公害紛争処理法
第一章 総則
この法律において「公害」とは、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第二条第三項に規定する公害をいう。
第二章 公害に係る紛争の処理機構
第一節 公害等調整委員会
公害等調整委員会(以下「中央委員会」という。)は、この法律の定めるところにより公害に係る紛争についてあつせん、調停、仲裁 及び裁定を行うとともに、地方公共団体が行う公害に関する苦情の処理について指導等を行う。
第二節 都道府県公害審査会等
都道府県は、条例で定めるところにより、都道府県公害審査会(以下「審査会」という。)を置くことができる。
前号に掲げるもののほか、この法律の定めるところにより、審査会の権限に属させられた事項を行うこと。
審査会は、委員九人以上 十五人以内をもつて組織する。
会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
破産者で復権を得ないもの
禁錮以上の刑に処せられた者
委員の任期は、三年とする。
ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
委員は、第二項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。
その職を退いた後も、同様とする。
審査会は、会長 及び過半数の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
審査会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
会長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第十五条第四項に規定する委員は、会長とみなす。
審査会を置かない都道府県においては、毎年 又は一年を超え三年以下の期間で条例で定める期間ごとに、都道府県知事は、公害審査委員候補者九人以上 十五人以内を委嘱し、公害審査委員候補者名簿(以下「候補者名簿」という。)を作成しておかなければならない。
第十六条第二項 及び第五項の規定は、公害審査委員候補者について準用する。
この場合において、
同条第五項中
「その職」とあるのは、
「その地位」と
読み替えるものとする。
都道府県は、他の都道府県と共同して、事件ごとに、都道府県連合公害審査会(以下「連合審査会」という。)を置くことができる。
連合審査会は、関係都道府県の審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者)のうちから、当該関係都道府県の審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事)が指名する同数の委員をもつて組織する。
第十六条第六項 及び第十七条の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る連合審査会の委員について準用する。
この場合において、
第十六条第六項中
「議会の同意を得て、これを」とあるのは
「これを」と
読み替えるものとする。
第三章 公害に係る紛争の処理手続
第一節 総則
前項の承認は、いつでも、取り消すことができる。
代理人の権限は、書面をもつて証明しなければならない。
代理人は、次の各号に掲げる事項については、特別の委任を受けなければならない。
第四十二条の七第一項の規定による代表当事者の選定
代理人が二人以上あるときは、各人が本人を代理する。
調停委員会 又は裁定委員会は、前項の許可をするときは、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
第二節 あつせん、調停及び仲裁
⤏ 第一款 通則
中央委員会は、次の各号に掲げる紛争に関するあつせん、調停 及び仲裁について管轄する。
現に人の健康 又は生活環境(環境基本法第二条第三項に規定する生活環境をいう。)に公害に係る著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある場合における当該公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
前号に掲げるもののほか、二以上の都道府県にわたる広域的な見地から解決する必要がある公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
前二号に掲げるもののほか、事業活動 その他の人の活動の行われた場所 及び当該活動に伴う公害に係る被害の生じた場所が異なる都道府県の区域内にある場合 又はこれらの場所の一方 若しくは双方が二以上の都道府県の区域内にある場合における当該公害に係る紛争
審査会(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会等」という。)は、前項各号に掲げる紛争以外の紛争に関するあつせん、調停 及び仲裁について管轄する。
前二項の規定にかかわらず、仲裁については、当事者は、双方の合意によつてその管轄を定めることができる。
