特許権は、設定の登録により発生する。
特許法
第一節 特許権
第百七条第一項の規定による第一年から第三年までの各年分の特許料の納付 又はその納付の免除 若しくは猶予があつたときは、特許権の設定の登録をする。
前項の登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
ただし、第五号に掲げる事項については、その特許出願について出願公開がされているときは、この限りでない。
特許権者の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
特許出願の番号 及び年月日
発明者の氏名 及び住所 又は居所
願書に添付した明細書 及び特許請求の範囲に記載した事項 並びに図面の内容
願書に添付した要約書に記載した事項
特許番号 及び設定の登録の年月日
前各号に掲げるもののほか、必要な事項
第六十四条第三項の規定は、前項の規定により同項第五号の要約書に記載した事項を特許公報に掲載する場合に準用する。
特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
前項に規定する存続期間は、特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して五年を経過した日 又は出願審査の請求があつた日から起算して三年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」という。)以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができる。
前項の規定により延長することができる期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間から、次の各号に掲げる期間を合算した期間(これらの期間のうち重複する期間がある場合には、当該重複する期間を合算した期間を除いた期間)に相当する期間を控除した期間(以下「延長可能期間」という。)を超えない範囲内の期間とする。
その特許出願に係るこの法律(第三十九条第六項 及び第五十条を除く。)、実用新案法 若しくは工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(平成二年法律第三十号)又はこれらの法律に基づく命令の規定による通知 又は命令(特許庁長官 又は審査官が行うものに限る。)があつた場合において当該通知 又は命令を受けた場合に執るべき手続が執られたときにおける当該通知 又は命令があつた日から当該執るべき手続が執られた日までの期間
その特許出願に係るこの法律 又はこの法律に基づく命令(次号、第五号 及び第十号において「特許法令」という。)の規定による手続を執るべき期間の延長があつた場合における当該手続を執るべき期間が経過した日から当該手続をした日までの期間
その特許出願に係る特許法令の規定による手続であつて当該手続を執るべき期間の定めがあるものについて特許法令の規定により出願人が当該手続を執るべき期間の経過後であつても当該手続を執ることができる場合において当該手続をしたときにおける当該手続を執るべき期間が経過した日から当該手続をした日までの期間
その特許出願に係るこの法律 若しくは工業所有権に関する手続等の特例に関する法律 又はこれらの法律に基づく命令(第八号 及び第九号において「特許法関係法令」という。)の規定による処分 又は通知について出願人の申出 その他の行為により当該処分 又は通知を保留した場合における当該申出 その他の行為があつた日から当該処分 又は通知を保留する理由がなくなつた日までの期間
その特許出願に係る特許法令の規定による特許料 又は手数料の納付について当該特許料 又は手数料の軽減 若しくは免除 又は納付の猶予の決定があつた場合における当該軽減 若しくは免除 又は納付の猶予に係る申請があつた日から当該決定があつた日までの期間
その特許出願に係る第三十八条の四第七項の規定による明細書等補完書の取下げがあつた場合における当該明細書等補完書が同条第三項の規定により提出された日から同条第七項の規定により当該明細書等補完書が取り下げられた日までの期間
その特許出願に係る拒絶査定不服審判の請求があつた場合における次のイからハまでに掲げる区分に応じて当該イからハまでに定める期間
第百五十九条第三項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の審決があつた場合
拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があつた日から当該審決の謄本の送達があつた日までの期間
第百六十条第一項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定による更に審査に付すべき旨の審決があつた場合
拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があつた日から当該審決の謄本の送達があつた日までの期間
第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定があつた場合
拒絶をすべき旨の査定の謄本の送達があつた日から当該特許をすべき旨の査定の謄本の送達があつた日までの期間
その特許出願に係る特許法関係法令の規定による処分について行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定による審査請求に対する裁決が確定した場合における当該審査請求の日から当該裁決の謄本の送達があつた日までの期間
その特許出願に係る特許法関係法令の規定による処分について行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)の規定による訴えの判決が確定した場合における当該訴えの提起の日から当該訴えの判決が確定した日までの期間
その特許出願に係る特許法令の規定による手続が中断し、又は中止した場合における当該手続が中断し、又は中止した期間
第一項に規定する存続期間(第二項の規定により延長されたときは、その延長の期間を加えたもの。第六十七条の五第三項ただし書、第六十八条の二 及び第百七条第一項において同じ。)は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可 その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。
前条第二項の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
