中央委員会による裁定は、三人 又は五人の裁定委員からなる裁定委員会を設けて行なう。
公害紛争処理法
第三節 裁定
⤏ 第一款 通則
前項の裁定委員は、中央委員会の委員長 及び委員のうちから、事件ごとに、中央委員会の委員長が指名する。
第三十九条第三項の規定は、第一項の裁定委員会について準用する。
裁定委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、その職務の執行から除斥される。
裁定委員 又はその配偶者 若しくは配偶者であつた者が事件の当事者(第四十二条の七第二項に規定する選定者 及び第四十二条の九第三項に規定する被代表者を含む。以下 この項、第四十二条の十八第二項、第四十二条の十九、第四十二条の二十、第五十三条 及び第五十五条において同じ。)又は法人である当事者の代表者であり、又はあつたとき。
裁定委員が事件の当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族 又は同居の親族であり、又はあつたとき。
前項に規定する除斥の原因があるときは、当事者は、除斥の申立てをすることができる。
当事者は、事件について裁定委員会に対し書面 又は口頭をもつて陳述した後は、裁定委員を忌避することができない。
ただし、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
除斥 又は忌避の申立てに係る裁定委員は、前項の規定による決定に関与することができない。
ただし、意見を述べることができる。
第一項の規定による決定は、文書をもつて行ない、かつ、理由を附さなければならない。
裁定委員会は、除斥 又は忌避の申立てがあつたときは、その申立てについての決定があるまで裁定手続を中止しなければならない。
ただし、急速を要する行為については、この限りでない。
公害に係る被害に関する紛争について共同の利益を有する多数の者は、その中から、全員のために裁定手続における当事者となる一人 又は数人(以下「代表当事者」という。)を選定することができる。
前項の代表当事者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は変更することができる。
第一項の規定による代表当事者の選定 並びに前項の規定によるその取消し 及び変更は、書面をもつて証明しなければならない。
裁定委員会は、前項の規定による命令を取り消し、又は変更することができる。
裁定委員会は、前条第一項の規定による命令を受けた者のうち代表当事者を選定しない者がある場合において、これらの者について代表当事者を選定しなければ裁定手続の進行に支障があると認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て、代表当事者に選定することができる。
この場合においては、代表当事者としての資格を特定の争点に関する審理に限定することができる。
前条第二項の規定は、前項の規定による代表当事者の選定について準用する。
第一項の規定により代表当事者が選定された場合においては、当該代表当事者は、その者のために代表当事者が選定されている者(以下「被代表者」という。)が第四十二条の七第一項の規定により選定したものとみなす。
第一項の規定により代表当事者が選定された場合における当該代表当事者と被代表者との間の関係については、民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四十四条から第六百四十七条まで、第六百四十九条、第六百五十条 及び第六百五十四条の規定を準用する。
前項の合議は、裁定委員の過半数の意見により決する。
裁定委員会の合議は、公開しない。
⤏ 第二款 責任裁定
公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争が生じた場合においては、その賠償を請求する者は、公害等調整委員会規則で定めるところにより、書面をもつて、中央委員会に対し、損害賠償の責任に関する裁定(以下「責任裁定」という。)を申請することができる。
裁定委員会は、不適法な責任裁定の申請で、その欠陥を補正することができないものについては、決定をもつてこれを却下しなければならない。
この場合においては、審問を経ないことができる。
第四十二条の十九の規定は、前項の決定について準用する。
審問は、公開して行なう。
ただし、裁定委員会が個人の秘密 若しくは事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認めるとき、又は手続の公正が害されるおそれがあると認めるときその他公益上必要があると認めるときは、この限りでない。
裁定委員会は、申立てにより、又は職権で、次の各号に掲げる証拠調べをすることができる。
当事者は、審問の期日以外の期日における証拠調べに立ち会うことができる。
裁定委員会が第一項第一号 又は第二号の規定により参考人に陳述させ、又は鑑定人に鑑定させるときは、これらの者に宣誓をさせなければならない。
裁定委員会が第一項第一号の規定により当事者に陳述させるときは、その当事者に宣誓をさせることができる。
裁定委員会は、第一項第四号の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
中央委員会は、責任裁定の申請前において、あらかじめ証拠調べをしなければその証拠を使用するのに困難な事情があると認めるときは、責任裁定の申請をしようとする者の申立てにより、証拠保全をすることができる。
