自衛隊法

# 昭和二十九年法律第百六十五号 #

第六章 自衛隊の行動

分類 法律
カテゴリ   防衛
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和五年法律第三十四号による改正
最終編集日 : 2024年 04月22日 07時49分


1項

内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部 又は一部の出動を命ずることができる。


この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律平成十五年法律第七十九号第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。

一 号

我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態 又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態

二 号

我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由 及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態

2項

内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。

1項

防衛大臣は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部 又は一部に対し出動待機命令を発することができる。

1項

防衛大臣は、事態が緊迫し、第七十六条第一項第一号に係る部分に限る。以下この条において同じ。)の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、同項の規定により出動を命ぜられた自衛隊の部隊を展開させることが見込まれ、かつ、防備をあらかじめ強化しておく必要があると認める地域(以下「展開予定地域」という。)があるときは、内閣総理大臣の承認を得た上、その範囲を定めて、自衛隊の部隊等に当該展開予定地域内において陣地 その他の防御のための施設(以下「防御施設」という。)を構築する措置を命ずることができる。

1項

防衛大臣 又はその委任を受けた者は、事態が緊迫し、第七十六条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(平成十六年法律第百十三号)の定めるところにより、行動関連措置としての物品の提供を実施することができる。

2項

防衛大臣は、前項に規定する場合において、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律の定めるところにより、防衛省の機関 及び部隊等に行動関連措置としての役務の提供を行わせることができる。

1項

防衛大臣は、都道府県知事から武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第十五条第一項の規定による要請を受けた場合において事態やむを得ないと認めるとき、又は事態対策本部長から同条第二項の規定による求めがあつたときは、内閣総理大臣の承認を得て、当該要請 又は求めに係る国民の保護のための措置を実施するため、部隊等を派遣することができる。

2項

防衛大臣は、都道府県知事から武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第百八十三条において準用する同法第十五条第一項の規定による要請を受けた場合において事態やむを得ないと認めるとき、又は緊急対処事態対策本部長から同法第百八十三条において準用する同法第十五条第二項の規定による求めがあつたときは、内閣総理大臣の承認を得て、当該要請 又は求めに係る緊急対処保護措置を実施するため、部隊等を派遣することができる。

1項

内閣総理大臣は、間接侵略 その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部 又は一部の出動を命ずることができる。

2項

内閣総理大臣は、前項の規定による出動を命じた場合には、出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。


ただし、国会が閉会中の場合 又は衆議院が解散されている場合には、その後 最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。

3項

内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があつたとき、又は出動の必要がなくなつたときは、すみやかに、自衛隊の撤収を命じなければならない。

1項

防衛大臣は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による治安出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部 又は一部に対し出動待機命令を発することができる。

2項

前項の場合においては、防衛大臣は、国家公安委員会と緊密な連絡を保つものとする。

1項

防衛大臣は、事態が緊迫し第七十八条第一項の規定による治安出動命令が発せられること 及び小銃、機関銃(機関けん銃を含む。)、砲、化学兵器、生物兵器 その他その殺傷力がこれらに類する武器を所持した者による不法行為が行われることが予測される場合において、当該事態の状況の把握に資する情報の収集を行うため特別の必要があると認めるときは、国家公安委員会と協議の上、内閣総理大臣の承認を得て、武器を携行する自衛隊の部隊に当該者が所在すると見込まれる場所 及び その近傍において当該情報の収集を行うことを命ずることができる。

1項

内閣総理大臣は、第七十六条第一項第一号に係る部分に限る)又は第七十八条第一項の規定による自衛隊の全部 又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部 又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。

2項

内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部 又は一部を防衛大臣の統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、防衛大臣にこれを指揮させるものとする。

3項

内閣総理大臣は、第一項の規定による統制につき、その必要がなくなつたと認める場合には、すみやかに、これを解除しなければならない。

1項

都道府県知事は、治安維持上重大な事態につきやむを得ない必要があると認める場合には、当該都道府県の都道府県公安委員会と協議の上、内閣総理大臣に対し、部隊等の出動を要請することができる。

