水産基本法

# 平成十三年法律第八十九号 #

第二章 基本的施策

分類 法律
カテゴリ   水産業
@ 施行日 : 令和二年十二月一日 ( 2020年 12月1日 )
@ 最終更新 : 平成三十年法律第九十五号による改正
最終編集日 : 2022年 11月22日 07時05分


第一節 水産基本計画

1項

政府は、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、水産基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2項

基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 号

水産に関する施策についての基本的な方針

二 号
水産物の自給率の目標
三 号

水産に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

四 号

前三号に掲げるもののほか、 水産に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3項

前項第二号に掲げる水産物の自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、我が国の漁業生産 及び水産物の消費に関する指針として、 漁業者 その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとする。

4項

第二項第二号に掲げる水産物の自給率の目標については、食料・農業・農村基本法平成十一年法律第百六号)第十五条第二項第二号に掲げる 食料自給率の目標との調和が保たれたものでなければならない。

5項

基本計画のうち漁村に関する施策に係る部分については、 国土の総合的な利用、整備 及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。

6項

政府は、第一項の規定により基本計画を定めようとするときは、 水産政策審議会の意見を聴かなければならない。

7項

政府は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、 遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

8項

政府は、水産をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに水産に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、 おおむね五年ごとに、基本計画を変更するものとする。

9項

第六項 及び第七項の規定は、基本計画の変更について準用する。

第二節 水産物の安定供給の確保に関する施策

1項

食料である水産物の安定的な供給の確保に関する施策については、 食料・農業・農村基本法 及び この節に定めるところによる。

1項

国は、排他的経済水域等(我が国の排他的経済水域、領海 及び内水 並びに大陸棚(排他的経済水域及び大陸棚に関する法律平成八年法律第七十四号第二条に規定する大陸棚をいう。)をいう。以下同じ。)における水産資源の適切な保存 及び管理を図るため、最大持続生産量を実現することができる水準に水産資源を維持し 又は回復させることを旨として、 漁獲量 及び漁獲努力量の管理 その他 必要な施策を講ずるものとする。

2項

国は、前項に規定する施策が漁業経営に著しい影響を及ぼす場合において必要があると認めるときは、 これを緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、我が国が世界の漁業生産 及び水産物の消費において重要な地位を占めていることにかんがみ、 排他的経済水域等以外の水域における水産資源の適切な保存 及び管理が図られるよう、水産資源の持続的な利用に関する国際機関 その他の国際的な枠組みへの協力、 我が国の漁業の指導 及び監督 その他必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産資源の適切な保存 及び管理に資するため、 水産資源に関する調査 及び研究 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、環境との調和に配慮した水産動植物の増殖 及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の生産 及び放流の推進、養殖漁場の改善の促進 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産動植物の生育環境の保全 及び改善を図るため、水質の保全、水産動植物の繁殖地の保護 及び整備、森林の保全 及び整備 その他必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、排他的経済水域等以外の水域における我が国の漁業に係る漁場の維持 及び開発を図るため、操業に関する外国との協議、水産資源の探査 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産物につき、我が国の水産業による生産では需要を満たすことができないものの輸入を確保するため必要な施策を講ずるとともに、水産物の輸入によって水産資源の適切な保存 及び管理 又は当該水産物と競争関係にある水産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場合において、特に必要があるときは、輸入の制限、関税率の調整 その他必要な施策を講ずるものとする。

2項

国は、水産物の輸出を促進するため、水産物の競争力を強化するとともに、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化 その他必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、世界の水産物の需給の将来にわたる安定に資するため、 開発途上地域における水産業の振興に関する技術協力 及び資金協力 その他の国際協力の推進に努めるものとする。

第三節 水産業の健全な発展に関する施策

1項

国は、効率的かつ安定的な漁業経営を育成するため、 経営意欲のある漁業者が創意工夫を生かした漁業経営を展開できるようにすることが重要であることにかんがみ、漁業の種類 及び地域の特性に応じ、経営管理の合理化に資する条件の整備、漁船 その他の施設の整備の促進、事業の共同化の推進 その他 漁業経営基盤の強化の促進に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、効率的かつ安定的な漁業経営の育成に資するため、 漁場の利用の合理化の促進 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、効率的かつ安定的な漁業経営を担うべき人材の育成 及び確保を図るため、漁業者の漁業の技術 及び経済管理能力の向上、新たに漁業に就業しようとする者に対する漁業の技術 及び経営方法の習得の促進 その他必要な施策を講ずるものとする。

2項

国は、漁ろうの安全の確保、労働条件の改善 その他の漁業の従事者の労働環境の整備に必要な施策を講ずるものとする。

3項

国は、国民が漁業に対する理解と関心を深めるよう、 漁業に関する教育の振興 その他必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、災害によって漁業の再生産が阻害されることを防止するとともに、 漁業経営の安定を図るため、災害による損失の合理的な補てん その他必要な施策を講ずるものとする。

2項

国は、漁業経営の安定に資するため、 水産物の価格の著しい変動を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産加工業 及び水産流通業の健全な発展を図るため、事業活動に伴う環境への負荷の低減 及び資源の有効利用の確保に配慮しつつ、事業基盤の強化、漁業との連携の推進、水産物の流通の合理化 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産業の生産性の向上を促進するとともに、水産動植物の増殖 及び養殖の推進に資するため、地域の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ、事業の効率的な実施を旨として、 漁港の整備、漁場の整備 及び開発 その他 水産業の基盤の整備に必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産に関する技術の研究開発 及び普及の効果的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、 国、独立行政法人、都道府県 及び地方独立行政法人の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、地域の特性に応じた水産に関する技術の普及事業の推進 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保することが重要であることにかんがみ、女性の水産業における役割を適正に評価するとともに、 女性が自らの意思によって水産業 及びこれに関連する活動に参画する機会を確保するための環境整備を推進するものとする。

1項

国は、水産業における高齢者の役割分担 並びにその有する技術 及び能力に応じて、 生きがいを持って水産業に関する活動を行うことができる環境整備を推進し、水産業に従事する高齢者の福祉の向上を図るものとする。

1項

国は、水産業の振興 その他 漁村の総合的な振興に関する施策を計画的に推進するものとする。

2項

国は、地域の水産業の健全な発展を図るとともに、景観が優れ、豊かで住みよい漁村とするため、地域の特性に応じた水産業の基盤の整備と防災、交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備 その他の福祉の向上とを総合的に推進するよう、必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、国民の水産業 及び漁村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、都市と漁村との間の交流の促進、遊漁船業の適正化 その他 必要な施策を講ずるものとする。

1項

国は、水産業 及び漁村が国民生活 及び国民経済の安定に果たす役割に関する国民の理解と関心を深めるとともに、水産業 及び漁村の有する水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるようにするため、必要な施策を講ずるものとする。