入国警備官は、第二十四条各号の一に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人(以下「容疑者」という。)につき違反調査をすることができる。
出入国管理及び難民認定法
第五章 退去強制の手続
第一節 違反調査
入国警備官は、違反調査の目的を達するため必要な取調べをすることができる。
ただし、強制の処分は、この章 及び第八章に特別の規定がある場合でなければすることができない。
入国警備官は、違反調査について、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、容疑者の出頭を求め、当該容疑者を取り調べることができる。
前項の場合において、入国警備官は、容疑者の供述を調書に記載しなければならない。
前項の調書を作成したときは、入国警備官は、容疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、署名をさせ、且つ、自らこれに署名しなければならない。
前項の場合において、容疑者が署名することができないとき、又は署名を拒んだときは、入国警備官は、その旨を調書に附記しなければならない。
入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、証人の出頭を求め、当該証人を取り調べることができる。
前項の場合において、入国警備官は、証人の供述を調書に記載しなければならない。
前条第三項 及び第四項の規定は、前項の場合に準用する。
この場合において、
前条第三項 及び第四項中
「容疑者」とあるのは
「証人」と
読み替えるものとする。
入国警備官は、違反調査をするため必要があるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官の許可を得て、臨検、捜索 又は押収をすることができる。
前項の場合において、急速を要するときは、入国警備官は、臨検すべき場所、捜索すべき身体 若しくは物件 又は押収すべき物件の所在地を管轄する地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官の許可を得て、同項の処分をすることができる。
入国警備官は、第一項 又は前項の許可を請求しようとするときは、容疑者が第二十四条各号の一に該当すると思料されるべき資料 並びに、容疑者以外の者の住居 その他の場所を臨検しようとするときは、その場所が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料、容疑者以外の者の身体、物件 又は住居 その他の場所について捜索しようとするときは、押収すべき物件の存在 及びその物件が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料、容疑者以外の者の物件を押収しようとするときは、その物件が違反事件に関係があると認めるに足りる状況があることを認めるべき資料を添付して、これをしなければならない。
前項の請求があつた場合においては、地方裁判所 又は簡易裁判所の裁判官は、臨検すべき場所、捜索すべき身体 又は物件、押収すべき物件、請求者の官職氏名、有効期間 及び裁判所名を記載し、自ら記名押印した許可状を入国警備官に交付しなければならない。
入国警備官は、前項の許可状を他の入国警備官に交付して、臨検、捜索 又は押収をさせることができる。
入国警備官は、捜索 又は押収をするため必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。
入国警備官は、取調、臨検、捜索 又は押収をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
入国警備官は、住居 その他の建造物内で捜索 又は押収をするときは、所有者、借主、管理者 又はこれらの者に代るべき者を立ち会わせなければならない。
これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人 又は地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。
入国警備官は、日出前、日没後には、許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がなければ、捜索 又は押収のため、住居 その他の建造物内に入つてはならない。
入国警備官は、日没前に捜索 又は押収に着手したときは、日没後でも、その処分を継続することができる。
左の場所で捜索 又は押収をするについては、入国警備官は、第一項に規定する制限によることを要しない。
風俗を害する行為に常用されるものと認められる場所
旅館、飲食店 その他夜間でも公衆が出入することができる場所。
但し、公開した時間内に限る。
入国警備官は、取調、臨検、捜索 又は押収をする間は、何人に対しても、許可を得ないでその場所に出入することを禁止することができる。
入国警備官は、押収をしたときは、その目録を作り、所有者、所持者 若しくは保管者 又はこれらの者に代るべき者にこれを交付しなければならない。
入国警備官は、押収物について、留置の必要がないと認めたときは、すみやかにこれを還付しなければならない。
入国警備官は、臨検、捜索 又は押収をしたときは、これらに関する調書を作成し、立会人に閲覧させ、又は読み聞かせて、署名をさせ、且つ、自らこれに署名しなければならない。
前項の場合において、立会人が署名することができないとき、又は署名を拒んだときは、入国警備官は、その旨を調書に附記しなければならない。
第二節 収容
入国警備官は、容疑者が第二十四条各号の一に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書により、その者を収容することができる。
前項の収容令書は、入国警備官の請求により、その所属官署の主任審査官が発付するものとする。
前条第一項の収容令書には、容疑者の氏名、居住地 及び国籍、容疑事実の要旨、収容すべき場所、有効期間、発付年月日 その他法務省令で定める事項を記載し、且つ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。
収容令書によつて収容することができる期間は、三十日以内とする。
但し、主任審査官は、やむを得ない事由があると認めるときは、三十日を限り延長することができる。
収容令書によつて収容することができる場所は、入国者収容所、収容場 その他出入国在留管理庁長官 又はその委任を受けた主任審査官が指定する適当な場所とする。
