じん肺法

昭和三十五年法律第三十号
分類 法律
カテゴリ   労働
@ 施行日 : 令和二年四月一日 ( 2020年 4月1日 )
@ 最終更新 : 平成二十九年法律第四十五号による改正
最終編集日 : 2023年 05月19日 14時12分

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  • 第一章 総則

  • 第二章 健康管理

    • 第一節 じん肺健康診断の実施
    • 第二節 じん肺管理区分の決定等
    • 第三節 健康管理のための措置
  • 第四章 政府の援助等

  • 第五章 雑則

  • 第六章 罰則

第一章 総則

1項
この法律は、じん肺に関し、適正な予防 及び健康管理 その他必要な措置を講ずることにより、労働者の健康の保持 その他福祉の増進に寄与することを目的とする。
1項

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 号

じん肺

粉じんを吸入することによつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう。

二 号

合併症

じん肺と合併した肺結核 その他のじん肺の進展経過に応じてじん肺と密接な関係があると認められる疾病をいう。

三 号

粉じん作業

当該作業に従事する労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業をいう。

四 号

労働者

労働基準法昭和二十二年法律第四十九号第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業 又は事務所に使用される者 及び家事使用人を除く)をいう。

五 号

事業者

労働安全衛生法昭和四十七年法律第五十七号第二条第三号に規定する事業者で、粉じん作業を行う事業に係るものをいう。

2項
合併症の範囲については、厚生労働省令で定める。
3項
粉じん作業の範囲は、厚生労働省令で定める。
1項

この法律の規定によるじん肺健康診断は、次の方法によつて行うものとする。

一 号

粉じん作業についての職歴の調査 及びエックス線写真(直接撮影による胸部全域のエックス線写真をいう。以下同じ。)による検査

二 号
厚生労働省令で定める方法による胸部に関する臨床検査 及び肺機能検査
三 号
厚生労働省令で定める方法による結核精密検査 その他厚生労働省令で定める検査
2項

前項第二号の検査は、同項第一号の調査 及び検査の結果、じん肺の所見がないと診断された者以外の者について行う。


ただし、肺機能検査については、エックス線写真に一側の肺野の三分の一を超える大きさの大陰影(じん肺によるものに限る次項 及び次条において同じ。)があると認められる者 その他厚生労働省令で定める者を除く

3項

第一項第三号の結核精密検査は同項第一号 及び第二号の調査 及び検査(肺機能検査を除く)の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち肺結核にかかつており、又はかかつている疑いがあると診断された者について、同項第三号の厚生労働省令で定める検査は同項第一号 及び第二号の調査 及び検査の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち肺結核以外の合併症にかかつている疑いがあると診断された者(同項第三号の厚生労働省令で定める検査を受けることが必要であると認められた者に限る)について行う。


ただし、エックス線写真に一側の肺野の三分の一を超える大きさの大陰影があると認められる者を除く

1項
じん肺のエックス線写真の像は、次の表の下欄に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする。
エックス線写真の像
第一型
両肺野にじん肺による粒状影 又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第二型
両肺野にじん肺による粒状影 又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第三型
両肺野にじん肺による粒状影 又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第四型
大陰影があると認められるもの
2項

粉じん作業に従事する労働者 及び粉じん作業に従事する労働者であつた者は、じん肺健康診断の結果に基づき、次の表の下欄に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、この法律の規定により、健康管理を行うものとする。

じん肺管理区分
じん肺健康診断の結果
管理一
じん肺の所見がないと認められるもの
管理二
エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理三
エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第三型 又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理四
1) エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一を超えるものに限る。)と認められるもの
2) エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型 又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの
1項

事業者 及び粉じん作業に従事する労働者は、じん肺の予防に関し、労働安全衛生法 及び鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)の規定によるほか、粉じんの発散の防止 及び抑制、保護具の使用 その他について適切な措置を講ずるように努めなければならない。

1項

事業者は、労働安全衛生法 及び鉱山保安法の規定によるほか、常時粉じん作業に従事する労働者に対してじん肺に関する予防 及び健康管理のために必要な教育を行わなければならない。

