公益通報者保護法

平成十六年法律第百二十二号
分類 法律
カテゴリ   労働
@ 施行日 : 令和四年六月一日 ( 2022年 6月1日 )
@ 最終更新 : 令和二年法律第五十一号による改正
最終編集日 : 2024年 06月09日 18時05分

T
  • 第一章 総則

  • 第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等

  • 第三章 事業者がとるべき措置等

  • 第四章 雑則

  • 第五章 罰則

第一章 総則

1項

この法律は、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効 及び不利益な取扱いの禁止等 並びに公益通報に関し事業者 及び行政機関がとるべき措置等を定めることにより、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産 その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定 及び社会経済の健全な発展に資することを目的とする。

1項

この法律において「公益通報」とは、次の各号に掲げる者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的 その他の不正の目的でなく、当該各号に定める事業者(法人 その他の団体 及び事業を行う個人をいう。以下同じ。)(以下「役務提供先」という。)又は当該役務提供先の事業に従事する場合におけるその役員(法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事 及び清算人 並びにこれら以外の者で法令(法律 及び法律に基づく命令をいう。以下同じ。)の規定に基づき法人の経営に従事している者(会計監査人を除く)をいう。以下同じ。)、従業員、代理人 その他の者について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該役務提供先 若しくは当該役務提供先があらかじめ定めた者(以下「役務提供先等」という。)、当該通報対象事実について処分(命令、取消し その他公権力の行使に当たる行為をいう。以下同じ。)若しくは勧告等(勧告 その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)をする権限を有する行政機関 若しくは当該行政機関があらかじめ定めた者(次条第二号 及び第六条第二号において「行政機関等」という。)又はその者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生 若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通報対象事実により被害を受け 又は受けるおそれがある者を含み、当該役務提供先の競争上の地位 その他正当な利益を害するおそれがある者を除く次条第三号 及び第六条第三号において同じ。)に通報することをいう。

一 号

労働者(労働基準法昭和二十二年法律第四十九号第九条に規定する労働者をいう。以下同じ。)又は労働者であった者

当該労働者 又は労働者であった者を自ら使用し、又は当該通報の日前一年以内に自ら使用していた事業者(次号に定める事業者を除く

二 号

派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律昭和六十年法律第八十八号。第四条において「労働者派遣法」という。第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)又は派遣労働者であった者

当該派遣労働者 又は派遣労働者であった者に係る労働者派遣(同条第一号に規定する労働者派遣をいう。第四条 及び第五条第二項において同じ。)の役務の提供を受け、又は当該通報の日前一年以内に受けていた事業者

三 号

前二号に定める事業者が他の事業者との請負契約 その他の契約に基づいて事業を行い、又は行っていた場合において、当該事業に従事し、又は当該通報の日前一年以内に従事していた労働者 若しくは労働者であった者 又は派遣労働者 若しくは派遣労働者であった者

当該他の事業者

四 号

役員

次に掲げる事業者

当該役員に職務を行わせる事業者

に掲げる事業者が他の事業者との請負契約 その他の契約に基づいて事業を行う場合において、当該役員が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者

2項

この法律において「公益通報者」とは、公益通報をした者をいう。

3項

この法律において「通報対象事実」とは、次の各号のいずれかの事実をいう。

一 号

この法律 及び個人の生命 又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保 その他の国民の生命、身体、財産 その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。以下この項において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実 又はこの法律 及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実

二 号

別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分 又は勧告等の理由とされている事実を含む。

4項

この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。

一 号

内閣府、宮内庁、内閣府設置法平成十一年法律第八十九号第四十九条第一項 若しくは第二項に規定する機関、デジタル庁、国家行政組織法昭和二十三年法律第百二十号第三条第二項に規定する機関、法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関 若しくはこれらに置かれる機関 又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員

二 号

地方公共団体の機関(議会を除く

第二章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等

1項

労働者である公益通報者次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に定める事業者当該労働者を自ら使用するものに限る第九条において同じ。)が行った解雇は、無効とする。

一 号

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合

当該役務提供先等に対する公益通報

二 号

通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合 又は通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し、かつ、次に掲げる事項を記載した書面(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。次号ホにおいて同じ。)を提出する場合

当該通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有する行政機関等に対する公益通報

公益通報者の氏名 又は名称 及び住所 又は居所

当該通報対象事実の内容
当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由
当該通報対象事実について法令に基づく措置 その他適当な措置がとられるべきと思料する理由
三 号

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合

その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生 又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

前二号に定める公益通報をすれば解雇 その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

第一号に定める公益通報をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合

役務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

書面により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合 又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

個人の生命 若しくは身体に対する危害 又は個人(事業を行う場合におけるものを除く。以下このにおいて同じ。)の財産に対する損害(回復することができない損害 又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る第六条第二号ロ 及び第三号ロにおいて同じ。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

1項

第二条第一項第二号に定める事業者当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けるもの限る。以下 この条 及び次条第二項において同じ。)の指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者前条各号に定める公益通報をしたことを理由として第二条第一項第二号に定める事業者が行った労働者派遣契約(労働者派遣法第二十六条第一項に規定する労働者派遣契約をいう。)の解除は、無効とする。

1項

第三条に規定するもののほか第二条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給 その他不利益な取扱いをしてはならない。

2項

前条に規定するもののほか第二条第一項第二号に定める事業者は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めること その他不利益な取扱いをしてはならない。

