警察官は、それぞれ、他の法律 又は国家公安委員会 若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。
刑事訴訟法
第一章 捜査
司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人 及び証拠を捜査するものとする。
森林、鉄道 その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者 及びその職務の範囲は、別に法律でこれを定める。
検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。
検察事務官は、検察官の指揮を受け、捜査をしなければならない。
検察官と都道府県公安委員会 及び司法警察職員とは、捜査に関し、互に協力しなければならない。
検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。
この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。
検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。
検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。
前三項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示 又は指揮に従わなければならない。
検事総長、検事長 又は検事正は、司法警察職員が正当な理由がなく検察官の指示 又は指揮に従わない場合において必要と認めるときは、警察官たる司法警察職員については、国家公安委員会 又は都道府県公安委員会に、警察官たる者以外の司法警察職員については、その者を懲戒し 又は罷免する権限を有する者に、それぞれ懲戒 又は罷免の訴追をすることができる。
国家公安委員会、都道府県公安委員会 又は警察官たる者以外の司法警察職員を懲戒し 若しくは罷免する権限を有する者は、前項の訴追が理由のあるものと認めるときは、別に法律の定めるところにより、訴追を受けた者を懲戒し 又は罷免しなければならない。
検察官 及び検察事務官は、捜査のため必要があるときは、管轄区域外で職務を行うことができる。
検察官、検察事務官 及び司法警察職員 並びに弁護人 その他職務上捜査に関係のある者は、被疑者 その他の者の名誉を害しないように注意し、且つ、捜査の妨げとならないように注意しなければならない。
捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。
但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
捜査については、公務所 又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
検察官、検察事務官 又は司法警察員は、差押え 又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する事業を営む者 又は自己の業務のために不特定 若しくは多数の者の通信を媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者に対し、その業務上記録している電気通信の送信元、送信先、通信日時 その他の通信履歴の電磁的記録のうち必要なものを特定し、三十日を超えない期間を定めて、これを消去しないよう、書面で求ることができる。
この場合において、当該電磁的記録について差押え 又は記録命令付差押えをする必要がないと認めるに至つたときは、当該求めを取り消さなければならない。
前項の規定により消去しないよう求める期間については、特に必要があるときは、三十日を超えない範囲内で延長することができる。
ただし、消去しないよう求める期間は、通じて六十日を超えることができない。
第二項 又は第三項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。
但し、被疑者は、逮捕 又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。
但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留 又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合 又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官 又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会 又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。次項 及び第二百一条の二第一項において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。
ただし、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
検察官 又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求 又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
逮捕状には、被疑者の氏名 及び住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署 その他の場所、有効期間 及びその期間経過後は逮捕をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
第六十四条第二項 及び第三項の規定は、逮捕状についてこれを準用する。
逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。
第七十三条第三項の規定は、逮捕状により被疑者を逮捕する場合にこれを準用する。
検察官 又は司法警察員は、次に掲げる者の個人特定事項(氏名 及び住所 その他の個人を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)について、必要と認めるときは、第百九十九条第二項本文の請求と同時に、裁判官に対し、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項の記載がない逮捕状の抄本 その他の逮捕状に代わるものの交付を請求することができる。
刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第百八十一条 若しくは第百八十二条の罪、同法第二百二十五条 若しくは第二百二十六条の二第三項の罪(わいせつ 又は結婚の目的に係る部分に限る。以下 このイにおいて同じ。)、同法第二百二十七条第一項(同法第二百二十五条 又は第二百二十六条の二第三項の罪を犯した者を幇助する目的に係る部分に限る。)若しくは第三項(わいせつの目的に係る部分に限る。)の罪 若しくは同法第二百四十一条第一項 若しくは第三項の罪 又はこれらの罪の未遂罪に係る事件
児童福祉法第六十条第一項の罪 若しくは同法第三十四条第一項第九号に係る同法第六十条第二項の罪、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第四条から第八条までの罪 又は性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第二条から第六条までの罪に係る事件
イ 及びロに掲げる事件のほか、犯行の態様、被害の状況 その他の事情により、被害者の個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる事件
被害者等(被害者 又は被害者が死亡した場合 若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族 若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)の名誉 又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれ
(1)に掲げるもののほか、被害者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
前号に掲げる者のほか、個人特定事項が被疑者に知られることにより次に掲げるおそれがあると認められる者
イに掲げるもののほか、その者 若しくはその親族の身体 若しくは財産に害を加え 又はこれらの者を畏怖させ 若しくは困惑させる行為がなされるおそれ
