株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
会社法
第五章 計算等
第一節 会計の原則
第二節 会計帳簿等
⤏ 第一款 会計帳簿
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿 及び その事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主 又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
会計帳簿 又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧 又は謄写の請求
会計帳簿 又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧 又は謄写の請求
前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると 認められる場合を除き、これを拒むことができない。
当該請求を行う株主(以下 この項において「請求者」という。)がその権利の確保 又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
請求者が当該株式会社の業務と 実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
請求者が会計帳簿 又はこれに関する資料の閲覧 又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
請求者が、過去二年以内において、会計帳簿 又はこれに関する資料の閲覧 又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿 又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。
この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、会計帳簿の全部 又は一部の提出を命ずることができる。
⤏ 第二款 計算書類等
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書 その他株式会社の財産 及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下 この章において同じ。) 及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
計算書類 及び事業報告 並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類 及び その附属明細書を保存しなければならない。
監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含み、会計監査人設置会社を除く。)においては、前条第二項の計算書類 及び事業報告 並びにこれらの附属明細書は、法務省令で定めるところにより、監査役の監査を受けなければならない。
会計監査人設置会社においては、次の各号に掲げるものは、法務省令で定めるところにより、当該各号に定める者の監査を受けなければならない。
前条第二項の計算書類及び その附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人
前条第二項の事業報告及び その附属明細書 監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)
取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類 及び事業報告 並びにこれらの附属明細書(第一項 又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項 又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類 及び事業報告(同条第一項 又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告 又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類 及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。)
第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類 及び事業報告
会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。)
第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類 及び事業報告
取締役会設置会社
第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類 及び事業報告
前三号に掲げるもの以外の株式会社
第四百三十五条第二項の計算書類 及び事業報告
前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。
取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
会計監査人設置会社については、第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類が法令 及び定款に従い株式会社の財産 及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、前条第二項の規定は、適用しない。
この場合においては、取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結 後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表 及び損益計算書)を公告しなければならない。
前項の規定にかかわらず、その公告方法が第九百三十九条第一項第一号 又は第二号に掲げる方法である株式会社は、前項に規定する貸借対照表の要旨を公告することで足りる。
前項の株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、第一項に規定する貸借対照表の内容である情報を、定時株主総会の終結の日後五年を経過する日までの間、継続して電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとることができる。この場合においては、前二項の規定は、適用しない。
金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社については、前三項の規定は、適用しない。
株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に属する一定の日(以下 この項において「臨時決算日」という。)における当該株式会社の財産の状況を把握するため、法務省令で定めるところにより、次に掲げるもの(以下「臨時計算書類」という。)を作成することができる。
臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書
第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社 又は会計監査人設置会社においては、臨時計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役 又は会計監査人(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会 及び会計監査人、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会 及び会計監査人)の監査を受けなければならない。
取締役会設置会社においては、臨時計算書類(前項の規定の適用がある場合にあっては、同項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
次の各号に掲げる株式会社においては、当該各号に定める臨時計算書類は、株主総会の承認を受けなければならない。
ただし、臨時計算書類が法令 及び定款に従い株式会社の財産 及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合は、この限りでない。
第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社 又は会計監査人設置会社(いずれも取締役会設置会社を除く。)
第二項の監査を受けた臨時計算書類
取締役会設置会社
前項の承認を受けた臨時計算書類
