海洋基本法

平成十九年法律第三十三号
分類 法律
カテゴリ   厚生
@ 施行日 : 令和三年九月一日 ( 2021年 9月1日 )
@ 最終更新 : 令和三年法律第三十六号による改正
最終編集日 : 2023年 07月19日 22時25分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 海洋基本計画

  • 第三章 基本的施策

  • 第四章 総合海洋政策本部

第一章 総則

1項

この法律は、地球の広範な部分を占める海洋が人類をはじめとする生物の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、海に囲まれた我が国において、海洋法に関する国際連合条約 その他の国際約束に基づき、並びに海洋の持続可能な開発 及び利用を実現するための国際的な取組の中で、我が国が国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発 及び利用と海洋環境の保全との調和を図る新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、事業者 及び国民の責務を明らかにし、並びに海洋に関する基本的な計画の策定 その他海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって我が国の経済社会の健全な発展 及び国民生活の安定向上を図るとともに、海洋と人類の共生に貢献することを目的とする。

1項

海洋については、海洋の開発 及び利用が我が国の経済社会の存立の基盤であるとともに、海洋の生物の多様性が確保されること その他の良好な海洋環境が保全されることが人類の存続の基盤であり、かつ、豊かで潤いのある国民生活に不可欠であることにかんがみ、将来にわたり海洋の恵沢を享受できるよう、海洋環境の保全を図りつつ海洋の持続的な開発 及び利用を可能とすることを旨として、その積極的な開発 及び利用が行われなければならない。

1項

海洋については、海に囲まれた我が国にとって海洋の安全の確保が重要であることにかんがみ、その安全の確保のための取組が積極的に推進されなければならない。

1項

海洋の開発 及び利用、海洋環境の保全等が適切に行われるためには海洋に関する科学的知見が不可欠である一方で、海洋については科学的に解明されていない分野が多いことにかんがみ、海洋に関する科学的知見の充実が図られなければならない。

1項

海洋の開発、利用、保全等を担う産業(以下「海洋産業」という。)については、我が国の経済社会の健全な発展 及び国民生活の安定向上の基盤であることにかんがみ、その健全な発展が図られなければならない。

1項

海洋の管理は、海洋資源、海洋環境、海上交通、海洋の安全等の海洋に関する諸問題が相互に密接な関連を有し、及び全体として検討される必要があることにかんがみ、海洋の開発、利用、保全等について総合的かつ一体的に行われるものでなければならない。

1項

海洋が人類共通の財産であり、かつ、我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、海洋に関する施策の推進は、海洋に関する国際的な秩序の形成 及び発展のために先導的な役割を担うことを旨として、国際的協調の下に行われなければならない。

1項

国は、第二条から前条までに定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。

1項

地方公共団体は、基本理念にのっとり、海洋に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

1項

海洋産業の事業者は、基本理念にのっとりその事業活動を行うとともに、国 又は地方公共団体が実施する海洋に関する施策に協力するよう努めなければならない。

1項

国民は、海洋の恵沢を認識するとともに、国 又は地方公共団体が実施する海洋に関する施策に協力するよう努めなければならない。

1項

国、地方公共団体、海洋産業の事業者、海洋に関する活動を行う団体 その他の関係者は、基本理念の実現を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、国民の祝日に関する法律昭和二十三年法律第百七十八号第二条に規定する海の日において、国民の間に広く海洋についての理解と関心を深めるような行事が実施されるよう努めなければならない。

1項

政府は、海洋に関する施策を実施するために必要な法制上、財政上 又は金融上の措置 その他の措置を講じなければならない。

1項

政府は、海洋の状況 及び政府が海洋に関して講じた施策に関する資料を作成し、適切な方法により随時公表しなければならない。

第二章 海洋基本計画

1項

政府は、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋に関する基本的な計画(以下「海洋基本計画」という。)を定めなければならない。

2項

海洋基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 号

海洋に関する施策についての基本的な方針

二 号

海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

三 号

前二号に掲げるもののほか、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3項

内閣総理大臣は、海洋基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。

4項

内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、海洋基本計画を公表しなければならない。

5項

政府は、海洋に関する情勢の変化を勘案し、及び海洋に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、海洋基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとする。

6項

第三項 及び第四項の規定は、海洋基本計画の変更について準用する。

7項

政府は、海洋基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等 その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

第三章 基本的施策

1項

国は、海洋環境の保全 並びに海洋資源の将来にわたる持続的な開発 及び利用を可能とすることに配慮しつつ海洋資源の積極的な開発 及び利用を推進するため、水産資源の保存 及び管理、水産動植物の生育環境の保全 及び改善、漁場の生産力の増進、海底 又はその下に存在する石油、可燃性天然ガス、マンガン鉱、コバルト鉱等の鉱物資源の開発 及び利用の推進 並びにそのための体制の整備 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、海洋が地球温暖化の防止等の地球環境の保全に大きな影響を与えること等にかんがみ、生育環境の保全 及び改善等による海洋の生物の多様性の確保、海洋に流入する水による汚濁の負荷の低減、海洋への廃棄物の排出の防止、船舶の事故等により流出した油等の迅速な防除、海洋の自然景観の保全 その他の海洋環境の保全を図るために必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、前項の措置については、科学的知見を踏まえつつ、海洋環境に対する悪影響を未然に防止する観点から、これを実施するとともに、その適切な見直しを行うよう努めるものとする。