裁判官は、前項の規定による請求を受けた場合において、第百九十九条第二項の規定により逮捕状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した逮捕状の抄本 その他の逮捕状に代わるものを交付するものとする。
ただし、当該請求に係る者が前項第一号 又は第二号に掲げる者に該当しないことが明らかなときは、この限りでない。
前項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、逮捕状により被疑者を逮捕するに当たり、当該逮捕状に代わるものを被疑者に示すことができる。
第二項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつた場合において、当該逮捕状に代わるものを所持しないためこれを示すことができない場合であつて、急速を要するときは、前条第一項の規定 及び同条第二項において準用する第七十三条第三項の規定にかかわらず、被疑者に対し、逮捕状に記載された個人特定事項のうち当該逮捕状に代わるものに記載がないものを明らかにしない方法により被疑事実の要旨を告げるとともに、逮捕状が発せられている旨を告げて、逮捕状により被疑者を逮捕することができる。
ただし、当該逮捕状に代わるものは、できる限り速やかに示さなければならない。
検察事務官 又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。
司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨 及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類 及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
前項の場合において、被疑者に弁護人の有無を尋ね、弁護人があるときは、弁護人を選任することができる旨は、これを告げることを要しない。
司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。
司法警察員は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨 並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
第一項の時間の制限内に送致の手続をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨 及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
検察官は、前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。
検察官は、第一項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、被疑者に対し、引き続き勾留を請求された場合において貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは裁判官に対して弁護人の選任を請求することができる旨 並びに裁判官に対して弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
第一項の時間の制限内に勾留の請求 又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
前条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。
検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
前項の時間の制限は、被疑者が身体を拘束された時から七十二時間を超えることができない。
前二項の時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
第一項 及び第二項の時間の制限内に勾留の請求 又は公訴の提起をしないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
検察官 又は司法警察員がやむを得ない事情によつて前三条の時間の制限に従うことができなかつたときは、検察官は、裁判官にその事由を疎明して、被疑者の勾留を請求することができる。
前項の請求を受けた裁判官は、その遅延がやむを得ない事由に基く正当なものであると認める場合でなければ、勾留状を発することができない。
前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。
但し、保釈については、この限りでない。
前項の裁判官は、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨 及び貧困 その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。
ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
前項の規定により弁護人を選任することができる旨を告げるに当たつては、勾留された被疑者は弁護士、弁護士法人 又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる旨 及び その申出先を教示しなければならない。
第二項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨 及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。
ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。
検察官は、第二百一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者の個人特定事項について、必要と認めるときは、前条第一項の勾留の請求と同時に、裁判官に対し、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げるに当たつては当該個人特定事項を明らかにしない方法によること 及び被疑者に示すものとして当該個人特定事項の記載がない勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付することを請求することができる。
裁判官は、前項の規定による請求を受けたときは、勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げるに当たつては、当該請求に係る個人特定事項を明らかにしない方法によるとともに、前条第五項本文の規定により勾留状を発するときは、これと同時に、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付するものとする。
ただし、当該請求に係る者が第二百一条の二第一項第一号 又は第二号に掲げる者に該当しないことが明らかなときは、この限りでない。
裁判官は、前条第二項の規定による措置をとつた場合において、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被疑者 又は弁護人の請求により、当該措置に係る個人特定事項の全部 又は一部を被疑者に通知する旨の裁判をしなければならない。
イ 又はロに掲げる個人特定事項の区分に応じ、当該イ 又はロに定める場合であるとき。
被害者の個人特定事項 当該措置に係る事件に係る罪が第二百一条の二第一項第一号イ 及びロに規定するものに該当せず、かつ、当該措置に係る事件が同号ハに掲げるものに該当しないとき。
被害者以外の者の個人特定事項 当該措置に係る者が第二百一条の二第一項第二号に掲げる者に該当しないとき。
裁判官は、前項の請求について裁判をするときは、検察官の意見を聴かなければならない。
裁判官は、第一項の裁判(前条第二項の規定による措置に係る個人特定事項の一部を被疑者に通知する旨のものに限る。)をしたときは、速やかに、検察官に対し、被疑者に示すものとして、当該個人特定事項(当該裁判により通知することとされたものを除く。)を明らかにしない方法により被疑事実の要旨を記載した勾留状の抄本 その他の勾留状に代わるものを交付するものとする。
第七十条第一項本文 及び第二項の規定は、第一項の裁判の執行について準用する。
第一項の裁判を執行するには、前条第二項の規定による措置に係る個人特定事項の全部について当該裁判があつた場合にあつては勾留状を、当該個人特定事項の一部について当該裁判があつた場合にあつては第三項の勾留状に代わるものを、被疑者に示さなければならない。