前二号に掲げるもの以外の株式会社
第一項の臨時計算書類
株式会社は、次の各号に掲げるもの(以下 この条において「計算書類等」という。)を、当該各号に定める期間、その本店に備え置かなければならない。
各事業年度に係る計算書類 及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第四百三十六条第一項 又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告 又は会計監査報告を含む。)
定時株主総会の日の一週間(取締役会設置会社にあっては、二週間)前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)から五年間
臨時計算書類(前条第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告 又は会計監査報告を含む。)
臨時計算書類を作成した日から五年間
株式会社は、次の各号に掲げる計算書類等の写しを、当該各号に定める期間、その支店に備え置かなければならない。
ただし、計算書類等が電磁的記録で作成されている場合であって、支店における次項第三号 及び第四号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
前項第一号に掲げる計算書類等
定時株主総会の日の一週間(取締役会設置会社にあっては、二週間)前の日(第三百十九条第一項の場合にあっては、同項の提案があった日)から三年間
前項第二号に掲げる計算書類等
同号の臨時計算書類を作成した日から三年間
株主 及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
ただし、第二号 又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
計算書類等が書面をもって作成されているときは、当該書面 又は当該書面の写しの閲覧の請求
前号の書面の謄本 又は抄本の交付の請求
計算書類等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって株式会社の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の計算書類等について前項各号に掲げる請求をすることができる。
ただし、同項第二号 又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。
裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、計算書類 及び その附属明細書の全部 又は一部の提出を命ずることができる。
⤏ 第三款 連結計算書類
会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類(当該会計監査人設置会社 及び その子会社から成る企業集団の財産 及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を作成することができる。
連結計算書類は、電磁的記録をもって作成することができる。
事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない。
連結計算書類は、法務省令で定めるところにより、監査役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会)及び会計監査人の監査を受けなければならない。
会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、前項の監査を受けた連結計算書類は、取締役会の承認を受けなければならない。
会計監査人設置会社が取締役会設置会社である場合には、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前項の承認を受けた連結計算書類を提供しなければならない。
次の各号に掲げる会計監査人設置会社においては、取締役は、当該各号に定める連結計算書類を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。
この場合においては、当該各号に定める連結計算書類の内容 及び第四項の監査の結果を定時株主総会に報告しなければならない。
取締役会設置会社である会計監査人設置会社
第五項の承認を受けた連結計算書類
前号に掲げるもの以外の会計監査人設置会社
第四項の監査を受けた連結計算書類
第三節 資本金の額等
⤏ 第一款 総則
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立 又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み 又は給付をした財産の額とする。
前項の払込み 又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金 又は利益準備金(以下「準備金」と総称する。)として計上しなければならない。
合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転 又は株式交付に際して資本金 又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める。
定款 又は株主総会の決議による第三百六十一条第一項第三号、第四号 若しくは第五号ロに掲げる事項についての定め又は報酬委員会による第四百九条第三項第三号、第四号 若しくは第五号ロに定める事項についての決定に基づく株式の発行により資本金 又は準備金として計上すべき額については、法務省令で定める。
株式会社の剰余金の額は、第一号から第四号までに掲げる額の合計額から第五号から第七号までに掲げる額の合計額を減じて得た額とする。
最終事業年度の末日におけるイ 及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲げる額の合計額を減じて得た額
ハ 及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合における当該自己株式の対価の額から当該自己株式の帳簿価額を控除して得た額
最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額(次条第一項第二号の額を除く。)
最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額(第四百四十八条第一項第二号の額を除く。)
最終事業年度の末日後に第百七十八条第一項の規定により自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
最終事業年度の末日後に剰余金の配当をした場合における次に掲げる額の合計額
第四百五十四条第一項第一号の配当財産の帳簿価額の総額(同条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に割り当てた当該配当財産の帳簿価額を除く。)
第四百五十四条第四項第一号に規定する金銭分配請求権を行使した株主に交付した金銭の額の合計額
第四百五十六条に規定する基準未満株式の株主に支払った金銭の額の合計額
前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
⤏ 第二款 資本金の額の減少等
⤏ 第一目 資本金の額の減少等
株式会社は、資本金の額を減少することができる。
この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
減少する資本金の額の全部 又は一部を準備金とするときは、その旨 及び準備金とする額
前項第一号の額は、同項第三号の日における資本金の額を超えてはならない。
株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、
同項中
「株主総会の決議」とあるのは、
「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」と
する。
株式会社は、準備金の額を減少することができる。
この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
減少する準備金の額の全部 又は一部を資本金とするときは、その旨 及び資本金とする額
準備金の額の減少がその効力を生ずる日
前項第一号の額は、同項第三号の日における準備金の額を超えてはならない。
株式会社が株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、
同項中
「株主総会の決議」とあるのは、
「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」と
する。
