行政事件訴訟法

# 昭和三十七年法律第百三十九号 #
略称 : 行訴法 

第一節 取消訴訟

分類 法律
カテゴリ   行政手続
@ 施行日 : 令和四年六月十七日 ( 2022年 6月17日 )
@ 最終更新 : 令和四年法律第五十四号による改正
最終編集日 : 2023年 01月13日 23時21分


1項

処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。


ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2項

前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 号

審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 号

処分、処分の執行 又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 号

その他 裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3項

第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

1項

処分の取消しの訴え 及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分 又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分 又は裁決の効果が期間の経過 その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分 又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2項

裁判所は、処分 又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分 又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨 及び目的 並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容 及び性質を考慮するものとする。


この場合において、当該法令の趣旨 及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときは その趣旨 及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容 及び性質を考慮するに当たつては、当該処分 又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容 及び性質 並びにこれが害される態様 及び程度をも勘案するものとする。

1項

取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない

2項

処分の取消しの訴えと その処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない

1項

処分 又は裁決をした行政庁(処分 又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該 他の行政庁。以下同じ。)が国 又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。

一 号

処分の取消しの訴え

当該処分をした行政庁の所属する国 又は公共団体

二 号

裁決の取消しの訴え

当該裁決をした行政庁の所属する国 又は公共団体

2項

処分 又は裁決をした行政庁が国 又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。

3項

前二項の規定により被告とすべき国 若しくは公共団体 又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分 又は裁決に係る事務の帰属する国 又は公共団体を被告として提起しなければならない。

4項

第一項 又は前項の規定により国 又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。

一 号

処分の取消しの訴え

当該処分をした行政庁

二 号

裁決の取消しの訴え

当該裁決をした行政庁

5項

第一項 又は第三項の規定により国 又は公共団体を被告として取消訴訟が提起された場合には、被告は、遅滞なく、裁判所に対し、前項各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を明らかにしなければならない。

6項

処分 又は裁決をした行政庁は、当該処分 又は裁決に係る第一項の規定による国 又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。

1項

取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所 又は処分 若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

2項

土地の収用、鉱業権の設定 その他不動産 又は特定の場所に係る処分 又は裁決についての取消訴訟は、その不動産 又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。

3項

取消訴訟は、当該処分 又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。

4項

国 又は独立行政法人通則法平成十一年法律第百三号第二条第一項に規定する独立行政法人 若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも、提起することができる。

5項

前項の規定により特定管轄裁判所に同項の取消訴訟が提起された場合であつて、他の裁判所に事実上 及び法律上同一の原因に基づいてされた処分 又は裁決に係る抗告訴訟が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所 又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点 又は証拠の共通性 その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部 又は一部について、当該 他の裁判所 又は第一項から 第三項までに定める裁判所に移送することができる。

1項

取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。


ただし、取消訴訟 又は関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。

一 号

当該処分 又は裁決に関連する原状回復 又は損害賠償の請求

二 号

当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求

三 号

当該処分に係る裁決の取消しの請求

四 号

当該裁決に係る処分の取消しの請求

五 号

当該処分 又は裁決の取消しを求める他の請求

六 号

その他 当該処分 又は裁決の取消しの請求と関連する請求

1項

取消訴訟は、処分 又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない


ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2項

取消訴訟は、処分 又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない


ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3項

処分 又は裁決につき審査請求をすることができる場合 又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分 又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から 一年を経過したときは、提起することができない


ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

1項

取消訴訟において、原告が故意 又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更することを許すことができる。

2項

前項の決定は、書面でするものとし、その正本を新たな被告に送達しなければならない。

3項

第一項の決定があつたときは、出訴期間の遵守については、新たな被告に対する訴えは、最初に訴えを提起した時に提起されたものとみなす。

4項

第一項の決定があつたときは、従前の被告に対しては、訴えの取下げがあつたものとみなす。

5項

第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない

6項

第一項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

7項

上訴審において第一項の決定をしたときは、裁判所は、その訴訟を管轄裁判所に移送しなければならない。

1項

取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。

2項

前項の規定により訴えを併合する場合において、取消訴訟の第一審裁判所が高等裁判所であるときは、関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならない。


被告が異議を述べないで、本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、同意したものとみなす。

1項

数人は、その数人の請求 又は その数人に対する請求が処分 又は裁決の取消しの請求と関連請求とである場合に限り、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。

2項

前項の場合には、前条第二項の規定を準用する。

1項

第三者は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、その訴訟の当事者の一方を被告として、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。


この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第十六条第二項の規定を準用する。

1項

原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。


この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第十六条第二項の規定を準用する。

2項

前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法平成八年法律第百九号第百四十三条の規定の例によることを妨げない。

