家内労働法

昭和四十五年法律第六十号
分類 法律
カテゴリ   労働
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第六十八号による改正
最終編集日 : 2024年 07月25日 15時50分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 委託

  • 第三章 工賃及び最低工賃

  • 第四章 安全及び衛生

  • 第五章 家内労働に関する審議機関

  • 第六章 雑則

  • 第七章 罰則

第一章 総則

1項

この法律は、工賃の最低額、安全 及び衛生 その他家内労働者に関する必要な事項を定めて、家内労働者の労働条件の向上を図り、もつて家内労働者の生活の安定に資することを目的とする。

2項

この法律で定める家内労働者の労働条件の基準は最低のものであるから、 委託者 及び家内労働者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

1項

この法律で「委託」とは、次に掲げる行為をいう。

一 号

他人に物品を提供して、その物品を部品、附属品 若しくは原材料とする物品の製造 又はその物品の加工、改造、修理、浄洗、選別、包装 若しくは解体(以下「加工等」という。)を委託すること。

二 号

他人に物品を売り渡して、その者がその物品を部品、附属品 若しくは原材料とする物品を製造した場合 又はその物品の加工等をした場合にその製造 又は加工等に係る物品を買い受けることを約すること。

2項

この法律で「家内労働者」とは、物品の製造、加工等 若しくは販売 又はこれらの請負を業とする者 その他これらの行為に類似する行為を業とする者であつて厚生労働省令で定めるものから、主として労働の対償を得るために、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、部品、附属品 又は原材料を含む。)について委託を受けて、物品の製造 又は加工等に従事する者であつて、その業務について同居の親族以外の者を使用しないことを常態とするものをいう。

3項

この法律で「委託者」とは、物品の製造、加工等 若しくは販売 又はこれらの請負を業とする者 その他前項の厚生労働省令で定める者であつて、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、部品、附属品 又は原材料を含む。)について家内労働者に委託をするものをいう。

4項

この法律で「補助者」とは、家内労働者の同居の親族であつて、当該家内労働者の従事する業務を補助する者をいう。

5項

この法律で「工賃」とは、次に掲げるものをいう。

一 号

第一項第一号に掲げる行為に係る委託をする場合において物品の製造 又は加工等の対償として委託者が家内労働者に支払うもの

二 号

第一項第二号に掲げる行為に係る委託をする場合において同号の物品の買受けについて委託者が家内労働者に支払うものの価額と同号の物品の売渡しについて家内労働者が委託者に支払うものの価額との差額

6項

この法律で「労働者」とは、労働基準法昭和二十二年法律第四十九号第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業 又は事務所に使用される者 及び家事使用人を除く)をいう。

第二章 委託

1項

委託者は、委託をするにあたつては、家内労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、家内労働手帳を交付しなければならない。

2項

委託者は、委託をするつど委託をした業務の内容、工賃の単価、工賃の支払期日 その他厚生労働省令で定める事項を、製造 又は加工等に係る物品を受領するつど受領した物品の数量 その他厚生労働省令で定める事項を、工賃を支払うつど支払つた工賃の額 その他厚生労働省令で定める事項を、それぞれ家内労働手帳に記入しなければならない。

3項

前二項に規定するもののほか、家内労働手帳に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

1項

委託者 又は家内労働者は、当該家内労働者が業務に従事する場所の周辺地域において同一 又は類似の業務に従事する労働者の通常の労働時間をこえて当該家内労働者 及び補助者が業務に従事することとなるような委託をし、又は委託を受けることがないように努めなければならない。

2項

都道府県労働局長は、必要があると認めるときは、都道府県労働局に置かれる政令で定める審議会の意見を聴いて、一定の地域内において一定の業務に従事する家内労働者 及びこれに委託をする委託者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、当該家内労働者 及び補助者が業務に従事する時間の適正化を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。

1項

六月をこえて継続的に同一の家内労働者に委託をしている委託者は、当該家内労働者に引き続いて継続的に委託をすることを打ち切ろうとするときは、遅滞なく、その旨を当該家内労働者に予告するように努めなければならない。

第三章 工賃及び最低工賃

1項

工賃は、厚生労働省令で定める場合を除き、家内労働者に、通貨でその全額を支払わなければならない。

2項

工賃は、厚生労働省令で定める場合を除き、委託者が家内労働者の製造 又は加工等に係る物品についての検査(以下「検査」という。)をするかどうかを問わず、委託者が家内労働者から当該物品を受領した日から起算して一月以内支払わなければならない。


