及び登録番号を記載してするものとする。

1項

登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。

2項

前三条の規定は、前項の登録の更新について準用する。

1項

登録を受けた者(以下「登録研修機関」という。)は、正当な理由がある場合を除き、毎事業年度、研修の実施に関する計画(以下「研修計画」という。)を作成し、研修計画に従つて研修を行わなければならない。

2項

登録研修機関は、公正に、かつ、第十八条第一項第四号 又は第十九条第一項の厚生労働省令で定めるところにより研修を行わなければならない。

3項

登録研修機関は、毎事業年度の開始前に、第一項の規定により作成した研修計画を厚生労働大臣に届け出なければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

1項

登録研修機関は、その氏名 若しくは名称 又は住所を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。

1項

登録研修機関は、研修の業務に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、研修の業務の開始前に、厚生労働大臣に届け出なければならない。


これを変更しようとするときも、同様とする。

2項

業務規程には、研修の実施方法、研修に関する料金 その他の厚生労働省令で定める事項を定めておかなければならない。

1項

登録研修機関は、研修の業務の全部 又は一部を休止し、又は廃止しようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を厚生労働大臣に届け出なければならない。

1項

登録研修機関は、毎事業年度経過後三月以内に、当該事業年度の財産目録、貸借対照表 及び損益計算書 又は収支計算書 並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項 及び第五十七条において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間事務所に備えて置かなければならない。

2項

研修を受けようとする者 その他の利害関係人は、登録研修機関の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。


ただし第二号 又は第四号の請求をするには、登録研修機関の定めた費用を支払わなければならない。

一 号

財務諸表等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧 又は謄写の請求

二 号

前号の書面の謄本 又は抄本の請求

三 号

財務諸表等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を厚生労働省令で定める方法により表示したものの閲覧 又は謄写の請求

四 号

前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて厚生労働省令で定めるものにより提供することの請求 又は当該事項を記載した書面の交付の請求

1項

厚生労働大臣は、登録研修機関が第十九条の六の四第一項各号いずれかに適合しなくなつたと認めるときは、その登録研修機関に対し、これらの規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

厚生労働大臣は、登録研修機関が第十九条の六の六第一項 又は第二項の規定に違反していると認めるときは、その登録研修機関に対し、研修を行うべきこと 又は研修の実施方法 その他の業務の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

1項

厚生労働大臣は、登録研修機関が次の各号いずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて研修の業務の全部 若しくは一部の停止を命ずることができる。

一 号

第十九条の六の三第一号 又は第三号に該当するに至つたとき。

二 号

第十九条の六の六第三項第十九条の六の七第十九条の六の八第十九条の六の九第十九条の六の十第一項 又は次条の規定に違反したとき。

三 号

正当な理由がないのに第十九条の六の十第二項各号の規定による請求を拒んだとき。

四 号

第十九条の六の十一 又は前条の規定による命令に違反したとき。

五 号

不正の手段により登録を受けたとき。

1項

登録研修機関は、厚生労働省令で定めるところにより、帳簿を備え、研修に関し厚生労働省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。

1項

厚生労働大臣は、登録を受ける者がいないとき、第十九条の六の九の規定による研修の業務の全部 又は一部の休止 又は廃止の届出があつたとき、第十九条の六の十三の規定により登録を取り消し、又は登録研修機関に対し研修の業務の全部 若しくは一部の停止を命じたとき、登録研修機関が天災 その他の事由により研修の業務の全部 又は一部を実施することが困難となつたとき その他必要があると認めるときは、当該研修の業務の全部 又は一部を自ら行うことができる。

2項

前項の規定により厚生労働大臣が行う研修を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める金額の手数料を納付しなければならない。

3項

厚生労働大臣が第一項の規定により研修の業務の全部 又は一部を自ら行う場合における研修の業務の引継ぎ その他の必要な事項については、厚生労働省令で定める。

1項

厚生労働大臣は、研修の業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、登録研修機関に対し、必要と認める事項の報告を求め、又は当該職員に、その事務所に立ち入り、業務の状況 若しくは帳簿書類 その他の物件を検査させることができる。

2項

前項の規定により立入検査を行う当該職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

3項

第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項

厚生労働大臣は、次の場合には、その旨を公示しなければならない。

一 号
登録をしたとき。
二 号

第十九条の六の七の規定による届出があつたとき。

三 号

第十九条の六の九の規定による届出があつたとき。

四 号

第十九条の六の十三の規定により登録を取り消し、又は研修の業務の停止を命じたとき。

五 号

第十九条の六の十五の規定により厚生労働大臣が研修の業務の全部 若しくは一部を自ら行うものとするとき、又は自ら行つていた研修の業務の全部 若しくは一部を行わないこととするとき。

第三節 精神科病院

1項

都道府県は、精神科病院を設置しなければならない。


ただし次条の規定による指定病院がある場合においては、その設置を延期することができる。

2項

都道府県 又は都道府県 及び都道府県以外の地方公共団体が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法平成十五年法律第百十八号第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。次条において同じ。)が精神科病院を設置している場合には、当該都道府県については、前項の規定は、適用しない

1項

都道府県知事は、国、都道府県 並びに都道府県 又は都道府県 及び都道府県以外の地方公共団体が設立した地方独立行政法人(以下「国等」という。以外の者が設置した精神科病院であつて厚生労働大臣の定める基準に適合するものの全部 又は一部を、その設置者の同意を得て、都道府県が設置する精神科病院に代わる施設(以下「指定病院」という。)として指定することができる。

1項

都道府県知事は、指定病院が、前条の基準に適合しなくなつたとき、又はその運営方法がその目的遂行のために不適当であると認めたときは、その指定を取り消すことができる。

2項

都道府県知事は、前項の規定によりその指定を取り消そうとするときは、あらかじめ、地方精神保健福祉審議会(地方精神保健福祉審議会が置かれていない都道府県にあつては、医療法昭和二十三年法律第二百五号第七十二条第一項に規定する都道府県医療審議会)の意見を聴かなければならない。

3項

厚生労働大臣は、第一項に規定する都道府県知事の権限に属する事務について、指定病院に入院中の者の処遇を確保する緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し同項の事務を行うことを指示することができる。

1項

国は、都道府県が設置する精神科病院 及び精神科病院以外の病院に設ける精神病室の設置 及び運営に要する経費(第三十条第一項の規定により都道府県が負担する費用を除く次項において同じ。)に対し、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。

2項

国は、営利を目的としない法人が設置する精神科病院 及び精神科病院以外の病院に設ける精神病室の設置 及び運営に要する経費に対し、政令の定めるところにより、その二分の一以内を補助することができる。

第四節 精神科救急医療の確保

1項
都道府県は、精神障害の救急医療が適切かつ効率的に提供されるように、夜間 又は休日において精神障害の医療を必要とする精神障害者 又はその家族等 その他の関係者からの相談に応ずること、精神障害の救急医療を提供する医療施設相互間の連携を確保すること その他の地域の実情に応じた体制の整備を図るよう努めるものとする。
2項

都道府県知事は、前項の体制の整備に当たつては、精神科病院 その他の精神障害の医療を提供する施設の管理者、当該施設の指定医 その他の関係者に対し、必要な協力を求めることができる。