第二章 健康管理

第一節 じん肺健康診断の実施

1項

事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなつた労働者(当該作業に従事することとなつた日前一年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二 又は管理三イと決定された労働者 その他厚生労働省令で定める労働者を除く)に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければならない。


この場合において、当該じん肺健康診断は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を省略することができる。

1項

事業者は、次の各号に掲げる労働者に対して、それぞれ当該各号に掲げる期間以内ごとに一回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければならない。

一 号

常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く

三年

二 号

常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分管理二 又は管理三であるもの

一年

三 号

常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く

三年

四 号

常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く

一年

2項

前条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。

1項

事業者は、次の各号の場合には、当該労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければならない。

一 号

常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺管理区分が管理二管理三 又は管理四と決定された労働者を除く)が、労働安全衛生法第六十六条第一項 又は第二項の健康診断において、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかつている疑いがあると診断されたとき。

二 号

合併症により一年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなつたと診断されたとき。

三 号

前二号に掲げる場合のほか、厚生労働省令で定めるとき。

2項

第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。

1項

事業者は、次の各号に掲げる労働者で、離職の日まで引き続き厚生労働省令で定める期間を超えて使用していたものが、当該離職の際にじん肺健康診断を行うように求めたときは、当該労働者に対して、じん肺健康診断を行わなければならない。


ただし、当該労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から当該離職の日までの期間が、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ当該各号に掲げる期間に満たないときは、この限りでない。

一 号

常時粉じん作業に従事する労働者(次号に掲げる者を除く

一年六月

二 号

常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二 又は管理三であるもの

六月

三 号

常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二 又は管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く

六月

2項

第七条後段の規定は、前項の規定によるじん肺健康診断を行う場合に準用する。

1項

事業者は、じん肺健康診断を行つた場合においては、その限度において、労働安全衛生法第六十六条第一項 又は第二項の健康診断を行わなくてもよい。

1項

関係労働者は、正当な理由がある場合を除き第七条から第九条までの規定により事業者が行うじん肺健康診断を受けなければならない。


ただし、事業者が指定した医師の行うじん肺健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行うじん肺健康診断を受け、当該エックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

第二節 じん肺管理区分の決定等

1項

事業者は、第七条から第九条の二までの規定によりじん肺健康診断を行つたとき、又は前条ただし書の規定によりエックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他の書面が提出されたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、じん肺の所見があると診断された労働者について、当該エックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める書面を都道府県労働局長に提出しなければならない。

1項

第七条から第九条の二まで 又は第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断の結果、じん肺の所見がないと診断された者のじん肺管理区分は、管理一とする。

2項

都道府県労働局長は、前条の規定により、エックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める書面が提出されたときは、これらを基礎として、地方じん肺診査医の診断 又は審査により、当該労働者についてじん肺管理区分の決定をするものとする。

3項

都道府県労働局長は、地方じん肺診査医の意見により、前項の決定を行うため必要があると認めるときは、事業者に対し、期日 若しくは方法を指定してエックス線写真の撮影 若しくは厚生労働省令で定める範囲内の検査を行うべきこと 又はその指定する物件を提出すべきことを命ずることができる。

4項

事業者は、前項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影 又は検査を行つたときは、遅滞なく、都道府県労働局長に、当該エックス線写真 又は検査の結果を証明する書面 その他その指定する当該検査に係る物件を提出しなければならない。

5項

第十一条本文の規定は、第三項の規定による命令を受けてエックス線写真の撮影 又は検査を行なう場合に準用する。

1項

都道府県労働局長は、前条第二項の決定をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を当該事業者に通知するとともに、遅滞なく、第十二条 又は前条第三項 若しくは第四項の規定により提出されたエックス線写真 その他の物件を返還しなければならない。

2項

事業者は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者(厚生労働省令で定める労働者であつた者を含む。)に対して、その者について決定されたじん肺管理区分 及び その者が留意すべき事項を通知しなければならない。

