この法律は、競馬の健全な発展を図つて馬の改良増殖 その他畜産の振興に寄与するため、競馬法(昭和二十三年法律第百五十八号)により競馬を行う団体として設立される日本中央競馬会の組織 及び運営について定めるものとする。
日本中央競馬会法
第一章 総則
日本中央競馬会(以下「競馬会」という。)は、法人とする。
競馬会は、主たる事務所を東京都に置く。
競馬会の資本金は、競馬会の成立の際 現に国営競馬特別会計に属している動産(政令で定めるものを除く。)及び不動産の価額の合計額に相当する金額とし、政府が その全額を出資する。
前項の財産の評価については、政令で定める。
競馬会は、政令の定めるところにより、登記をしなければならない。
前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
競馬会でない者は、日本中央競馬会という名称 又はこれに類する名称を用いてはならない。
第二章 管理
競馬会の定款には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
定款の変更は、農林水産大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
競馬会は、定款で定められている事項を除き、次に掲げる事項については、規約で定めなければならない。
競馬会は、規約を定めようとするときは、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
前項の規定は、規約の変更について準用する。
ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
経営委員会は、競馬会の経営の基本方針 及び目標 その他 その業務の運営の重要事項を決定する。
次に掲げる事項は、経営委員会の議決を経なければならない。
経営委員会は、競馬会の経営の目標の達成状況の評価を行う。
経営委員会は、役員(監事を除く。)の職務の執行を監督する。
経営委員会は、委員六人 及び理事長で組織する。
経営委員会に委員長一人を置き、委員の互選により選任する。
経営委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
経営委員会の委員は、競馬会の経営に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、農林水産大臣が任命する。
経営委員会の委員の任期は、三年とする。
ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
次の各号のいずれかに該当する者は、経営委員会の委員となることができない。
禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しない者
この法律 又は競馬法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなつた日から三年を経過しない者
政府 又は地方公共団体の職員(任命の日以前一年間において これらに該当した者を含み、非常勤の者を除く。)
競馬会に対する物品の売買、施設 若しくは役務の提供 若しくは工事の請負を業とする者であつて競馬会と取引上密接な利害関係を有するもの 又は これらの者が法人であるときは、その役員 若しくはいかなる名称によるかを問わず役員と同等以上の職権 若しくは支配力を有する者(任命の日以前一年間において これらに該当した者を含む。)
経営委員会は、委員長 又は第八条の四第四項に規定する委員長を代理する者のほか、委員 及び理事長のうちから三人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
経営委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。
可否同数のときは、委員長が決する。
経営委員会は、競馬会の役員 又は職員を その会議に出席させて、必要な説明を求めることができる。
理事長は、経営委員会が役員の給与に関する規程の制定 及び変更について議決するときは、その議事に加わることができない。
競馬会に、役員として、理事長一人、副理事長一人、理事十人以内 及び監事三人以内を置く。
副理事長は、定款の定めるところにより、競馬会を代表し、理事長を補佐して競馬会の事務を掌理し、理事長が欠けたとき 又は理事長に事故があるときは、その職務を代行する。
理事は、定款の定めるところにより、競馬会を代表し、理事長 及び副理事長を補佐して競馬会の事務を掌理し、理事長 及び副理事長がともに欠けたとき 又は事故があるときは、理事長の職務を代行する。
監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、経営委員会、理事長 又は農林水産大臣に意見を提出することができる。
副理事長 及び理事は、経営委員会の同意を得て、理事長が任命する。
理事長 及び副理事長の任期は三年以内において、理事 及び監事の任期は二年以内において それぞれ定款で定める。
第八条の六第一項ただし書 及び第二項の規定は、理事長、副理事長、理事 及び監事について準用する。
第八条の七(第五号を除く。)の規定は、理事長、副理事長、理事 及び監事について準用する。
理事長、副理事長、理事 及び監事は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
競馬会と理事長、副理事長 又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。
この場合には、監事が競馬会を代表する。
運営審議会は、理事長の諮問に応じ、競馬会の業務の執行に関する重要事項を調査審議する。
理事長は、次に掲げる事項については、あらかじめ、運営審議会の意見を聴かなければならない。
