不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行う。
不動産の鑑定評価に関する法律
第二章 不動産鑑定士
第一節 総則
不動産鑑定士は、不動産鑑定士の名称を用いて、不動産の客観的価値に作用する諸要因に関して調査 若しくは分析を行い、又は不動産の利用、取引 若しくは投資に関する相談に応じることを業とすることができる。
ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
不動産鑑定士試験に合格した者であつて、第十四条の二に規定する実務修習を修了し第十四条の二十三の規定による国土交通大臣の確認を受けた者は、不動産鑑定士となる資格を有する。
不動産鑑定士は、良心に従い、誠実に第三条に規定する業務(以下「鑑定評価等業務」という。)を行うとともに、不動産鑑定士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
不動産鑑定士は、正当な理由がなく、鑑定評価等業務に関して知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
不動産鑑定士でなくなつた後においても、同様とする。
不動産鑑定士は、鑑定評価等業務に必要な知識 及び技能の維持向上に努めなければならない。
第二節 不動産鑑定士試験
不動産鑑定士試験は、不動産鑑定士となろうとする者に必要な学識 及びその応用能力を有するかどうかを判定することをその目的とし、次条に定めるところによつて、短答式(択一式を含む。以下同じ。)及び論文式による筆記の方法により行う。
短答式による試験は、不動産に関する行政法規 及び不動産の鑑定評価に関する理論について行う。
論文式による試験は、短答式による試験に合格した者 及び次条第一項の規定により短答式による試験を免除された者につき、民法、経済学、会計学 及び不動産の鑑定評価に関する理論について行う。
短答式による試験に合格した者に対しては、その申請により、当該短答式による試験に係る合格発表の日から起算して二年を経過する日までに行われる短答式による試験を免除する。
次の各号のいずれかに該当する者に対しては、その申請により、当該各号に定める科目について、論文式による試験を免除する。
学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による大学 若しくは高等専門学校、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学(予科を含む。)、旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)による高等学校高等科 若しくは旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校(以下 この項において「大学等」と総称する。)において通算して三年以上法律学に属する科目の教授 若しくは准教授の職にあつた者 又は法律学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
民法
大学等において通算して三年以上経済学に属する科目の教授 若しくは准教授の職にあつた者 又は経済学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
経済学
大学等において通算して三年以上商学に属する科目の教授 若しくは准教授の職にあつた者 又は商学に属する科目に関する研究により博士の学位を授与された者
会計学
民法、経済学 又は会計学について高等試験本試験 又は公認会計士試験を受け、その試験に合格した者
その試験において受験した科目
司法修習生となる資格(高等試験司法科試験の合格を除く。)を得た者民法
民法、経済学 又は会計学について不動産鑑定士となろうとする者に必要な専門的学識を有する者として政令で定める者
民法、経済学 又は会計学のうち政令で定める科目
前二項の規定による申請の手続は、国土交通省令で定める。
不動産鑑定士試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手数料を納付しなければならない。
前項の規定により納付した受験手数料は、不動産鑑定士試験を受けなかつた場合においても返還しない。
不動産鑑定士試験は、毎年一回以上、土地鑑定委員会が行なう。
土地鑑定委員会は、不正の手段によつて不動産鑑定士試験を受け、又は受けようとした者に対しては、合格の決定を取り消し、又はその試験を受けることを禁止することができる。
土地鑑定委員会は、前項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、三年以内の期間を定めて不動産鑑定士試験を受けることができないものとすることができる。
この法律に定めるもののほか、不動産鑑定士試験に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。
第三節 実務修習
実務修習は、不動産鑑定士試験に合格した者に対して、不動産鑑定士となるのに必要な技能 及び高等の専門的応用能力を修得させるため、第四十八条の規定による届出をした社団 又は財団 その他の国土交通大臣の登録を受けた者(以下この節において「実務修習機関」という。)が行う。
前条の登録は、実務修習の実施に関する業務(以下「実務修習業務」という。)を行おうとする者の申請により行う。
次の各号のいずれかに該当する者は、第十四条の二の登録を受けることができない。
この法律の規定に違反して、刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者