前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。
この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章 又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。
この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。
期間を指定されて勾留の執行停止をされた被疑者が、正当な理由がなく、当該期間の終期として指定された日時に、出頭すべき場所として指定された場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
裁判所の許可を受けないで指定された期間を超えて制限された住居を離れてはならない旨の条件を付されて勾留の執行停止をされた被疑者が、当該条件に係る住居を離れ、当該許可を受けないで、正当な理由がなく、当該期間を超えて当該住居に帰着しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
前項の被疑者が、裁判所の許可を受けて同項の住居を離れ、正当な理由がなく、当該住居を離れることができる期間として指定された期間を超えて当該住居に帰着しないときも、同項と同様とする。
勾留の執行停止を取り消され、検察官から出頭を命ぜられた被疑者が、正当な理由がなく、指定された日時 及び場所に出頭しないときは、二年以下の拘禁刑に処する。
第七十四条、第七十五条 及び第七十八条の規定は、逮捕状による逮捕についてこれを準用する。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、死刑 又は無期 若しくは長期三年以上の懲役 若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。
この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。
逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
第二百条の規定は、前項の逮捕状についてこれを準用する。
前条の規定により被疑者が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。
現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
贓物 又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器 その他の物を所持しているとき。
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
検察官、検察事務官 及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁 若しくは区検察庁の検察官 又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
司法巡査は、現行犯人を受け取つたときは、速やかにこれを司法警察員に引致しなければならない。
司法巡査は、犯人を受け取つた場合には、逮捕者の氏名、住居 及び逮捕の事由を聴き取らなければならない。
必要があるときは、逮捕者に対しともに官公署に行くことを求めることができる。
現行犯人が逮捕された場合には、第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。
三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律 及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留 又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居 若しくは氏名が明らかでない場合 又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証をすることができる。
この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成 若しくは変更をした電磁的記録 又は当該電子計算機で変更 若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機 又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機 又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
身体の拘束を受けている被疑者の指紋 若しくは足型を採取し、身長 若しくは体重を測定し、又は写真を撮影するには、被疑者を裸にしない限り、第一項の令状によることを要しない。
第一項の令状は、検察官、検察事務官 又は司法警察員の請求により、これを発する。
検察官、検察事務官 又は司法警察員は、身体検査令状の請求をするには、身体の検査を必要とする理由 及び身体の検査を受ける者の性別、健康状態 その他裁判所の規則で定める事項を示さなければならない。
裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。
前条の令状には、被疑者 若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ 若しくは印刷させるべき電磁的記録 及びこれを記録させ 若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体 若しくは物、検証すべき場所 若しくは物 又は検査すべき身体 及び身体の検査に関する条件、有効期間 及び その期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索 又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨 並びに発付の年月日 その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
前条第二項の場合には、同条の令状に、前項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。
第六十四条第二項の規定は、前条の令状についてこれを準用する。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第百九十九条の規定により被疑者を逮捕する場合 又は現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、左の処分をすることができる。
第二百十条の規定により被疑者を逮捕する場合において必要があるときも、同様である。
人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること。
逮捕の現場で差押、捜索 又は検証をすること。
前項後段の場合において逮捕状が得られなかつたときは、差押物は、直ちにこれを還付しなければならない。
第百二十三条第三項の規定は、この場合についてこれを準用する。
第一項の処分をするには、令状は、これを必要としない。
第一項第二号 及び前項の規定は、検察事務官 又は司法警察職員が勾引状 又は勾留状を執行する場合にこれを準用する。
被疑者に対して発せられた勾引状 又は勾留状を執行する場合には、第一項第一号の規定をも準用する。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、被疑者 その他の者が遺留した物 又は所有者、所持者 若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。
第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条 及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条 及び前条の規定によつてする押収 又は捜索について、第百十条、第百十一条の二、第百十二条、第百十四条、第百十八条、第百二十九条、第百三十一条 及び第百三十七条から第百四十条までの規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条 又は第二百二十条の規定によつてする検証についてこれを準用する。
ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。
第二百二十条の規定により被疑者を捜索する場合において急速を要するときは、第百十四条第二項の規定によることを要しない。