1項

前条第一項前段の規定により、処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には、同項後段において準用する第十六条第二項の規定にかかわらず、処分の取消しの訴えの被告の同意を得ることを要せず、また、その提起があつたときは、出訴期間の遵守については、処分の取消しの訴えは、裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす。

1項

裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分 又は裁決に係る事務の帰属する国 又は公共団体に対する損害賠償 その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもつて、訴えの変更を許すことができる。

2項

前項の決定には、第十五条第二項の規定を準用する。

3項

裁判所は、第一項の規定により訴えの変更を許す決定をするには、あらかじめ、当事者 及び損害賠償 その他の請求に係る訴えの被告の意見をきかなければならない。

4項

訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。

5項

訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない

1項

裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者 若しくは その第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができる。

2項

裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者 及び第三者の意見をきかなければならない。

3項

第一項の申立てをした第三者は、その申立てを却下する決定に対して即時抗告をすることができる。

4項

第一項の規定により訴訟に参加した第三者については、民事訴訟法第四十条第一項から 第三項までの規定を準用する。

5項

第一項の規定により第三者が参加の申立てをした場合には、民事訴訟法第四十五条第三項 及び第四項の規定を準用する。

1項

裁判所は、処分 又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者 若しくは その行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。

2項

裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者 及び当該行政庁の意見をきかなければならない。

3項

第一項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第四十五条第一項 及び第二項の規定を準用する。

1項

裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。

一 号

被告である国 若しくは公共団体に所属する行政庁 又は被告である行政庁に対し、処分 又は裁決の内容、処分 又は裁決の根拠となる法令の条項、処分 又は裁決の原因となる事実 その他処分 又は裁決の理由を明らかにする資料(次項に規定する審査請求に係る事件の記録を除く)であつて当該行政庁が保有するものの全部 又は一部の提出を求めること。

二 号

前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であつて当該行政庁が保有するものの全部 又は一部の送付を嘱託すること。

2項

裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があつたときは、次に掲げる処分をすることができる。

一 号

被告である国 若しくは公共団体に所属する行政庁 又は被告である行政庁に対し、当該審査請求に係る事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部 又は一部の提出を求めること。

二 号

前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部 又は一部の送付を嘱託すること。

1項

裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。


ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。

1項

処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行 又は手続の続行を妨げない。

2項

処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行 又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行 又は手続の続行の全部 又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。


ただし、処分の効力の停止は、処分の執行 又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。

3項

裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質 及び程度 並びに処分の内容 及び性質をも勘案するものとする。

4項

執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない

5項

第二項の決定は、疎明に基づいてする。

6項

第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。


ただしあらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。

7項

第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

8項

第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。

1項

執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は、相手方の申立てにより、決定をもつて、執行停止の決定を取り消すことができる。

2項

前項の申立てに対する決定 及びこれに対する不服については、前条第五項から 第八項までの規定を準用する。

1項

第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。


執行停止の決定があつた後においても、同様とする。

2項

前項の異議には、理由を附さなければならない。

3項

前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。

4項

第一項の異議があつたときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない。

5項

第一項後段の異議は、執行停止の決定をした裁判所に対して述べなければならない。


ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所に対して述べなければならない。

6項

内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第一項の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。

1項

執行停止 又は その決定の取消しの申立ての管轄裁判所は、本案の係属する裁判所とする。

1項

前四条の規定は、裁決の取消しの訴えの提起があつた場合における執行停止に関する事項について準用する。

1項

行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ 又は その濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

1項

取消訴訟については、処分 又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償 又は防止の程度 及び方法 その他一切の事情を考慮したうえ、処分 又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。


この場合には、当該判決の主文において、処分 又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。

2項

裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもつて、処分 又は裁決が違法であることを宣言することができる。

3項

終局判決に事実 及び理由を記載するには、前項の判決を引用することができる。

1項

処分 又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。

2項

前項の規定は、執行停止の決定 又はこれを取り消す決定に準用する。

1項

処分 又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分 又は裁決をした行政庁 その他の関係行政庁を拘束する。

2項

申請を却下し若しくは棄却した処分 又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分 又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分 又は審査請求に対する裁決をしなければならない。

3項

前項の規定は、申請に基づいてした処分 又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。

4項

第一項の規定は、執行停止の決定に準用する。

1項

処分 又は裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、 自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかつたため判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法を提出することができなかつたものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもつて、不服の申立てをすることができる。

2項

前項の訴えは、確定判決を知つた日から三十日以内に提起しなければならない。

3項

前項の期間は、不変期間とする。

4項

第一項の訴えは、判決が確定した日から一年を経過したときは、提起することができない

1項

国 又は公共団体に所属する行政庁が当事者 又は参加人である訴訟における確定した訴訟費用の裁判は、当該行政庁が所属する国 又は公共団体に対し、又はそれらの者のために、効力を有する。