中央委員会 又は審査会等は、次条第一項の申請に係る事件が、その管轄に属しないときは、事件を管轄審査会等 又は中央委員会に移送するものとする。
公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争 その他の民事上の紛争が生じた場合においては、当事者の一方 又は双方は、公害等調整委員会規則で定めるところにより中央委員会に対し、政令で定めるところにより審査会等に対し、書面をもつて、あつせん、調停 又は仲裁の申請をすることができる。
この場合において、審査会に対する申請は、都道府県知事を経由してしなければならない。
第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に関するあつせん 及び調停の申請は、関係都道府県のいずれか一の知事に対してしなければならない。
審査会等は、前条第一項のあつせん 又は調停の申請に係る紛争が第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に該当するときは、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。
第一項の申請があつたとき、又は前項の規定による通知があつたときは、当該都道府県知事は、当該申請 又は通知に係る紛争を処理するため連合審査会を置くことについて、関係都道府県知事と協議しなければならない。
第一項の申請 又は第二項の規定による通知に係る紛争を処理するため連合審査会が置かれたときは、当該連合審査会は、当該紛争に関するあつせん 又は調停について管轄するものとする。
この場合においては、中央委員会は、当該紛争については管轄しない。
第三項の規定による協議がととのわないときは、都道府県知事は、遅滞なく、当該事件の関係書類を、中央委員会に送付するものとする。
前項の規定による審査会のあつせんは、当該都道府県知事の要請により行うものとする。
第一項の場合において、中央委員会 又は審査会は、当事者の住所、紛争の実情 その他の事情を考慮して相当と認める理由がある場合に限り、第二十四条第一項 又は第二項の規定にかかわらず、それぞれ、審査会等 又は中央委員会と協議してその管轄を定めることができる。
中央委員会 又は審査会は、前条第一項の規定によるあつせんに係る紛争について、あつせんによつては当該紛争を解決することが困難であり、かつ、相当と認めるときは、あつせん委員の申出により、当事者の意見を聴いた上、その議決に基づき、当該紛争に関する調停を行うことができる。
前項の調停の管轄は、当該紛争に関するあつせんの管轄が前条第三項の規定により定められたものであるときは、その定められたところによる。
⤏ 第二款 あつせん
中央委員会 又は審査会等によるあつせんは、三人以内のあつせん委員が行う。
前項のあつせん委員は、中央委員会の委員長 及び委員 又は審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者とし、以下「審査会の委員等」という。)のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長 又は審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会の会長等」という。)が指名する。
第十六条第六項 及び第十七条の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係るあつせん委員について準用する。
この場合において、
第十六条第六項中
「議会の同意を得て、これを」とあるのは
「これを」と
読み替えるものとする。
あつせんに係る紛争について第二十七条の三第一項の議決があつたときは、当該あつせんは、打ち切られたものとみなす。
⤏ 第三款 調停
中央委員会 又は審査会等による調停は、三人の調停委員からなる調停委員会を設けて行なう。
前項の調停委員は、中央委員会の委員長 及び委員 又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長 又は審査会の会長等が指名する。
第十六条第六項 及び第十七条の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る調停委員について準用する。
この場合において、
第十六条第六項中
「議会の同意を得て、これを」とあるのは
「これを」と
読み替えるものとする。
調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行う場合において、必要があると認めるときは、当事者から当該調停に係る事件に関係のある文書 又は物件の提出を求めることができる。
調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行う場合において、紛争の原因たる事実関係を明確にするため、必要があると認めるときは、当事者の占有する工場、事業場 その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書 又は物件を検査することができる。