前項の申立てがあつたときは、中央委員会の委員長は、中央委員会の委員長 及び委員のうちから、証拠保全に関与すべき者を指名する。
裁定委員会が前項の事実の調査をする場合において必要があると認めるときは、裁定委員会 又はその命を受けた中央委員会の事務局の職員は、当事者の占有する工場、事業場 その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書 又は物件を検査することができる。
裁定委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
責任裁定は、文書をもつて行ない、裁定書には次の各号に掲げる事項を記載し、裁定委員がこれに署名押印しなければならない。
裁定委員会は、責任裁定をしたときは、裁定書の正本を当事者に送達しなければならない。
責任裁定があつた場合において、裁定書の正本が当事者に送達された日から三十日以内に当該責任裁定に係る損害賠償に関する訴えが提起されないとき、又はその訴えが取り下げられたときは、その損害賠償に関し、当事者間に当該責任裁定と同一の内容の合意が成立したものとみなす。
前項の訴えの取下げは、被告の同意を得なければ、その効力を生じない。
責任裁定 及び その手続に関してされた処分については、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)による訴えを提起することができない。
申請の全部 又は一部を認容する責任裁定がされた場合において、裁判所が当該責任裁定に係る債権の全部 若しくは一部につき仮差押えを命じ、又は仮処分をもつてその全部 若しくは一部を支払うべきことを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。
ただし、必要があると認めるときは、担保を立てさせることができる。
裁定委員会は、相当と認めるときは、職権で事件を調停に付したうえ、当事者の同意を得て管轄審査会等に処理させ、又は第二十四条第一項 及び第二項 並びに第三十一条第一項の規定にかかわらず、自ら処理することができる。
前項の規定により事件を調停に付した場合において、当事者間に合意が成立したときは、責任裁定の申請は、取り下げられたものとみなす。
責任裁定の申請が第四十二条の十二第二項の規定により受理されなかつた場合において、当該責任裁定の申請をした者がその旨の通知を受けた日から三十日以内に申請の目的となつた請求について訴えを提起したときは、時効の完成猶予 及び出訴期間の遵守に関しては、責任裁定の申請の時に、訴えの提起があつたものとみなす。
前項の場合において、訴訟手続が中止されないときは、裁定委員会は、責任裁定の手続を中止することができる。
第三十三条の二の規定は、裁定委員会の行う責任裁定について準用する。
⤏ 第三款 原因裁定
公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争 その他の民事上の紛争が生じた場合において、当事者の一方の行為に因り被害が生じたことについて争いがあるときは、当事者は、公害等調整委員会規則で定めるところにより、書面をもつて、中央委員会に対し、被害の原因に関する裁定(以下「原因裁定」という。)を申請することができる。
第四十二条の十二第二項 及び第三項の規定は、原因裁定の申請があつた場合について準用する。
前条第一項に規定する場合において、相手方を特定しないことについてやむを得ない理由があるときは、その被害を主張する者は、相手方の特定を留保して原因裁定を申請することができる。
裁定委員会は、相手方を特定させることが相当であると認めるときは、前項の規定により原因裁定を申請した者に対し、期間を定めて、相手方の特定を命じなければならない。
前項の規定による命令を受けた者が当該命令において定められた期間内に相手方を特定しないときは、原因裁定の申請は、取り下げられたものとみなす。
前項の原因裁定については、次条の規定は、適用しない。
裁定委員会は、被害の原因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、原因裁定において、原因裁定の申請をした者が裁定を求めた事項以外の事項についても、裁定することができる。
前項の場合において、裁定の結果について利害関係を有する第三者があるときは、裁定委員会は、その第三者 若しくは当事者の申立てにより、又は職権で、決定をもつて、相手方としてその第三者を原因裁定の手続に参加させることができる。
裁定委員会は、前項の決定をするときは、あらかじめ、その第三者 及び当事者の意見をきかなければならない。
前項の規定による嘱託に基づいて原因裁定がされた場合において、受訴裁判所は、必要があると認めるときは、中央委員会が指定した者に原因裁定の説明をさせることができる。
第一項の規定による嘱託に基づいて行なう原因裁定の手続に要する費用で、第四十四条第一項の規定により当事者が負担すべきもののうち民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定の例によれば当事者が負担することとなる費用に相当するものは、訴訟費用とみなす。
第四十二条の二十九第二項の規定は、第一項の規定による嘱託に基づいて行なう原因裁定について準用する。
第四十二条の十三から第四十二条の十九まで、第四十二条の二十一、第四十二条の二十四 及び第四十二条の二十六の規定は、原因裁定について準用する。