出願人の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
特許出願の番号 及び年月日
出願審査の請求があつた年月日
前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、同項第三号に掲げる期間の算定の根拠を記載した書面を添付しなければならない。
前条第二項の延長登録の出願は、特許権の設定の登録の日から三月(出願をする者がその責めに帰することができない理由により当該期間内に出願をすることができないときは、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)を経過する日までの期間(当該期間が九月を超えるときは、九月))以内にしなければならない。
ただし、同条第一項に規定する存続期間の満了後は、することができない。
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者と共同でなければ、前条第二項の延長登録の出願をすることができない。
前条第二項の延長登録の出願があつたときは、同条第一項に規定する存続期間は、延長されたものとみなす。
ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は次条第三項の延長登録があつたときは、この限りでない。
前条第二項の延長登録の出願があつたときは、第一項各号に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
審査官は、第六十七条第二項の延長登録の出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
その特許権の設定の登録が基準日以後にされていないとき。
その延長を求める期間がその特許権の存続期間に係る延長可能期間を超えているとき。
その出願をした者が当該特許権者でないとき。
その出願が前条第四項に規定する要件を満たしていないとき。
審査官は、第六十七条第二項の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない。
前項の査定があつたときは、延長登録をする。
前項の延長登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
特許権者の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
第六十七条第二項の延長登録の出願の番号 及び年月日
出願審査の請求があつた年月日
第四十七条第一項、第五十条、第五十二条 及び第百三十九条(第七号を除く。)の規定は、第六十七条第二項の延長登録の出願の審査について準用する。
この場合において、
第百三十九条第六号中
「不服を申し立てられた」とあるのは、
「第六十七条第二項の延長登録の出願があつた特許権に係る特許出願の」と
読み替えるものとする。
第六十七条第四項の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
出願人の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
第六十七条第四項の政令で定める処分の内容
前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。
第六十七条第四項の延長登録の出願は、同項の政令で定める処分を受けた日から政令で定める期間内にしなければならない。
ただし、同条第一項に規定する存続期間の満了後は、することができない。
第六十七条の二第四項から第六項までの規定は、第六十七条第四項の延長登録の出願について準用する。
この場合において、
第六十七条の二第五項ただし書中
「次条第三項」とあるのは
「第六十七条の七第三項」と、
同条第六項中
「第一項各号」とあるのは
「第六十七条の五第一項各号」と
読み替えるものとする。
第六十七条第四項の延長登録の出願をしようとする者は、同条第一項に規定する存続期間の満了前六月の前日までに同条第四項の政令で定める処分を受けることができないと見込まれるときは、次に掲げる事項を記載した書面をその日までに特許庁長官に提出しなければならない。
出願をしようとする者の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
第六十七条第四項の政令で定める処分
前項の規定により提出すべき書面を提出しないときは、第六十七条第一項に規定する存続期間の満了前六月以後に同条第四項の延長登録の出願をすることができない。
第一項に規定する書面が提出されたときは、同項各号に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
第一項の規定により同項に規定する書面を提出する者がその責めに帰することができない理由により同項に規定する日までにその書面を提出することができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、一月)以内で同項に規定する日の後二月以内にその書面を特許庁長官に提出することができる。
審査官は、第六十七条第四項の延長登録の出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
その特許発明の実施に第六十七条第四項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。
その特許権者 又はその特許権についての専用実施権 若しくは通常実施権を有する者が第六十七条第四項の政令で定める処分を受けていないとき。
その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。
その出願をした者が当該特許権者でないとき。
その出願が第六十七条の五第四項において準用する第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていないとき。
審査官は、第六十七条第四項の延長登録の出願について拒絶の理由を発見しないときは、延長登録をすべき旨の査定をしなければならない。
前項の査定があつたときは、延長登録をする。
前項の延長登録があつたときは、次に掲げる事項を特許公報に掲載しなければならない。
特許権者の氏名 又は名称 及び住所 又は居所
第六十七条第四項の延長登録の出願の番号 及び年月日
第六十七条第四項の政令で定める処分の内容
第六十七条の四前段の規定は、第六十七条第四項の延長登録の出願の審査について準用する。
この場合において、
第六十七条の四前段中
「第七号」とあるのは、
「第六号 及び第七号」と
読み替えるものとする。