3項

第二条第一項第四号に定める事業者同号イに掲げる事業者に限る次条 及び第八条第四項において同じ。)は、その職務を行わせ、又は行わせていた公益通報者が次条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、報酬の減額 その他不利益な取扱い(解任を除く)をしてはならない。

1項

役員である公益通報者は、次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として第二条第一項第四号に定める事業者から解任された場合には、当該事業者に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

一 号

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合

当該役務提供先等に対する公益通報

二 号

次のいずれかに該当する場合

当該通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有する行政機関等に対する公益通報

調査是正措置(善良な管理者と同一の注意をもって行う、通報対象事実の調査 及びその是正のために必要な措置をいう。次号イにおいて同じ。)をとることに努めたにもかかわらず、なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、個人の生命 若しくは身体に対する危害 又は個人(事業を行う場合におけるものを除く)の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

三 号

次のいずれかに該当する場合

その者に対し通報対象事実を通報することがその発生 又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報

調査是正措置をとることに努めたにもかかわらず、 なお当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合

(1)

前二号に定める公益通報をすれば解任、報酬の減額 その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合

(2)

第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合

(3)

役務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、個人の生命 若しくは身体に対する危害 又は個人(事業を行う場合におけるものを除く)の財産に対する損害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

1項

第二条第一項各号に定める事業者は、第三条各号 及び前条各号に定める公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができない

1項

第三条から前条までの規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として第二条第一項各号に掲げる者に対して解雇 その他不利益な取扱いをすることを禁止する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。

2項

第三条の規定は、労働契約法平成十九年法律第百二十八号第十六条の規定の適用を妨げるものではない。

3項

第五条第一項の規定は、労働契約法第十四条 及び第十五条の規定の適用を妨げるものではない。

4項

第六条の規定は、通報対象事実に係る通報をしたことを理由として第二条第一項第四号に定める事業者から役員を解任された者が当該事業者に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができる旨の他の法令の規定の適用を妨げるものではない。

1項

第三条各号に定める公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員、裁判所職員臨時措置法昭和二十六年法律第二百九十九号)の適用を受ける裁判所職員、国会職員法昭和二十二年法律第八十五号)の適用を受ける国会職員、自衛隊法昭和二十九年法律第百六十五号第二条第五項に規定する隊員 及び一般職の地方公務員(以下この条において「一般職の国家公務員等」という。)に対する免職 その他不利益な取扱いの禁止については、第三条から第五条までの規定にかかわらず国家公務員法昭和二十二年法律第百二十号。裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)、国会職員法自衛隊法 及び地方公務員法昭和二十五年法律第二百六十一号)の定めるところによる。


この場合において、第二条第一項第一号に定める事業者は、第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職 その他不利益な取扱いがされることのないよう、これらの法律の規定を適用しなければならない。

1項

第三条各号 及び第六条各号に定める公益通報をする者は、他人の正当な利益 又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない。

第三章 事業者がとるべき措置等

1項

事業者は、第三条第一号 及び第六条第一号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。

2項

事業者は、前項に定めるもののほか公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産 その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一号 及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 その他の必要な措置をとらなければならない。

3項

常時使用する労働者の数が三百人以下事業者については、

第一項
定めなければ」とあるのは
「定めるように努めなければ」と、

前項
とらなければ」とあるのは
「とるように努めなければ」と

する。

4項

内閣総理大臣は、第一項 及び第二項これらの規定を前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。

5項

内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ消費者委員会の意見を聴かなければならない。

6項

内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

7項

前二項の規定は、指針の変更について準用する。

1項

公益通報対応業務従事者 又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。

1項

通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有する行政機関は、公益通報者から第三条第二号 及び第六条第二号に定める公益通報をされた場合には、必要な調査を行い、当該公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置 その他適当な措置をとらなければならない。

2項

通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有する行政機関第二条第四項第一号に規定する職員を除く)は、前項に規定する措置の適切な実施を図るため、第三条第二号 及び第六条第二号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 その他の必要な措置をとらなければならない。

3項

第一項の公益通報が第二条第三項第一号に掲げる犯罪行為の事実を内容とする場合における当該犯罪の捜査 及び公訴については、前二項の規定にかかわらず刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号)の定めるところによる。

1項

前条第一項の公益通報が誤って当該公益通報に係る通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有しない行政機関に対してされたときは、当該行政機関は、当該公益通報者に対し、当該公益通報に係る通報対象事実について処分 又は勧告等をする権限を有する行政機関教示しなければならない。

第四章 雑則

1項

内閣総理大臣は、第十一条第一項 及び第二項これらの規定を同条第三項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業者に対して、報告を求め、又は助言、指導 若しくは勧告をすることができる。

1項

内閣総理大臣は、第十一条第一項 及び第二項の規定に違反している事業者に対し、前条の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

1項

内閣総理大臣は、この法律の規定に基づく事務に関し、関係行政機関に対し、照会し、又は協力を求めることができる。

1項

内閣総理大臣は、公益通報 及び公益通報者の状況に関する情報 その他その普及が公益通報者の保護 及び公益通報の内容の活用による国民の生命、身体、財産 その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守に資することとなる情報の収集、整理 及び提供に努めなければならない。

1項

内閣総理大臣は、この法律による権限(政令で定めるものを除く)を消費者庁長官に委任する。

1項

第十五条 及び第十六条の規定は、 及び地方公共団体適用しない

第五章 罰則

1項

第十二条の規定に違反して同条に規定する事項を漏らした者は、三十万円以下の罰金に処する。

1項

第十五条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。