山村振興法
この法律において「山村」とは、林野面積の占める比率が高く、交通条件 及び経済的、文化的諸条件に恵まれず、産業基盤 及び生活環境の整備等が他の地域に比較して十分に行われていない山間地 その他の地域で政令で定める要件に該当するものをいう。
山村の振興は、前条の基本理念(次条 及び第五条において「基本理念」という。)にのつとり、次に掲げる目標に従つて推進されなければならない。
国は、基本理念にのつとり、前条の目標を達成するため、山村の振興のために必要な事業の実施に関し、国の負担 又は補助に係る事業に対する負担 又は補助についての条件の改善、地方公共団体の財源の確保、資金の融通の適正円滑化 その他財政金融上の措置を講ずるよう配慮するとともに、国有林野の積極的活用 その他適切な施策の確立 及び拡充に努めなければならない。
地方公共団体は、基本理念にのつとり、第三条の目標を達成するため、その地域の特性に応じて、山村の振興のために必要な事業が円滑に実施されるように努めなければならない。
前項の調査は、予算の範囲内において、振興の緊要度が高いと認められる山村から順次行うものとする。
都道府県知事は、振興山村の指定を受けようとするときは、当該山村の区域を管轄する市町村長に協議し、政令で定めるところにより、主務大臣に申請書を提出しなければならない。
第一項の規定による振興山村の指定は、前条第一項の規定により行う調査の結果に基づいてしなければならない。
主務大臣は、第一項の規定により振興山村の指定をするときは、その旨 及び当該振興山村の区域を官報で公示しなければならない。
都道府県は、当該都道府県における振興山村の振興に関する基本方針(以下「山村振興基本方針」という。)を定めることができる。
山村振興基本方針は、国土形成計画法(昭和二十五年法律第二百五号)の規定による国土形成計画 その他法令の規定による地域振興に関する計画との調和について適切な考慮が払われたものでなければならない。
都道府県は、山村振興基本方針を作成するに当たつては、振興山村を広域的な経済社会生活圏の整備の体系に組み入れるよう配慮しなければならない。
都道府県は、山村振興基本方針を定めたときは、直ちに、主務大臣にこれを提出しなければならない。
主務大臣は、前項の規定により山村振興基本方針の提出があつた場合においては、直ちに、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。
前二項の規定は、山村振興基本方針の変更について準用する。
第七条第一項の規定により振興山村の指定があつたときは、当該振興山村の区域を管轄する市町村(以下「振興山村市町村」という。)は、山村振興基本方針に基づき、当該振興山村に係る山村振興に関する計画(以下「山村振興計画」という。)を作成することができる。
この場合においては、あらかじめ、都道府県に協議し、その同意を得なければならない。
農業経営 及び林業経営の近代化、観光の開発、地域の特性を生かした農林水産物の加工業 及び農林水産物等販売業(振興山村において生産された農林水産物 又は当該農林水産物を原料 若しくは材料として製造、加工 若しくは調理をしたものを店舗において主に他の地域の者に販売することを目的とする事業をいう。以下同じ。)等の導入、地域資源の活用による特産物の生産の育成、再生可能エネルギーの利用の推進、木材の利用の促進、山村の振興に寄与する人材の育成 及び確保等産業の振興のための施策に関する事項
山村振興計画には、前項第三号に掲げる事項に関し、当該振興山村の区域の特性に応じた農林水産業の振興、商工業の振興、観光の振興 その他の産業の振興のための施策の促進に関する事項(以下「産業振興施策促進事項」という。)を記載することができる。
産業の振興のための施策を促進する区域(以下「産業振興施策促進区域」という。)
地域資源を活用する製造業(振興山村において生産されたものを原料 又は材料とする製造 又は加工の事業をいう。第十四条において同じ。)、農林水産物等販売業 その他の当該産業振興施策促進区域において振興すべき業種
前号の業種の振興を促進するために行う事業の内容 及び実施主体に関する事項
前項各号に掲げるもののほか、山村振興計画に産業振興施策促進事項を記載する場合には、次に掲げる事項を記載するよう努めるものとする。
第四項第三号に掲げる事項には、次に掲げる事項を記載することができる。
森林資源活用型地域活性化事業(産業振興施策促進区域において、林業者 若しくは木材製造業を営む者(林業 若しくは木材製造業を営もうとする者 又は林業 若しくは木材製造業を営む法人を設立しようとする者を含む。)又はこれらの者の組織する団体が、未利用 又は利用の程度の低い森林資源を活用することにより、産業振興施策促進区域における産業の振興を図る事業をいう。以下 この条 及び第八条の六において同じ。)に関する事項
