この法律は、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とする。
民事調停法
第一節 通則
民事に関して紛争を生じたときは、当事者は、裁判所に調停の申立てをすることができる。
調停事件は、特別の定めがある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所 若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所 又は当事者が合意で定める地方裁判所 若しくは簡易裁判所の管轄とする。
調停事件は、日本国内に相手方(法人 その他の社団 又は財団を除く。)の住所 及び居所がないとき、又は住所 及び居所が知れないときは、その最後の住所地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。
調停事件は、相手方が法人 その他の社団 又は財団(外国の社団 又は財団を除く。)である場合において、日本国内にその事務所 若しくは営業所がないとき、又はその事務所 若しくは営業所の所在地が知れないときは、代表者 その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。
調停事件は、相手方が外国の社団 又は財団である場合において、日本国内にその事務所 又は営業所がないときは、日本における代表者 その他の主たる業務担当者の住所地を管轄する簡易裁判所の管轄に属する。
裁判所は、調停事件の全部 又は一部がその管轄に属しないと認めるとき(次項本文に規定するときを除く。)は、申立てにより 又は職権で、これを管轄権のある地方裁判所 又は簡易裁判所に移送しなければならない。
ただし、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部 又は一部を他の管轄裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。
裁判所は、調停事件の全部 又は一部がその管轄に属しないと認める場合であって、その事件が家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)第二百四十四条の規定により家庭裁判所が調停を行うことができる事件であるときは、職権で、これを管轄権のある家庭裁判所に移送しなければならない。
ただし、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部 又は一部を他の家庭裁判所に移送することができる。
裁判所は、調停事件がその管轄に属する場合においても、事件を処理するために適当であると認めるときは、職権で、土地管轄の規定にかかわらず、事件の全部 又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
調停の申立ては、申立書を裁判所に提出してしなければならない。
前項の申立書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
裁判所は、調停委員会で調停を行う。
ただし、裁判所が相当であると認めるときは、裁判官だけでこれを行うことができる。
裁判所は、当事者の申立てがあるときは、前項ただし書の規定にかかわらず、調停委員会で調停を行わなければならない。
調停委員会は、調停主任一人 及び民事調停委員二人以上で組織する。
調停主任は、裁判官の中から、地方裁判所が指定する。
調停委員会を組織する民事調停委員は、裁判所が各事件について指定する。
民事調停委員は、調停委員会で行う調停に関与するほか、裁判所の命を受けて、他の調停事件について、専門的な知識経験に基づく意見を述べ、嘱託に係る紛争の解決に関する事件の関係人の意見の聴取を行い、その他調停事件を処理するために必要な最高裁判所の定める事務を行う。
民事調停委員は、非常勤とし、その任免に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。
民事調停委員の除斥については、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第十一条、第十三条第二項、第八項 及び第九項 並びに第十四条第二項の規定(忌避に関する部分を除く。)を準用する。
民事調停委員の除斥についての裁判は、民事調停委員の所属する裁判所がする。
民事調停委員には、別に法律で定めるところにより手当を支給し、並びに最高裁判所の定めるところにより旅費、日当 及び宿泊料を支給する。
調停の結果について利害関係を有する者は、調停委員会の許可を受けて、調停手続に参加することができる。
調停委員会は、相当であると認めるときは、調停の結果について利害関係を有する者を調停手続に参加させることができる。
調停委員会は、調停のために特に必要があると認めるときは、当事者の申立てにより、調停前の措置として、相手方 その他の事件の関係人に対して、現状の変更 又は物の処分の禁止 その他調停の内容たる事項の実現を不能にし 又は著しく困難ならしめる行為の排除を命ずることができる。
前項の措置は、執行力を有しない。
調停委員会における調停手続は、調停主任が指揮する。
調停委員会は、調停手続の期日を定めて、事件の関係人を呼び出さなければならない。
調停委員会は、事件の実情を考慮して、裁判所外の適当な場所で調停を行うことができる。
裁判所書記官は、調停手続の期日について、調書を作成しなければならない。
ただし、調停主任においてその必要がないと認めるときは、この限りでない。
当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、調停事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は調停事件に関する証明書の交付を請求することができる。