ただし、毎月一定期日を工賃締切日として定める場合は、この限りでない。


この場合においては、委託者が検査をするかどうかを問わず、当該工賃締切日までに受領した当該物品に係る工賃を、その日から一月以内支払わなければならない。

1項

委託者は、家内労働者から申出のあつた場合 その他特別の事情がある場合を除き、工賃の支払 及び物品の受渡しを家内労働者が業務に従事する場所において行なうように努めなければならない。

1項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、一定の地域内において一定の業務に従事する工賃の低廉な家内労働者の労働条件の改善を図るため必要があると認めるときは、労働政策審議会 又は都道府県労働局に置かれる政令で定める審議会(以下「審議会」と総称する。)の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該業務に従事する家内労働者 及びこれに委託をする委託者に適用される最低工賃を決定することができる。

2項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の審議会の意見の提出があつた場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を付して、審議会に再審議を求めなければならない。

1項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前条第一項の審議会の意見の提出があつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その意見の要旨を公示しなければならない。

2項

前条第一項の審議会の意見に係る家内労働者 又は委託者は、前項の規定による公示の日の翌日から起算して十五日以内に、厚生労働大臣 又は都道府県労働局長に、異議を申し出ることができる。

3項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつたときは、その申出について、審議会に意見を求めなければならない。

4項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、第一項の規定による公示の日の翌日から起算して十五日を経過する日までの間は、前条第一項の規定による決定をすることができない


第二項の規定による申出があつた場合において、前項の審議会の意見が提出されるまでの間についても、同様とする。

5項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前条第一項の規定による決定をする場合において、第二項の規定による申出があつたときは、第三項の審議会の意見に基づき、当該最低工賃において、一定の範囲の業務について、その適用を一定の期間を限つて猶予し、又は最低工賃額(最低工賃において定める工賃の額をいう。以下同じ。)について別段の定めをすることができる。

6項

前条第二項の規定は、第三項の審議会の意見の提出があつた場合について準用する。

1項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、最低工賃について必要があると認めるときは、その決定の例により、その改正 又は廃止の決定をすることができる。

1項

審議会は、最低工賃の決定 又はその改正 若しくは廃止の決定について調査審議を行なう場合には、厚生労働省令で定めるところにより、関係家内労働者 及び関係委託者の意見をきくものとする。

2項

家内労働者 又は委託者の全部 又は一部を代表する者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣 又は都道府県労働局長に対し、当該家内労働者 若しくは委託者に適用される最低工賃の決定 又は当該家内労働者 若しくは委託者に現に適用されている最低工賃の改正 若しくは廃止の決定をするよう申し出ることができる。

3項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、前項の規定による申出があつた場合において必要があると認めるときは、その申出について審議会に意見を求めるものとする。

1項

厚生労働大臣 又は都道府県労働局長は、最低工賃に関する決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、決定した事項を公示しなければならない。

2項

最低工賃の決定 及びその改正の決定は、前項の規定による公示の日から起算して三十日を経過した日(公示の日から起算して三十日を経過した日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、最低工賃の廃止の決定は、同項の規定による公示の日(公示の日後の日であつて当該決定において別に定める日があるときは、その日)から、その効力を生ずる。

1項

最低工賃は、当該最低工賃に係る一定の地域と同一の地域内において同一 又は類似の業務に従事する労働者に適用される最低賃金(最低賃金法昭和三十四年法律第百三十七号)の規定による最低賃金をいう。以下同じ。)(当該同一の地域内において同一 又は類似の業務に従事する労働者に適用される最低賃金が決定されていない場合には、当該労働者の賃金(労働基準法第十一条に規定する賃金をいう。)との均衡を考慮して定められなければならない。

2項

最低工賃額は、家内労働者の製造 又は加工等に係る物品の一定の単位によつて定めるものとする。

1項

委託者は、最低工賃の適用を受ける家内労働者に対し、その最低工賃額以上の工賃を支払わなければならない。

1項

第八条第一項 及び第十条に規定する厚生労働大臣 又は都道府県労働局長の職権は、二以上の都道府県労働局の管轄区域にわたる事案 及びの都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案であつて厚生労働大臣が全国的に関連があると認めて指定するものについては、厚生労働大臣が行い、の都道府県労働局の管轄区域内のみに係る事案(厚生労働大臣の職権に属する事案を除く)については、当該都道府県労働局長が行う。

2項

厚生労働大臣は、都道府県労働局長が決定した最低工賃が著しく不適当となつたと認めるときは、労働政策審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、当該最低工賃の改正 又は廃止の決定をすべきことを都道府県労働局長に命ずることができる。

