民事訴訟法

# 平成八年法律第百九号 #
略称 : 民訴法 

第二章 裁判所

分類 法律
カテゴリ   民事
@ 施行日 : 令和六年三月一日 ( 2024年 3月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第四十八号による改正
最終編集日 : 2024年 07月31日 09時08分


第一節 日本の裁判所の管轄権

1項

裁判所は、人に対する訴えについて、その住所が日本国内にあるとき、住所がない場合 又は住所が知れない場合にはその居所が日本国内にあるとき、居所がない場合 又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く)は、管轄権を有する。

2項

裁判所は、大使、公使 その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人に対する訴えについて、前項の規定にかかわらず、管轄権を有する。

3項

裁判所は、法人 その他の社団 又は財団に対する訴えについて、その主たる事務所 又は営業所が日本国内にあるとき、事務所 若しくは営業所がない場合 又はその所在地が知れない場合には代表者 その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときは、管轄権を有する。

1項

次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定めるときは、日本の裁判所に提起することができる。

一 契約上の債務の履行の請求を目的とする訴え 又は契約上の債務に関して行われた事務管理 若しくは生じた不当利得に係る請求、契約上の債務の不履行による損害賠償の請求 その他契約上の債務に関する請求を目的とする訴え
契約において 定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき、又は契約において 選択された地の 法によれば 当該債務の履行地が日本国内にあるとき。
二 手形 又は小切手による 金銭の支払の請求を目的とする訴え
手形 又は小切手の支払地が日本国内にあるとき。
三 財産権上の訴え
請求の目的が日本国内にあるとき、又は当該訴えが金銭の支払を請求するものである場合には差し押さえることができる被告の財産が日本国内にあるとき(その財産の価額が著しく低いときを除く。)。
四 事務所 又は営業所を有する者に対する訴えで その事務所 又は営業所における 業務に関するもの
当該事務所 又は営業所が日本国内にあるとき。
五 日本において 事業を行う者(日本において 取引を継続してする外国会社(会社法(平成十七年法律第八十六号)第二条第二号に規定する 外国会社をいう。)を含む。)に対する訴え
当該訴えが その者の日本における 業務に関するものであるとき。
六 船舶債権 その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
船舶が日本国内にあるとき。
七 会社 その他の社団 又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
社団 又は財団が 法人である場合にはそれが日本の 法令により設立されたものであるとき、法人でない場合には その主たる事務所 又は営業所が日本国内にあるとき。
イ 会社 その他の社団からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え 又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの
ロ 社団 又は財団からの役員 又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人 若しくは発起人であった者 又は検査役 若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人 又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社 その他の社団の債権者からの社員 又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
八 不法行為に関する訴え
不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内における その結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。
九 船舶の衝突 その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
損害を受けた船舶が最初に到達した地が日本国内にあるとき。
十 海難救助に関する訴え
海難救助があった地 又は救助された船舶が最初に到達した地が日本国内にあるとき。
十一 不動産に関する訴え
不動産が日本国内にあるとき。
十二 相続権 若しくは遺留分に関する訴え 又は遺贈 その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合 又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合 又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)。
十三 相続債権 その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの
同号に定めるとき。
1項

消費者(個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう。以下同じ。)と事業者(法人 その他の社団 又は財団 及び事業として 又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。以下同じ。)との間で締結される契約(労働契約を除く。以下「消費者契約」という。)に関する消費者からの事業者に対する訴えは、訴えの提起の時 又は消費者契約の締結の時における消費者の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

2項

労働契約の存否 その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下「個別労働関係民事紛争」という。)に関する労働者からの事業主に対する訴えは、個別労働関係民事紛争に係る労働契約における労務の提供の地(その地が定まっていない場合にあっては、労働者を雇い入れた事業所の所在地)が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提起することができる。

3項

消費者契約に関する事業者からの消費者に対する訴え 及び個別労働関係民事紛争に関する事業主からの労働者に対する訴えについては、前条の規定は、適用しない

1項

会社法第七編第二章に規定する訴え(同章第四節 及び第六節に規定するものを除く)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律平成十八年法律第四十八号第六章第二節に規定する訴え その他これらの法令以外の日本の法令により設立された社団 又は財団に関する訴えでこれらに準ずるものの管轄権は、日本の裁判所に専属する。

2項

登記 又は登録に関する訴えの管轄権は、登記 又は登録をすべき地が日本国内にあるときは、日本の裁判所に専属する。

3項

知的財産権(知的財産基本法平成十四年法律第百二十二号第二条第二項に規定する知的財産権をいう。)のうち設定の登録により発生するものの存否 又は効力に関する訴えの管轄権は、その登録が日本においてされたものであるときは、日本の裁判所に専属する。

1項

の訴えで数個の請求をする場合において、日本の裁判所が一の請求について管轄権を有し、他の請求について管轄権を有しないときは、当該の請求と他の請求との間に密接な関連があるときに限り、日本の裁判所にその訴えを提起することができる。


ただし、数人からの 又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る

1項

当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。

2項

前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項

第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

4項

外国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意は、その裁判所が法律上 又は事実上裁判権を行うことができないときは、これを援用することができない