2項

内閣総理大臣は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等の出動を命ずることができる。

3項

都道府県知事は、事態が収まり、部隊等の出動の必要がなくなつたと認める場合には、内閣総理大臣に対し、すみやかに、部隊等の撤収を要請しなければならない。

4項

内閣総理大臣は、前項の要請があつた場合 又は部隊等の出動の必要がなくなつたと認める場合には、すみやかに、部隊等の撤収を命じなければならない。

5項

都道府県知事は、第一項に規定する要請をした場合には、事態が収つた後、すみやかに、その旨を当該都道府県の議会に報告しなければならない。

6項

第一項 及び第三項に規定する要請の手続は、政令で定める。

1項

内閣総理大臣は、本邦内にある次に掲げる施設 又は施設 及び区域において、政治上 その他の主義主張に基づき、国家 若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安 若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設 その他の物を破壊する行為が行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要があると認める場合には、当該施設 又は施設 及び区域の警護のため部隊等の出動を命ずることができる。

一 号
自衛隊の施設
二 号

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設 及び区域 並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設 及び区域(同協定第二十五条の合同委員会において自衛隊の部隊等が警護を行うこととされたものに限る

2項

内閣総理大臣は、前項の規定により部隊等の出動を命ずる場合には、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴くとともに、防衛大臣と国家公安委員会との間で協議をさせた上で、警護を行うべき施設 又は施設 及び区域 並びに期間を指定しなければならない。

3項

内閣総理大臣は、前項の期間内であつても、部隊等の出動の必要がなくなつたと認める場合には、速やかに、部隊等の撤収を命じなければならない。

1項

防衛大臣は、海上における人命 若しくは財産の保護 又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。

1項

防衛大臣は、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律平成二十一年法律第五十五号)の定めるところにより、自衛隊の部隊による海賊対処行動を行わせることができる。

1項

防衛大臣は、弾道ミサイル等(弾道ミサイル その他その落下により人命 又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命 又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域 又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。

2項

防衛大臣は、前項に規定するおそれがなくなつたと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。

3項

防衛大臣は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命 又は財産に対する被害を防止するため、防衛大臣が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。


この場合において、防衛大臣は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。

4項

前項の緊急対処要領の作成 及び内閣総理大臣の承認に関し必要な事項は、政令で定める。

5項

内閣総理大臣は、第一項 又は第三項の規定による措置がとられたときは、その結果を、速やかに、国会に報告しなければならない。

1項

都道府県知事 その他政令で定める者は、天災地変 その他の災害に際して、人命 又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣 又はその指定する者に要請することができる。

2項

防衛大臣 又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。


ただし、天災地変 その他の災害に際し、その事態に照らし特に緊急を要し、前項の要請を待つ いとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、部隊等を派遣することができる。

3項

庁舎、営舎 その他の防衛省の施設 又はこれらの近傍に火災 その他の災害が発生した場合においては、部隊等の長は、部隊等を派遣することができる。

4項

第一項の要請の手続は、政令で定める。

5項

第一項から第三項までの規定は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第二条第四項に規定する武力攻撃災害 及び同法第百八十三条において準用する同法第十四条第一項に規定する緊急対処事態における災害については、適用しない

1項

防衛大臣は、大規模地震対策特別措置法昭和五十三年法律第七十三号)第十一条第一項に規定する地震災害警戒本部長から同法第十三条第二項の規定による要請があつた場合には、部隊等を支援のため派遣することができる。

1項

防衛大臣は、原子力災害対策特別措置法平成十一年法律第百五十六号)第十七条第一項に規定する原子力災害対策本部長から同法第二十条第四項の規定による要請があつた場合には、部隊等を支援のため派遣することができる。

1項

防衛大臣は、外国の航空機が国際法規 又は航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。

1項

海上自衛隊は、防衛大臣の命を受け、海上における機雷 その他の爆発性の危険物の除去 及び これらの処理を行うものとする。

1項

防衛大臣は、外務大臣から外国における緊急事態に際して生命 又は身体に危害が加えられるおそれがある邦人の警護、救出 その他の当該邦人の生命 又は身体の保護のための措置(輸送を含む。以下「保護措置」という。)を行うことの依頼があつた場合において、外務大臣と協議し、次の各号いずれにも該当すると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に当該保護措置を行わせることができる。

一 号

当該外国の領域の当該保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たつており、かつ、戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。第九十五条の二第一項において同じ。)が行われることがないと認められること。

二 号

自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国(国際連合の総会 又は安全保障理事会の決議に従つて当該外国において施政を行う機関がある場合にあつては、当該機関)の同意があること。

三 号

予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と第一号に規定する当該外国の権限ある当局との間の連携 及び協力が確保されると見込まれること。