株式会社が資本金 又は準備金(以下 この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。
ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。
定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。
前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。
前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。
ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。
当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号 又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。
債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社 及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。以下同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。
ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。
ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。
資本金の額の減少
第四百四十七条第一項第三号の日
準備金の額の減少
前条第一項第三号の日
株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。
⤏ 第二目 資本金の額の増加等
株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
第一項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。
株式会社は、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
第一項第一号の額は、同項第二号の日における剰余金の額を超えてはならない。
⤏ 第三目 剰余金についてのその他の処分
株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当 その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。
この場合においては、当該剰余金の処分の額 その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。
第四節 剰余金の配当
株式会社は、その株主(当該株式会社を除く。)に対し、剰余金の配当をすることができる。
株式会社は、前条の規定による剰余金の配当をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
配当財産の種類(当該株式会社の株式等を除く。) 及び帳簿価額の総額
前項に規定する場合において、剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行しているときは、株式会社は、当該種類の株式の内容に応じ、同項第二号に掲げる事項として、次に掲げる事項を定めることができる。
ある種類の株式の株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨 及び当該株式の種類
前号に掲げる事項のほか、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うこととするときは、その旨 及び当該異なる取扱いの内容
第一項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社 及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。
配当財産が金銭以外の財産であるときは、株式会社は、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めることができる。ただし、第一号の期間の末日は、第一項第三号の日以前の日でなければならない。
株主に対して金銭分配請求権(当該配当財産に代えて金銭を交付することを株式会社に対して請求する権利をいう。以下この章において同じ。)を与えるときは、その旨 及び金銭分配請求権を行使することができる期間
一定の数未満の数の株式を有する株主に対して配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨 及び その数
取締役会設置会社は、一事業年度の途中において一回に限り取締役会の決議によって剰余金の配当(配当財産が金銭であるものに限る。以下 この項において「中間配当」という。)をすることができる旨を定款で定めることができる。
この場合における中間配当についての第一項の規定の適用については、
同項中
「株主総会」とあるのは、
「取締役会」と
する。
前条第四項第一号に規定する場合には、株式会社は、同号の期間の末日の二十日前までに、株主に対し、同号に掲げる事項を通知しなければならない。
株式会社は、金銭分配請求権を行使した株主に対し、当該株主が割当てを受けた配当財産に代えて、当該配当財産の価額に相当する金銭を支払わなければならない。この場合においては、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める額をもって当該配当財産の価額とする。
当該配当財産が市場価格のある財産である場合
当該配当財産の市場価格として法務省令で定める方法により算定される額
前号に掲げる場合以外の場合
株式会社の申立てにより裁判所が定める額
第四百五十四条第四項第二号の数(以下 この条において「基準株式数」という。)を定めた場合には、株式会社は、基準株式数に満たない数の株式(以下 この条において「基準未満株式」という。)を有する株主に対し、前条第二項後段の規定の例により基準株式数の株式を有する株主が割当てを受けた配当財産の価額として定めた額に当該基準未満株式の数の基準株式数に対する割合を乗じて得た額に相当する金銭を支払わなければならない。
配当財産(第四百五十五条第二項の規定により支払う金銭 及び前条の規定により支払う金銭を含む。以下 この条において同じ。)は、株主名簿に記載し、又は記録した株主(登録株式質権者を含む。以下 この条において同じ。)の住所 又は株主が株式会社に通知した場所(第三項において「住所等」という。)において、これを交付しなければならない。
前項の規定による配当財産の交付に要する費用は、株式会社の負担とする。ただし、株主の責めに帰すべき事由によってその費用が増加したときは、その増加額は、株主の負担とする。
前二項の規定は、日本に住所等を有しない株主に対する配当財産の交付については、適用しない。
第四百五十三条から前条までの規定は、株式会社の純資産額が三百万円を下回る場合には、適用しない。
第五節 剰余金の配当等を決定する機関の特則
会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会(第二号に掲げる事項については第四百三十六条第三項の取締役会に限る。)が定めることができる旨を定款で定めることができる。
第百六十条第一項の規定による決定をする場合以外の場合における第百五十六条第一項各号に掲げる事項
第四百四十九条第一項第二号に該当する場合における第四百四十八条第一項第一号 及び第三号に掲げる事項
第四百五十二条後段の事項
第四百五十四条第一項各号 及び同条第四項各号に掲げる事項。ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。
前項の規定による定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令 及び定款に従い株式会社の財産 及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り、その効力を有する。
第一項の規定による定款の定めがある場合における第四百四十九条第一項第一号の規定の適用については、
同号中
「定時株主総会」とあるのは、
「定時株主総会 又は第四百三十六条第三項の取締役会」と
する。
前条第一項の規定による定款の定めがある場合には、株式会社は、同項各号に掲げる事項を株主総会の決議によっては定めない旨を定款で定めることができる。
前項の規定による定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令 及び定款に従い株式会社の財産 及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合に限り、その効力を有する。
第六節 剰余金の配当等に関する責任
次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下 この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
第百三十八条第一号ハ 又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合 又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
前項に規定する「分配可能額」とは、第一号 及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下 この節において同じ。)。
臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者 並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下 この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下 この節において同じ。) 及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
前条第一項第二号に掲げる行為
次に掲げる者
第百五十六条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役(当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるものをいう。以下 この項において同じ。)
第百五十六条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役(当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役 又は執行役)として法務省令で定めるものをいう。以下 この項において同じ。)
前条第一項第三号に掲げる行為
次に掲げる者
第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
前条第一項第四号に掲げる行為
第百七十一条第一項の株主総会(当該株主総会の決議によって定められた同項第一号に規定する取得対価の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合における当該株主総会に限る。)に係る総会議案提案取締役
前条第一項第六号に掲げる行為
次に掲げる者
第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
前条第一項第七号に掲げる行為
次に掲げる者
第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。 )の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。 )の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
前条第一項第八号に掲げる行為
次に掲げる者
第四百五十四条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
第四百五十四条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
前項の規定にかかわらず、業務執行者 及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。
第一項の規定により業務執行者 及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。
前条第一項に規定する場合において、株式会社が第四百六十一条第一項各号に掲げる行為により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額が当該行為がその効力を生じた日における分配可能額を超えることにつき善意の株主は、当該株主が交付を受けた金銭等について、前条第一項の金銭を支払った業務執行者及び同項各号に定める者からの求償の請求に応ずる義務を負わない。
前条第一項に規定する場合には、株式会社の債権者は、同項の規定により義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。
株式会社が第百十六条第一項 又は第百八十二条の四第一項の規定による請求に応じて株式を取得する場合において、当該請求をした株主に対して支払った金銭の額が当該支払の日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った業務執行者は、株式会社に対し、連帯して、その超過額を支払う義務を負う。ただし、その者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。
株式会社が次の各号に掲げる行為をした場合において、当該行為をした日の属する事業年度(その事業年度の直前の事業年度が最終事業年度でないときは、その事業年度の直前の事業年度)に係る計算書類につき第四百三十八条第二項の承認(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認)を受けた時における第四百六十一条第二項第三号、第四号 及び第六号に掲げる額の合計額が同項第一号に掲げる額を超えるときは、当該各号に掲げる行為に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、連帯して、その超過額(当該超過額が当該各号に定める額を超える場合にあっては、当該各号に定める額)を支払う義務を負う。ただし、当該業務執行者がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
第百三十八条第一号ハ 又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
当該株式の買取りにより株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合 又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百六十七条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百七十条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
当該株式の取得により株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
当該株式の買取りにより株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
当該株式の買取りにより株主に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
次のイ 又はロに掲げる規定による当該株式会社の株式の買取り
当該株式の買取りにより当該イ 又はロに定める者に対して交付した金銭等の帳簿価額の総額
第二百三十四条第四項
同条第一項各号に定める者
第二百三十五条第二項において準用する第二百三十四条第四項
株主
剰余金の配当(次のイからハまでに掲げるものを除く。)
当該剰余金の配当についての第四百四十六条第六号イからハまでに掲げる額の合計額
定時株主総会(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、定時株主総会 又は第四百三十六条第三項の取締役会)において第四百五十四条第一項各号に掲げる事項を定める場合における剰余金の配当
第四百四十七条第一項各号に掲げる事項を定めるための株主総会において第四百五十四条第一項各号に掲げる事項を定める場合(同項第一号の額(第四百五十六条の規定により基準未満株式の株主に支払う金銭があるときは、その額を合算した額 )が第四百四十七条第一項第一号の額を超えない場合であって、同項第二号に掲げる事項についての定めがない場合に限る。)における剰余金の配当
第四百四十八条第一項各号に掲げる事項を定めるための株主総会において第四百五十四条第一項各号に掲げる事項を定める場合(同項第一号の額(第四百五十六条の規定により基準未満株式の株主に支払う金銭があるときは、その額を合算した額 )が第四百四十八条第一項第一号の額を超えない場合であって、同項第二号に掲げる事項についての定めがない場合に限る。)における剰余金の配当
前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。