海上において、人命 及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項の規定に基づいて、国土交通大臣の管理する外局として海上保安庁を置く。
海上保安庁法
第一章 組織
河川の口にある港と河川との境界は、港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)第二条の規定に基づく政令で定めるところによる。
従来運輸大臣官房、運輸省海運総局の長官官房、海運局、船舶局 及び船員局、海難審判所の理事官、灯台局、水路部 並びにその他の行政機関の所掌に属する事務で前項の事務に該当するものは、海上保安庁の所掌に移るものとする。
海上保安庁は、第二条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
海難の調査(運輸安全委員会 及び海難審判所の行うものを除く。)に関すること。
海上保安庁以外の者で海上において人命、積荷 及び船舶の救助を行うもの 並びに船舶交通に対する障害を除去するものの監督に関すること。
船舶交通がふくそうする海域における船舶交通の安全の確保に関すること。
海洋汚染等(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)第三条第十五号の二に規定する海洋汚染等をいう。)及び海上災害の防止に関すること。
警察庁 及び都道府県警察(以下「警察行政庁」という。)、税関、検疫所 その他の関係行政庁との間における協力、共助 及び連絡に関すること。
国際緊急援助隊の派遣に関する法律(昭和六十二年法律第九十三号)に基づく国際緊急援助活動に関すること。
海上保安庁以外の者で灯台 その他の航路標識の建設、保守 又は運用を行うものの監督に関すること。
前各号に掲げるもののほか、第二条第一項に規定する事務
海上保安庁長官は、国土交通大臣の指揮監督を受け、庁務を統理し、所部の職員を指揮監督する。
ただし、国土交通大臣以外の大臣の所管に属する事務については、各々その大臣の指揮監督を受ける。
前二項に定めるもののほか、管区海上保安本部の内部組織は、国土交通省令で定める。
国土交通大臣は、航路標識の管理 その他の業務の円滑な遂行のため特に必要があると認める場合は、海上保安管区の境界付近の区域に関するものに限り、一の管区海上保安本部の所掌事務の一部を他の管区海上保安本部に分掌させることができる。
国土交通大臣は、管区海上保安本部の所掌事務の一部を分掌させるため、所要の地に、管区海上保安本部の事務所を置くことができる。
その名称、位置、管轄区域、所掌事務の範囲 及び内部組織は、国土交通省令で定める。
海上保安官は、上官の命を受け、第二条第一項に規定する事務を掌る。
海上保安官は、第五条第二号に掲げる職務を行うため 若しくは犯人を逮捕するに当たり、又は非常事変に際し、必要があるときは、付近にある人 及び船舶に対し、協力を求めることができる。
海上保安官は、前項の規定により立入検査をし、又は質問するときは、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帯しなければならない。
海上保安官は、海上における犯罪が正に行われようとするのを認めた場合 又は天災事変、海難、工作物の損壊、危険物の爆発等危険な事態がある場合であつて、人の生命 若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害が及ぶおそれがあり、かつ、急を要するときは、他の法令に定めのあるもののほか、次に掲げる措置を講ずることができる。
乗組員、旅客 その他船内にある者(以下「乗組員等」という。)を下船させ、又はその下船を制限し、若しくは禁止すること。
前各号に掲げる措置のほか、海上における人の生命 若しくは身体に対する危険 又は財産に対する重大な損害を及ぼすおそれがある行為を制止すること。
海上保安官は、船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動 その他周囲の事情から合理的に判断して、海上における犯罪が行われることが明らかであると認められる場合 その他海上における公共の秩序が著しく乱されるおそれがあると認められる場合であつて、他に適当な手段がないと認められるときは、前項第一号 又は第二号に掲げる措置を講ずることができる。
海上保安官 及び海上保安官補の武器の使用については、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第七条の規定を準用する。
前項において準用する警察官職務執行法第七条の規定により武器を使用する場合のほか、第十七条第一項の規定に基づき船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員等がこれに応ぜずなお海上保安官 又は海上保安官補の職務の執行に対して抵抗し、又は逃亡しようとする場合において、海上保安庁長官が当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動 その他周囲の事情 及びこれらに関連する情報から合理的に判断して次の各号のすべてに該当する事態であると認めたときは、海上保安官 又は海上保安官補は、当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。
当該船舶が、外国船舶(軍艦 及び各国政府が所有し 又は運航する船舶であつて非商業的目的のみに使用されるものを除く。)と思料される船舶であつて、かつ、海洋法に関する国際連合条約第十九条に定めるところによる無害通航でない航行を我が国の内水 又は領海において現に行つていると認められること(当該航行に正当な理由がある場合を除く。)。
当該航行が我が国の領域内において死刑 又は無期 若しくは長期三年以上の懲役 若しくは禁錮に当たる凶悪な罪(以下「重大凶悪犯罪」という。)を犯すのに必要な準備のため行われているのではないかとの疑いを払拭することができないと認められること。
第三章 共助等
前項の規定による協力を求められた海上保安庁、警察行政庁、税関 その他の関係行政庁は、できるだけその求に応じなければならない。
前条の場合において派遣された職員は、その派遣を求めた行政庁の指揮を受けなければならない。
警察官職務執行法第二条、第五条 並びに第六条第一項、第三項 及び第四項の規定は、前項の規定による海上保安官 及び海上保安官補の職務の執行について準用する。
この場合において、
同法第二条第二項中
「警察署、派出所 又は駐在所」とあるのは
「海上保安庁の施設、船舶 又は航空機」と、
同条第三項中
「警察署、派出所 若しくは駐在所」とあるのは
「海上保安庁の施設、船舶 若しくは航空機」と
読み替えるものとする。
海上保安庁長官は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号)の定めるところにより、海上保安庁の任務遂行に支障を生じない限度において、その船舶 又は航空機の乗組員たる海上保安庁の職員に、国際平和協力業務を行わせ、及び輸送の委託を受けてこれを実施させることができる。
第四章 補則
海上保安庁長官は、その職権(第二十条第二項に規定するものを除く。)の一部を所部の職員に委任することができる。
海上保安官 及び海上保安官補は、海上における犯罪について、海上保安庁長官の定めるところにより、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察職員として職務を行う。
海上保安官 及び海上保安官補は、第二十八条の二第一項に規定する場合において、同項の離島における犯罪について、海上保安庁長官が警察庁長官に協議して定めるところにより、刑事訴訟法の規定による司法警察職員として職務を行う。
海上保安庁の船舶以外の船舶は、第四条第二項に規定する標識 若しくは海上保安庁の旗 又はこれらに紛らわしい標識 若しくは旗を附し、又は掲げてはならない。
海上保安庁の航空機以外の航空機は、第四条第三項に規定する標識 又はこれに紛らわしい標識を附してはならない。
第五条第二十八号の文教研修施設の名称、位置 及び内部組織は、海上保安庁令で定める。