警察官は、主任審査官が必要と認めて依頼したときは、容疑者を留置施設に留置することができる。
入国警備官は、収容令書により容疑者を収容するときは、収容令書を容疑者に示さなければならない。
入国警備官は、収容令書を所持しない場合でも、急速を要するときは、容疑者に対し、容疑事実の要旨 及び収容令書が発付されている旨を告げて、その者を収容することができる。
但し、収容令書は、できるだけすみやかに示さなければならない。
入国警備官は、第二十四条各号の一に明らかに該当する者が収容令書の発付をまつていては逃亡の虞があると信ずるに足りる相当の理由があるときは、収容令書の発付をまたずに、その者を収容することができる。
前項の収容を行つたときは、入国警備官は、すみやかにその理由を主任審査官に報告して、収容令書の発付を請求しなければならない。
前項の場合において、主任審査官が第一項の収容を認めないときは、入国警備官は、直ちにその者を放免しなければならない。
入国警備官は、第三十九条第一項の規定により容疑者を収容したときは、容疑者の身体を拘束した時から四十八時間以内に、調書 及び証拠物とともに、当該容疑者を入国審査官に引き渡さなければならない。
第三節 審査、口頭審理及び異議の申出
入国審査官は、前条の規定により容疑者の引渡しを受けたときは、容疑者が退去強制対象者(第二十四条各号のいずれかに該当し、かつ、出国命令対象者に該当しない外国人をいう。以下同じ。)に該当するかどうかを速やかに審査しなければならない。
入国審査官は、前項の審査を行つた場合には、審査に関する調書を作成しなければならない。
前条の審査を受ける容疑者のうち第二十四条第一号(第三条第一項第二号に係る部分を除く。)又は第二号に該当するとされたものは、その号に該当するものでないことを自ら立証しなければならない。
入国審査官は、審査の結果、容疑者が第二十四条各号のいずれにも該当しないと認定したときは、直ちにその者を放免しなければならない。
入国審査官は、審査の結果、容疑者が出国命令対象者に該当すると認定したときは、速やかに主任審査官にその旨を知らせなければならない。
この場合において、入国審査官は、当該容疑者が第五十五条の三第一項の規定により出国命令を受けたときは、直ちにその者を放免しなければならない。
入国審査官は、審査の結果、容疑者が退去強制対象者に該当すると認定したときは、速やかに理由を付した書面をもつて、主任審査官 及びその者にその旨を知らせなければならない。
前項の通知をする場合には、入国審査官は、当該容疑者に対し、第四十八条の規定による口頭審理の請求をすることができる旨を知らせなければならない。
第三項の場合において、容疑者がその認定に服したときは、主任審査官は、その者に対し、口頭審理の請求をしない旨を記載した文書に署名させ、速やかに第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
前条第三項の通知を受けた容疑者は、同項の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から三日以内に、口頭をもつて、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができる。
入国審査官は、前項の口頭審理の請求があつたときは、第四十五条第二項の調書 その他の関係書類を特別審理官に提出しなければならない。
特別審理官は、第一項の口頭審理の請求があつたときは、容疑者に対し、時 及び場所を通知して速やかに口頭審理を行わなければならない。
特別審理官は、前項の口頭審理を行つた場合には、口頭審理に関する調書を作成しなければならない。
第十条第三項から第六項までの規定は、第三項の口頭審理の手続に準用する。
特別審理官は、口頭審理の結果、前条第三項の認定が事実に相違すると判定したとき(容疑者が第二十四条各号のいずれにも該当しないことを理由とする場合に限る。)は、直ちにその者を放免しなければならない。
特別審理官は、口頭審理の結果、前条第三項の認定が事実に相違すると判定したとき(容疑者が出国命令対象者に該当することを理由とする場合に限る。)は、速やかに主任審査官にその旨を知らせなければならない。
この場合において、特別審理官は、当該容疑者が第五十五条の三第一項の規定により出国命令を受けたときは、直ちにその者を放免しなければならない。
特別審理官は、口頭審理の結果、前条第三項の認定が誤りがないと判定したときは、速やかに主任審査官 及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに、当該容疑者に対し、第四十九条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない。
前項の通知を受けた場合において、当該容疑者が同項の判定に服したときは、主任審査官は、その者に対し、異議を申し出ない旨を記載した文書に署名させ、速やかに第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
前条第八項の通知を受けた容疑者は、同項の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から三日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。
主任審査官は、前項の異議の申出があつたときは、第四十五条第二項の審査に関する調書、前条第四項の口頭審理に関する調書 その他の関係書類を法務大臣に提出しなければならない。
法務大臣は、第一項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
主任審査官は、法務大臣から異議の申出(容疑者が第二十四条各号のいずれにも該当しないことを理由とするものに限る。)が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならない。
主任審査官は、法務大臣から異議の申出(容疑者が出国命令対象者に該当することを理由とするものに限る。)が理由があると裁決した旨の通知を受けた場合において、当該容疑者に対し第五十五条の三第一項の規定により出国命令をしたときは、直ちにその者を放免しなければならない。
主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。
法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
永住許可を受けているとき。
かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留資格 及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。