3項

第八条第二項の規定は、前項の労働政策審議会の意見の提出があつた場合について準用する。

1項

第六条 又は第十四条の規定に違反する工賃の支払を定める委託に関する契約は、その部分については無効とする。


この場合において、無効となつた部分は、これらの規定に定める基準による。

第四章 安全及び衛生

1項

委託者は、委託に係る業務に関し、機械、器具 その他の設備 又は原材料 その他の物品を家内労働者に譲渡し、貸与し、又は提供するときは、これらによる危害を防止するため、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講じなければならない。

2項

家内労働者は、機械、器具 その他の設備 若しくは原材料 その他の物品 又はガス、蒸気、粉じん等による危害を防止するため、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講じなければならない。

3項

補助者は、前項に規定する危害を防止するため、厚生労働省令で定める事項を守らなければならない。

1項

都道府県労働局長 又は労働基準監督署長は、委託者 又は家内労働者が前条第一項 又は第二項の措置を講じない場合には、委託者 又は家内労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、委託をし、若しくは委託を受けることを禁止し、又は機械、器具 その他の設備 若しくは原材料 その他の物品の全部 若しくは一部の使用の停止 その他必要な措置を執ることを命ずることができる。

第五章 家内労働に関する審議機関

1項

審議会は、最低工賃の決定 又はその改正の決定について調査審議を求められたときは、専門部会を置かなければならない。

2項

前項の専門部会は、政令で定めるところにより、関係家内労働者を代表する委員、関係委託者を代表する委員 及び公益を代表する委員各同数をもつて組織する。

1項

審議会は、この法律に別段の定めがある場合のほか、審議に際し必要と認める場合には、関係家内労働者、関係委託者 その他の関係者の意見を聴くものとする。

1項

この法律に規定するもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

第六章 雑則

1項

国 又は地方公共団体は、家内労働者 及び委託者に対し、資料の提供、技術の指導、施設に関する便宜の供与 その他 この法律の目的を達成するために必要な援助を行なうように努めなければならない。

1項

委託者は、厚生労働省令で定めるところにより、委託に係る家内労働者の数 及び業務の内容 その他必要な事項を都道府県労働局長に届け出なければならない。

1項

委託者は、厚生労働省令で定めるところにより、委託に係る家内労働者の氏名、当該家内労働者に支払う工賃の額 その他の事項を記入した帳簿をその営業所に備え付けて置かなければならない。

1項

厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長 又は労働基準監督官は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、委託者 又は家内労働者に対し、工賃に関する事項 その他必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。

1項

労働基準監督署長 及び労働基準監督官は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる。

1項

労働基準監督官は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、委託者の営業所 又は家内労働者が業務に従事する場所に立ち入り、帳簿、書類 その他の物件を検査し、若しくは関係者に質問し、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り、家内労働者 及び補助者に危害を与える物 若しくはその疑いのある物であつて厚生労働省令で定めるものを収去することができる。

2項

前項の規定による立入検査等をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項

労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行なう。

1項

委託者に、この法律 又はこの法律に基づく命令に違反する事実がある場合には、家内労働者 又は補助者は、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長 又は労働基準監督官に申告することができる。

2項

委託者は、前項の規定による申告をしたことを理由として、家内労働者に対して工賃の引下げ その他不利益な取扱いをしてはならない。

3項

委託者が家内労働者に対して前項の規定に違反する取扱いをした場合には、都道府県労働局長、労働基準監督署長 又は労働基準監督官は、厚生労働省令で定めるところにより、当該委託者に対し、その取扱いの是正を命ずることができる。

第七章 罰則

1項

第十八条の規定による委託をすることを禁止する命令に違反した者は、六月以下の懲役 又は五千円以下の罰金に処する。

1項

第十四条の規定に違反した者は、一万円以下の罰金に処する。

1項

次の各号の一に該当する者は、五千円以下の罰金に処する。

一 号

第三条第一項第六条 又は第十七条の規定に違反した者

二 号

第三条第二項の規定による記入をせず、又は虚偽の記入をした者

三 号

第十八条の規定による命令(委託をすることを禁止する命令を除く)又は第三十二条第三項の規定による命令に違反した者

四 号

第二十六条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

五 号

第二十七条の規定による帳簿の備付けをせず、又は同条の帳簿に虚偽の記入をした者

六 号

第二十八条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

七 号

第三十条第一項の規定による立入り、検査 若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

1項

法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。