土地基本法

平成元年法律第八十四号
分類 法律
カテゴリ   土地
@ 施行日 : 令和二年三月三十一日 ( 2020年 3月31日 )
@ 最終更新 : 令和二年三月三十一日公布(令和二年法律第十二号)改正
最終編集日 : 2022年 10月02日 20時05分

T
  • 第一章 総則

  • 第二章 土地に関する基本的施策

  • 第三章 国土審議会の調査審議等

第一章 総則

1項

この法律は、土地についての基本理念を定め、並びに土地所有者等、国、地方公共団体、事業者 及び国民の土地についての基本理念に係る責務を明らかにするとともに、土地に関する施策の基本となる事項を定めることにより、土地が有する効用の十分な発揮、現在 及び将来における地域の良好な環境の確保 並びに災害予防、災害応急対策、災害復旧 及び災害からの復興に資する適正な土地の利用 及び管理 並びにこれらを促進するための土地の取引の円滑化 及び適正な地価の形成に関する施策を総合的に推進し、もって地域の活性化 及び安全で持続可能な社会の形成を図り、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

1項

土地は、現在 及び将来における国民のための限られた貴重な資源であること、国民の諸活動にとって不可欠の基盤であること、その利用が他の土地の利用と密接な関係を有するものであること、その価値が主として人口 及び産業の動向、土地利用の動向、社会資本の整備状況 その他の社会的経済的条件により変動するものであること等 公共の利害に関係する特性を有していることに鑑み、土地については、公共の福祉を優先させるものとする。

1項

土地は、その所在する地域の自然的、社会的、経済的 及び文化的諸条件に応じて適正に利用し、又は管理されるものとする。

2項

土地は、その周辺地域の良好な環境の形成を図るとともに当該周辺地域への悪影響を防止する観点から、適正に利用し、又は管理されるものとする。

3項

土地は、適正かつ合理的な土地の利用 及び管理を図るため策定された土地の利用 及び管理に関する計画に従って利用し、又は管理されるものとする。

1項

土地は、土地の所有者 又は土地を使用収益する権原を有する者(以下「土地所有者等」という。)による適正な利用 及び管理を促進する観点から、円滑に取引されるものとする。

2項

土地は、投機的取引の対象とされてはならない。

1項

土地の価値が その所在する地域における第二条に規定する社会的経済的条件の変化により増加する場合には、土地所有者等に対し、その価値の増加に伴う利益に応じて適切な負担が求められるものとする。

2項

土地の価値が地域住民 その他の土地所有者等以外の者による まちづくりの推進 その他の地域における公共の利益の増進を図る活動により維持され、又は増加する場合には、土地所有者等に対し、その価値の維持 又は増加に要する費用に応じて適切な負担が求められるものとする。

1項

土地所有者等は、第二条から 前条までに定める土地についての基本理念(以下「土地についての基本理念」という。)にのっとり、土地の利用 及び管理 並びに取引を行う責務を有する。

2項

土地の所有者は、前項の責務を遂行するに当たっては、その所有する土地に関する登記手続 その他の権利関係の明確化のための措置 及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならない。

3項

土地所有者等は、国 又は地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。

1項

国 及び地方公共団体は、第二条から 前条までに定める土地についての基本理念(以下「土地についての基本理念」という。)にのっとり、土地に関する施策を総合的に策定し、及びこれを実施する責務を有する。

2項

国 及び地方公共団体は、前項の責務を遂行するに当たっては、土地所有者等による適正な土地の利用 及び管理を確保するため必要な措置を講ずるように努めるとともに、地域住民 その他の土地所有者等以外の者による当該利用 及び管理を補完する取組を推進するため必要な措置を講ずるように努めるものとする。

3項

国 及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、土地についての基本理念に関する国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。

1項

事業者は、土地の利用 及び管理 並びに取引(これを支援する行為を含む。)に当たっては、土地についての基本理念に従わなければならない。

2項

事業者は、国 及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力しなければならない。

1項

国民は、土地の利用 及び管理 並びに取引に当たっては、土地についての基本理念を尊重しなければならない。

2項

国民は、国 及び地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力するように努めなければならない。

1項

政府は、土地に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上 及び金融上の措置を講じなければならない。

1項

政府は、毎年、国会に、地価、土地利用、土地取引 その他の土地に関する動向 及び政府が土地に関して講じた基本的な施策に関する報告を提出しなければならない。

2項

政府は、毎年前項の報告に係る土地に関する動向を考慮して講じようとする基本的な施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

3項

政府は、前項の講じようとする基本的な施策を明らかにした文書を作成するには、国土審議会の意見を聴かなければならない。

第二章 土地に関する基本的施策

1項

国 及び地方公共団体は、適正かつ合理的な土地の利用 及び管理を図るため、人口 及び産業の将来の見通し、土地の利用 及び管理の動向 その他の自然的、社会的、経済的 及び文化的諸条件を勘案し、必要な土地の利用 及び管理に関する計画を策定するものとする。