特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。
ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
第六十七条第四項の規定により同条第一項に規定する存続期間が延長された場合(第六十七条の五第四項において準用する第六十七条の二第五項本文の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第四項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。
特許権の効力は、試験 又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。
特許権の効力は、次に掲げる物には、及ばない。
単に日本国内を通過するに過ぎない船舶 若しくは航空機 又はこれらに使用する機械、器具、装置 その他の物
特許出願の時から日本国内にある物
二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置 又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明 又は二以上の医薬を混合して医薬を製造する方法の発明に係る特許権の効力は、医師 又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為 及び医師 又は歯科医師の処方せんにより調剤する医薬には、及ばない。
特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。
前項の場合においては、願書に添付した明細書の記載 及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。
前二項の場合においては、願書に添付した要約書の記載を考慮してはならない。
特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。
特許庁長官は、前項の規定による求があつたときは、三名の審判官を指定して、その判定をさせなければならない。
第百三十一条第一項、第百三十一条の二第一項本文、第百三十二条第一項 及び第二項、第百三十三条、第百三十三条の二、第百三十四条第一項、第三項 及び第四項、第百三十五条、第百三十六条第一項 及び第二項、第百三十七条第二項、第百三十八条、第百三十九条(第六号 及び第七号を除く。)、第百四十条から第百四十四条まで、第百四十四条の二第一項 及び第三項から第五項まで、第百四十五条第二項から第七項まで、第百四十六条、第百四十七条第一項 及び第二項、第百五十条第一項から第五項まで、第百五十一条から第百五十四条まで、第百五十五条第一項、第百五十七条 並びに第百六十九条第三項、第四項 及び第六項の規定は、第一項の判定について準用する。
この場合において、
第百三十五条中
「審決」とあるのは
「決定」と、
第百四十五条第二項中
「前項に規定する審判以外の審判」とあるのは
「判定の審理」と、
同条第五項ただし書中
「公の秩序 又は善良の風俗を害するおそれがあるとき」とあるのは
「審判長が必要があると認めるとき」と、
第百五十一条中
「第百四十七条」とあるのは
「第百四十七条第一項 及び第二項」と、
第百五十五条第一項中
「審決が確定するまで」とあるのは
「判定の謄本が送達されるまで」と
読み替えるものとする。
前項において読み替えて準用する第百三十五条の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
特許庁長官は、裁判所から特許発明の技術的範囲について鑑定の嘱託があつたときは、三名の審判官を指定して、その鑑定をさせなければならない。
第百三十六条第一項 及び第二項、第百三十七条第二項 並びに第百三十八条の規定は、前項の鑑定の嘱託に準用する。
特許権者、専用実施権者 又は通常実施権者は、その特許発明がその特許出願の日前の出願に係る他人の特許発明、登録実用新案 若しくは登録意匠 若しくはこれに類似する意匠を利用するものであるとき、又はその特許権がその特許出願の日前の出願に係る他人の意匠権 若しくは商標権と抵触するときは、業としてその特許発明の実施をすることができない。
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。
特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当するとき(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。
前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。
当該特許権に係る発明についての第六十五条第一項 又は第百八十四条の十第一項の規定による請求権についても、同様とする。
共有に係る特許権について第一項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第一項の規定は、適用しない。
特許権は、民法第九百五十二条第二項の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、消滅する。
特許権者は、その特許権について専用実施権を設定することができる。
専用実施権者は、設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を専有する。
専用実施権は、実施の事業とともにする場合、特許権者の承諾を得た場合 及び相続 その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
専用実施権者は、特許権者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権について質権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができる。
第七十三条の規定は、専用実施権に準用する。
特許権者は、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができる。
通常実施権者は、この法律の規定により又は設定行為で定めた範囲内において、業としてその特許発明の実施をする権利を有する。
特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際 現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者 又はその事業の準備をしている者は、その実施 又は準備をしている発明 及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