調停委員会は、前項の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
調停委員会は、当事者間に合意が成立することが困難であると認める場合において、相当であると認めるときは、一切の事情を考慮して調停案を作成し、当事者に対し、三十日以上の期間を定めて、その受諾を勧告することができる。
前項の調停案は、調停委員の過半数の意見で作成しなければならない。
第一項の規定による勧告がされた場合において、当事者が調停委員会に対し指定された期間内に受諾しない旨の申出をしなかつたときは、当該当事者間に調停案と同一の内容の合意が成立したものとみなす。
調停委員会は、前条第一項の規定による勧告をした場合において、相当と認めるときは、第三十七条の規定にかかわらず、理由を付して、当該調停案を公表することができる。
第三十四条第一項の規定による勧告がされた場合において、指定された期間内に当事者から受諾しない旨の申出があつたときは、当該当事者間の調停は、打ち切られたものとみなす。
前条第一項の規定により調停が打ち切られ、又は同条第二項の規定により調停が打ち切られたものとみなされた場合において、当該調停の申請をした者がその旨の通知を受けた日から三十日以内に調停の目的となつた請求について第四十二条の十二第一項に規定する責任裁定を申請し、又は訴えを提起したときは、時効の完成猶予 及び出訴期間の遵守に関しては、調停の申請の時に、責任裁定の申請 又は訴えの提起があつたものとみなす。
調停委員会の行なう調停の手続は、公開しない。
中央委員会は、前項の規定により引き継いだ事件については、第二十四条第一項の規定にかかわらず、調停を行うことができる。
前二項の規定は、中央委員会の調停に係る事件について準用する。
この場合において、
第一項中
「審査会等 又は連合審査会」とあるのは
「中央委員会」と、
前二項中
「中央委員会」とあるのは
「関係都道府県の審査会等」と、
前項中
「第二十四条第一項」とあるのは
「第二十四条第二項」と
読み替えるものとする。
⤏ 第四款 仲裁
中央委員会 又は審査会等による仲裁は、三人の仲裁委員からなる仲裁委員会を設けて行なう。
前項の仲裁委員は、中央委員会の委員長 及び委員 又は審査会の委員等のうちから、当事者が合意によつて選定した者につき、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長 又は審査会の会長等が指名する。
ただし、当事者の合意による選定がなされなかつたときは、中央委員会の委員長 及び委員 又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長 又は審査会の会長等が指名する。
第一項の仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二章の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
第十六条第六項 及び第十七条の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る仲裁委員について準用する。
この場合において、
第十六条第六項中
「議会の同意を得て、これを」とあるのは
「これを」と
読み替えるものとする。
中央委員会に設けられる仲裁委員会は、前項の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
仲裁委員会の行う仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除き、仲裁委員を仲裁人とみなして、仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)の規定を準用する。
第三十三条の二 及び第三十七条の規定は、仲裁委員会の行う仲裁について準用する。
第三節 裁定
⤏ 第一款 通則
中央委員会による裁定は、三人 又は五人の裁定委員からなる裁定委員会を設けて行なう。
前項の裁定委員は、中央委員会の委員長 及び委員のうちから、事件ごとに、中央委員会の委員長が指名する。
第三十九条第三項の規定は、第一項の裁定委員会について準用する。
裁定委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、その職務の執行から除斥される。
裁定委員 又はその配偶者 若しくは配偶者であつた者が事件の当事者(第四十二条の七第二項に規定する選定者 及び第四十二条の九第三項に規定する被代表者を含む。以下 この項、第四十二条の十八第二項、第四十二条の十九、第四十二条の二十、第五十三条 及び第五十五条において同じ。)又は法人である当事者の代表者であり、又はあつたとき。
裁定委員が事件の当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族 又は同居の親族であり、又はあつたとき。
前項に規定する除斥の原因があるときは、当事者は、除斥の申立てをすることができる。
