非訟事件手続法

# 平成二十三年法律第五十一号 #
略称 : 非訟法 

第三章 第一審裁判所における非訟事件の手続

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和五年十一月十五日 ( 2023年 11月15日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第二十八号による改正
最終編集日 : 2024年 04月17日 08時51分


第一節 非訟事件の申立て

1項

非訟事件の申立ては、申立書(以下 この条 及び第五十七条第一項において「非訟事件の申立書」という。)を裁判所に提出してしなければならない。

2項

非訟事件の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 号
当事者 及び法定代理人
二 号
申立ての趣旨 及び原因
3項

申立人は、二以上の事項について裁判を求める場合において、これらの事項についての非訟事件の手続が同種であり、これらの事項が同一の事実上 及び法律上の原因に基づくときは、一の申立てにより求めることができる。

4項

非訟事件の申立書が第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。


民事訴訟費用等に関する法律昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い非訟事件の申立ての手数料を納付しない場合も、同様とする。

5項

前項の場合において、申立人が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、非訟事件の申立書を却下しなければならない。

6項

前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

申立人は、申立ての基礎に変更がない限り、申立ての趣旨 又は原因を変更することができる。

2項

申立ての趣旨 又は原因の変更は、非訟事件の手続の期日においてする場合を除き書面でしなければならない。

3項

裁判所は、申立ての趣旨 又は原因の変更が不適法であるときは、その変更を許さない旨の裁判をしなければならない。

4項

申立ての趣旨 又は原因の変更により非訟事件の手続が著しく遅滞することとなるときは、裁判所は、その変更を許さない旨の裁判をすることができる。

第二節 非訟事件の手続の期日

1項

非訟事件の手続の期日においては、裁判長が手続を指揮する。

2項

裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁止することができる。

3項

当事者が非訟事件の手続の期日における裁判長の指揮に関する命令に対し異議を述べたときは、裁判所は、その異議について裁判をする。

1項

裁判所は、受命裁判官に非訟事件の手続の期日における手続を行わせることができる。


ただし、事実の調査 及び証拠調べについては、第五十一条第三項の規定 又は第五十三条第一項において準用する民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定により受命裁判官が事実の調査 又は証拠調べをすることができる場合に限る

2項

前項の場合においては、裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。

1項

裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、非訟事件の手続の期日における手続(証拠調べを除く)を行うことができる。

2項

非訟事件の手続の期日に出頭しないで前項の手続に関与した者は、その期日に出頭したものとみなす。

1項

非訟事件の手続の期日における通訳人の立会い等については民事訴訟法第百五十四条の規定を、非訟事件の手続関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、利害関係参加人、代理人 及び補佐人に対する措置については同法第百五十五条の規定を準用する。

第三節 事実の調査及び証拠調べ

1項

裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより 又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない。

2項

当事者は、適切かつ迅速な審理 及び裁判の実現のため、事実の調査 及び証拠調べに協力するものとする。

1項

疎明は、即時に取り調べることができる資料によってしなければならない。

1項

裁判所は、他の地方裁判所 又は簡易裁判所に事実の調査を嘱託することができる。

2項

前項の規定による嘱託により職務を行う受託裁判官は、他の地方裁判所 又は簡易裁判所において事実の調査をすることを相当と認めるときは、更に事実の調査の嘱託をすることができる。

3項

裁判所は、相当と認めるときは、受命裁判官に事実の調査をさせることができる。

4項

前三項の規定により受託裁判官 又は受命裁判官が事実の調査をする場合には、裁判所 及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。

1項

裁判所は、事実の調査をした場合において、その結果が当事者による非訟事件の手続の追行に重要な変更を生じ得るものと認めるときは、これを当事者 及び利害関係参加人に通知しなければならない。

1項

非訟事件の手続における証拠調べについては、民事訴訟法第二編第四章第一節から第六節までの規定(同法第百七十九条第百八十二条第百八十七条から第百八十九条まで第二百七条第二項第二百八条第二百二十四条同法第二百二十九条第二項 及び第二百三十二条第一項において準用する場合を含む。)及び第二百二十九条第四項の規定を除く)を準用する。

2項

前項において準用する民事訴訟法の規定による即時抗告は、執行停止の効力を有する。

3項

当事者が次の各号いずれかに該当するときは、裁判所は、二十万円以下の過料に処する。

一 号

第一項において準用する民事訴訟法第二百二十三条第一項同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による提出の命令に従わないとき、又は正当な理由なく第一項において準用する同法第二百三十二条第一項において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提示の命令に従わないとき。

二 号

書証を妨げる目的で第一項において準用する民事訴訟法第二百二十条同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定により提出の義務がある文書(同法第二百三十一条に規定する文書に準ずる物件を含む。)を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき、又は検証を妨げる目的で検証の目的を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。

4項

当事者が次の各号いずれかに該当するときは、裁判所は、十万円以下の過料に処する。

一 号

正当な理由なく第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第二項同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)において準用する同法第二百二十三条第一項の規定による提出の命令に従わないとき。

