この法律は、教科用図書の無償給付その他義務教育諸学校の教科用図書を無償とする措置について必要な事項を定めるとともに、当該措置の円滑な実施に資するため、義務教育諸学校の教科用図書の採択 及び発行の制度を整備し、もつて義務教育の充実を図ることを目的とする。
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律
第一章 総則
この法律において「義務教育諸学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程 並びに特別支援学校の小学部 及び中学部をいう。
この法律において「教科用図書」とは、学校教育法第三十四条第一項(同法第四十九条、第四十九条の八、第七十条第一項 及び第八十二条において準用する場合を含む。)及び附則第九条第一項に規定する教科用図書をいう。
この法律において「発行」とは、教科用図書を製造供給することをいう。
第二章 無償給付及び給与
国は、毎年度、義務教育諸学校の児童 及び生徒が各学年の課程において使用する教科用図書で第十三条、第十四条 及び第十六条の規定により採択されたものを購入し、義務教育諸学校の設置者に無償で給付するものとする。
文部科学大臣は、教科用図書の発行者と、前条の規定により購入すべき教科用図書を購入する旨の契約を締結するものとする。
義務教育諸学校の設置者は、第三条の規定により国から無償で給付された教科用図書を、それぞれ当該学校の校長を通じて児童 又は生徒に給与するものとする。
学年の中途において転学した児童 又は生徒については、その転学後において使用する教科用図書は、前項の規定にかかわらず、 文部科学省令で定める場合を除き、給与しないものとする。
都道府県の教育委員会は、政令で定めるところにより、教科用図書の無償給付 及び給与の実施に関し必要な事務を行なうものとする。
第四条の規定による契約に係る政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第四条第一号に掲げる時期については、
同法第五条第一項中
「十日以内の日」とあるのは
「二十日以内の日」と
読み替えて同項の規定を適用する。
この章に規定するもののほか、教科用図書の無償給付 及び給与に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 採択
都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択の適正な実施を図るため、義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究に関し、計画し、及び実施するとともに、市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会及び義務教育諸学校(公立の義務教育諸学校を除く。)の校長の行う採択に関する事務について、適切な指導、助言 又は援助を行わなければならない。
都道府県の教育委員会は、前条の規定により指導、助言 又は援助を行なおうとするときは、あらかじめ教科用図書選定審議会(以下「選定審議会」という。)の意見をきかなければならない。
選定審議会は、毎年度、政令で定める期間、 都道府県に置く。
選定審議会は、条例で定める人数の委員で組織する。
都道府県の教育委員会は、当該都道府県の区域について、市町村の区域 又は これらの区域を併せた地域に、教科用図書採択地区(以下この章において「採択地区」という。)を設定しなければならない。
都道府県の教育委員会は、採択地区を設定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ市町村の教育委員会の意見をきかなければならない。
都道府県の教育委員会は、採択地区を設定し、又は変更したときは、すみやかにこれを告示するとともに、文部科学大臣にその旨を報告しなければならない。
都道府県内の義務教育諸学校(都道府県立の義務教育諸学校を除く。)において使用する教科用図書の採択は、第十条の規定によつて当該都道府県の教育委員会が行なう指導、助言 又は援助により、種目(教科用図書の教科ごとに分類された単位をいう。以下同じ。)ごとに一種の教科用図書について行なうものとする。
都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択は、あらかじめ選定審議会の意見をきいて、種目ごとに一種の教科用図書について行なうものとする。
公立の中学校で学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すもの及び公立の中等教育学校の前期課程において使用する教科用図書については、市町村の教育委員会 又は都道府県の教育委員会は、前二項の規定にかかわらず、学校ごとに、種目ごとに一種の教科用図書の採択を行うものとする。
第一項の場合において、採択地区が二以上の市町村の区域を併せた地域であるときは、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、協議により規約を定め、当該採択地区内の市町村立の小学校、中学校 及び義務教育学校において使用する教科用図書の採択について協議を行うための協議会(次項 及び第十七条において「採択地区協議会」という。)を設けなければならない。
前項の場合において、当該採択地区内の市町村の教育委員会は、採択地区協議会における協議の結果に基づき、種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない。