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十一条第四項 及び第五項の規定は、前項の記録について準用する。
調停委員会は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより 又は職権で、必要と認める証拠調べをすることができる。
調停委員会は、調停主任に事実の調査 又は証拠調べをさせることができる。
調停委員会は、事件が性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申立てをしたと認めるときは、調停をしないものとして、事件を終了させることができる。
調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合 又は成立した合意が相当でないと認める場合において、裁判所が第十七条の決定をしないときは、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができる。
第十一条から前条までの規定は、裁判官だけで調停を行う場合に準用する。
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。
この決定においては、金銭の支払、物の引渡し その他の財産上の給付を命ずることができる。
前条の決定に対しては、当事者 又は利害関係人は、異議の申立てをすることができる。
その期間は、当事者が決定の告知を受けた日から二週間とする。
裁判所は、前項の規定による異議の申立てが不適法であると認めるときは、これを却下しなければならない。
前項の規定により異議の申立てを却下する裁判に対する即時抗告は、執行停止の効力を有する。
適法な異議の申立てがあったときは、前条の決定は、その効力を失う。
第一項の期間内に異議の申立てがないときは、前条の決定は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
第十四条(第十五条において準用する場合を含む。)の規定により事件が終了し、又は前条第四項の規定により決定が効力を失った場合において、申立人がその旨の通知を受けた日から二週間以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
調停の申立ては、調停事件が終了するまで、その全部 又は一部を取り下げることができる。
ただし、第十七条の決定がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。
受訴裁判所は、適当であると認めるときは、職権で、事件を調停に付した上、管轄裁判所に処理させ 又は自ら処理することができる。
ただし、事件について争点 及び証拠の整理が完了した後において、当事者の合意がない場合には、この限りでない。
前項の規定により事件を調停に付した場合において、調停が成立し 又は第十七条の決定が確定したときは、訴えの取下げがあったものとみなす。
第一項の規定により受訴裁判所が自ら調停により事件を処理する場合には、調停主任は、第七条第一項の規定にかかわらず、受訴裁判所がその裁判官の中から指定する。
前三項の規定は、非訟事件を調停に付する場合について準用する。
調停が成立した場合において、調停手続の費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は、各自が負担する。
前条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)及び第二十四条の二第二項の規定により調停に付された訴訟事件 又は非訟事件について調停が成立した場合において、訴訟費用 及び非訟事件の手続の費用の負担について特別の定めをしなかったときは、その費用は、各自が負担する。
調停の申立てがあった事件について訴訟が係属しているとき、又は第二十条第一項 若しくは第二十四条の二第二項の規定により事件が調停に付されたときは、受訴裁判所は、調停事件が終了するまで訴訟手続を中止することができる。
ただし、事件について争点 及び証拠の整理が完了した後において、当事者の合意がない場合には、この限りでない。
前項の規定は、調停の申立てがあった事件について非訟事件が係属しているとき、又は第二十条第四項において準用する同条第一項の規定により非訟事件が調停に付されたときについて準用する。
調停手続における終局決定以外の決定に対しては、この法律に定めるもののほか、最高裁判所規則で定めるところにより、即時抗告をすることができる。
調停手続における申立てその他の申述については、民事訴訟法第一編第八章の規定を準用する。
この場合において、
同法第百三十三条第一項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は参加人(民事調停法第十一条(同法第十五条において準用する場合を含む。)の規定により調停手続に参加した者をいう。第百三十三条の四第一項、第二項 及び第七項において同じ。)」と、
同法第百三十三条の二第二項中
「訴訟記録等(訴訟記録 又は第百三十二条の四第一項の処分の申立てに係る事件の記録をいう。第百三十三条の四第一項 及び第二項において同じ。)」とあるのは
「調停事件の記録」と、
同法第百三十三条の四第一項中
「者は、訴訟記録等」とあるのは「当事者 若しくは参加人 又は利害関係を疎明した第三者は、調停事件の記録」と、
同条第二項中
「当事者」とあるのは
「当事者 又は参加人」と、
「訴訟記録等」とあるのは
「調停事件の記録」と、
同条第七項中
「当事者」とあるのは
「当事者 若しくは参加人」と
読み替えるものとする。
特別の定めがある場合を除いて、調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法第二編の規定を準用する。
ただし、同法第四十条、第四十二条の二 及び第五十二条の規定は、この限りでない。
この法律に定めるもののほか、調停に関して必要な事項は、最高裁判所が定める。