犯罪捜査規範

# 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号 #

第4章 任意捜査

分類 規則
カテゴリ   警察
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和六年国家公安委員会規則第四号による改正
最終編集日 : 2024年 04月21日 22時02分


1項
捜査は、なるべく任意捜査の方法によつて行わなければならない。
1項

任意捜査を行うに当り相手方の承諾を求めるについては、次に掲げる事項に注意しなければならない。

(1) 号

承諾を強制し、またはその疑を受けるおそれのある態度 もしくは方法をとらないこと。

(2) 号
任意性を疑われることのないように、必要な配意をすること。
1項

捜査を行うに当つては、聞込、尾行、密行、張込等により、できる限り多くの捜査資料を入手するように努めなければならない。

1項

刑訴法第197条第3項の規定による通信履歴の電磁的記録を消去しないことの求め 及び当該求めの取消し 並びに同条第4項の規定による期間の延長をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。

2項

通信履歴の電磁的記録を消去しないことの求め 及び当該求めの取消し 並びに期間の延長は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。

1項

捜査のため、被疑者 その他の関係者に対して任意出頭を求めるには、電話、呼出状(別記様式第7号)の送付 その他適当な方法により、出頭すべき日時、場所、用件 その他必要な事項を呼出人に確実に伝達しなければならない。


この場合において、被疑者 又は重要な参考人の任意出頭については、警察本部長 又は警察署長に報告して、その指揮を受けなければならない。

2項

被疑者 その他の関係者に対して任意出頭を求める場合には、呼出簿(別記様式第8号)に所要事項を記載して、その処理の経過を明らかにしておかなければならない。

1項

逮捕状の発付されている場合であつても、その後の事情により逮捕状による逮捕の必要がないと認められるに至つたときは、任意捜査の方法によらなければならない。


この場合においては、逮捕状は、その有効期間内であつても、直ちに裁判官に返還しなければならない。

2項

前項の場合において、刑訴法第201条の2第2項の規定による逮捕状に代わるものの交付があるときは、当該逮捕状に代わるものをも直ちに裁判官に返還しなければならない。

1項

犯罪の現場 その他の場所、身体 又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。

2項

実況見分は、居住者、管理者 その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。

3項

実況見分調書には、できる限り、図面 及び写真を添付しなければならない。

4項

前3項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。

1項

実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者 その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。

2項

被疑者、被害者 その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合には、刑訴法第198条第3項から第5項まで および同法第223条第2項の規定によらなければならない。


この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。

1項

被疑者の供述により凶器、盗品等 その他の証拠資料を発見した場合において、証明力確保のため必要があるときは実況見分を行い、その発見の状況を実況見分調書に明確にしておかなければならない。

1項

女子の任意の身体検査は、行つてはならない。


ただし、裸にしないときはこの限りでない。

1項

人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶につき捜索をする必要があるときは、住居主 又は看守者の任意の承諾が得られると認められる場合においても、捜索許可状の発付を受けて捜索をしなければならない。

1項

所有者、所持者 又は保管者の任意の提出に係る物を領置するに当たつては、なるべく提出者から任意提出書を提出させた上、領置調書を作成しなければならない。


この場合においては、刑訴法第120条の規定による押収品目録交付書を交付するものとする。

2項

任意の提出に係る物を領置した場合(次項に規定する場合に該当する場合を除く)において、その所有者がその物の所有権を放棄する旨の意思を表示したときは、任意提出書にその旨を記載させ、又は所有権放棄書の提出を求めなければならない。

3項

任意の提出に係る物を領置した場合において、その物が電磁的記録に係る記録媒体であり、当該記録媒体の所有者でない提出者が当該電磁的記録について所有に属するものとみなされる権利(刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法昭和38年法律第138号第1条の2の規定により所有に属するものとみなされる場合における権利をいう。)を放棄する旨の意思を表示したときは、任意提出書にその旨を記載させ、又は電磁的記録に係る権利放棄書の提出を求めなければならない。

1項

被疑者 その他の者の遺留物を領置するに当つては、居住者、管理者 その他関係者の立会を得て行うようにしなければならない。

2項

前項の領置については、実況見分調書 その他によりその物の発見された状況等を明確にした上、領置調書を作成しておかなければならない。

1項

領置をするに当たつては、指掌紋 その他の附着物を破壊しないように注意するとともに、その物をできる限り原状のまま保存するため適当な方法を講じ、滅失、毀損、変質、変形、混合 又は散逸することのないように注意しなければならない。

1項

領置物について廃棄、換価、還付 又は仮還付の処分をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。


ただし、急速に廃棄処分をする必要がある場合においては、処分後速やかに警察本部長 又は警察署長にその旨を報告するものとする。

2項

還付 又は仮還付の処分をするに当たつては、相手方から()還付請書を徴しておくとともに、先に仮還付した物について更に還付の処分をする必要があるときは、還付通知書(別記様式第9号)を交付して行うものとする。

3項

運搬 又は保管に不便な領置物について、看守者を置き、又は所有者 その他の者に、その者の承諾を得て保管させる場合も第1項の場合と同様とする。


この場合は、なるべくその者から保管請書を徴しておかなくてはならない。

4項

廃棄(刑訴法第499条第4項の規定によるものに限る)、換価、還付 及び仮還付の処分は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。

1項

領置物の還付に関して刑訴法第499条第2項の規定による公告をするときは、警察本部長 又は警察署長の指揮を受けて行わなければならない。

2項

前項の公告は、司法警察員たる警察官が行わなければならない。

1項

領置物について廃棄 又は換価の処分を行うに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。

(1) 号
処分に先立ち、その物の状況を写真、見取図、模写図 又は記録等の方法により明らかにすること。
(2) 号

特に必要があると認められるときは、当該領置物の性状、価格等を鑑定に付しておくこと。


この場合においては、再鑑定のためその物の一部保存について配意すること。

(3) 号

危険を生じ、滅失 又は破損するおそれがあり、保管に不便なものである等廃棄 又は換価の処分を行うべき相当な理由があることを明確にしておくこと。

2項

廃棄 又は換価の処分をしたときは、それぞれ廃棄処分書(別記様式第10号)又は換価処分書(別記様式第11号)を作成しておかなければならない。

1項

通告処分の認められている犯則事件に関する領置物について廃棄 又は換価の処分をするに当つては、あらかじめ、調査職員に連絡しなければならない。

1項

領置物の還付 または仮還付の処分をするに当つては、還付 または仮還付を受ける者が正当の権限を有する者であるかどうかについて調査を行い、事後に紛議の生ずることがないようにしなければならない。

1項

領置物の廃棄、換価、還付 または仮還付の処分をするに当つては、その物に係る領置調書中にその旨を記載しておかなければならない。

1項

事件の捜査が長期にわたる場合においては、領置物は証拠物件保存簿(別記様式第12号)に記載して、その出納を明確にしておかなければならない。