更生保護法

# 平成十九年法律第八十八号 #

第一章 総則

分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和六年四月一日 ( 2024年 4月1日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第五十二号による改正
最終編集日 : 2024年 04月28日 00時28分


第一節 目的等

1項

この法律は、犯罪をした者 及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人 及び公共の福祉を増進することを目的とする。

1項

国は、前条の目的の実現に資する活動であって民間の団体 又は個人により自発的に行われるものを促進し、これらの者と連携協力するとともに、更生保護に対する国民の理解を深め、かつ、その協力を得るように努めなければならない。

2項

地方公共団体は、前項の活動が地域社会の安全 及び住民福祉の向上に寄与するものであることにかんがみ、これに対して必要な協力をすることができる。

3項

国民は、前条の目的を達成するため、その地位と能力に応じた寄与をするように努めなければならない。

1項

犯罪をした者 又は非行のある少年に対してこの法律の規定によりとる措置は、当該措置を受ける者の性格、年齢、経歴、心身の状況、家庭環境、交友関係、被害者等(犯罪 若しくは刑罰法令に触れる行為により害を被った者(以下この条において「被害者」という。)又はその法定代理人 若しくは被害者が死亡した場合 若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)の被害に関する心情、被害者等の置かれている状況等を十分に考慮して、当該措置を受ける者に最もふさわしい方法により、その改善更生のために必要かつ相当な限度において行うものとする。

第二節 中央更生保護審査会

1項

法務省に、中央更生保護審査会(以下「審査会」という。)を置く。

2項

審査会は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 号

特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除 又は特定の者に対する復権の実施についての申出をすること。

二 号

地方更生保護委員会がした決定について、この法律 及び行政不服審査法平成二十六年法律第六十八号)の定めるところにより、審査を行い、裁決をすること。

三 号

前二号に掲げるもののほか、この法律 又は他の法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。

1項

審査会は、委員長 及び委員四人をもって組織する。

1項

委員長 及び委員は、優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、法務大臣が任命する。

2項

委員長 又は委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会 又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、法務大臣は、前項の規定にかかわらず、委員長 又は委員を任命することができる。

3項

前項の場合においては、任命後 最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。


この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、法務大臣は、その委員長 又は委員を罷免しなければならない。

4項

委員長 及び委員の任命については、そのうち三人以上が同一の政党に属する者となることとなってはならない。

1項

委員長 及び委員の任期は、三年とする。


ただし、補欠の委員長 又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。

1項

委員のうち二人は、非常勤とする。

2項

委員長 及び委員は、在任中、政党 その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

3項

委員長 及び常勤の委員は、在任中、法務大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

4項

委員長 及び委員の給与は、別に法律で定める。

1項

法務大臣は、委員長 又は委員が破産手続開始の決定を受け、又は禁錮以上の刑に処せられたときは、その委員長 又は委員を罷免しなければならない。

2項

法務大臣は、委員長 若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長 若しくは委員に職務上の義務違反 その他委員長 若しくは委員たるにふさわしくない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、その委員長 又は委員を罷免することができる。

3項

法務大臣は、委員長 及び委員のうち三人以上が同一の政党に属することとなったときは、同一の政党に属する者が二人になるように、両議院の同意を得て、委員長 又は委員を罷免するものとする。

4項

前項の規定は、政党所属関係に異動のなかった委員長 又は委員の地位に影響を及ぼすものではない。

1項

委員長は、会務を総理し、審査会を代表する。

2項

委員長に事故があるときは、あらかじめ委員長が定める順序により、常勤の委員が委員長の職務を行う。

1項
審査会は、委員長が招集する。
2項

審査会は、委員長 及び半数以上の委員の出席がなければ、議事を開き、議決することができない

3項

審査会の議事は、出席者の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。

4項

審査会がその権能として行う調査 又は第四条第二項第二号に規定する審査のための審理は、審査会の指名により、委員長 又は一人の委員で行うことができる。

5項

委員長に事故がある場合における第二項の規定の適用については、前条第二項の規定により委員長の職務を行う常勤の委員は、委員長とみなす。

1項

審査会は、その所掌事務に属する事項の調査において、必要があると認めるときは、法務省令で定めるところにより、関係人を呼び出し、審問することができる。

2項

前項の規定による呼出しに応じないため再度同項の規定による呼出しを受けた者が、正当な理由がないのにこれに応じないときは、十万円以下の過料に処する。

3項

第一項の規定による呼出しに応じた者に対しては、政令で定めるところにより、旅費、日当 及び宿泊料を支給する。


ただし、正当な理由がないのに陳述を拒んだ者に対しては、この限りでない。

1項
審査会は、その所掌事務に属する事項の調査において、必要があると認めるときは、裁判所、検察官、刑事施設の長、少年院の長、地方更生保護委員会 及び保護観察所の長に対し、記録、書類、意見書 及び報告書の提出を求めることができる。
1項

審査会は、その所掌事務を遂行するため、官公署、学校、病院、公共の衛生福祉に関する機関 その他の者(以下「関係機関等」という。)に対し、必要な協力を求めることができる。

1項

第四条から第十一条までに規定するもののほか、審査会の組織に関し必要な事項は、政令で定める。

第三節 地方更生保護委員会

1項

地方更生保護委員会(以下「地方委員会」という。)は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 号

刑法明治四十年法律第四十五号第二十八条の行政官庁として、仮釈放を許し、又はその処分を取り消すこと。

二 号

刑法第三十条の行政官庁として、仮出場を許すこと。

三 号

少年院からの仮退院 又は退院を許すこと。

四 号

少年院からの仮退院中の者について、少年院に戻して収容する旨の決定の申請をし、又は仮退院を許す処分を取り消すこと。

五 号

少年法昭和二十三年法律第百六十八号第五十二条第一項 又は同条第一項 及び第二項の規定により言い渡された刑(以下「不定期刑」という。)について、その執行を受け終わったものとする処分をすること。

