犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律

平成十二年法律第七十五号
略称 : 犯罪被害者等保護法  犯罪被害者保護法 
分類 法律
カテゴリ   刑事
@ 施行日 : 令和四年五月二十五日 ( 2022年 5月25日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第四十八号による改正
最終編集日 : 2023年 01月09日 11時06分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 公判手続の傍聴

  • 第三章 公判記録の閲覧及び謄写

  • 第四章 被害者参加旅費等

  • 第五章 被害者参加弁護士の選定等

  • 第六章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解

  • 第七章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例

    • 第一節 損害賠償命令の申立て等
    • 第二節 審理及び裁判等
    • 第三節 異議等
    • 第四節 民事訴訟手続への移行
    • 第五節 補則
  • 第八章 雑則

第一章 総則

1項

この法律は、犯罪により害を被った者(以下「被害者」という。)及び その遺族がその被害に係る刑事事件の審理の状況 及び内容について深い関心を有するとともに、これらの者の受けた身体的、財産的被害 その他の被害の回復には困難を伴う場合があることにかんがみ、刑事手続に付随するものとして、被害者 及び その遺族の心情を尊重し、かつ その被害の回復に資するための措置を定め、並びにこれらの者による損害賠償請求に係る紛争を簡易かつ迅速に解決することに資するための裁判手続の特例を定め、もってその権利利益の保護を図ることを目的とする。

第二章 公判手続の傍聴

1項

刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、当該被告事件の被害者等(被害者 又は被害者が死亡した場合 若しくは その心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)又は当該被害者の法定代理人から、当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは、傍聴席 及び傍聴を希望する者の数 その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。

第三章 公判記録の閲覧及び謄写

1項

刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後 当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等 若しくは当該被害者の法定代理人 又は これらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧 又は謄写の申出があるときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見を聴き、閲覧 又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合 及び犯罪の性質、審理の状況 その他の事情を考慮して閲覧 又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、 申出をした者にその閲覧 又は謄写をさせるものとする。

2項

裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。

3項

第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧 又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉 若しくは生活の平穏を害し、又は捜査 若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。

1項

刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後 当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧 又は謄写の申出があるときは、被告人 又は弁護人の意見を聴き、第一号 又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧 又は謄写をさせることができる。

一 号

被告人 又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一 又は同種の罪の犯罪行為の被害者

二 号

前号に掲げる者が死亡した場合 又は その心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者直系の親族 又は兄弟姉妹

三 号

第一号に掲げる者の法定代理人

四 号

前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士

2項

前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。


この場合においては、その申出をする者は、同項各号いずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。

3項

検察官は、第一項の申出があったときは、裁判所に対し、意見を付してこれを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた資料があるときは、これを送付するものとする。

4項

前条第二項 及び第三項の規定は、第一項の規定による訴訟記録の閲覧 又は謄写について準用する。

第四章 被害者参加旅費等

1項

被害者参加人(刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)が同法第三百十六条の三十四第一項同条第五項において準用する場合を含む。次条第二項において同じ。)の規定により公判期日 又は公判準備に出席した場合には、法務大臣は、当該被害者参加人に対し、旅費、日当 及び宿泊料を支給する。

2項

前項の規定により支給する旅費、日当 及び宿泊料(以下「被害者参加旅費等」という。)の額については、政令で定める。

1項

被害者参加旅費等の支給を受けようとする被害者参加人は、所定の請求書に法務省令で定める被害者参加旅費等の算定に必要な資料を添えて、これを、裁判所を経由して、法務大臣に提出しなければならない。


この場合において、必要な資料の全部 又は一部を提出しなかった者は、その請求に係る被害者参加旅費等の額のうちその資料を提出しなかったため、その被害者参加旅費等の必要が明らかにされなかった部分の金額の支給を受けることができない

2項

裁判所は、前項の規定により請求書 及び資料を受け取ったときは、当該被害者参加人が刑事訴訟法第三百十六条の三十四第一項の規定により公判期日 又は公判準備に出席したことを証明する書面を添えて、これらを法務大臣に送付しなければならない。

3項

第一項の規定による被害者参加旅費等の請求の期限については、政令で定める。

1項

法務大臣は、被害者参加旅費等の支給に関し、裁判所に対して必要な協力を求めることができる。

1項

次に掲げる法務大臣の権限に係る事務は、日本司法支援センター総合法律支援法平成十六年法律第七十四号第十三条に規定する日本司法支援センターをいう。以下同じ。)に行わせるものとする。

一 号

第五条第一項の規定による被害者参加旅費等の支給

二 号

第六条第一項の規定による請求の受理

三 号

前条の規定による協力の求め

2項

法務大臣は、日本司法支援センターが天災 その他の事由により前項各号に掲げる権限に係る事務の全部 又は一部を行うことが困難 又は不適当となったと認めるときは、同項各号に掲げる権限の全部 又は一部を自ら行うものとする。