5項

将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。

一 号

消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

二 号

消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本 若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。

6項

将来において生ずる個別労働関係民事紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。

一 号

労働契約の終了の時にされた合意であって、その時における労務の提供の地がある国の裁判所に訴えを提起することができる旨を定めたもの(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。

二 号

労働者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業主が日本 若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、労働者が当該合意を援用したとき。

1項

被告が日本の裁判所が管轄権を有しない旨の抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、裁判所は、管轄権を有する。

1項

裁判所は、訴えについて日本の裁判所が管轄権を有することとなる場合(日本の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意に基づき訴えが提起された場合を除く)においても、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地 その他の事情を考慮して、日本の裁判所が審理 及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があると認めるときは、その訴えの全部 又は一部を却下することができる。

1項

第三条の二から第三条の四まで 及び第三条の六から前条までの規定は、訴えについて法令に日本の裁判所の管轄権の専属に関する定めがある場合には、適用しない

1項

裁判所は、日本の裁判所の管轄権に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。

1項

日本の裁判所の管轄権は、訴えの提起の時を標準として定める。

第二節 管轄

1項

訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

2項

人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき 又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき 又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。

3項

大使、公使 その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。

4項

法人 その他の社団 又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所 又は営業所により、事務所 又は営業所がないときは代表者 その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

5項

外国の社団 又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所 又は営業所により、日本国内に事務所 又は営業所がないときは日本における代表者 その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

6項

国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

1項

次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。

一 財産権上の訴え
義務履行地
二 手形 又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え
手形 又は小切手の支払地
三 船員に対する財産権上の訴え
船舶の船籍の所在地
四 日本国内に住所(法人にあっては、事務所 又は営業所。以下この号において同じ。)がない者 又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え
請求 若しくは その担保の目的 又は差し押さえることができる被告の財産の所在地
五 事務所 又は営業所を有する者に対する訴えで その事務所 又は営業所における業務に関するもの
当該事務所 又は営業所の所在地
六 船舶所有者 その他船舶を利用する者に対する船舶 又は航海に関する訴え
船舶の船籍の所在地
七 船舶債権 その他船舶を担保とする債権に基づく訴え
船舶の所在地
八 会社 その他の社団 又は財団に関する訴えで次に掲げるもの
イ 会社 その他の社団からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え、社員からの社員 若しくは社員であった者に対する訴え 又は社員であった者からの社員に対する訴えで、社員としての資格に基づくもの
ロ 社団 又は財団からの役員 又は役員であった者に対する訴えで役員としての資格に基づくもの
ハ 会社からの発起人 若しくは発起人であった者 又は検査役 若しくは検査役であった者に対する訴えで発起人 又は検査役としての資格に基づくもの
ニ 会社 その他の社団の債権者からの社員 又は社員であった者に対する訴えで社員としての資格に基づくもの
社団 又は財団の普通裁判籍の所在地
九 不法行為に関する訴え
不法行為があった地
十 船舶の衝突 その他海上の事故に基づく損害賠償の訴え
損害を受けた船舶が最初に到達した地
十一 海難救助に関する訴え
海難救助があった地 又は救助された船舶が最初に到達した地
十二 不動産に関する訴え
不動産の所在地
十三 登記 又は登録に関する訴え
登記 又は登録をすべき地
十四 相続権 若しくは遺留分に関する訴え 又は遺贈 その他死亡によって効力を生ずべき行為に関する訴え
相続開始の時における被相続人の普通裁判籍の所在地
十五 相続債権 その他相続財産の負担に関する訴えで前号に掲げる訴えに該当しないもの
同号に定める地
1項

特許権、実用新案権、回路配置利用権 又はプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え(以下「特許権等に関する訴え」という。)について、前二条の規定によれば次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有すべき場合には、その訴えは、それぞれ当該各号に定める裁判所の管轄に専属する。

一 号

東京高等裁判所、名古屋高等裁判所、仙台高等裁判所 又は札幌高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所

東京地方裁判所

二 号

大阪高等裁判所、広島高等裁判所、福岡高等裁判所 又は高松高等裁判所の管轄区域内に所在する地方裁判所

大阪地方裁判所

2項

特許権等に関する訴えについて、前二条の規定により前項各号に掲げる裁判所の管轄区域内に所在する簡易裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。

3項

第一項第二号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴は、東京高等裁判所の管轄に専属する。


ただし第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴については、この限りでない。

1項

意匠権、商標権、著作者の権利(プログラムの著作物についての著作者の権利を除く)、出版権、著作隣接権 若しくは育成者権に関する訴え 又は不正競争(不正競争防止法平成五年法律第四十七号第二条第一項に規定する不正競争 又は家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律(令和二年法律第二十二号)第二条第三項に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴えについて、第四条 又は第五条の規定により次の各号に掲げる裁判所が管轄権を有する場合には、それぞれ当該各号に定める裁判所にも、その訴えを提起することができる。

一 号

前条第一項第一号に掲げる裁判所(東京地方裁判所を除く

東京地方裁判所

二 号

前条第一項第二号に掲げる裁判所(大阪地方裁判所を除く

大阪地方裁判所

1項

一の訴えで数個の請求をする場合には、第四条から前条まで第六条第三項除く)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。


ただし、数人からの 又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る

1項

裁判所法昭和二十二年法律第五十九号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。

2項

前項の価額を算定することができないとき、又は極めて困難であるときは、その価額は百四十万円を超えるものとみなす。

1項

一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。


ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。

2項

果実、損害賠償、違約金 又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。

1項

管轄裁判所が法律上 又は事実上裁判権を行うことができないときは、その裁判所の直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める。

2項

裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、関係のある裁判所に共通する直近上級の裁判所は、申立てにより、決定で、管轄裁判所を定める。

3項

前二項の決定に対しては、不服を申し立てることができない

1項

前節の規定により日本の裁判所が管轄権を有する訴えについて、この法律の他の規定 又は他の法令の規定により管轄裁判所が定まらないときは、その訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する裁判所の管轄に属する。

1項

当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。

2項

前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項

第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

1項

被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。

1項

第四条第一項第五条第六条第二項第六条の二第七条 及び前二条の規定は、訴えについて法令に専属管轄の定めがある場合には、適用しない

2項

特許権等に関する訴えについて、第七条 又は前二条の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所が管轄権を有すべき場合には、前項の規定にかかわらず第七条 又は前二条の規定により、その裁判所は、管轄権を有する。

1項

裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。

1項

裁判所の管轄は、訴えの提起の時を標準として定める。

1項

裁判所は、訴訟の全部 又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより 又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。

2項

地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、前項の規定にかかわらず、申立てにより 又は職権で、訴訟の全部 又は一部について自ら審理 及び裁判をすることができる。


ただし、訴訟がその簡易裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く)に属する場合は、この限りでない。

1項

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者 及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地 その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、訴訟の全部 又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

1項

簡易裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、訴訟の全部 又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができる。

1項

第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者の申立て 及び相手方の同意があるときは、訴訟の全部 又は一部を申立てに係る地方裁判所 又は簡易裁判所に移送しなければならない。


ただし、移送により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき、又はその申立てが、簡易裁判所からその所在地を管轄する地方裁判所への移送の申立て以外のものであって、被告が本案について弁論をし、若しくは弁論準備手続において申述をした後にされたものであるときは、この限りでない。

2項

簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟につき被告の申立てがあるときは、訴訟の全部 又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。


ただし、その申立ての前に被告が本案について弁論をした場合は、この限りでない。

1項

前三条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く)に属する場合には、適用しない

2項

特許権等に関する訴えに係る訴訟について、第十七条 又は前条第一項の規定によれば第六条第一項各号に定める裁判所に移送すべき場合には、前項の規定にかかわらず第十七条 又は前条第一項の規定を適用する。

1項

第六条第一項各号に定める裁判所は、特許権等に関する訴えに係る訴訟が同項の規定によりその管轄に専属する場合においても、当該訴訟において審理すべき専門技術的事項を欠くこと その他の事情により著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、訴訟の全部 又は一部を第四条第五条 若しくは第十一条の規定によれば管轄権を有すべき地方裁判所 又は第十九条第一項の規定によれば移送を受けるべき地方裁判所に移送することができる。

2項

東京高等裁判所は、第六条第三項の控訴が提起された場合において、その控訴審において審理すべき専門技術的事項を欠くこと その他の事情により著しい損害 又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てにより 又は職権で、訴訟の全部 又は一部を大阪高等裁判所に移送することができる。

1項

移送の決定 及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する。

2項

移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない

3項

移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。

第三節 裁判所職員の除斥及び忌避

1項

裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。


ただし第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。

一 号

裁判官 又はその配偶者 若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者 若しくは償還義務者の関係にあるとき。

二 号

裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族 若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。

三 号

裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人 又は補助監督人であるとき。

四 号

裁判官が事件について証人 又は鑑定人となったとき。

五 号

裁判官が事件について当事者の代理人 又は補佐人であるとき、又はあったとき。

六 号

裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。

2項

前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、除斥の裁判をする。

1項

裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

2項

当事者は、裁判官の面前において弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判官を忌避することができない


ただし、忌避の原因があることを知らなかったとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。

1項

合議体の構成員である裁判官 及び地方裁判所の一人の裁判官の除斥 又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥 又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が、決定で、裁判をする。

2項

地方裁判所における前項の裁判は、合議体でする。

3項

裁判官は、その除斥 又は忌避についての裁判に関与することができない

4項

除斥 又は忌避を理由があるとする決定に対しては、不服を申し立てることができない

5項

除斥 又は忌避を理由がないとする決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

除斥 又は忌避の申立てがあったときは、その申立てについての決定が確定するまで訴訟手続を停止しなければならない。


ただし、急速を要する行為については、この限りでない。

1項

この節の規定は、裁判所書記官について準用する。


この場合においては、裁判は、裁判所書記官の所属する裁判所がする。