法務大臣が第一項の規定による許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、出入国在留管理庁長官は、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
第一項の許可は、前条第四項の規定の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。
第四節 退去強制令書の執行
第四十七条第五項、第四十八条第九項 若しくは第四十九条第六項の規定により、又は第六十三条第一項の規定に基づく退去強制の手続において発付される退去強制令書には、退去強制を受ける者の氏名、年齢 及び国籍、退去強制の理由、送還先、発付年月日 その他法務省令で定める事項を記載し、かつ、主任審査官がこれに記名押印しなければならない。
退去強制令書は、入国警備官が執行するものとする。
警察官 又は海上保安官は、入国警備官が足りないため主任審査官が必要と認めて依頼したときは、退去強制令書の執行をすることができる。
入国警備官(前項の規定により退去強制令書を執行する警察官 又は海上保安官を含む。以下この条において同じ。)は、退去強制令書を執行するときは、退去強制を受ける者に退去強制令書 又はその写しを示して、速やかにその者を次条に規定する送還先に送還しなければならない。
ただし、第五十九条の規定により運送業者が送還する場合には、入国警備官は、当該運送業者に引き渡すものとする。
前項の場合において、退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、入国者収容所長 又は主任審査官は、その者の申請に基づき、これを許可することができる。
この場合においては、退去強制令書の記載 及び次条の規定にかかわらず、当該申請に基づき、その者の送還先を定めることができる。
入国警備官は、第三項本文の場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場 その他出入国在留管理庁長官 又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる。
入国者収容所長 又は主任審査官は、前項の場合において、退去強制を受ける者を送還することができないことが明らかになつたときは、住居 及び行動範囲の制限、呼出に対する出頭の義務 その他必要と認める条件を附して、その者を放免することができる。
入国警備官は、退去強制令書の執行に関し必要がある場合には、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
退去強制を受ける者は、その者の国籍 又は市民権の属する国に送還されるものとする。
前項の国に送還することができないときは、本人の希望により、左に掲げる国のいずれかに送還されるものとする。
本邦に入国する直前に居住していた国
本邦に入国する前に居住していたことのある国
本邦に向けて船舶等に乗つた港の属する国
出生時にその出生地の属していた国
前二項の国には、次に掲げる国を含まないものとする。
難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国 その他その者が迫害を受けるおそれのある領域の属する国(法務大臣が日本国の利益 又は公安を著しく害すると認める場合を除く。)
拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約第三条第一項に規定する国
強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約第十六条第一項に規定する国
第五節 仮放免
収容令書 若しくは退去強制令書の発付を受けて収容されている者 又はその者の代理人、保佐人、配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹は、法務省令で定める手続により、入国者収容所長 又は主任審査官に対し、その者の仮放免を請求することができる。
入国者収容所長 又は主任審査官は、前項の請求により又は職権で、法務省令で定めるところにより、収容令書 又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者の情状 及び仮放免の請求の理由となる証拠 並びにその者の性格、資産等を考慮して、三百万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付させ、かつ、住居 及び行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務 その他必要と認める条件を付して、その者を仮放免することができる。
入国者収容所長 又は主任審査官は、適当と認めるときは、収容令書 又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者以外の者の差し出した保証書をもつて保証金に代えることを許すことができる。
保証書には、保証金額 及びいつでも その保証金を納付する旨を記載しなければならない。
入国者収容所長 又は主任審査官は、仮放免された者が逃亡し、逃亡すると疑うに足りる相当の理由があり、正当な理由がなくて呼出に応ぜず、その他仮放免に附された条件に違反したときは、仮放免を取り消すことができる。
前項の取消をしたときは、入国者収容所長 又は主任審査官は、仮放免取消書を作成し、収容令書 又は退去強制令書とともに、入国警備官にこれを交付しなければならない。
入国者収容所長 又は主任審査官は、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出に応じないことを理由とする仮放免の取消をしたときは保証金の全部、その他の理由によるときはその一部を没取するものとする。
入国警備官は、仮放免を取り消された者がある場合には、その者に仮放免取消書 及び収容令書 又は退去強制令書を示して、その者を入国者収容所、収容場 その他出入国在留管理庁長官 又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容しなければならない。
入国警備官は、仮放免取消書 及び収容令書 又は退去強制令書を所持しない場合でも、急速を要するときは、その者に対し仮放免を取り消された旨を告げて、その者を収容することができる。
但し、仮放免取消書 及び収容令書 又は退去強制令書は、できるだけすみやかに示さなければならない。