3項

法務大臣は、前項の規定により第一項各号に掲げる権限の全部 若しくは一部を自ら行うこととし、又は前項の規定により自ら行っている第一項各号に掲げる権限の全部 若しくは一部を行わないこととするときは、あらかじめ、その旨を公示しなければならない。

4項

法務大臣が、第二項の規定により第一項各号に掲げる権限の全部 若しくは一部を自ら行うこととし、又は第二項の規定により自ら行っている第一項各号に掲げる権限の全部 若しくは一部を行わないこととする場合における同項各号に掲げる権限に係る事務の引継ぎ その他の必要な事項は、法務省令で定める。

1項

この法律の規定による日本司法支援センターの処分 又は その不作為について不服がある者は、法務大臣に対して審査請求をすることができる


この場合において、法務大臣は、行政不服審査法平成二十六年法律第六十八号第二十五条第二項 及び第三項第四十六条第一項 及び第二項第四十七条 並びに第四十九条第三項の規定の適用については、日本司法支援センターの上級行政庁とみなす。

1項

第五条から 前条までに定めるもののほか、 被害者参加旅費等の支給に関し必要な事項(第六条第一項 及び第二項の規定により裁判所が行う手続に関する事項を除く)は、法務省令で定める。

第五章 被害者参加弁護士の選定等

1項

刑事訴訟法第三百十六条の三十四から 第三百十六条の三十八までに規定する行為を弁護士に委託しようとする被害者参加人であって、その資力(その者に属する現金、預金 その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額をいう。以下同じ。)から、手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷 又は疾病の療養に要する費用 その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から六月以内に支出することとなると認められる費用の額(以下「療養費等の額」という。)を控除した額が基準額(標準的な六月間の必要生計費を勘案して一般に被害者参加弁護士(被害者参加人の委託を受けて同法第三百十六条の三十四から 第三百十六条の三十八までに規定する行為を行う弁護士をいう。以下同じ。)の報酬 及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)に満たないものは、当該被告事件の係属する裁判所に対し、被害者参加弁護士を選定することを請求することができる。

2項

前項の規定による請求は、日本司法支援センターを経由してしなければならない。


この場合においては、被害者参加人は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める書面を提出しなければならない。

一 号

その資力が基準額に満たない者

資力 及び その内訳を申告する書面

二 号

前号に掲げる者以外の

資力 及び療養費等の額 並びにこれらの内訳を申告する書面

3項

日本司法支援センターは、第一項の規定による請求があったときは、裁判所に対し、これを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた書面を送付しなければならない。

1項

日本司法支援センターは、前条第一項の規定による請求があったときは、裁判所が選定する被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知しなければならない。

2項

前項の規定にかかわらず、日本司法支援センターは、次条第一項各号いずれかに該当することが明らかであると認めるときは、前項の規定による指名 及び通知をしないことができる。


この場合においては、日本司法支援センターは、裁判所にその旨を通知しなければならない。

3項

日本司法支援センターは、第一項の規定による指名をするに当たっては、前条第一項の規定による請求をした者の意見を聴かなければならない。

1項

裁判所は、第十一条第一項の規定による請求があったときは、次の各号いずれかに該当する場合を除き、当該被害者参加人のため被害者参加弁護士を選定するものとする。

一 号
請求が不適法であるとき。
二 号

請求をした者が第十一条第一項に規定する者に該当しないとき。

三 号

請求をした者がその責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士の選定を取り消された者であるとき。

2項

裁判所は、前項の規定により被害者参加弁護士を選定する場合において、必要があるときは、日本司法支援センターに対し、被害者参加弁護士の候補を指名して通知するよう求めることができる。


この場合においては、前条第一項 及び第三項の規定を準用する。

1項

裁判所による被害者参加弁護士の選定は、審級ごとにしなければならない。

2項

被害者参加弁護士の選定は、弁論が併合された事件についても その効力を有する。


ただし、被害者参加人が手続への参加を許されていない事件については、この限りでない。

3項

被害者参加弁護士の選定は、刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項の決定があったときは、その効力を失う。

4項

裁判所により選定された被害者参加弁護士は、旅費、日当、宿泊料 及び報酬を請求することができる。

5項

前項の規定により被害者参加弁護士に支給すべき旅費、日当、宿泊料 及び報酬の額については、刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料 及び報酬の例による。

1項

裁判所は、次の各号いずれかに該当すると認めるときは、被害者参加弁護士の選定を取り消すことができる。

一 号

被害者参加人が自ら刑事訴訟法第三百十六条の三十四から 第三百十六条の三十八までに規定する行為を他の弁護士に委託したこと その他の事由により被害者参加弁護士にその職務を行わせる必要がなくなったとき。