二 号

対照の用に供することを妨げる目的で対照の用に供すべき筆跡 又は印影を備える文書 その他の物件を滅失させ、その他これを使用することができないようにしたとき。

三 号

第一項において準用する民事訴訟法第二百二十九条第三項同法第二百三十一条において準用する場合を含む。)の規定による決定に正当な理由なく従わないとき、又は当該決定に係る対照の用に供すべき文字を書体を変えて筆記したとき。

5項

裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、非訟事件の手続の期日に出頭することを命ずることができる。

6項

民事訴訟法第百九十二条から第百九十四条までの規定は前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について、同法第二百九条第一項 及び第二項の規定は出頭した当事者が正当な理由なく宣誓 又は陳述を拒んだ場合について準用する。

7項

この条に規定するもののほか、証拠調べにおける過料についての裁判に関しては、第五編の規定(第百十九条の規定 並びに第百二十条 及び第百二十二条の規定中検察官に関する部分を除く)を準用する。

第四節 裁判

1項

裁判所は、非訟事件の手続においては、決定で、裁判をする。

1項

裁判所は、非訟事件が裁判をするのに熟したときは、終局決定をする。

2項

裁判所は、非訟事件の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局決定をすることができる。


手続の併合を命じた数個の非訟事件中 その一が裁判をするのに熟したときも、同様とする。

1項

終局決定は、当事者 及び利害関係参加人 並びにこれらの者以外の裁判を受ける者に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。

2項

終局決定(申立てを却下する決定を除く)は、裁判を受ける者(裁判を受ける者が数人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。

3項

申立てを却下する終局決定は、申立人に告知することによってその効力を生ずる。

4項

終局決定は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。

5項

終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。

1項

終局決定は、裁判書を作成してしなければならない。


ただし、即時抗告をすることができない決定については、非訟事件の申立書 又は調書に主文を記載することをもって、裁判書の作成に代えることができる。

2項

終局決定の裁判書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 号
主文
二 号
理由の要旨
三 号
当事者 及び法定代理人
四 号
裁判所
1項

終局決定に計算違い、誤記 その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。

2項

更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。

3項

更正決定に対しては、更正後の終局決定が原決定であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

4項

第一項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

5項

終局決定に対し適法な即時抗告があったときは、前二項の即時抗告は、することができない。

1項

裁判所は、終局決定をした後、その決定を不当と認めるときは、次に掲げる決定を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。

一 号

申立てによってのみ裁判をすべき場合において申立てを却下した決定

二 号
即時抗告をすることができる決定
2項

終局決定が確定した日から五年を経過したときは、裁判所は、前項の規定による取消し 又は変更をすることができない。


ただし、事情の変更によりその決定を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。

3項

裁判所は、第一項の規定により終局決定の取消し 又は変更をする場合には、その決定における当事者 及びその他の裁判を受ける者の陳述を聴かなければならない。

4項

第一項の規定による取消し 又は変更の終局決定に対しては、取消し後 又は変更後の決定が原決定であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。

1項

民事訴訟法第二百四十七条第二百五十六条第一項 及び第二百五十八条第二項後段を除く)の規定は、終局決定について準用する。


この場合において、

同法第二百五十六条第一項
言渡し後」とあるのは、
「終局決定が告知を受ける者に最初に告知された日から」と

読み替えるものとする。

1項

裁判所は、終局決定の前提となる法律関係の争い その他中間の争いについて、裁判をするのに熟したときは、中間決定をすることができる。

2項

中間決定は、裁判書を作成してしなければならない。

1項

終局決定以外の非訟事件に関する裁判については、特別の定めがある場合を除き第五十五条から第六十条まで第五十七条第一項 及び第五十九条第三項除く)の規定を準用する。

2項

非訟事件の手続の指揮に関する裁判は、いつでも取り消すことができる。

3項

終局決定以外の非訟事件に関する裁判は、判事補が単独ですることができる。

第五節 裁判によらない非訟事件の終了

1項

非訟事件の申立人は、終局決定が確定するまで、申立ての全部 又は一部を取り下げることができる。


この場合において、終局決定がされた後は、裁判所の許可を得なければならない。

2項

民事訴訟法第二百六十一条第三項 及び第二百六十二条第一項の規定は、前項の規定による申立ての取下げについて準用する。


この場合において、

同法第二百六十一条第三項ただし書中
口頭弁論、弁論準備手続 又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、
「非訟事件の手続の期日」と

読み替えるものとする。

1項

非訟事件の申立人が、連続して二回、呼出しを受けた非訟事件の手続の期日に出頭せず、又は呼出しを受けた非訟事件の手続の期日において陳述をしないで退席をしたときは、裁判所は、申立ての取下げがあったものとみなすことができる。

1項

非訟事件における和解については、民事訴訟法第八十九条、- 第二百六十四条 及び第二百六十五条の規定を準用する。


この場合において、

同法第二百六十四条 及び第二百六十五条第三項
口頭弁論等」とあるのは、
「非訟事件の手続」と

読み替えるものとする。

2項

和解を調書に記載したときは、その記載は、確定した終局決定と同一の効力を有する。