3項

事業者は、前項の規定による通知をしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を記載した書面を作成し、これを三年間保存しなければならない。

1項

常時粉じん作業に従事する労働者 又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。

2項

前項の規定による申請は、エックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める書面を添えてしなければならない。

3項

第十三条第二項から第四項まで 及び前条第一項の規定は、第一項の規定による申請があつた場合に準用する。


この場合において、

第十三条第二項
前条」とあるのは
第十五条第二項」と、

同条第三項 及び第四項
事業者」とあるのは
「申請者」と、

前条第一項
当該事業者」とあるのは
「申請者 及び申請者を使用する事業者」と、

第十二条 又は前条第三項 若しくは第四項」とあるのは
前条第三項 若しくは第四項 又は次条第二項」と

読み替えるものとする。

1項

事業者は、いつでも、常時粉じん作業に従事する労働者 又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者について、じん肺健康診断を行い、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県労働局長にじん肺管理区分を決定すべきことを申請することができる。

2項

前条第二項の規定は前項の規定による申請に、第十三条第二項から第四項まで 及び第十四条の規定は前項の規定による申請があつた場合に準用する。


この場合において、

第十三条第二項
前条」とあるのは
第十六条第二項の規定により準用する第十五条第二項」と、

第十四条第一項
第十二条 又は前条第三項 若しくは第四項」とあるのは
前条第三項 若しくは第四項 又は第十六条第二項の規定により準用する次条第二項」と

読み替えるものとする。

1項

都道府県労働局長は、常時粉じん作業に従事する労働者 又は常時粉じん作業に従事する労働者であつた者について、適正なじん肺管理区分を決定するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対して、エックス線写真 及びじん肺健康診断の結果を証明する書面 その他厚生労働省令で定める書面(次項において「エックス線写真等」という。)を提出すべきことを命ずることができる。

2項

第十三条第二項から第四項まで 及び第十四条の規定は、前項の規定によりエックス線写真等の提出があつた場合に準用する。


この場合において、

第十四条第一項
第十二条 又は前条第三項 若しくは第四項」とあるのは
前条第三項 若しくは第四項 又は第十六条の二第一項」と

読み替えるものとする。

1項

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、その行つたじん肺健康診断 及び第十一条ただし書の規定によるじん肺健康診断に関する記録を作成しなければならない。

2項

事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の記録 及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を七年間保存しなければならない。

1項

第十三条第二項第十五条第三項第十六条第二項 及び第十六条の二第二項において準用する場合を含む。次条第一項 及び第二項において同じ。)の決定 又はその不作為についての審査請求における審査請求書には、行政不服審査法平成二十六年法律第六十八号第十九条第二項から第四項まで 及び第五項第三号に係る部分に限る)に規定する事項のほか、厚生労働省令で定める事項を記載しなければならない。

2項

前項の審査請求書には、厚生労働省令で定めるところにより、当該決定に係るエツクス線写真 その他の物件 及び証拠となる物件を添附しなければならない。

1項

第十三条第二項の決定についての審査請求の裁決は、中央じん肺診査医の診断 又は審査に基づいてするものとする。

2項

第十三条第二項の決定の不作為についての審査請求の裁決は、地方じん肺診査医の診断 又は審査に基づいてするものとする。

3項

厚生労働大臣は、第一項の審査請求について、当該決定を取り消す旨の裁決をするときは、裁決で、労働者 又は労働者であつた者についてじん肺管理区分を決定するものとする。

4項

第十三条第三項 及び第四項の規定は、第一項の審査請求があつた場合に準用する。


この場合において、

これらの規定中
都道府県労働局長」とあるのは
「厚生労働大臣」と、

地方じん肺診査医」とあるのは
「中央じん肺診査医」と、

前項の決定」とあるのは
「裁決」と、

事業者」とあるのは
「審査請求人」と

読み替えるものとする。

5項

第十三条第三項 及び第四項の規定は、第二項の審査請求があつた場合に準用する。


この場合において、

これらの規定中
都道府県労働局長」とあるのは
「厚生労働大臣」と、

前項の決定」とあるのは
「裁決」と、

事業者」とあるのは
「審査請求人」と

読み替えるものとする。

6項

厚生労働大臣は、裁決をしたときは、前条第二項の規定 又は前二項において準用する第十三条第三項 若しくは第四項の規定により提出されたエツクス線写真 その他の物件をその提出者に返還しなければならない。

