この法律は、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるアイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統 及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という。)が置かれている状況 並びに近年における先住民族をめぐる国際情勢に鑑み、アイヌ施策の推進に関し、基本理念、国等の責務、政府による基本方針の策定、民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置、市町村(特別区を含む。以下同じ。)によるアイヌ施策推進地域計画の作成 及びその内閣総理大臣による認定、当該認定を受けたアイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置、アイヌ政策推進本部の設置等について定めることにより、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現を図り、もって全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律
第一章 総則
この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語 並びにアイヌにおいて継承されてきた生活様式、音楽、舞踊、工芸 その他の文化的所産 及びこれらから発展した文化的所産をいう。
この法律において「アイヌ施策」とは、アイヌ文化の振興 並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及 及び啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という。)並びにアイヌの人々が民族としての誇りを持って生活するためのアイヌ文化の振興等に資する環境の整備に関する施策をいう。
この法律において「民族共生象徴空間構成施設」とは、民族共生象徴空間(アイヌ文化の振興等の拠点として国土交通省令・文部科学省令で定める場所に整備される国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三条第二項に規定する行政財産をいう。)を構成する施設(その敷地を含む。)であって、国土交通省令・文部科学省令で定めるものをいう。
アイヌ施策の推進は、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重されるよう、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統等 並びに我が国を含む国際社会において重要な課題である多様な民族の共生 及び多様な文化の発展についての国民の理解を深めることを旨として、行われなければならない。
アイヌ施策の推進は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができるよう、アイヌの人々の自発的意思の尊重に配慮しつつ、行われなければならない。
アイヌ施策の推進は、国、地方公共団体 その他の関係する者の相互の密接な連携を図りつつ、アイヌの人々が北海道のみならず全国において生活していることを踏まえて全国的な視点に立って行われなければならない。
何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別すること その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
国 及び地方公共団体は、前二条に定める基本理念にのっとり、アイヌ施策を策定し、及び実施する責務を有する。
国 及び地方公共団体は、アイヌ文化を継承する者の育成について適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
国 及び地方公共団体は、教育活動、広報活動 その他の活動を通じて、アイヌに関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。
国は、アイヌ文化の振興等に資する調査研究を推進するよう努めるとともに、地方公共団体が実施するアイヌ施策を推進するために必要な助言 その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
国民は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
第二章 基本方針等
政府は、アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
アイヌ施策の意義 及び目標に関する事項
政府が実施すべきアイヌ施策に関する基本的な方針
民族共生象徴空間構成施設の管理に関する基本的な事項
第十条第一項に規定するアイヌ施策推進地域計画の同条第九項の認定に関する基本的な事項
前各号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項
内閣総理大臣は、アイヌ政策推進本部が作成した基本方針の案について閣議の決定を求めなければならない。
内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
政府は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更しなければならない。
第三項 及び第四項の規定は、基本方針の変更について準用する。
都道府県知事は、基本方針に基づき、当該都道府県の区域内におけるアイヌ施策を推進するための方針(以下 この条 及び第十条において「都道府県方針」という。)を定めるよう努めるものとする。
都道府県方針には、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。
当該都道府県が実施すべきアイヌ施策に関する方針
前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策の推進のために必要な事項
都道府県知事は、都道府県方針に他の地方公共団体と関係がある事項を定めようとするときは、当該事項について、あらかじめ、当該他の地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
都道府県知事は、都道府県方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
前二項の規定は、都道府県方針の変更について準用する。
第三章 民族共生象徴空間構成施設の管理に関する措置