第七十四条第一項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録の際 現にその特許権、その特許権についての専用実施権 又はその特許権 若しくは専用実施権についての通常実施権を有していた者であつて、その特許権の移転の登録前に、特許が第百二十三条第一項第二号に規定する要件に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施 又は準備をしている発明 及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
当該特許権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
次の各号のいずれかに該当する者であつて、特許無効審判の請求の登録前に、特許が第百二十三条第一項各号のいずれかに規定する要件に該当することを知らないで、日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているものは、その実施 又は準備をしている発明 及び事業の目的の範囲内において、その特許を無効にした場合における特許権 又はその際 現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
同一の発明についての二以上の特許のうち、その一を無効にした場合における原特許権者
特許を無効にして同一の発明について正当権利者に特許をした場合における原特許権者
前二号に掲げる場合において、特許無効審判の請求の登録の際 現にその無効にした特許に係る特許権についての専用実施権 又はその特許権 若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者
当該特許権者 又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
特許出願の日前 又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その原意匠権者は、原意匠権の範囲内において、当該特許権 又はその意匠権の存続期間の満了の際 現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
特許出願の日前 又はこれと同日の意匠登録出願に係る意匠権がその特許出願に係る特許権と抵触する場合において、その意匠権の存続期間が満了したときは、その満了の際 現にその意匠権についての専用実施権 又はその意匠権 若しくは専用実施権についての通常実施権を有する者は、原権利の範囲内において、当該特許権 又はその意匠権の存続期間の満了の際 現に存する専用実施権について通常実施権を有する。
当該特許権者 又は専用実施権者は、前項の規定により通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有する。
特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者 又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
特許庁長官は、前条第二項の裁定の請求があつたときは、請求書の副本をその請求に係る特許権者 又は専用実施権者 その他その特許に関し登録した権利を有する者に送達し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない。
第八十三条第二項の裁定の請求があつたときは、その特許に関し通常実施権を有する者は、前条に規定する期間内に限り、その裁定の請求について意見を述べることができる。
特許庁長官は、第八十三条第二項の裁定をしようとするときは、審議会等(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第八条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。
特許庁長官は、その特許発明の実施が適当にされていないことについて正当な理由があるときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
第八十三条第二項の裁定は、文書をもつて行い、かつ、理由を附さなければならない。
通常実施権を設定すべき旨の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
通常実施権を設定すべき範囲
対価の額 並びにその支払の方法 及び時期
特許庁長官は、第八十三条第二項の裁定をしたときは、裁定の謄本を当事者、当事者以外の者であつてその特許に関し登録した権利を有するもの及び第八十四条の二の規定により意見を述べた通常実施権者に送達しなければならない。
当事者に対し前項の規定により通常実施権を設定すべき旨の裁定の謄本の送達があつたときは、裁定で定めるところにより、当事者間に協議が成立したものとみなす。
第八十六条第二項第二号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。
対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき。
その対価を受けるべき者がこれを受領することができないとき。
その対価について第百八十三条第一項の訴えの提起があつたとき。
当該特許権 又は専用実施権を目的とする質権が設定されているとき。
ただし、質権者の承諾を得たときは、この限りでない。
通常実施権の設定を受けようとする者が第八十三条第二項の裁定で定める支払の時期までに対価(対価を定期に又は分割して支払うべきときは、その最初に支払うべき分)の支払 又は供託をしないときは、通常実施権を設定すべき旨の裁定は、その効力を失う。
特許庁長官は、第八十三条第二項の規定により通常実施権を設定すべき旨の裁定をした後に、裁定の理由の消滅 その他の事由により当該裁定を維持することが適当でなくなつたとき、又は通常実施権の設定を受けた者が適当にその特許発明の実施をしないときは、利害関係人の請求により又は職権で、裁定を取り消すことができる。
第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項、第八十六条第一項 及び第八十七条第一項の規定は前項の規定による裁定の取消しに、第八十五条第二項の規定は通常実施権の設定を受けた者が適当にその特許発明の実施をしない場合の前項の規定による裁定の取消しに準用する。
