民事訴訟法
第三章 口頭弁論及びその準備
第一節 口頭弁論
裁判長は、発言を許し、又はその命令に従わない者の発言を禁ずることができる。
裁判長は、口頭弁論の期日 又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上 及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
当事者は、口頭弁論の期日 又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
裁判長 又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃 又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項 又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。
当事者が、口頭弁論の指揮に関する裁判長の命令 又は前条第一項 若しくは第二項の規定による裁判長 若しくは陪席裁判官の処置に対し、異議を述べたときは、裁判所は、決定で、その異議について裁判をする。
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
当事者本人 又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
訴訟書類 又は訴訟において引用した文書 その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
当事者 又は第三者の提出した文書 その他の物件を裁判所に留め置くこと。
検証をし、又は鑑定を命ずること。
前項に規定する検証、鑑定 及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。
裁判所は、口頭弁論の制限、分離 若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
裁判所は、当事者を異にする事件について口頭弁論の併合を命じた場合において、その前に尋問をした証人について、尋問の機会がなかった当事者が尋問の申出をしたときは、その尋問をしなければならない。
裁判所は、終結した口頭弁論の再開を命ずることができる。
口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、又は耳が聞こえない者 若しくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる。
ただし、耳が聞こえない者 又は口がきけない者には、文字で問い、又は陳述をさせることができる。
鑑定人に関する規定は、通訳人について準用する。
裁判所は、訴訟関係を明瞭にするために必要な陳述をすることができない当事者、代理人 又は補佐人の陳述を禁じ、口頭弁論の続行のため新たな期日を定めることができる。
前項の規定により陳述を禁じた場合において、必要があると認めるときは、裁判所は、弁護士の付添いを命ずることができる。
攻撃 又は防御の方法は、訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならない。
第百四十七条の三第一項の審理の計画に従った訴訟手続の進行上必要があると認めるときは、裁判長は、当事者の意見を聴いて、特定の事項についての攻撃 又は防御の方法を提出すべき期間を定めることができる。
当事者が故意 又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃 又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、却下の決定をすることができる。
攻撃 又は防御の方法でその趣旨が明瞭でないものについて当事者が必要な釈明をせず、又は釈明をすべき期日に出頭しないときも、前項と同様とする。
第百四十七条の三第三項 又は第百五十六条の二(第百七十条第五項において準用する場合を含む。)の規定により特定の事項についての攻撃 又は防御の方法を提出すべき期間が定められている場合において、当事者がその期間の経過後に提出した攻撃 又は防御の方法については、これにより審理の計画に従った訴訟手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあると認めたときは、裁判所は、申立てにより 又は職権で、却下の決定をすることができる。
ただし、その当事者がその期間内に当該攻撃 又は防御の方法を提出することができなかったことについて相当の理由があることを疎明したときは、この限りでない。
原告 又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状 又は答弁書 その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。
ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。
ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
裁判所書記官は、口頭弁論について、期日ごとに調書を作成しなければならない。
調書の記載について当事者 その他の関係人が異議を述べたときは、調書にその旨を記載しなければならない。
口頭弁論の方式に関する規定の遵守は、調書によってのみ証明することができる。
ただし、調書が滅失したときは、この限りでない。
第二節 準備書面等
口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
相手方の請求 及び攻撃 又は防御の方法に対する陳述
相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない。
裁判長は、答弁書 若しくは特定の事項に関する主張を記載した準備書面の提出 又は特定の事項に関する証拠の申出をすべき期間を定めることができる。
当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張 又は立証を準備するために必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。
ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
相手方が回答するために不相当な費用 又は時間を要する照会
第百九十六条 又は第百九十七条の規定により証言を拒絶することができる事項と同様の事項についての照会
第三節 争点及び証拠の整理手続
⤏ 第一款 準備的口頭弁論
裁判所は、争点 及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、この款に定めるところにより、準備的口頭弁論を行うことができる。
裁判所は、準備的口頭弁論を終了するに当たり、その後の証拠調べにより証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
裁判長は、相当と認めるときは、準備的口頭弁論を終了するに当たり、当事者に準備的口頭弁論における争点 及び証拠の整理の結果を要約した書面を提出させることができる。
当事者が期日に出頭せず、又は第百六十二条の規定により定められた期間内に準備書面の提出 若しくは証拠の申出をしないときは、裁判所は、準備的口頭弁論を終了することができる。
準備的口頭弁論の終了後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、準備的口頭弁論の終了前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。
⤏ 第二款 弁論準備手続
裁判所は、争点 及び証拠の整理を行うため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を弁論準備手続に付することができる。
弁論準備手続は、当事者双方が立ち会うことができる期日において行う。
裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。
ただし、当事者が申し出た者については、手続を行うのに支障を生ずるおそれがあると認める場合を除き、その傍聴を許さなければならない。
裁判所は、当事者に準備書面を提出させることができる。
裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判 その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判 及び文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)の証拠調べをすることができる。
裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。
前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。
第百四十八条から第百五十一条まで、第百五十二条第一項、第百五十三条から第百五十九条まで、第百六十二条、第百六十五条 及び第百六十六条の規定は、弁論準備手続について準用する。
裁判所は、受命裁判官に弁論準備手続を行わせることができる。
弁論準備手続を受命裁判官が行う場合には、前二条の規定による裁判所 及び裁判長の職務(前条第二項に規定する裁判を除く。)は、その裁判官が行う。
ただし、同条第五項において準用する第百五十条の規定による異議についての裁判 及び同項において準用する第百五十七条の二の規定による却下についての裁判は、受訴裁判所がする。
弁論準備手続を行う受命裁判官は、第百八十六条の規定による調査の嘱託、鑑定の嘱託、文書(第二百三十一条に規定する物件を含む。)を提出してする書証の申出 及び文書(第二百二十九条第二項 及び第二百三十一条に規定する物件を含む。)の送付の嘱託についての裁判をすることができる。
裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより 又は職権で、弁論準備手続に付する裁判を取り消すことができる。
ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。
当事者は、口頭弁論において、弁論準備手続の結果を陳述しなければならない。
第百六十七条の規定は、弁論準備手続の終結後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
⤏ 第三款 書面による準備手続
裁判所は、当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、事件を書面による準備手続(当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点 及び証拠の整理をする手続をいう。以下同じ。)に付することができる。
書面による準備手続は、裁判長が行う。
ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる。
裁判長 又は高等裁判所における受命裁判官(次項において「裁判長等」という。)は、第百六十二条に規定する期間を定めなければならない。
裁判長等は、必要があると認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所 及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、争点 及び証拠の整理に関する事項 その他口頭弁論の準備のため必要な事項について、当事者双方と協議をすることができる。
この場合においては、協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。
第百四十九条(第二項を除く。)、第百五十条 及び第百六十五条第二項の規定は、書面による準備手続について準用する。
裁判所は、書面による準備手続の終結後の口頭弁論の期日において、その後の証拠調べによって証明すべき事実を当事者との間で確認するものとする。
書面による準備手続を終結した事件について、口頭弁論の期日において、第百七十六条第四項において準用する第百六十五条第二項の書面に記載した事項の陳述がされ、又は前条の規定による確認がされた後に攻撃 又は防御の方法を提出した当事者は、相手方の求めがあるときは、相手方に対し、その陳述 又は確認前にこれを提出することができなかった理由を説明しなければならない。