1項

国は、排他的経済水域等(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律平成八年法律第七十四号第一条第一項の排他的経済水域 及び同法第二条の大陸棚をいう。以下同じ。)の開発、利用、保全等(以下「排他的経済水域等の開発等」という。)に関する取組の強化を図ることの重要性にかんがみ、海域の特性に応じた排他的経済水域等の開発等の推進、排他的経済水域等における我が国の主権的権利を侵害する行為の防止 その他の排他的経済水域等の開発等の推進のために必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、効率的かつ安定的な海上輸送の確保を図るため、日本船舶の確保、船員の育成 及び確保、国際海上輸送網の拠点となる港湾の整備 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存する我が国の経済社会にとって、海洋資源の開発 及び利用、海上輸送等の安全が確保され、並びに海洋における秩序が維持されることが不可欠であることにかんがみ、海洋について、我が国の平和 及び安全の確保 並びに海上の安全 及び治安の確保のために必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、津波、高潮等による災害から国土 並びに国民の生命、身体 及び財産を保護するため、災害の未然の防止、災害が発生した場合における被害の拡大の防止 及び災害の復旧(以下「防災」という。)に関し必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、海洋に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、海洋の状況の把握、海洋環境の変化の予測 その他の海洋に関する施策の策定 及び実施に必要な調査(以下「海洋調査」という。)の実施 並びに海洋調査に必要な監視、観測、測定等の体制の整備に努めるものとする。

2項

国は、地方公共団体の海洋に関する施策の策定 及び実施 並びに事業者 その他の者の活動に資するため、海洋調査により得られた情報の提供に努めるものとする。

1項

国は、海洋に関する科学技術(以下「海洋科学技術」という。)に関する研究開発の推進 及び その成果の普及を図るため、海洋科学技術に関し、研究体制の整備、研究開発の推進、研究者 及び技術者の育成、国、独立行政法人(独立行政法人通則法平成十一年法律第百三号第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)、都道府県 及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、海洋産業の振興 及び その国際競争力の強化を図るため、海洋産業に関し、先端的な研究開発の推進、技術の高度化、人材の育成 及び確保、競争条件の整備等による経営基盤の強化 及び新たな事業の開拓 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、沿岸の海域の諸問題がその陸域の諸活動等に起因し、沿岸の海域について施策を講ずることのみでは、沿岸の海域の資源、自然環境等がもたらす恵沢を将来にわたり享受できるようにすることが困難であることにかんがみ、自然的社会的条件からみて一体的に施策が講ぜられることが相当と認められる沿岸の海域 及び陸域について、その諸活動に対する規制 その他の措置が総合的に講ぜられることにより適切に管理されるよう必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、前項の措置を講ずるに当たっては、沿岸の海域 及び陸域のうち特に海岸が、厳しい自然条件の下にあるとともに、多様な生物が生息し、生育する場であり、かつ、独特の景観を有していること等にかんがみ、津波、高潮、波浪 その他海水 又は地盤の変動による被害からの海岸の防護、海岸環境の整備 及び保全 並びに海岸の適正な利用の確保に十分留意するものとする。

1項

国は、離島が我が国の領海 及び排他的経済水域等の保全、海上交通の安全の確保、海洋資源の開発 及び利用、海洋環境の保全等に重要な役割を担っていることにかんがみ、離島に関し、海岸等の保全、海上交通の安全の確保 並びに海洋資源の開発 及び利用のための施設の整備、周辺の海域の自然環境の保全、住民の生活基盤の整備 その他の必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、海洋に関する国際約束等の策定に主体的に参画すること その他の海洋に関する国際的な連携の確保のために必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、海洋に関し、我が国の国際社会における役割を積極的に果たすため、海洋資源、海洋環境、海洋調査、海洋科学技術、海上における犯罪の取締り、防災、海難救助等に係る国際協力の推進のために必要な措置を講ずるものとする。

1項

国は、国民が海洋についての理解と関心を深めることができるよう、学校教育 及び社会教育における海洋に関する教育の推進、海洋法に関する国際連合条約 その他の国際約束 並びに海洋の持続可能な開発 及び利用を実現するための国際的な取組に関する普及啓発、海洋に関するレクリエーションの普及等のために必要な措置を講ずるものとする。

2項

国は、海洋に関する政策課題に的確に対応するために必要な知識 及び能力を有する人材の育成を図るため、大学等において学際的な教育 及び研究が推進されるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第四章 総合海洋政策本部

1項

海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣に、総合海洋政策本部以下「本部」という。)を置く。

1項

本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 号

海洋基本計画の案の作成 及び実施の推進に関すること。

二 号

関係行政機関が海洋基本計画に基づいて実施する施策の総合調整に関すること。

三 号

前二号に掲げるもののほか、海洋に関する施策で重要なものの企画 及び立案 並びに総合調整に関すること。

1項

本部は、総合海洋政策本部長、総合海洋政策副本部長 及び総合海洋政策本部員をもって組織する。

1項

本部の長は、総合海洋政策本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2項

本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

1項

本部に、総合海洋政策副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官 及び海洋政策担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、海洋に関する施策の集中的かつ総合的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。

2項

副本部長は、本部長の職務を助ける。

1項

本部に、総合海洋政策本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2項

本部員は、本部長 及び副本部長以外のすべての国務大臣をもって充てる。

1項

本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人 及び地方独立行政法人の長 並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人 又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法平成十一年法律第九十一号第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明 その他必要な協力を求めることができる。

2項

本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

1項

本部に関する事務は、内閣府において処理する。

1項

本部に係る事項については、内閣法昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

1項

この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。