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、第二十条第一項の規定による指定をしたときは、民族共生象徴空間構成施設の管理を当該指定を受けた者(次項において「指定法人」という。)に委託するものとする。
前項の規定により管理の委託を受けた指定法人は、当該委託を受けて行う民族共生象徴空間構成施設の管理に要する費用に充てるために、民族共生象徴空間構成施設につき入場料 その他の料金(第二十二条第二項において「入場料等」という。)を徴収することができる。
前項に定めるもののほか、第一項の規定による委託について必要な事項は、政令で定める。
第四章 アイヌ施策推進地域計画の認定等
市町村は、単独で 又は共同して、基本方針に基づき(当該市町村を包括する都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、基本方針に基づくとともに、当該都道府県方針を勘案して)、内閣府令で定めるところにより、当該市町村の区域内におけるアイヌ施策を推進するための計画(以下「アイヌ施策推進地域計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができる。
アイヌ施策推進地域計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。
アイヌ施策の推進に必要な次に掲げる事業に関する事項
アイヌ文化の保存 又は継承に資する事業
アイヌの伝統等に関する理解の促進に資する事業
観光の振興 その他の産業の振興に資する事業
地域内 若しくは地域間の交流 又は国際交流の促進に資する事業
市町村は、アイヌ施策推進地域計画を作成しようとするときは、これに記載しようとする前項第二号に規定する事業を実施する者の意見を聴かなければならない。
第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式の実施 その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林産物を国有林野(国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第二条第一項に規定する国有林野をいう。第十六条第一項において同じ。)において採取する事業に関する事項を記載することができる。
前項に定めるもののほか、第二項第二号(ニを除く。)に規定する事業に関する事項には、アイヌにおいて継承されてきた儀式 若しくは漁法(以下 この項において「儀式等」という。)の保存 若しくは継承 又は儀式等に関する知識の普及 及び啓発に利用するためのさけを内水面(漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第六十条第五項第五号に規定する内水面をいう。)において採捕する事業(以下 この条 及び第十七条において「内水面さけ採捕事業」という。)に関する事項を記載することができる。
この場合においては、内水面さけ採捕事業ごとに、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を記載するものとする。
前二項に定めるもののほか、第二項第二号(ハに係る部分に限る。)に規定する事業に関する事項には、当該市町村における地域の名称 又はその略称を含む商標の使用をし、又は使用をすると見込まれる商品 又は役務の需要の開拓を行う事業(以下 この項 及び第十八条において「商品等需要開拓事業」という。)に関する事項を記載することができる。
この場合においては、商品等需要開拓事業ごとに、当該商品等需要開拓事業の目標 及び実施期間を記載するものとする。
第二項第二号イからホまでのいずれかの事業を実施しようとする者は、市町村に対して、アイヌ施策推進地域計画を作成することを提案することができる。
この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係るアイヌ施策推進地域計画の素案を作成して、これを提示しなければならない。
前項の規定による提案を受けた市町村は、当該提案に基づきアイヌ施策推進地域計画を作成するか否かについて、遅滞なく、当該提案をした者に通知しなければならない。
この場合において、アイヌ施策推進地域計画を作成しないこととするときは、その理由を明らかにしなければならない。
内閣総理大臣は、第一項の規定による認定の申請があった場合において、アイヌ施策推進地域計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。
当該アイヌ施策推進地域計画の実施が当該地域におけるアイヌ施策の推進に相当程度寄与するものであると認められること。
円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
内閣総理大臣は、前項の認定を行うに際し必要と認めるときは、アイヌ政策推進本部に対し、意見を求めることができる。
内閣総理大臣は、第九項の認定をしようとするときは、その旨を当該認定に係るアイヌ施策推進地域計画を作成した市町村を包括する都道府県の知事に通知しなければならない。
この場合において、当該都道府県の知事が都道府県方針を定めているときは、同項の認定に関し、内閣総理大臣に対し、意見を述べることができる。
内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項(第四項から第六項までのいずれかに規定する事項をいう。以下同じ。)が記載されている場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該特定事業関係事項について、当該特定事業関係事項に係る国の関係行政機関の長(以下単に「国の関係行政機関の長」という。)の同意を得なければならない。
内閣総理大臣は、アイヌ施策推進地域計画に内水面さけ採捕事業に関する事項が記載されている場合において、第九項の認定をしようとするときは、当該アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村(市町村が共同して作成したときは、当該内水面さけ採捕事業を実施する区域を含む市町村に限る。)を包括する都道府県の知事の意見を聴かなければならない。
内閣総理大臣は、第九項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
市町村は、前条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。
前条第三項から第十四項までの規定は、同条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画の変更について準用する。