規約(第八条第一項第五号に掲げる事項に係るものを除く。)の制定 及び変更
運営審議会は、競馬会の業務の執行につき、理事長に対して意見を述べることができる。
運営審議会は、委員十人で組織する。
運営審議会の委員は、次に掲げる者のうちから、理事長が農林水産大臣の認可を受けて任命する。
運営審議会の委員の任期は、二年以内において定款で定める。
第八条の六第一項ただし書 及び第二項の規定は、運営審議会の委員について準用する。
前条 及び前各項に規定するもののほか、運営審議会の組織 及び運営に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条(住所)及び第七十八条(代表者の行為についての損害賠償責任)の規定は、競馬会について準用する。
第三章 業務
競馬会は、第一条に掲げる目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。
競馬会は、前項に掲げる業務のほか、次に掲げる業務を行うことができる。
競馬法第二十一条の規定により委託を受けて競馬の実施に関する事務を行うこと。
その他競馬(馬術競技を含む。次項において同じ。)の健全な発展を図るため必要な業務
前項の場合において、競馬場の周辺地域の住民 又は競馬場の入場者の利便に供する施設の整備 その他の競馬の健全な発展を図るため必要な業務であつて農林水産省令で定めるものを行おうとするときは、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
競馬会は、第一項 及び第二項に掲げる業務のほか、農林水産省令で定めるところにより、あらかじめ農林水産大臣の認可を受けて、次に掲げる事業(第三十六条第一項において「畜産振興事業等」という。)であつて農林水産省令で定めるものについて助成することを業務とする法人に対し、当該助成に必要な資金の全部 又は一部に充てるため、交付金を交付する業務(これに附帯する業務を含む。)を行うことができる。
畜産の経営 又は技術の指導の事業、肉用牛の生産の合理化のための事業 その他の畜産の振興に資するための事業
農村地域における良好な生活環境を確保するための施設の整備 その他の営農環境の確保を図るための事業 又は農林畜水産業に関する研究開発に係る事業であつて畜産の振興に資すると認められるもの
競馬会は、次に掲げる処分を行おうとするときは、あらかじめ、農林水産省令で定めるところにより、法律に関し学識経験を有する者 'その他の農林水産省令で定める者の意見を聴かなければならない。
前二号に掲げる処分 その他競馬会の行う処分であつて政令で定めるものについての審査請求に対する裁決
競馬会が第十九条第四項に規定する業務として交付する交付金については、競馬会を国とみなし、当該交付金を国が国以外の者に対して交付する補助金とみなして、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)の規定(第二十三条の規定 及びこれに係る罰則を除き、その他の罰則を含む。)を準用する。
この場合において、
同法(第二条第七項を除く。)中
「各省各庁」とあるのは
「日本中央競馬会」と、
「各省各庁の長」とあるのは
「日本中央競馬会の理事長」と
読み替えるものとする。
競馬会は、農林水産省令の定めるところにより、事業計画を作成し、農林水産大臣に提出して その認可を受けなければならない。
競馬会は、前項の認可を受けた事業計画を変更しようとするときは、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
競馬会の事業年度は、毎年一月一日から 十二月三十一日までとする。
第四章 会計
競馬会は、毎事業年度、農林水産省令の定めるところにより、収入 及び支出の予算を定めて これを当該事業年度の開始前に農林水産大臣に提出し、その認可を受けなければならない。
競馬会は、前項の認可を受けた予算を変更しようとするときは、農林水産大臣の認可を受けなければならない。
競馬会は、借入金をしようとするときは、農林水産大臣の許可を受けなければならない。
競馬会は、次に掲げる方法以外の方法によつて業務上の余裕金を運用しようとするときは、農林水産大臣の許可を受けなければならない。
競馬会は、農林水産大臣の許可を受けなければ、その所有する不動産を譲渡し、交換し、又は担保に供してはならない。
競馬会は、政令の定めるところにより、競馬法第六条の規定により発売する勝馬投票券の発売金額から同法第十二条第六項の規定により返還すべき金額を控除した残額の百分の十に相当する金額を国庫に納付しなければならない。
競馬会は、毎事業年度、政令の定めるところにより、剰余金の二分の一に相当する金額を国庫に納付しなければならない。
競馬会は、政令で定める額に達するまでは、毎事業年度、剰余金の十分の一以上を損失てん補準備金として積み立てなければならない。
前項の準備金は、損失のてん補に充てる場合を除いては、取りくずしてはならない。
競馬会は、第二十七条第二項の規定による納付 及び前条第一項の規定による積立をしてなお剰余があるときは、すべてこれを特別積立金として積み立てなければならない。
前項の特別積立金の処分については、政令で定める。
競馬会は、第十九条第三項 及び第四項に規定する業務に関して、特別振興資金を設けるものとする。
競馬会は、特別振興資金に係る経理については、一般の経理と区分して整理しなければならない。
競馬会は、前条第一項の剰余があるときは、同項の規定にかかわらず、その剰余の額に事業年度ごとに政令で定める割合を乗じて得た額を特別振興資金に充てることができる。
特別振興資金の運用によつて生じた利子 その他 当該資金の運用 又は使用に伴い生ずる収入は、前条第一項の規定にかかわらず、特別振興資金に充てるものとする。