第一項から 第三項まで 及び前項の採択は、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号。以下「臨時措置法」という。)第六条第一項の規定により文部科学大臣から送付される目録に登載された教科用図書のうちから行わなければならない。
ただし、学校教育法附則第九条第一項に規定する教科用図書については、この限りでない。
義務教育諸学校において使用する教科用図書については、政令で定めるところにより、政令で定める期間、毎年度、種目ごとに同一の教科用図書を採択するものとする。
市町村の教育委員会、都道府県の教育委員会 及び義務教育諸学校(公立の義務教育諸学校を除く。)の校長は、義務教育諸学校において使用する教科用図書を採択したときは、遅滞なく、当該教科用図書の種類、当該教科用図書を採択した理由 その他文部科学省令で定める事項を公表するよう努めるものとする。
指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下この条において同じ。)については、当該指定都市を包括する都道府県の教育委員会は、第十二条第一項の規定にかかわらず、指定都市の区 若しくは総合区の区域 又は これらの区域を併せた地域に、採択地区を設定しなければならない。
指定都市の教育委員会は、第十条の規定によつて都道府県の教育委員会が行う指導、助言 又は援助により、前項の採択地区ごとに、当該採択地区内の指定都市の設置する小学校、中学校 及び義務教育学校において使用する教科用図書として、種目ごとに一種の教科用図書を採択する。
第十三条第三項 及び第六項の規定は、前項の採択について準用する。
この章に規定するもののほか、選定審議会の所掌事務、組織 及び運営 並びに採択地区の設定、採択地区協議会の組織 及び運営、採択の時期 その他採択に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 発行
文部科学大臣は、義務教育諸学校において使用する教科用図書(学校教育法附則第九条第一項に規定する教科用図書を除く。以下この章において同じ。)の発行を担当する者で次に掲げる基準に該当するものを、その者の申請に基づき、教科用図書発行者として指定する。
次のいずれかに掲げる者でないものであること。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
次条の規定により指定を取り消された日から三年を経過していない者
禁錮以上の刑に処せられ、又は この法律の規定に違反し、若しくは義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択に関し刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条 若しくは第二百三十三条の罪、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第三条第一項(同項第十一号に係る部分に限る。)若しくは同条第二項(同条第一項第十一号に係る部分に限る。)の罪 若しくは公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成十二年法律第百三十号)第四条の罪を犯して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わつた日 又は執行を受けることがなくなつた日から 三年を経過していない者
法人で、その役員のうちにイから ハまでのいずれかに 該当する者があるもの
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人がイから ニまでのいずれかに該当するもの
その事業能力 及び信用状態について政令で定める要件を備えたものであること。
前項の指定を受けようとする者は、文部科学省令で定めるところにより、申請書に必要な書類を添えて、文部科学大臣に提出しなければならない。
文部科学大臣は、教科用図書発行者が次の各号のいずれかに 該当することとなつたときは、前条第一項の指定を取り消さなければならない。
前条第一項各号のいずれかに掲げる基準に適合しなくなつたとき。
虚偽 又は不正の事実に基づいて前条第一項の指定を受けたことが判明したとき。
文部科学大臣は、教科用図書発行者について、第十八条第一項各号に掲げる基準に適合しているかどうかを調査するため必要があると認めるときは、教科用図書発行者に対し、必要な報告 又は資料の提出を求めることができる。
文部科学大臣は、教科用図書発行者が第十九条の規定により指定を取り消されたときは、その者に係る臨時措置法第八条の規定による発行の指示を取り消さなければならない。
教科用図書の発行 及び教科用図書発行者については、この章に規定するもののほか、臨時措置法の定めるところによる。
第五章 罰則
第二十条の規定による報告 若しくは資料の提出の要求に応ぜず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出した者は、三万円以下の罰金に処する。
法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務 又は財産に関し、前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、同条の刑を科する。