内閣総理大臣は、第十条第九項の認定(前条第一項の変更の認定を含む。)を受けた市町村(以下「認定市町村」という。)に対し、第十条第九項の認定を受けたアイヌ施策推進地域計画(前条第一項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定アイヌ施策推進地域計画」という。)の実施の状況について報告を求めることができる。
国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施の状況について報告を求めることができる。
内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画の適正な実施のため必要があると認めるときは、認定市町村に対し、当該認定アイヌ施策推進地域計画の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。
国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合において、当該特定事業関係事項の適正な実施のため必要があると認めるときは、認定市町村に対し、当該特定事業関係事項の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。
内閣総理大臣は、認定アイヌ施策推進地域計画が第十条第九項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
この場合において、当該認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されているときは、内閣総理大臣は、あらかじめ、国の関係行政機関の長にその旨を通知しなければならない。
前項の規定による通知を受けた国の関係行政機関の長は、同項の規定による認定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。
前項に規定する場合のほか、国の関係行政機関の長は、認定アイヌ施策推進地域計画に特定事業関係事項が記載されている場合には、第一項の規定による認定の取消しに関し、内閣総理大臣に意見を述べることができる。
第十条第十四項の規定は、第一項の規定による認定の取消しについて準用する。
第五章 認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業に対する特別の措置
国は、認定市町村に対し、認定アイヌ施策推進地域計画に基づく事業(第十条第二項第二号に規定するものに限る。)の実施に要する経費に充てるため、内閣府令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。
前項の交付金を充てて行う事業に要する費用については、他の法令の規定に基づく国の負担 若しくは補助 又は交付金の交付は、当該規定にかかわらず、行わないものとする。
前二項に定めるもののほか、第一項の交付金の交付に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
農林水産大臣は、国有林野の経営と認定市町村(第十条第四項に規定する事項を記載した認定アイヌ施策推進地域計画を作成した市町村に限る。以下 この項において同じ。)の住民の利用とを調整することが土地利用の高度化を図るため必要であると認めるときは、契約により、当該認定市町村の住民 又は当該認定市町村内の一定の区域に住所を有する者に対し、これらの者が同条第四項の規定により記載された事項に係る国有林野をアイヌにおいて継承されてきた儀式の実施 その他のアイヌ文化の振興等に利用するための林産物の採取に共同して使用する権利を取得させることができる。
前項の契約は、国有林野の管理経営に関する法律第十八条第三項に規定する共用林野契約とみなして、同法第五章(同条第一項 及び第二項を除く。)の規定を適用する。
この場合において、
同条第三項本文中
「第一項」とあるのは
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号)第十六条第一項」と、
「市町村」とあるのは
「認定市町村(同法第十二条第一項に規定する認定市町村をいう。以下同じ。)」と、
同項ただし書 並びに同法第十九条第五号、第二十二条第一項 及び第二十四条中
「市町村」とあるのは
「認定市町村」と、
同法第十八条第四項中
「第一項」とあり、
及び同法第二十一条の二中
「第十八条」とあるのは
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律第十六条第一項」と
する。
農林水産大臣 又は都道府県知事は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された内水面さけ採捕事業の実施のため漁業法第百十九条第一項 若しくは第二項 又は水産資源保護法(昭和二十六年法律第三百十三号)第四条第一項の規定に基づく農林水産省令 又は都道府県の規則の規定による許可が必要とされる場合において、当該許可を求められたときは、当該内水面さけ採捕事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。
認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業については、当該商品等需要開拓事業の実施期間(次項 及び第三項において単に「実施期間」という。)内に限り、次項から第六項までの規定を適用する。
特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品 又は役務に係る地域団体商標の商標登録(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第七条の二第一項に規定する地域団体商標の商標登録をいう。以下 この項 及び次項において同じ。)について、同法第四十条第一項 若しくは第二項 又は第四十一条の二第一項 若しくは第七項の登録料を納付すべき者が当該商品 又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めるところにより、当該登録料(実施期間内に地域団体商標の商標登録を受ける場合のもの 又は実施期間内に地域団体商標の商標登録に係る商標権の存続期間の更新登録の申請をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。
この場合において、同法第十八条第二項 並びに第二十三条第一項 及び第二項の規定の適用については、
これらの規定中
「納付があつたとき」とあるのは、
「納付 又は その納付の免除があつたとき」と
する。
特許庁長官は、認定アイヌ施策推進地域計画に記載された商品等需要開拓事業に係る商品 又は役務に係る地域団体商標の商標登録について、当該地域団体商標の商標登録を受けようとする者が当該商品 又は役務に係る商品等需要開拓事業の実施主体であるときは、政令で定めるところにより、商標法第七十六条第二項の規定により納付すべき商標登録出願の手数料(実施期間内に商標登録出願をする場合のものに限る。)を軽減し、又は免除することができる。