補助金等交付財産活用事業(補助金等交付財産(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二十二条に規定する財産をいう。)を当該補助金等交付財産に充てられた補助金等(同法第二条第一項に規定する補助金等をいう。)の交付の目的以外の目的に使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供することにより行う事業をいう。第八条の七において同じ。)に関する事項
振興山村市町村は、山村振興計画に産業振興施策促進事項を記載しようとするときは、当該産業振興施策促進事項について、あらかじめ、主務省令で定めるところにより、主務大臣に協議し、その同意を得なければならない。
振興山村市町村は、山村振興計画に産業振興施策促進事項として第四項第三号に掲げる事項を記載しようとするときは、あらかじめ、同号の実施主体として定めようとする者の同意を得なければならない。
次に掲げる者は、振興山村市町村に対して、第一項の同意を得た当該振興山村市町村の山村振興計画に産業振興施策促進事項を記載することを提案することができる。
この場合においては、当該山村振興計画に即して、当該提案に係る産業振興施策促進事項の素案を作成して、これを提示しなければならない。
当該提案に係る産業振興施策促進事項として記載しようとする第四項第三号に規定する事業を実施しようとする者
前号に掲げる者のほか、同号の産業振興施策促進事項に関し密接な関係を有する者
前項の規定による提案を受けた振興山村市町村は、当該提案に基づき山村振興計画に産業振興施策促進事項を記載するか否かについて、遅滞なく、当該提案をした者に通知しなければならない。
この場合において、産業振興施策促進事項を記載しないこととするときは、その理由を明らかにしなければならない。
主務大臣は、第七項の規定による協議があつた場合において、産業振興施策促進事項が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、同項の同意をするものとする。
主務大臣は、山村振興計画に産業振興施策促進事項として第六項各号に掲げる事項が記載されている場合において、第七項の同意をしようとするときは、当該事項に係る関係行政機関の長の同意を得なければならない。
主務大臣は、産業振興施策促進事項について第七項の同意をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。
振興山村市町村は、山村振興計画を定めたときは、直ちに、主務大臣にこれを提出しなければならない。
主務大臣は、前項の規定により山村振興計画の提出があつた場合においては、直ちに、その内容を関係行政機関の長に通知しなければならない。
この場合において、関係行政機関の長は、当該山村振興計画(産業振興施策促進事項に係る部分を除く。)についてその意見を主務大臣に申し出ることができる。
振興山村市町村は、第八条第一項の同意を得た山村振興計画の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、都道府県に協議し、その同意を得なければならない。
第八条第十四項 及び第十五項の規定は、前項の山村振興計画の変更について準用する。
第一項の場合において、当該変更が第八条第七項の同意を得た産業振興施策促進事項の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く。)を含むものであるときは、振興山村市町村は、当該産業振興施策促進事項の変更について、あらかじめ、主務大臣に協議し、その同意を得なければならない。
第八条第八項から第十三項までの規定は、前項の産業振興施策促進事項の変更について準用する。
主務大臣は、第八条第七項の同意を得た産業振興施策促進事項が記載され、かつ、同条第一項の同意を得た山村振興計画に係る振興山村市町村(以下「特定振興山村市町村」という。)に対し、産業振興施策促進事項(産業振興施策促進事項の変更があつたときは、その変更後のもの。以下同じ。)の実施の状況について報告を求めることができる。
第八条第十二項に規定する関係行政機関の長は、特定振興山村市町村の山村振興計画に同条第六項各号に掲げる事項が記載されている場合には、当該特定振興山村市町村に対し、同項各号に規定する事業の実施の状況について報告を求めることができる。