2項

前項の場合において、国 及び地方公共団体は、地域の特性を考慮して、良好な環境の形成 若しくは保全、災害の防止、良好な環境に配慮した土地の高度利用 又は土地利用の適正な転換を図るため特に必要があると認めるときは同項の計画を詳細に策定するものとし、地域における社会経済活動の広域的な展開を考慮して特に必要があると認めるときは同項の計画を広域の見地に配慮して策定するものとする。

3項

第一項の場合において、国 及び地方公共団体は、住民 その他の関係者の意見を反映させるものとする。

4項

国 及び地方公共団体は、第一項に規定する諸条件の変化を勘案して必要があると認めるときは、同項の計画を変更するものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、前条第一項の計画に従って行われる良好な環境の形成 又は保全、災害の防止、良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換 その他 適正な土地の利用 及び管理の確保を図るため、土地の利用 又は管理の規制 又は誘導に関する措置を適切に講ずるとともに、同項の計画に係る事業の実施 及び当該事業の用に供する土地の境界の明確化 その他 必要な措置を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、前項の措置を講ずるに当たっては、公共事業の用に供する土地 その他の土地の所有権 又は当該土地の利用 若しくは管理に必要な権原の取得に関する措置を講ずるように努めるものとする。

3項

国 及び地方公共団体は、前項の措置を講ずるに当たっては、公共事業の用に供する土地 その他の土地の所有権 又は当該土地の利用 若しくは管理に必要な権原の取得に関する措置を講ずるように努めるものとする。

4項

国 及び地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、低未利用土地(居住の用、業務の用 その他の用途に供されておらず、又は その利用の程度が その周辺の地域における同一の用途 若しくはこれに類する用途に供されている土地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる土地をいう。以下 この項において同じ。)に係る情報の提供、低未利用土地の取得の支援等 低未利用土地の適正な利用 及び管理の促進に努めるものとする。

5項

国 及び地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たっては、所有者不明土地(相当な努力を払って探索を行ってもなお その所有者の全部 又は一部を確知することができない土地をいう。)の発生の抑制 及び解消 並びに円滑な利用 及び管理の確保が図られるように努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、円滑な土地の取引に資するため、不動産市場の整備に関する措置 その他 必要な措置を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、土地の投機的取引 及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去し、適正な地価の形成に資するため、土地取引の規制に関する措置 その他 必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、社会資本の整備に関連して土地所有者等が著しく利益を受けることとなる場合において、地域の特性等を勘案して適切であると認めるときは、その利益に応じて その社会資本の整備についての適切な負担を課するための必要な措置を講ずるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、土地についての基本理念にのっとり、土地に関する施策を踏まえ、税負担の公平の確保を図りつつ、土地に関し、適正な税制上の措置を講ずるものとする。

1項

国は、適正な地価の形成 及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、土地に関する施策の総合的かつ効率的な実施を図るため、地籍、土地の利用 及び管理の状況、不動産市場の動向等に関し、調査を実施し、資料を収集する等必要な措置を講ずるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、土地に関する施策の円滑な実施に資するため、個人の権利利益の保護に配慮しつつ、国民に対し、地籍、土地の利用 及び管理の状況、不動産市場の動向等の土地に関する情報を提供するように努めるものとする。

1項

国 及び地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、相協力し、その整合性を確保するように努めるものとする。

2項

国 及び地方公共団体は、土地に関する施策を講ずるにつき、総合的見地に立った行政組織の整備 及び行政運営の改善に努めるものとする。

1項

国は、地方公共団体が実施する土地に関する施策を支援するため、情報の提供 その他 必要な措置を講ずるように努めるものとする。

第三章 土地に関する基本的な方針

1項

政府は、土地についての基本理念にのっとり、前章に定める土地の利用 及び管理、土地の取引、土地の調査 並びに土地に関する情報の提供に関する基本的施策 その他の土地に関する施策の総合的な推進を図るため、土地に関する基本的な方針(以下この条において「土地基本方針」という。)を定めなければならない。

2項

土地基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 号

第十二条第一項の計画の策定等に関する基本的事項

二 号

適正な土地の利用 及び管理の確保を図るための措置に関する基本的事項

三 号

土地の取引に関する措置に関する基本的事項

四 号

土地に関する調査の実施 及び資料の収集に関する措置 並びに第十八条第二項に規定する土地に関する情報の提供に関する基本的事項

五 号

前各号に掲げるもののほか、土地に関する施策の総合的な推進を図るために必要な事項

3項

国土交通大臣は、土地基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4項

国土交通大臣は、前項の規定により土地基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、国民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、国土審議会の意見を聴かなければならない。

5項

国土交通大臣は、第三項の閣議の決定があったときは、直ちに、土地基本方針を告示しなければならない。

6項

前三項の規定は、土地基本方針の変更について準用する。

第四章 国土審議会の調査審議等

1項

国土審議会は、国土交通大臣の諮問に応じ、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項 及び国土の利用に関する基本的な事項を調査審議する。

2項

国土審議会は、前項に規定する事項に関し、国土交通大臣に対し、及び国土交通大臣を通じて関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができる。

3項

関係行政機関の長は、土地に関する総合的かつ基本的な施策に関する事項で その所掌に係るもの 及び国土の利用に関する基本的な事項で その所掌に係るものについて国土審議会の意見を聴くことができる。