第十四条の十六の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者
法人であつて、実務修習業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの
国土交通大臣は、第十四条の三の規定により登録を申請した者の行う実務修習業務が、別表の上欄に掲げる課程について、それぞれ同表の下欄に掲げる講師 又は指導者によつて行われるものであるときは、その登録をしなければならない。
この場合において、登録に関して必要な手続は、国土交通省令で定める。
登録は、実務修習機関登録簿に次に掲げる事項を記載してするものとする。
実務修習機関の氏名 又は名称 及び住所 並びに法人にあつては、その代表者の氏名
実務修習機関が実務修習業務を行う事務所の所在地
前三号に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項
第十四条の二の登録は、五年以上十年以内において政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
前三条の規定は、前項の登録の更新について準用する。
実務修習機関は、公正に、かつ、第十四条の五第一項の規定及び国土交通省令で定める基準に適合する方法により実務修習を行わなければならない。
実務修習機関は、第十四条の五第二項第二号から第四号までに掲げる事項を変更しようとするときは、変更しようとする日の二週間前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。
実務修習機関は、実務修習業務に関する規程(以下「実務修習業務規程」という。)を定め、実務修習業務の開始前に、国土交通大臣の認可を受けなければならない。
これを変更しようとするときも、同様とする。
実務修習業務規程には、実務修習の実施方法、実務修習に関する料金 その他の国土交通省令で定める事項を定めておかなければならない。
国土交通大臣は、第一項の認可をした実務修習業務規程が実務修習の公正な実施上不適当となつたと認めるときは、その実務修習業務規程を変更すべきことを命じることができる。
実務修習機関は、国土交通大臣の許可を受けなければ、実務修習業務の全部 又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
実務修習機関は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の財産目録、貸借対照表 及び損益計算書 又は収支計算書 並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項 及び第五十九条において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間実務修習機関の事務所に備えて置かなければならない。
実務修習を受けようとする者 その他の利害関係人は、実務修習機関の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
ただし、第二号 又は第四号の請求をするには、実務修習機関の定めた費用を支払わなければならない。
財務諸表等が書面をもつて作成されているときは、当該書面の閲覧 又は謄写の請求
前号の書面の謄本 又は抄本の請求
財務諸表等が電磁的記録をもつて作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を国土交通省令で定める方法により表示したものの閲覧 又は謄写の請求
前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であつて国土交通省令で定めるものにより提供することの請求 又は当該事項を記載した書面の交付の請求
実務修習機関は、毎事業年度経過後三月以内に、当該事業年度の事業報告書 及び収支決算書を作成し、国土交通大臣に提出しなければならない。
実務修習機関(その者が法人である場合にあつては、その役員。次項において同じ。) 若しくはその職員(第十四条の五第一項に規定する講師 及び指導者を含む。次項において同じ。) 又はこれらの者であつた者は、実務修習業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
実務修習機関 及びその職員で実務修習業務に従事する者は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
国土交通大臣は、実務修習機関が第十四条の五第一項の規定に適合しなくなつたと認めるときは、その実務修習機関に対し、同項の規定に適合するため必要な措置をとるべきことを命じることができる。
国土交通大臣は、実務修習機関が第十四条の七の規定に違反していると認めるときは、その実務修習機関に対し、同条の規定に従つて実務修習を行うべきこと 又は実務修習の方法 その他の業務の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命じることができる。
国土交通大臣は、実務修習機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて実務修習業務の全部 若しくは一部の停止を命じることができる。
第十四条の四第一号 又は第三号に該当するに至つたとき。
第十四条の八、第十四条の十、第十四条の十一第一項、第十四条の十二、次条 又は第十四条の二十二の規定に違反したとき。
第十四条の九第一項の認可を受けた実務修習業務規程によらないで実務修習を行つたとき。
第十四条の九第三項の規定による命令に違反したとき。