主務大臣 又は第八条第十二項に規定する関係行政機関の長は、特定振興山村市町村の山村振興計画に同条第六項各号に掲げる事項が記載されている場合において、同項各号に規定する事業の適正な実施のため必要があると認めるときは、当該特定振興山村市町村に対し、当該事業の実施に関し必要な措置を講ずることを求めることができる。
主務大臣は、特定振興山村市町村の山村振興計画に記載された産業振興施策促進事項が第八条第十一項各号のいずれかに適合しなくなつたと認めるときは、当該特定振興山村市町村に対し、当該産業振興施策促進事項の変更 その他の必要な措置を講ずることを求めることができる。
振興山村市町村が、第八条第四項第三号に掲げる事項に森林資源活用型地域活性化事業に関する事項を記載した山村振興計画について、同条第一項 及び第七項の同意(第八条の三第一項 及び第三項の変更の同意を含む。次条において同じ。)を得たときは、林業・木材産業改善資金助成法(昭和五十一年法律第四十二号)第二条第一項の林業・木材産業改善資金であつて、当該森林資源活用型地域活性化事業を実施しようとする者が当該森林資源活用型地域活性化事業を実施するのに必要なものの償還期間(据置期間を含む。)については、同法第五条第一項の規定にかかわらず、十二年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。
前項に規定する資金の据置期間は、林業・木材産業改善資金助成法第五条第二項の規定にかかわらず、五年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。
振興山村市町村が、第八条第四項第三号に掲げる事項に補助金等交付財産活用事業に関する事項を記載した山村振興計画について、同条第一項 及び第七項の同意を得たときは、同条第一項の同意の日(補助金等交付財産活用事業に関する事項の変更を含む山村振興計画の変更の場合にあつては、第八条の三第一項の変更の同意の日)において、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第二十二条に規定する各省各庁の長の承認を受けたものとみなす。
国の行政機関の長 又は地方公共団体の長は、特定振興山村市町村の山村振興計画に記載された産業振興施策促進区域内の土地を当該山村振興計画の産業振興施策促進事項に記載された事業の用に供するため農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可 その他の処分を求められたときは、当該産業振興施策促進区域における産業の振興に資するため、当該処分が迅速に行われるよう適切な配慮をするものとする。
国 及び地方公共団体は、特定振興山村市町村の山村振興計画に記載された産業振興施策促進区域において、中小企業者(中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する中小企業者をいう。)が当該山村振興計画の産業振興施策促進事項に基づいて事業活動を行う場合には、当該中小企業者に対して必要な情報の提供 その他の必要な措置を講ずるよう適切な配慮をするものとする。
主務大臣は、山村振興基本方針の作成に関し必要があると認めるときは、関係行政機関の長に協議し、第三条の目標を達成するための当該都道府県における振興山村の振興に関する基本的な指針を定め、これを都道府県に勧告することができる。
第七条第三項の規定は、前項の基本的な指針の勧告について準用する。
振興山村における基幹的な市町村道 並びに市町村が管理する基幹的な農道、林道 及び漁港関連道(振興山村と その他の地域を連絡する基幹的な市町村道 並びに市町村が管理する基幹的な農道、林道 及び漁港関連道を含む。)で政令で定める関係行政機関の長がその整備を図ることが特に緊要であると認めて指定するもの(以下この条において「基幹道路」という。)の新設 及び改築については、他の法令の規定にかかわらず、山村振興基本方針 及び山村振興計画に基づいて、都道府県が行うことができる。
都道府県は、前項の規定により市町村道の新設 又は改築を行う場合においては、政令で定めるところにより、当該市町村道の道路管理者(道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第十八条第一項に規定する道路管理者をいう。)に代わつてその権限を行うものとする。
第一項の規定により都道府県が行う基幹道路の新設 及び改築に係る事業(以下この条において「基幹道路整備事業」という。)に要する経費については、当該都道府県が負担する。