当事者は、事件について裁定委員会に対し書面 又は口頭をもつて陳述した後は、裁定委員を忌避することができない。
ただし、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
除斥 又は忌避の申立てに係る裁定委員は、前項の規定による決定に関与することができない。
ただし、意見を述べることができる。
第一項の規定による決定は、文書をもつて行ない、かつ、理由を附さなければならない。
裁定委員会は、除斥 又は忌避の申立てがあつたときは、その申立てについての決定があるまで裁定手続を中止しなければならない。
ただし、急速を要する行為については、この限りでない。
公害に係る被害に関する紛争について共同の利益を有する多数の者は、その中から、全員のために裁定手続における当事者となる一人 又は数人(以下「代表当事者」という。)を選定することができる。
前項の代表当事者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は変更することができる。
第一項の規定による代表当事者の選定 並びに前項の規定によるその取消し 及び変更は、書面をもつて証明しなければならない。
裁定委員会は、前項の規定による命令を取り消し、又は変更することができる。
裁定委員会は、前条第一項の規定による命令を受けた者のうち代表当事者を選定しない者がある場合において、これらの者について代表当事者を選定しなければ裁定手続の進行に支障があると認めるときは、適当と認める者を、その同意を得て、代表当事者に選定することができる。
この場合においては、代表当事者としての資格を特定の争点に関する審理に限定することができる。
前条第二項の規定は、前項の規定による代表当事者の選定について準用する。
第一項の規定により代表当事者が選定された場合においては、当該代表当事者は、その者のために代表当事者が選定されている者(以下「被代表者」という。)が第四十二条の七第一項の規定により選定したものとみなす。
第一項の規定により代表当事者が選定された場合における当該代表当事者と被代表者との間の関係については、民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四十四条から第六百四十七条まで、第六百四十九条、第六百五十条 及び第六百五十四条の規定を準用する。
前項の合議は、裁定委員の過半数の意見により決する。
裁定委員会の合議は、公開しない。
⤏ 第二款 責任裁定
公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争が生じた場合においては、その賠償を請求する者は、公害等調整委員会規則で定めるところにより、書面をもつて、中央委員会に対し、損害賠償の責任に関する裁定(以下「責任裁定」という。)を申請することができる。
裁定委員会は、不適法な責任裁定の申請で、その欠陥を補正することができないものについては、決定をもつてこれを却下しなければならない。
この場合においては、審問を経ないことができる。
第四十二条の十九の規定は、前項の決定について準用する。
審問は、公開して行なう。
ただし、裁定委員会が個人の秘密 若しくは事業者の事業上の秘密を保つため必要があると認めるとき、又は手続の公正が害されるおそれがあると認めるときその他公益上必要があると認めるときは、この限りでない。
裁定委員会は、申立てにより、又は職権で、次の各号に掲げる証拠調べをすることができる。
当事者は、審問の期日以外の期日における証拠調べに立ち会うことができる。
裁定委員会が第一項第一号 又は第二号の規定により参考人に陳述させ、又は鑑定人に鑑定させるときは、これらの者に宣誓をさせなければならない。
裁定委員会が第一項第一号の規定により当事者に陳述させるときは、その当事者に宣誓をさせることができる。
裁定委員会は、第一項第四号の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
中央委員会は、責任裁定の申請前において、あらかじめ証拠調べをしなければその証拠を使用するのに困難な事情があると認めるときは、責任裁定の申請をしようとする者の申立てにより、証拠保全をすることができる。
前項の申立てがあつたときは、中央委員会の委員長は、中央委員会の委員長 及び委員のうちから、証拠保全に関与すべき者を指名する。
裁定委員会が前項の事実の調査をする場合において必要があると認めるときは、裁定委員会 又はその命を受けた中央委員会の事務局の職員は、当事者の占有する工場、事業場 その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書 又は物件を検査することができる。
裁定委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門委員をして補助させることができる。
責任裁定は、文書をもつて行ない、裁定書には次の各号に掲げる事項を記載し、裁定委員がこれに署名押印しなければならない。
裁定委員会は、責任裁定をしたときは、裁定書の正本を当事者に送達しなければならない。