二 号

被害者参加人と被害者参加弁護士との利益が相反する状況にあり被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。

三 号

心身の故障 その他の事由により、被害者参加弁護士が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。

四 号

被害者参加弁護士がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。

五 号

被害者参加弁護士に対する暴行脅迫 その他の被害者参加人の責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。

2項

裁判所は、前項第二号から 第四号までに掲げる事由により被害者参加弁護士の選定を取り消したときは、更に被害者参加弁護士を選定するものとする。


この場合においては、第十三条第二項の規定を準用する。

1項

被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力 又は療養費等の額について虚偽の記載のある第十一条第二項各号に定める書面を提出したときは、十万円以下の過料に処する。

1項

被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力 又は療養費等の額について虚偽の記載のある第十一条第二項各号に定める書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは、裁判所は、決定で、当該被害者参加人から、被害者参加弁護士に支給した旅費、日当、宿泊料 及び報酬の全部 又は一部を徴収することができる。

2項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。


この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。

3項

費用賠償の裁判の執行に関する刑事訴訟法の規定は、第一項の決定の執行について準用する。

1項

刑事訴訟法第四十三条第三項 及び第四項の規定は被害者参加弁護士の選定 及び その取消しについて、同条第三項 及び第四項 並びに同法第四十四条第一項の規定は前条第一項の決定について、それぞれ準用する。

第六章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解

1項

刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所 又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。

2項

前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨 又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人 及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。

3項

前二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意 及び その合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。

4項

第一項 又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

1項

前条第一項 若しくは第二項の規定による申立てに基づき公判調書に記載された合意をした者 又は利害関係を疎明した第三者は、第三章 及び刑事訴訟法第四十九条の規定にかかわらず、裁判所書記官に対し、当該公判調書(当該合意 及び その合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実が記載された部分に限る)、当該申立てに係る前条第三項の書面 その他の当該合意に関する記録(以下「和解記録」という。)の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は和解に関する事項の証明書の交付を請求することができる。


ただし、和解記録の閲覧 及び謄写の請求は、和解記録の保存 又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない

2項

前項に規定する和解記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は和解に関する事項の証明書の交付の請求に関する裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては民事訴訟法平成八年法律第百九号第百二十一条の例により、和解記録についての秘密保護のための閲覧等の制限の手続については同法第九十二条の例による。

3項

和解記録は、刑事被告事件の終結後は、当該被告事件の第一審裁判所において保管するものとする。

1項

前二条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第一編第三章第一節選定当事者 及び特別代理人に関する規定を除く)及び第四節第六十条除く)の規定を準用する。

1項

第十九条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に係る執行文付与の訴え、 執行文付与に対する異議の訴え 及び請求異議の訴えは、民事執行法昭和五十四年法律第四号第三十三条第二項同法第三十四条第三項 及び第三十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、 当該被告事件の第一審裁判所(第一審裁判所が簡易裁判所である場合において、その和解に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)の管轄に専属する。

第七章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例

第一節 損害賠償命令の申立て等

1項

次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く)の被害者 又は その一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。

一 号

故意の犯罪行為により人を死傷させた罪 又は その未遂罪

二 号

次に掲げる罪 又は その未遂罪

刑法明治四十年法律第四十五号第百七十六条から 第百七十九条まで強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ 及び準強制性交等、監護者わいせつ 及び監護者性交等)の罪

刑法第二百二十条逮捕 及び監禁)の罪

刑法第二百二十四条から 第二百二十七条まで未成年者略取 及び誘拐、営利目的等略取 及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取 及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪

イから ハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く

2項

損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。

一 号
当事者 及び法定代理人
二 号

請求の趣旨 及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実 その他請求を特定するに足りる事実

3項

前項の書面には、同項各号に掲げる事項 その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。

1項

裁判所は、前条第二項の書面の提出を受けたときは、第二十七条第一項第一号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。

1項

刑事被告事件について刑事訴訟法第七条第八条第十一条第二項 若しくは第十九条第一項の決定 又は同法第十七条 若しくは第十八条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理 及び裁判を行う。

1項

損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄 及び認諾 並びに和解(第十九条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く)のための手続を含む。) 及び裁判(次条第一項第一号 又は第二号の規定によるものを除く)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。

2項

裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、 申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。

1項

裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。

一 号

損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回 又は変更されたため、当該被告事件が第二十三条第一項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く)。

二 号

刑事訴訟法第四条第五条 又は第十条第二項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。

三 号

刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条 若しくは第三百三十六条から 第三百三十八条までの判決 若しくは同法第三百三十九条の決定 又は少年法昭和二十三年法律第百六十八号第五十五条の決定があったとき。