正当な理由がないのに第十四条の十一第二項各号の規定による請求を拒んだとき。
前二条の規定による命令に違反したとき。
偽り その他不正の手段により第十四条の二の登録を受けたとき。
実務修習機関は、国土交通省令で定めるところにより、帳簿を備え、実務修習に関し国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
国土交通大臣は、第十四条の二の登録を受ける者がいないとき、第十四条の十の規定による実務修習業務の休止 又は廃止があつたとき、第十四条の十六の規定により第十四条の二の登録を取り消し、又は実務修習機関に対し実務修習業務の全部 若しくは一部の停止を命じたとき、実務修習機関が天災 その他の事由により実務修習業務の全部 又は一部を実施することが困難となつたとき、その他必要があると認めるときは、当該実務修習業務の全部 又は一部を自ら行うことができる。
国土交通大臣が前項の規定により実務修習業務の全部 又は一部を自ら行う場合における実務修習業務の引継ぎ その他の必要な事項については、国土交通省令で定める。
国土交通大臣は、この法律の施行に必要な限度において、実務修習機関に対し、実務修習業務 又は経理の状況に関し報告をさせることができる。
国土交通大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、実務修習機関の事務所に立ち入り、実務修習業務の状況 又は帳簿、書類 その他の物件を検査させることができる。
前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
国土交通大臣は、次に掲げる場合には、その旨を官報に公示しなければならない。
第十四条の二の登録をしたとき。
第十四条の八の規定による届出があつたとき。
第十四条の十の規定による許可をしたとき。
第十四条の十六の規定により第十四条の二の登録を取り消し、又は実務修習業務の停止を命じたとき。
第十四条の十八の規定により国土交通大臣が実務修習業務の全部 若しくは一部を自ら行うものとするとき、又は自ら行つていた実務修習業務の全部 若しくは一部を行わないこととするとき。
実務修習機関は、不動産鑑定士試験に合格した者で当該実務修習機関において実務修習を受けている者(以下「修習生」という。)が実務修習のすべての課程を終えたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、当該修習生の実務修習の状況を書面で国土交通大臣に報告しなければならない。
国土交通大臣は、前条の規定による報告に基づき、修習生が実務修習のすべての課程を修了したと認めるときは、当該修習生について実務修習が修了したことの確認を行わなければならない。
第四節 登録
不動産鑑定士となる資格を有する者が、不動産鑑定士となるには、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に、氏名、生年月日、住所 その他国土交通省令で定める事項の登録を受けなければならない。
次の各号のいずれかに該当する者は、不動産鑑定士の登録を受けることができない。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
禁錮以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しないもの
公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
第二十条第四号 又は第四十条第一項 若しくは第三項の規定による登録の消除の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
第四十条第一項 又は第二項の規定による禁止の処分を受け、その禁止の期間中に第二十条第一号の規定に基づきその登録が消除され、まだ その期間が満了しない者
心身の故障により鑑定評価等業務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの
不動産鑑定士の登録を受けようとする者は、登録申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
前項の登録申請書には、不動産鑑定士となる資格を有することを証する書類を添付しなければならない。
国土交通大臣は、前二項の規定による書類の提出があつたときは、遅滞なく、不動産鑑定士の登録をしなければならない。
不動産鑑定士は、第十五条の規定により登録を受けた事項に変更があつたときは、遅滞なく、変更の登録を国土交通大臣に申請しなければならない。
不動産鑑定士が次の各号のいずれかに該当するときは、当該各号に定める者は、その日(第一号の場合にあつては、その事実を知つた日)から三十日以内に、国土交通大臣にその旨を届け出なければならない。
死亡したとき
相続人
第十六条第二号から第四号までのいずれかに該当するに至つたとき
本人
第十六条第七号に該当するに至つたとき
本人 又はその法定代理人 若しくは同居の親族
国土交通大臣は、次の各号のいずれかに掲げる場合には、当該不動産鑑定士の登録を消除しなければならない。
本人から登録の消除の申請があつたとき。
前条の規定による届出があつたとき。
前条の規定による届出がなくて同条各号のいずれかに 該当する事実が判明したとき。
偽りその他不正の手段により不動産鑑定士の登録を受けたことが判明したとき。
第十三条第一項の規定により不動産鑑定士試験の合格の決定を取り消されたとき。
この法律に定めるもののほか、不動産鑑定士の登録に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。