2項

内閣総理大臣は、前項の規定による外務大臣と防衛大臣の協議の結果を踏まえて、同項各号いずれにも該当すると認める場合に限り、同項の承認をするものとする。

3項

防衛大臣は、第一項の規定により保護措置を行わせる場合において、外務大臣から同項の緊急事態に際して生命 又は身体に危害が加えられるおそれがある外国人として保護することを依頼された者 その他の当該保護措置と併せて保護を行うことが適当と認められる者(第九十四条の五第一項において「その他の保護対象者」という。)の生命 又は身体の保護のための措置を部隊等に行わせることができる。

1項

防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱 その他の緊急事態に際して生命 又は身体の保護を要する邦人(邦人の配偶者 若しくは子、外務公務員法昭和二十七年法律第四十一号第二十四条に規定する名誉総領事 若しくは名誉領事 若しくは同法第二十五条第二項の規定により採用された者 又は独立行政法人との契約により外国において当該独立行政法人のために勤務する者として採用された者であつて、日本の国籍を有しないものを含む。以下 この項 及び第九十四条の六において同じ。)の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送において予想される危険 及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該方策を講ずることができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。


この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命 若しくは身体の保護を要する外国人(邦人以外の者をいう。以下 この項において同じ。)として同乗させることを依頼された者、当該外国との連絡調整 その他の当該輸送の実施に伴い必要となる措置をとらせるため当該輸送の職務に従事する自衛官に同行させる必要があると認められる者 又は当該邦人 若しくは当該外国人の家族 その他の関係者で当該邦人 若しくは当該外国人に早期に面会させ、若しくは同行させることが適当であると認められる者を同乗させることができる。

2項

前項の輸送は、次に掲げる航空機 又は船舶により行うことができる。

一 号
輸送の用に主として供するための航空機
二 号

前項の輸送に適する船舶

三 号

前号に掲げる船舶に搭載された回転翼航空機で第一号に掲げる航空機以外のもの(当該船舶と陸地との間の輸送に用いる場合におけるものに限る

3項

第一項の輸送は、前項に規定する航空機 又は船舶のほか、特に必要があると認められるときは、当該輸送に適する車両(当該輸送のために借り受けて使用するものを含む。第九十四条の六において同じ。)により行うことができる。

1項

防衛大臣 又はその委任を受けた者は、第三条第二項に規定する活動として、次の各号に掲げる法律の定めるところにより、それぞれ、当該各号に定める活動を実施することができる。

一 号

重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律平成十一年法律第六十号

後方支援活動としての物品の提供

二 号

重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律平成十二年法律第百四十五号

後方支援活動 又は協力支援活動としての物品の提供

三 号

国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律平成四年法律第七十九号

大規模な災害に対処するアメリカ合衆国、オーストラリア、英国、フランス、カナダ 又はインドの軍隊に対する物品の提供

四 号

国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律平成二十七年法律第七十七号

協力支援活動としての物品の提供

2項

防衛大臣は、第三条第二項に規定する活動として、次の各号に掲げる法律の定めるところにより、それぞれ、当該各号に定める活動を行わせることができる。

一 号

重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律

防衛省の機関 又は部隊等による後方支援活動としての役務の提供 及び部隊等による捜索救助活動

二 号

重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律

部隊等による船舶検査活動 及びその実施に伴う後方支援活動 又は協力支援活動としての役務の提供

三 号

国際緊急援助隊の派遣に関する法律昭和六十二年法律第九十三号

部隊等 又は隊員による国際緊急援助活動 及び当該活動を行う人員 又は当該活動に必要な物資の輸送

四 号

国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律

部隊等による国際平和協力業務、委託に基づく輸送 及び大規模な災害に対処するアメリカ合衆国、オーストラリア、英国、フランス、カナダ 又はインドの軍隊に対する役務の提供

五 号

国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律

部隊等による協力支援活動としての役務の提供 及び部隊等による捜索救助活動

1項

内閣総理大臣は、第七十八条第一項 又は第八十一条第二項の規定による出動命令を発するに際しては、防衛大臣と国家公安委員会との相互の間に緊密な連絡を保たせるものとする。

1項

第七十六条第一項第七十七条の二第七十七条の四第七十八条第一項第八十一条第二項第八十一条の二第一項第八十二条の三第一項 若しくは第三項第八十三条第二項第八十三条の二 又は第八十三条の三の規定により部隊等が行動する場合には、当該部隊等 及び当該部隊等に関係のある都道府県知事、市町村長、警察消防機関 その他の国 又は地方公共団体の機関は、相互に緊密に連絡し、及び協力するものとする。