六 号
保護観察所の事務を監督すること。
七 号

前各号に掲げるもののほか、この法律 又は他の法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。

1項

地方委員会は、三人以上政令で定める人数以内の委員をもって組織する。

1項

委員の任期は、三年とする。

1項

地方委員会に、委員長を置く。


委員長は、委員のうちから法務大臣が命ずる。

2項

委員長は、会務を総理し、その地方委員会を代表する。

3項

委員長に事故があるときは、あらかじめ委員長が定める順序により、他の委員が委員長の職務を行う。

1項

地方委員会に、事務局を置く。

2項

事務局の内部組織は、法務省令で定める。

1項

地方委員会の所掌事務の処理は、第二十三条第一項の規定により三人の委員をもって構成する合議体で権限を行う場合 その他法令に特別の定めがある場合を除き、委員の全員をもって構成する会議の議決による。

2項

前項の会議は、委員長が招集する。

3項

第一項の会議は、委員の半数以上の出席がなければ、議事を開き、議決することができない

4項

第一項の会議の議事は、出席者の過半数で決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。


ただし五人未満の委員をもって組織される地方委員会において、出席者が二人であるときは、その意見の一致したところによる。

1項

第十三条の規定は、前条第一項の会議の調査について準用する。


この場合において、

第十三条
、地方更生保護委員会 及び保護観察所の長」とあるのは、
「及び保護観察所の長」と

読み替えるものとする。

1項

地方委員会は、次に掲げる事項については、三人の委員をもって構成する合議体で、その権限を行う。

一 号

この法律 又は他の法律の規定により決定をもってすることとされている処分

二 号

第三十五条第一項第四十二条 及び第四十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による審理の開始に係る判断

三 号

第三十九条第四項第四十二条 及び第四十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による審理の再開に係る判断

四 号

第七十一条の規定による申請

2項

前項の合議体の議事は、その構成員の過半数で決する。

3項

第一項の合議体がその権能として行う調査は、その構成員である委員 又は保護観察官をして行わせることができる。

1項

前条第一項の合議体は、同項第一号に掲げる処分 又は同項第四号に掲げる申請をするか否かを判断するには、審理を行わなければならない。

1項

第二十三条第一項の合議体は、前条の審理において必要があると認めるときは、審理の対象とされている者(以下「審理対象者」という。)との面接、関係人に対する質問 その他の方法により、調査を行うことができる。

2項

前項の調査を行う者は、その事務所以外の場所において当該調査を行う場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3項

第十二条 及び第十三条の規定は、第一項の調査について準用する。


この場合において、

同条
、地方更生保護委員会 及び保護観察所の長」とあるのは、
「及び保護観察所の長」と

読み替えるものとする。

4項

前項において準用する第十二条第一項の規定による呼出し 及び審問は、第二十三条第三項の規定にかかわらず、保護観察官をして行わせることができない。

1項

第二十三条第一項の合議体の決定は、決定書を作成してしなければならない。

1項

前条の決定は、当該決定の対象とされた者に対し、これを告知することによって、その効力を生ずる。

2項

前項の決定の告知は、その対象とされた者に対して当該決定を言い渡し、又は相当と認める方法により決定書の謄本をその者に送付して、行うものとする。


ただし、急速を要するときは、法務省令で定める方法によることができる。

3項

第一項の決定の対象とされた者が刑事施設に収容され、若しくは労役場に留置されている場合 又は少年院に収容されている場合において、決定書の謄本を当該刑事施設(労役場に留置されている場合には、当該労役場が附置された刑事施設)の長 又は少年院の長に送付したときは、当該決定の対象とされた者に対する送付があったものとみなす。

4項

決定書の謄本を、第一項の決定の対象とされた者が第五十条第一項第四号の規定により居住すべき住居(第五十一条第二項第五号の規定により宿泊すべき特定の場所が定められている場合には、当該場所)に宛てて、書留郵便 又は民間事業者による信書の送達に関する法律平成十四年法律第九十九号第二条第六項に規定する一般信書便事業者 若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして法務大臣が定めるものに付して発送した場合においては、その発送の日から五日を経過した日に当該決定の対象とされた者に対する送付があったものとみなす。

1項

第十四条の規定は、地方委員会について準用する。

第四節 保護観察所

1項

保護観察所は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 号
保護観察を実施すること。
二 号

犯罪の予防を図るため、世論を啓発し、社会環境の改善に努め、及び地域住民の活動を促進すること。

三 号

前二号に掲げるもののほか、この法律 その他の法令によりその権限に属させられた事項を処理すること。

1項
保護観察所の長は、その所掌事務を遂行するため、関係機関等に対し、必要な援助 及び協力を求めることができる。

第五節 保護観察官及び保護司

1項

地方委員会の事務局 及び保護観察所に、保護観察官を置く。

2項

保護観察官は、医学、心理学、教育学、社会学 その他の更生保護に関する専門的知識に基づき、保護観察、調査、生活環境の調整 その他犯罪をした者 及び非行のある少年の更生保護 並びに犯罪の予防に関する事務に従事する。

1項

保護司は、保護観察官で十分でないところを補い、地方委員会 又は保護観察所の長の指揮監督を受けて、保護司法昭和二十五年法律第二百四号)の定めるところに従い、それぞれ地方委員会 又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする。