困難な問題を抱える女性への支援に関する法律
第一章 総則
この法律において「困難な問題を抱える女性」とは、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性 その他の様々な事情により日常生活 又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)をいう。
国 及び地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、困難な問題を抱える女性への支援のために必要な施策を講ずる責務を有する。
国 及び地方公共団体は、困難な問題を抱える女性への支援のための施策を講ずるに当たっては、関係地方公共団体相互間の緊密な連携が図られるとともに、この法律に基づく支援を行う機関と福祉事務所(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に規定する福祉に関する事務所をいう。)、児童相談所、児童福祉施設(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設をいう。)、保健所、医療機関、職業紹介機関(労働施策の総合的な推進 並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第二条に規定する職業紹介機関をいう。)、職業訓練機関、教育機関、都道府県警察、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第十三条に規定する日本司法支援センターをいう。)、配偶者暴力相談支援センター(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第三条第一項に規定する配偶者暴力相談支援センターをいう。)その他の関係機関との緊密な連携が図られるよう配慮しなければならない。
第二章 基本方針及び都道府県基本計画等
厚生労働大臣は、困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の都道府県基本計画 及び同条第三項の市町村基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
厚生労働大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
厚生労働大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「都道府県基本計画」という。)を定めなければならない。
市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、基本方針に即し、かつ、都道府県基本計画を勘案して、当該市町村における困難な問題を抱える女性への支援のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「市町村基本計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
都道府県 又は市町村は、都道府県基本計画 又は市町村基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三章 女性相談支援センターによる支援等
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)は、女性相談支援センターを設置することができる。
困難な問題を抱える女性に関する各般の問題について、困難な問題を抱える女性の立場に立って相談に応ずること 又は第十一条第一項に規定する女性相談支援員 若しくは相談を行う機関を紹介すること。
困難な問題を抱える女性(困難な問題を抱える女性がその家族を同伴する場合にあっては、困難な問題を抱える女性 及びその同伴する家族。次号から第五号まで 及び第十二条第一項において同じ。)の緊急時における安全の確保 及び一時保護を行うこと。
女性相談支援センターには、第三項第二号の一時保護を行う施設を設けなければならない。
第三項第二号の一時保護は、緊急に保護することが必要と認められる場合 その他厚生労働省令で定める場合に、女性相談支援センターが、自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。
前項の規定による委託を受けた者 若しくはその役員 若しくは職員 又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
第三項第二号の一時保護に当たっては、その対象となる者が監護すべき児童を同伴する場合には、当該児童の状況に応じて、当該児童への学習に関する支援が行われるものとする。
前各項に定めるもののほか、女性相談支援センターに関し必要な事項は、政令で定める。
女性相談支援センターの所長は、困難な問題を抱える女性であって配偶者のないもの 又はこれに準ずる事情にあるもの 及びその者の監護すべき児童について、児童福祉法第六条の三第十八項に規定する妊産婦等生活援助事業の実施 又は同法第二十三条第二項に規定する母子保護の実施が適当であると認めたときは、これらの者を当該妊産婦等生活援助事業の実施 又は当該母子保護の実施に係る都道府県 又は市町村の長に報告し、又は通知しなければならない。
都道府県(女性相談支援センターを設置する指定都市を含む。第二十条第一項(第四号から第六号までを除く。)並びに第二十二条第一項 及び第二項第一号において同じ。)は、困難な問題を抱える女性について、その発見に努め、その立場に立って相談に応じ、及び専門的技術に基づいて必要な援助を行う職務に従事する職員(以下「女性相談支援員」という。)を置くものとする。
市町村(女性相談支援センターを設置する指定都市を除く。第二十条第二項 及び第二十二条第二項第二号において同じ。)は、女性相談支援員を置くよう努めるものとする。
女性相談支援員の任用に当たっては、その職務を行うのに必要な能力 及び専門的な知識経験を有する人材の登用に特に配慮しなければならない。
都道府県は、困難な問題を抱える女性を入所させて、その保護を行うとともに、その心身の健康の回復を図るための医学的 又は心理学的な援助を行い、及びその自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談 その他の援助を行うこと(以下「自立支援」という。)を目的とする施設(以下「女性自立支援施設」という。)を設置することができる。
市町村は、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体と協働して、その自主性を尊重しつつ、困難な問題を抱える女性について、その意向に留意しながら、前項の業務を行うことができる。
民生委員法(昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員、児童福祉法に定める児童委員、人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)に定める人権擁護委員、保護司法(昭和二十五年法律第二百四号)に定める保護司 及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業を営む者は、この法律の施行に関し、女性相談支援センター 及び女性相談支援員に協力するものとする。
地方公共団体は、単独で 又は共同して、困難な問題を抱える女性への支援を適切かつ円滑に行うため、関係機関、第九条第七項 又は第十二条第二項の規定による委託を受けた者、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体 及び困難な問題を抱える女性への支援に従事する者 その他の関係者(以下この条において「関係機関等」という。)により構成される会議(以下この条において「支援調整会議」という。)を組織するよう努めるものとする。
支援調整会議は、前項に規定する情報の交換 及び協議を行うため必要があると認めるときは、関係機関等に対し、資料 又は情報の提供、意見の開陳 その他必要な協力を求めることができる。
関係機関等は、前項の規定による求めがあった場合には、これに協力するよう努めるものとする。
次の各号に掲げる支援調整会議を構成する関係機関等の区分に従い、当該各号に定める者は、正当な理由がなく、支援調整会議の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
前二号に掲げる者以外の者 支援調整会議を構成する者 又は当該者であった者
前各項に定めるもののほか、支援調整会議の組織 及び運営に関し必要な事項は、支援調整会議が定める。
第四章 雑則
都道府県は、次に掲げる費用(女性相談支援センターを設置する指定都市にあっては、第一号から第三号までに掲げる費用に限る。)を支弁しなければならない。
女性相談支援センターに要する費用(次号に掲げる費用を除く。)
女性相談支援センターが行う第九条第三項第二号の一時保護(同条第七項に規定する厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用
都道府県が行う自立支援(市町村、社会福祉法人 その他適当と認める者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用
第十三条第一項の規定により都道府県が自ら行い、又は民間の団体に委託して行う困難な問題を抱える女性への支援に要する費用
市町村は、市町村が置く女性相談支援員に要する費用を支弁しなければならない。
市町村は、第十三条第二項の規定により市町村が自ら行い、又は民間の団体に委託して行う困難な問題を抱える女性への支援に要する費用を支弁しなければならない。
都道府県は、社会福祉法人が設置する女性自立支援施設の設備に要する費用の四分の三以内を補助することができる。
都道府県 又は市町村は、第十三条第一項 又は第二項の規定に基づく業務を行うに当たって、法令 及び予算の範囲内において、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体の当該活動に要する費用(前条第一項第六号の委託 及び同条第三項の委託に係る委託費の対象となる費用を除く。)の全部 又は一部を補助することができる。
国は、政令で定めるところにより、都道府県が第二十条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第一号 及び第二号に掲げるものについては、その十分の五を負担するものとする。
国は、予算の範囲内において、次に掲げる費用の十分の五以内を補助することができる。
都道府県が第二十条第一項の規定により支弁した費用のうち、同項第三号 及び第五号に掲げるもの(女性相談支援センターを設置する指定都市にあっては、同項第三号に掲げるものに限る。)
市町村が第二十条第二項の規定により支弁した費用
国は、予算の範囲内において、都道府県が第二十条第一項の規定により支弁した費用のうち同項第六号に掲げるもの及び市町村が同条第三項の規定により支弁した費用 並びに都道府県 及び市町村が前条第二項の規定により補助した金額の全部 又は一部を補助することができる。
第五章 罰則
第九条第八項 又は第十五条第五項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役 又は五十万円以下の罰金に処する。