責任裁定があつた場合において、裁定書の正本が当事者に送達された日から三十日以内に当該責任裁定に係る損害賠償に関する訴えが提起されないとき、又はその訴えが取り下げられたときは、その損害賠償に関し、当事者間に当該責任裁定と同一の内容の合意が成立したものとみなす。
前項の訴えの取下げは、被告の同意を得なければ、その効力を生じない。
責任裁定 及び その手続に関してされた処分については、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)による訴えを提起することができない。
申請の全部 又は一部を認容する責任裁定がされた場合において、裁判所が当該責任裁定に係る債権の全部 若しくは一部につき仮差押えを命じ、又は仮処分をもつてその全部 若しくは一部を支払うべきことを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。
ただし、必要があると認めるときは、担保を立てさせることができる。
裁定委員会は、相当と認めるときは、職権で事件を調停に付したうえ、当事者の同意を得て管轄審査会等に処理させ、又は第二十四条第一項 及び第二項 並びに第三十一条第一項の規定にかかわらず、自ら処理することができる。
前項の規定により事件を調停に付した場合において、当事者間に合意が成立したときは、責任裁定の申請は、取り下げられたものとみなす。
責任裁定の申請が第四十二条の十二第二項の規定により受理されなかつた場合において、当該責任裁定の申請をした者がその旨の通知を受けた日から三十日以内に申請の目的となつた請求について訴えを提起したときは、時効の完成猶予 及び出訴期間の遵守に関しては、責任裁定の申請の時に、訴えの提起があつたものとみなす。
前項の場合において、訴訟手続が中止されないときは、裁定委員会は、責任裁定の手続を中止することができる。
第三十三条の二の規定は、裁定委員会の行う責任裁定について準用する。
⤏ 第三款 原因裁定
公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争 その他の民事上の紛争が生じた場合において、当事者の一方の行為に因り被害が生じたことについて争いがあるときは、当事者は、公害等調整委員会規則で定めるところにより、書面をもつて、中央委員会に対し、被害の原因に関する裁定(以下「原因裁定」という。)を申請することができる。
第四十二条の十二第二項 及び第三項の規定は、原因裁定の申請があつた場合について準用する。
前条第一項に規定する場合において、相手方を特定しないことについてやむを得ない理由があるときは、その被害を主張する者は、相手方の特定を留保して原因裁定を申請することができる。
裁定委員会は、相手方を特定させることが相当であると認めるときは、前項の規定により原因裁定を申請した者に対し、期間を定めて、相手方の特定を命じなければならない。
前項の規定による命令を受けた者が当該命令において定められた期間内に相手方を特定しないときは、原因裁定の申請は、取り下げられたものとみなす。
前項の原因裁定については、次条の規定は、適用しない。
裁定委員会は、被害の原因を明らかにするため特に必要があると認めるときは、原因裁定において、原因裁定の申請をした者が裁定を求めた事項以外の事項についても、裁定することができる。
前項の場合において、裁定の結果について利害関係を有する第三者があるときは、裁定委員会は、その第三者 若しくは当事者の申立てにより、又は職権で、決定をもつて、相手方としてその第三者を原因裁定の手続に参加させることができる。
裁定委員会は、前項の決定をするときは、あらかじめ、その第三者 及び当事者の意見をきかなければならない。
前項の規定による嘱託に基づいて原因裁定がされた場合において、受訴裁判所は、必要があると認めるときは、中央委員会が指定した者に原因裁定の説明をさせることができる。
第一項の規定による嘱託に基づいて行なう原因裁定の手続に要する費用で、第四十四条第一項の規定により当事者が負担すべきもののうち民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定の例によれば当事者が負担することとなる費用に相当するものは、訴訟費用とみなす。
第四十二条の二十九第二項の規定は、第一項の規定による嘱託に基づいて行なう原因裁定について準用する。
第四十二条の十三から第四十二条の十九まで、第四十二条の二十一、第四十二条の二十四 及び第四十二条の二十六の規定は、原因裁定について準用する。
第四節 補則
中央委員会 又は審査会等は、権利者の申出がある場合において、相当と認めるときは、義務者に対し、中央委員会 又は当該審査会等 若しくは関係連合審査会の行つた調停、仲裁 又は責任裁定で定められた義務の履行に関する勧告をすることができる。
この場合において、当該勧告が連合審査会の行つた調停に係るものであるときは、審査会等は、あらかじめ、他の関係審査会等と協議しなければならない。
前項の場合において、中央委員会 又は審査会等は、当該義務の履行状況について、当事者に報告を求め、又は調査をすることができる。
中央委員会において行うあつせん、調停、仲裁、責任裁定、原因裁定 又は証拠保全の手続に要する費用は、政令で定めるものを除き、各当事者 又は証拠保全の申立てをした者が負担する。