四 号

刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第二十三条第一項各号に掲げる罪に該当しないとき。

2項

前項第一号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

3項

前項の規定による場合のほか、第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない

1項

損害賠償命令の申立てについて、前条第一項の決定(同項第一号に該当することを理由とするものを除く)の告知があったときは、当該告知を受けた時から六月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

第二節 審理及び裁判等

1項

損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

2項

前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。

1項

刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第二十三条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。


ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。

2項

審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。

3項

損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。

4項

裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、 その取調べをしなければならない。

1項

裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。

1項

損害賠償命令の申立てについての裁判(第二十七条第一項の決定を除く。以下 この条から 第三十四条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。

一 号
主文
二 号

請求の趣旨 及び当事者の主張の要旨

三 号
理由の要旨
四 号
審理の終結の日
五 号
当事者 及び法定代理人
六 号
裁判所
2項

損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、 担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。

3項

第一項の決定書は、当事者に送達しなければならない。


この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。

4項

裁判所は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文 及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。


この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。

5項

裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第一項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。

第三節 異議等

1項

当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達 又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。

2項

裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。

3項

前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

4項

適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。

5項

適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。

6項

民事訴訟法第三百五十八条 及び第三百六十条の規定は、第一項の異議について準用する。

1項

損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。


この場合においては、第二十三条第二項の書面を訴状と、第二十四条の規定による送達を訴状の送達とみなす。

2項

前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。

3項

第一項の地方裁判所 又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部 又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。

4項

前項の規定による移送の決定 及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1項

前条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第三十条第四項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉 又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査 又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他 前条第一項の地方裁判所 又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。

2項

裁判所書記官は、前条第一項の地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く)を送付しなければならない。

1項

第三十四条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第二項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第二百十九条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。

1項

仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第三十四条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。


ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。

2項

前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第三十四条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。

3項

民事訴訟法第三百六十三条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第三十四条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。


この場合において、

同法第三百六十三条第一項
異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、
「損害賠償命令」と

読み替えるものとする。

第四節 民事訴訟手続への移行

1項

裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第三十条第三項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。

2項

次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。

一 号

刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理 及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。

二 号

損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理 及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。

3項

前二項の決定 及び第一項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない

4項

第三十四条から 第三十六条までの規定は、第一項 又は第二項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。

第五節 補則

1項

当事者 又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

2項

前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ 又はビデオテープこれらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない


この場合において、これらの物について当事者 又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。

3項

前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧 若しくは謄写、その正本、謄本 若しくは抄本の交付 又は その複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。

4項

裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉 又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査 又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合 その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。

5項

裁判所は、利害関係を疎明した第三者から 刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官 及び被告人 又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉 又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査 又は公判に支障を及ぼすおそれの有無 その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。

6項

損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写 及び複製の請求は、当該記録の保存 又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない

7項

第四項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

8項

第五項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない

1項

特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条第十四条第一編第二章第三節第三章第四十七条から 第五十一条までを除く)、第四章第五章第八十七条第九十一条第二節第二款第百十六条 及び第百十八条除く)、第六章 及び第七章第二編第一章第百三十三条第百三十四条第百三十七条第二項 及び第三項第百三十八条第一項第百三十九条第百四十条第百四十五条 並びに第百四十六条除く)、第三章第百五十六条の二第百五十七条の二第百五十八条第百五十九条第三項第百六十一条第三項 及び第三節除く)、第四章第二百三十五条第一項ただし書 及び第二百三十六条除く)、第五章第二百四十九条から 第二百五十五条まで 並びに第二百五十九条第一項 及び第二項除く)及び第六章第二百六十二条第二項第二百六十三条 及び第二百六十六条第二項除く)、第三編第三章第四編 並びに第八編第四百三条第一項第一号第二号 及び第四号から 第六号まで除く)の規定を準用する。

第八章 雑則

1項

第三条第一項 又は第四条第一項の規定による訴訟記録の閲覧 又は謄写の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律昭和四十六年法律第四十号第七条から 第十条まで 及び別表第二の一の項から 三の項までの規定(同表一の項上欄中「事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。」とある部分を除く)を準用する。

2項

第六章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項 及び第七条から 第十条まで 並びに別表第一の九の項、一七の項 及び一八の項上欄()に係る部分に限る)並びに別表第二の一の項から 三の項までの規定(同表一の項上欄中「事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。」とある部分を除く)を準用する。

1項

損害賠償命令の申立てをするには、二千円の手数料を納めなければならない。

2項

民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項 及び別表第一の一七の項の規定は、第三十三条第一項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。

3項

損害賠償命令の申立てをした者は、第三十四条第一項第三十八条第四項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項 及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から 損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。

4項

前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。

1項

この法律に定めるもののほか第三章に規定する訴訟記録の閲覧 又は謄写、第六条第一項 及び第二項の規定により裁判所が行う手続、第五章に規定する被害者参加弁護士の選定等、第六章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解 並びに損害賠償命令事件に関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。