商標法第四十条第一項 若しくは第二項 又は第四十一条の二第一項 若しくは第七項の登録料は、商標権が第二項の規定による登録料の軽減 又は免除(以下この項において「減免」という。)を受ける者を含む者の共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、同法第四十条第一項 若しくは第二項 又は第四十一条の二第一項 若しくは第七項の規定にかかわらず、各共有者ごとにこれらに規定する登録料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。
商標登録出願により生じた権利が第三項の規定による商標登録出願の手数料の軽減 又は免除(以下 この項において「減免」という。)を受ける者を含む者の共有に係る場合であって持分の定めがあるときは、これらの者が自己の商標登録出願により生じた権利について商標法第七十六条第二項の規定により納付すべき商標登録出願の手数料は、同項の規定にかかわらず、各共有者ごとに同項に規定する商標登録出願の手数料の金額(減免を受ける者にあっては、その減免後の金額)にその持分の割合を乗じて得た額を合算して得た額とし、その額を納付しなければならない。
前二項の規定により算定した登録料 又は手数料の金額に十円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てるものとする。
認定市町村が認定アイヌ施策推進地域計画に基づいて行う事業に要する経費に充てるため起こす地方債については、国は、当該認定市町村の財政状況が許す限り起債ができるよう、及び資金事情が許す限り財政融資資金をもって引き受けるよう特別の配慮をするものとする。
第六章 指定法人
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、アイヌ文化の振興等を目的とする一般社団法人 又は一般財団法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同条に規定する業務を行う者として指定することができる。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、前項の申請をした者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の規定による指定をしてはならない。
この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者であること。
第三十条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者であること。
その役員のうちに、次のいずれかに該当する者があること。
禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
第二十七条第二項の規定による命令により解任され、その解任の日から二年を経過しない者
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」という。)の名称、住所 及び事務所の所在地を公示しなければならない。
指定法人は、その名称、住所 又は事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣 及び文部科学大臣に届け出なければならない。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
第九条第一項の規定による委託を受けて民族共生象徴空間構成施設の管理を行うこと。
アイヌ文化を継承する者の育成 その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。
アイヌの伝統等に関する広報活動 その他のアイヌの伝統等に関する知識の普及 及び啓発を行うこと。
アイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うこと。
アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する知識の普及 及び啓発 又はアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行う者に対して、助言、助成 その他の援助を行うこと。
前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。
指定法人は、前条第一号に掲げる業務(以下「民族共生象徴空間構成施設管理業務」という。)に関する規程(以下「民族共生象徴空間構成施設管理業務規程」という。)を定め、国土交通大臣 及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
民族共生象徴空間構成施設管理業務規程には、民族共生象徴空間構成施設管理業務の実施の方法、民族共生象徴空間構成施設の入場料等 その他の国土交通省令・文部科学省令で定める事項を定めておかなければならない。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、第一項の認可をした民族共生象徴空間構成施設管理業務規程が民族共生象徴空間構成施設管理業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、これを変更すべきことを命ずることができる。
指定法人は、毎事業年度、事業計画書 及び収支予算書を作成し、当該事業年度の開始前に(第二十条第一項の規定による指定を受けた日の属する事業年度にあっては、その指定を受けた後遅滞なく)、国土交通大臣 及び文部科学大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
指定法人は、毎事業年度、事業報告書 及び収支決算書を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に国土交通大臣 及び文部科学大臣に提出しなければならない。
指定法人は、国土交通省令・文部科学省令で定めるところにより、民族共生象徴空間構成施設管理業務に関する経理と民族共生象徴空間構成施設管理業務以外の業務に関する経理とを区分して整理しなければならない。
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百六条の二第三項に規定する退職手当通算法人には、指定法人を含むものとする。
国派遣職員(国家公務員法第二条に規定する一般職に属する職員が、任命権者 又はその委任を受けた者の要請に応じ、指定法人の職員(常時勤務に服することを要しない者を除き、第二十一条に規定する業務に従事する者に限る。以下 この項において同じ。)となるため退職し、引き続いて当該指定法人の職員となり、引き続き当該指定法人の職員として在職している場合における当該指定法人の職員をいう。次項において同じ。)は、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第七条の二 及び第二十条第三項の規定の適用については、同法第七条の二第一項に規定する公庫等職員とみなす。
指定法人 又は国派遣職員は、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第百二十四条の二の規定の適用については、それぞれ同条第一項に規定する公庫等 又は公庫等職員とみなす。
前条に規定するもののほか、国は、指定法人が行う第二十一条に規定する業務の適正かつ確実な遂行を図るため必要があると認めるときは、職員の派遣 その他の適当と認める人的援助について必要な配慮を加えるよう努めるものとする。
指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員の選任 及び解任は、国土交通大臣 及び文部科学大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、指定法人の第二十一条に規定する業務に従事する役員が、この法律 若しくは この法律に基づく命令 若しくはこれらに基づく処分 若しくは民族共生象徴空間構成施設管理業務規程に違反する行為をしたとき、同条に規定する業務に関し著しく不適当な行為をしたとき、又はその在任により指定法人が第二十条第二項第三号に該当することとなるときは、指定法人に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況 若しくは帳簿、書類 その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、指定法人に対し、第二十一条に規定する業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、指定法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第二十条第一項の規定による指定を取り消すことができる。
この法律 又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
第二十一条に規定する業務を適正かつ確実に実施することができないおそれがある者となったとき。
第二十二条第一項の規定により認可を受けた民族共生象徴空間構成施設管理業務規程によらないで民族共生象徴空間構成施設管理業務を行ったとき。
第二十二条第三項、第二十七条第二項 又は前条の規定による命令に違反したとき。
不当に民族共生象徴空間構成施設管理業務を実施しなかったとき。
国土交通大臣 及び文部科学大臣は、前項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合において、国土交通大臣 及び文部科学大臣がその取消し後に新たに指定法人を指定したときは、取消しに係る指定法人の民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財産は、新たに指定を受けた指定法人に帰属する。
前項に定めるもののほか、前条第一項の規定により第二十条第一項の規定による指定を取り消した場合における民族共生象徴空間構成施設管理業務に係る財産の管理 その他所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、合理的に必要と判断される範囲内において、政令で定めることができる。
第七章 アイヌ政策推進本部
アイヌ施策を総合的かつ効果的に推進するため、内閣に、アイヌ政策推進本部(以下「本部」という。)を置く。
本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
前二号に掲げるもののほか、アイヌ施策で重要なものの企画 及び立案 並びに総合調整に関すること。
本部は、アイヌ政策推進本部長、アイヌ政策推進副本部長 及びアイヌ政策推進本部員をもって組織する。
本部の長は、アイヌ政策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣官房長官をもって充てる。
本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
本部に、アイヌ政策推進副本部長(次項 及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
副本部長は、本部長の職務を助ける。
本部に、アイヌ政策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
本部員は、次に掲げる者(第一号から第八号までに掲げる者にあっては、副本部長に充てられたものを除く。)をもって充てる。
前各号に掲げる者のほか、本部長 及び副本部長以外の国務大臣のうちから、本部の所掌事務を遂行するために特に必要があると認める者として内閣総理大臣が指定する者
本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長 並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人 又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。
本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。
本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
第八章 雑則
この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その一部を北海道開発局長に委任することができる。
第十六条の規定による農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を森林管理局長に委任することができる。
前項の規定により森林管理局長に委任された権限は、農林水産省令で定めるところにより、森林管理署長に委任することができる。
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、命令で定める。
第二十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して同項の刑を科する。
第二十九条の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。