第百十六条 及び第百十七条の規定は、検察官、検察事務官 又は司法警察職員が第二百十八条の規定によつてする差押え、記録命令付差押え 又は捜索について、これを準用する。
日出前、日没後には、令状に夜間でも検証をすることができる旨の記載がなければ、検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第二百十八条の規定によつてする検証のため、人の住居 又は人の看守する邸宅、建造物 若しくは船舶内に入ることができない。
但し、第百十七条に規定する場所については、この限りでない。
日没前検証に着手したときは、日没後でも その処分を継続することができる。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、第二百十八条の規定により差押、捜索 又は検証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。
第一項の規定により、身体の検査を拒んだ者を過料に処し、又はこれに賠償を命ずべきときは、裁判所にその処分を請求しなければならない。
通信の当事者のいずれの同意も得ないで電気通信の傍受を行う強制の処分については、別に法律で定めるところによる。
検察官、検察事務官 又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳 若しくは翻訳を嘱託することができる。
第百九十八条第一項但書 及び第三項乃至第五項の規定は、前項の場合にこれを準用する。
前条第一項の規定により鑑定を嘱託する場合において第百六十七条第一項に規定する処分を必要とするときは、検察官、検察事務官 又は司法警察員は、裁判官にその処分を請求しなければならない。
裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、第百六十七条の場合に準じてその処分をしなければならない。
この場合には、第百六十七条の二の規定を準用する。
第二百七条の二 及び第二百七条の三の規定は、第一項の請求について準用する。
この場合において、
第二百七条の二中
「勾留を」とあるのは
「第百六十七条第一項に規定する処分を」と、
同条 並びに第二百七条の三第三項 及び第五項中
「勾留状」とあるのは
「鑑定留置状」と、
第二百七条の二第二項中
「前条第五項本文の規定により」とあるのは
「第二百二十四条第二項前段の規定により第百六十七条の場合に準じて」と
読み替えるものとする。
第二百七条の二第二項の規定による勾留状に代わるものの交付があつた場合における前条第二項後段において準用する第百六十七条の二第二項において準用する第九十八条の規定の適用については、
同条第一項中
「勾留状の謄本」とあるのは、
「第二百七条の二第二項本文の勾留状に代わるもの」と
する。
第二百二十三条第一項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第百六十八条第一項に規定する処分をすることができる。
前項の許可の請求は、検察官、検察事務官 又は司法警察員からこれをしなければならない。
裁判官は、前項の請求を相当と認めるときは、許可状を発しなければならない。
第百六十八条第二項乃至第四項 及び第六項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。
犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第二百二十三条第一項の規定による取調に対して、出頭 又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
第二百二十三条第一項の規定による検察官、検察事務官 又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。
前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由 及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。
前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所 又は裁判長と同一の権限を有する。
裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者 又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。
変死者 又は変死の疑のある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁 又は区検察庁の検察官は、検視をしなければならない。
検察官は、検察事務官 又は司法警察員に前項の処分をさせることができる。
犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
被害者の法定代理人は、独立して告訴をすることができる。
被害者が死亡したときは、その配偶者、直系の親族 又は兄弟姉妹は、告訴をすることができる。
但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
被害者の法定代理人が被疑者であるとき、被疑者の配偶者であるとき、又は被疑者の四親等内の血族 若しくは三親等内の姻族であるときは、被害者の親族は、独立して告訴をすることができる。
死者の名誉を毀損した罪については、死者の親族 又は子孫は、告訴をすることができる。
名誉を毀損した罪について被害者が告訴をしないで死亡したときも、前項と同様である。
但し、被害者の明示した意思に反することはできない。
親告罪について告訴をすることができる者がない場合には、検察官は、利害関係人の申立により告訴をすることができる者を指定することができる。
親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
ただし、刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴 及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条 又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴については、この限りでない。
告訴をすることができる者が数人ある場合には、一人の期間の徒過は、他の者に対しその効力を及ぼさない。
告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
告訴の取消をした者は、更に告訴をすることができない。
前二項の規定は、請求を待つて受理すべき事件についての請求についてこれを準用する。
親告罪について共犯の一人 又は数人に対してした告訴 又はその取消は、他の共犯に対しても、その効力を生ずる。
前項の規定は、告発 又は請求を待つて受理すべき事件についての告発 若しくは請求 又はその取消についてこれを準用する。
何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
官吏 又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
告訴は、代理人によりこれをすることができる。
告訴の取消についても、同様である。
告訴 又は告発は、書面 又は口頭で検察官 又は司法警察員にこれをしなければならない。
検察官 又は司法警察員は、口頭による告訴 又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。
司法警察員は、告訴 又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類 及び証拠物を検察官に送付しなければならない。
前二条の規定は、告訴 又は告発の取消についてこれを準用する。
刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴 又はその取消は、第二百四十一条 及び前条の規定にかかわらず、外務大臣にこれをすることができる。
日本国に派遣された外国の使節に対する刑法第二百三十条 又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う告訴 又はその取消も、同様である。
第二百四十一条 及び第二百四十二条の規定は、自首についてこれを準用する。
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類 及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。