審査会等において行うあつせん、調停 又は仲裁の手続に要する費用は、条例で定めるものを除き、各当事者が負担する。
連合審査会において行うあつせん 又は調停の手続に要する費用は、関係都道府県が協議によつて定める規約で定めるものを除き、各当事者が負担する。
中央委員会に対し調停、仲裁、責任裁定 若しくは原因裁定の申請をする者 又は証拠保全 若しくは第二十三条の四第一項の規定による参加の申立てをする者は、政令で定めるところにより、手数料を納めなければならない。
この場合においては、当該手数料は、国の収入とする。
書類の送達については、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第九十九条、第百三条、第百五条、第百六条、第百七条第一項 及び第三項 並びに第百九条の規定を準用する。
この場合において、
同法第九十九条第一項中
「執行官」とあり、
同法第百七条第一項中
「裁判所書記官」とあるのは
「公害等調整委員会の事務局の職員」と、
同法第百九条中
「裁判所」とあるのは
「公害等調整委員会」と
読み替えるものとする。
候補者名簿からの指名に係るあつせん委員、候補者名簿からの指名に係る調停委員からなる調停委員会 又は候補者名簿からの指名に係る仲裁委員からなる仲裁委員会は、その行うあつせん、調停 又は仲裁の事件が終了したときは、都道府県知事に対し、すみやかに、その概要を報告しなければならない。
この章の規定による処分 又はその不作為については、審査請求をすることができない。
この章に規定するもののほか、中央委員会における紛争の処理の手続 その他紛争の処理に関し必要な事項は公害等調整委員会規則で、審査会等における紛争の処理の手続 その他紛争の処理に関し必要な事項は政令で定める。
第四章 雑則
都道府県 及び市町村(特別区を含む。)は、公害に関する苦情について、次に掲げる事務を行わせるため、公害苦情相談員を置くことができる。
前二号に掲げるもののほか、関係行政機関への通知 その他苦情の処理のために必要な事務を行うこと。
中央委員会は地方公共団体の長に対し、都道府県知事は市町村長(特別区の区長を含む。)に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めることができる。
防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)第二条第二項に規定する防衛施設に係る環境基本法第三十一条第一項に規定する事項に関しては、別に法律で定めるところによる。
第五章 罰則
第十七条第一項(第二十三条、第二十八条第四項、第三十一条第四項 及び第三十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役 又は三万円以下の罰金に処する。
第四十二条の十六第四項(第四十二条の三十三において準用する場合を含む。)の規定により宣誓した参考人 又は鑑定人が虚偽の陳述 又は鑑定をしたときは、六月以下の懲役 又は三万円以下の罰金に処する。
次の各号の一に該当する者は、三万円以下の過料に処する。
正当な理由がなくて第四十二条の十六第一項第一号 又は第二号(第四十二条の三十三においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して出頭せず、又は陳述 若しくは鑑定を拒んだ者
正当な理由がなくて第四十二条の十六第一項第三号(第四十二条の三十三において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して文書 又は物件を提出しなかつた者
正当な理由がなくて第四十二条の十六第一項第四号(第四十二条の三十三において準用する場合を含む。)の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した当事者 又は立入検査を受ける者
正当な理由がなくて第四十二条の十六第四項 又は第五項(第四十二条の三十三においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定による命令に違反して宣誓を拒んだ者
第四十二条の十六第五項(第四十二条の三十三において準用する場合を含む。)の規定により宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、三万円以下の過料に処する。
次の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした当事者を一万円以下の過料に処する。
正当な理由がなくて第三十二条の規定による出頭の要求に応じなかつたとき。
正当な理由がなくて第三十三条第一項 又は第四十条第一項の規定による文書 又は物件の提出の要求に応じなかつたとき。
正当な理由がなくて第三十三条第二項、第四十条第二項 又は第四十二条の十八第二項(第四十二条の三十三において準用する場合を含む。)の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。