7項

厚生労働大臣は、裁決をしたときは、行政不服審査法第五十一条第四項の規定によるほか、裁決書の謄本を厚生労働省令で定める利害関係者に送付するものとする。

8項

行政不服審査法第四十三条第一項の規定は、前条第一項の審査請求については、適用しない


この場合において、当該審査請求についての同法第四十四条の規定の適用については、

同条
行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき(前条第一項の規定による諮問を要しない場合(同項第二号 又は第三号に該当する場合を除く。)にあっては審理員意見書が提出されたとき、同項第二号 又は第三号に該当する場合にあっては同項第二号 又は第三号に規定する議を経たとき)」とあるのは、
じん肺法昭和三十五年法律第三十号第十九条第一項の中央じん肺診査医の診断 若しくは審査 又は同条第二項の地方じん肺診査医の診断 若しくは審査を経たとき」と

する。

1項

第十八条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ、提起することができない

第三節 健康管理のための措置

1項
事業者は、じん肺健康診断の結果、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業上適切な措置を講ずるように努めるとともに、適切な保健指導を受けることができるための配慮をするように努めなければならない。
1項

事業者は、じん肺管理区分が管理二 又は管理三イである労働者について、粉じんにさらされる程度を低減させるため、就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮 その他の適切な措置を講ずるように努めなければならない。

1項

都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三イである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧奨することができる。

2項

事業者は、前項の規定による勧奨を受けたとき、又はじん肺管理区分管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、当該労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければならない。

3項

事業者は、前項の規定により、労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとなつたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を都道府県労働局長に通知しなければならない。

4項

都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している場合において、地方じん肺診査医の意見により、当該労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを指示することができる。

1項

事業者は、次の各号に掲げる労働者が常時粉じん作業に従事しなくなつたとき(労働契約の期間が満了したことにより離職したときその他厚生労働省令で定める場合を除く)は、その日から七日以内に、その者に対して、次の各号に掲げる労働者ごとに、それぞれ労働基準法第十二条に規定する平均賃金の当該各号に掲げる日数分に相当する額の転換手当を支払わなければならない。


ただし、厚生労働大臣が必要があると認めるときは、転換手当の額について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。

一 号

前条第一項の規定による勧奨を受けた労働者 又はじん肺管理区分管理三ロである労働者(次号に掲げる労働者を除く

三十日分

二 号

前条第四項の規定による指示を受けた労働者

六十日分

1項

事業者は、じん肺管理区分が管理三である労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるために必要があるときは、その者に対して、作業の転換のための教育訓練を行うように努めなければならない。

1項

じん肺管理区分が管理四と決定された者 及び合併症にかかつていると認められる者は、療養を要するものとする。

第四章 政府の援助等

1項
政府は、事業者に対して、粉じんの測定、粉じんの発散の防止 及び抑制、じん肺健康診断 その他じん肺に関する予防 及び健康管理に関し、必要な技術的援助を行うように努めなければならない。
2項

政府は、じん肺の予防に関する技術的研究 及び前項の技術的援助を行なうため必要な施設の整備を図らなければならない。

1項

都道府県労働局 及び産業保安監督部に、事業者が行うじん肺の予防に関する措置について必要な技術的援助を行わせるため、粉じん対策指導委員を置くことができる。

2項
粉じん対策指導委員は、衛生工学に関し学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣 又は経済産業大臣が任命する。
3項
粉じん対策指導委員は、非常勤とする。
1項

政府は、じん肺管理区分が管理三である労働者が当該事業場において粉じん作業以外の作業に常時従事することができないときは、当該労働者のために、職業紹介 及び職業訓練に関し適切な措置を講ずるように努めなければならない。