第三項の規定により基幹道路整備事業に要する経費を負担する都道府県が後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律(昭和三十六年法律第百十二号。以下この条において「負担特例法」という。)第二条第一項に規定する適用団体である場合においては、基幹道路整備事業(北海道 及び奄美群島の区域における基幹道路整備事業で当該事業に係る経費に対する国の負担 又は補助の割合(以下この条において「国の負担割合」という。)がこれらの区域以外の区域における当該事業に相当する事業に係る経費に対する通常の国の負担割合と異なるものを除く。)を同条第二項に規定する開発指定事業とみなして、負担特例法の規定を適用する。
北海道 及び奄美群島の区域における基幹道路整備事業で当該事業に係る経費に対する国の負担割合がこれらの区域以外の区域における当該事業に相当する事業に係る経費に対する通常の国の負担割合と異なるものについては、第三項の規定により当該基幹道路整備事業に要する経費を負担する道県が負担特例法第二条第一項に規定する適用団体である場合においては、国は、第一号に掲げる国の負担割合が第二号に掲げる国の負担割合を超えるものにあつては第一号に掲げる国の負担割合により算定した額に相当する額を、第一号に掲げる国の負担割合が第二号に掲げる国の負担割合を超えないものにあつては第二号に掲げる国の負担割合により算定した額に相当する額を負担し、又は補助するものとする。
北海道 及び奄美群島の区域以外の区域における当該基幹道路整備事業に相当する事業に係る経費に対する通常の国の負担割合をこれらの区域における当該基幹道路整備事業に係る経費に対する国の負担割合として負担特例法第三条第一項 及び第二項の規定により算定した国の負担割合
北海道 及び奄美群島の区域における当該基幹道路整備事業に係る経費に対する国の負担割合
地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、総務省令で定める地方公共団体が、特定振興山村市町村の山村振興計画に記載された産業振興施策促進区域内において当該山村振興計画に定められた地域資源を活用する製造業 又は農林水産物等販売業の用に供する施設 又は設備を新設し、又は増設した者について、その事業に係る建物 若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税 又はその事業に係る機械 及び装置 若しくはその事業に係る建物 若しくはその敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が総務省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
株式会社日本政策金融公庫は、振興山村において農業(畜産業を含む。)、林業 若しくは漁業を営む者 又はこれらの者の組織する法人に対し、その者 又はその法人が農林水産省令で定めるところにより作成した農林漁業の経営改善 又は振興のための計画であつて農林水産省令で定める基準に適合する旨の都道府県知事の認定を受けたものを実施するために必要な資金の貸付けを行うものとする。
国 及び地方公共団体は、前項の再生可能エネルギーの利用の推進に当たつては、その利用が地域経済の発展に寄与することとなるよう適切な配慮をするものとする。
国 及び地方公共団体は、振興山村における医療を確保するため、無医地区に関し、診療所の設置、定期的な巡回診療、保健師の配置、医療機関の協力体制(救急医療用の機器を装備したヘリコプター等により患者を輸送し、かつ、患者の輸送中に医療を行う体制を含む。)の整備等の事業が実施されるよう努めなければならない。
国 及び地方公共団体は、振興山村における介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービス 及び老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)に基づく福祉サービス(以下この条において「介護給付等対象サービス等」という。)の確保 及び充実を図るため、介護給付等対象サービス等に従事する者の確保、介護施設の整備 及び提供される介護給付等対象サービス等の内容の充実について適切な配慮をするものとする。
国土審議会は、主務大臣 又は主務大臣以外の関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。
国土審議会は、前項に規定する事項に関し国土交通大臣、総務大臣 若しくは農林水産大臣 又はこれらの大臣以外の関係各大臣に意見を述べることができる。