特別振興資金は、第二十五条の規定により運用する場合のほか、政令で定めるところにより、第十九条第三項 及び第四項に規定する業務に必要な経費に充てる場合に限り、運用し、又は使用することができる。
競馬会は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表 及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に、農林水産大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
競馬会は、前項の規定により財務諸表を農林水産大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書 及び予算の区分に従い作成した決算報告書を添え、並びに財務諸表 及び決算報告書に関する監事の意見を付けなければならない。
競馬会は、第一項の規定による農林水産大臣の承認を受けたときは、遅滞なく、財務諸表 又は その要旨を官報に公告し、かつ、財務諸表 及び附属明細書 並びに前項の事業報告書、決算報告書 及び監事の意見を記載した書面を、各事務所に備えて置き、農林水産省令で定める期間、一般の閲覧に供しなければならない。
第二項に規定する事業報告書 及び前項に規定する附属明細書に記載すべき事項は、農林水産省令で定める。
第五章 監督
農林水産大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、競馬会に対して業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
競馬会の監督に関する事務をつかさどる農林水産省の職員であつて農林水産大臣の指定したものは、競馬会の経営委員会 その他の会議に出席して意見を述べることができる。
農林水産大臣 又は理事長は、それぞれ その任命に係る経営委員会の委員 又は役員が第八条の七各号(第十三条において第八条の七(第五号を除く。)の規定を準用する場合を含む。)のいずれかに該当するに至つたときは、その委員 又は役員を解任しなければならない。
農林水産大臣 又は理事長は、それぞれ その任命に係る経営委員会の委員 又は役員が 次の各号のいずれかに該当するに至つたとき、その他委員 又は役員たるに適しないと認めるときは、その委員 又は役員を解任することができる。
この法律 若しくは競馬法 若しくは これらの法律に基づく命令の規定 又は これらの法令に基づいてする農林水産大臣の命令に違反したとき。
心身の故障により職務を執ることができないとき。
前項に規定するもののほか、農林水産大臣 又は理事長は、それぞれ その任命に係る役員(監事を除く。)の職務の執行が適当でないため競馬会の業務の運営状況が悪化した場合であつて、その役員に引き続き当該職務を行わせることが適切でないと認めるときは、その役員を解任することができる。
理事長は、前二項の規定により役員を解任しようとするときは、あらかじめ、経営委員会の同意を得なければならない。
第二項 及び前項の規定は、運営審議会の委員の解任について準用する。
この場合において、
同項中
「前二項」とあるのは
「第二項」と、
「経営委員会の同意を得なければ」とあるのは
「農林水産大臣の認可を受けなければ」と
読み替えるものとする。
農林水産大臣は、必要があると認めるときは、競馬会に対して報告をさせ、又は その職員にその事務所 若しくは競馬場 その他の施設に立ち入り、業務の状況 若しくは帳簿書類 その他必要な物件を検査させることができる。
前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第六章 雑則
政府は、第二十七条の規定による国庫納付金の額に相当する金額を、畜産振興事業等に必要な経費 及び民間の社会福祉事業(公の支配に属しないものを除く。)の振興のために必要な経費に充てなければならない。
この場合において、社会福祉事業の振興のために必要な経費に充てる金額は、国庫納付金の額のおおむね四分の一に相当する金額とする。
前項の規定の適用については、金額の算出は、各年度において、その年度の予算金額によるものとする。
第七章 罰則
競馬会の経営委員会の委員 又は役員 若しくは職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はこれを要求し、若しくは約束したときは、三年以下の懲役に処する。
これによつて不正の行為をし、又は相当の行為をしなかつたときは、五年以下の懲役に処する。
前項の場合において、収受したわいろは、没収する。
その全部 又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
前条第一項に規定するわいろを供与し、又はその申込み 若しくは約束をした者は、三年以下の懲役 又は二百五十万円以下の罰金に処する。
第三十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その行為をした競馬会の役員 又は職員を三十万円以下の罰金に処する。
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした競馬会の役員 又は職員を二十万円以下の過料に処する。
この法律により農林水産大臣の認可 又は許可を受けなければならない場合において、その認可 又は許可を受けなかつたとき。
第五条第一項の規定に違反して登記することを怠り、又は不実の登記をしたとき。
第十九条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
第二十九条の二第五項の規定に違反して特別振興資金を運用し、又は使用したとき。
第三十一条第二項の規定による農林水産大臣の命令に違反したとき。
第六条の規定に違反した者は、十万円以下の過料に処する。