1項
政府は、じん肺にかかつた労働者であつた者の生活の安定を図るため、就労の機会を与えるための施設 及び労働能力の回復を図るための施設の整備 その他に関し適切な措置を講ずるように努めなければならない。

第五章 雑則

1項
事業者は、この法律 及びこれに基づく命令の要旨を粉じん作業を行う作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付ける等の方法により、労働者に周知させなければならない。
1項

事業者は、この法律 又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。


ただし、本人の同意がある場合 その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

2項
事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
3項

厚生労働大臣は、前二項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

4項

厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者 又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。

1項

第七条から第九条の二まで 及び第十六条第一項のじん肺健康診断の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥 その他の秘密を漏らしてはならない。

1項

租税 その他の公課は、転換手当を標準として課することができない

1項

転換手当の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。

1項

転換手当の支払を受ける権利は、これを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。

1項
厚生労働省に中央じん肺診査医を、都道府県労働局に地方じん肺診査医を置く。
2項

中央じん肺診査医は、この法律の規定によるじん肺の診断 又は審査 及びこれらに関する事務を行うものとする。

3項

地方じん肺診査医は、この法律の規定によるじん肺の診断 又は審査 及びこれらに関する事務を行うほか、第二十一条第四項の規定による指示に関する事務に参画するものとする。

4項

中央じん肺診査医 及び地方じん肺診査医(以下 この条 及び次条において「じん肺診査医」という。)は、じん肺に関し相当の学識経験を有する医師のうちから、厚生労働大臣が任命する。

5項
じん肺診査医は、非常勤とすることができる。
1項

じん肺診査医は、前条第二項 又は第三項の規定による職務を行うため必要があるときは、その必要の限度において、粉じん作業を行う事業場に立ち入り、労働者 その他の関係者に質問し、又はエックス線写真 若しくは診療録 その他の物件を検査することができる。

2項

前項の規定により立入検査をするじん肺診査医は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項
労働基準監督署長 及び労働基準監督官は、厚生労働省令で定めるところにより、この法律の施行に関する事務をつかさどる。
1項

労働基準監督官は、この法律を施行するため必要な限度において、粉じん作業を行う事業場に立ち入り、関係者に質問し、帳簿書類(その作成 又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式 その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成 又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査し、又は粉じんの測定 若しくは分析を行うことができる。

2項

前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3項

第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

1項

労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察員の職務を行なう。

1項
労働者は、事業場にこの法律 又はこれに基づく命令の規定に違反する事実があるときは、その事実を都道府県労働局長、労働基準監督署長 又は労働基準監督官に申告して是正のため適当な措置をとるように求めることができる。
2項

事業者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して、解雇 その他不利益な取扱いをしてはならない。

1項
厚生労働大臣、都道府県労働局長 及び労働基準監督署長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に、じん肺に関する予防 及び健康管理に関する事項を報告させることができる。
1項

この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃するときは、その命令で、その制定 又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第六章 罰則

1項

次の各号いずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 号

第六条第七条第八条第一項第九条第一項第十二条第十三条第四項第十六条の二第二項において準用する場合を含む。)、第十四条第二項第十六条第二項 及び第十六条の二第二項において準用する場合を含む。)、第十四条第三項第十六条第二項 及び第十六条の二第二項において準用する場合を含む。)、第十七条第二十二条第三十五条の二第三十五条の四 又は第四十三条の二第二項の規定に違反した者

二 号

第十三条第三項第十六条の二第二項において準用する場合を含む。)、第十六条の二第一項 又は第二十一条第四項の規定による命令 又は指示に違反した者

三 号

第四十条第一項の規定による質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

四 号

第四十二条第一項の規定による質問に対して虚偽の陳述をし、又は検査、測定 若しくは分析を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

五 号

第四十四条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

1項

法人の代表者 又は法人 若しくは人の代理人、使用人 その他の従業者が、その法人 又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人 又は人に対しても同条の刑を科する。