前条第一項の規定による裁定の取消があつたときは、通常実施権は、その後 消滅する。
第八十三条第二項の規定による裁定についての行政不服審査法の規定による審査請求においては、その裁定で定める対価についての不服をその裁定についての不服の理由とすることができない。
特許権者 又は専用実施権者は、その特許発明が第七十二条に規定する場合に該当するときは、同条の他人に対しその特許発明の実施をするための通常実施権 又は実用新案権 若しくは意匠権についての通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
前項の協議を求められた第七十二条の他人は、その協議を求めた特許権者 又は専用実施権者に対し、これらの者がその協議により通常実施権 又は実用新案権 若しくは意匠権についての通常実施権の許諾を受けて実施をしようとする特許発明の範囲内において、通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
第一項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許権者 又は専用実施権者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。
第二項の協議が成立せず、又は協議をすることができない場合において、前項の裁定の請求があつたときは、第七十二条の他人は、第七項において準用する第八十四条の規定によりその者が答弁書を提出すべき期間として特許庁長官が指定した期間内に限り、特許庁長官の裁定を請求することができる。
特許庁長官は、第三項 又は前項の場合において、当該通常実施権を設定することが第七十二条の他人 又は特許権者 若しくは専用実施権者の利益を不当に害することとなるときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
特許庁長官は、前項に規定する場合のほか、第四項の場合において、第三項の裁定の請求について通常実施権を設定すべき旨の裁定をしないときは、当該通常実施権を設定すべき旨の裁定をすることができない。
第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項 及び第八十六条から前条までの規定は、第三項 又は第四項の裁定に準用する。
特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者 又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項 及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。
通常実施権は、第八十三条第二項、第九十二条第三項 若しくは第四項 若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者 及び専用実施権者)の承諾を得た場合 及び相続 その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
通常実施権者は、第八十三条第二項、第九十二条第三項 若しくは第四項 若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者 及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。
第八十三条第二項 又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。
第九十二条第三項、実用新案法第二十二条第三項 又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権 又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その特許権、実用新案権 又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。
第九十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権 又は意匠権に従つて移転し、その特許権、実用新案権 又は意匠権が消滅したときは消滅する。
第七十三条第一項の規定は、通常実施権に準用する。
特許権、専用実施権 又は通常実施権を目的として質権を設定したときは、質権者は、契約で別段の定をした場合を除き、当該特許発明の実施をすることができない。
特許権、専用実施権 又は通常実施権を目的とする質権は、特許権、専用実施権 若しくは通常実施権の対価 又は特許発明の実施に対しその特許権者 若しくは専用実施権者が受けるべき金銭 その他の物に対しても、行うことができる。
ただし、その払渡 又は引渡前に差押をしなければならない。
特許権者は、専用実施権者 又は質権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その特許権を放棄することができる。
専用実施権者は、質権者 又は第七十七条第四項の規定による通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用実施権を放棄することができる。
通常実施権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常実施権を放棄することができる。
次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
特許権の移転(相続 その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅 又は処分の制限
専用実施権の設定、移転(相続 その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同 又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
特許権 又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転(相続 その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同 又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
前項各号の相続 その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
通常実施権は、その発生後にその特許権 若しくは専用実施権 又はその特許権についての専用実施権を取得した者に対しても、その効力を有する。